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■女の子たちの修学旅行・高校編(6)

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それで大覚寺を出て、お寺の人に道を尋ね、嵐山方面に戻ろうとしていた時、
「すみません」
と声を掛けてくる少女が居る。
 
6人全員が振り向いた(千里は後からよくよく考えたが、確かに6人とも振り向いた。つまり全員彼女を見ていた)。年齢は中学生くらいに見えた。すごく長い髪をしている。
 
「なんでしょう?」
「直指庵(じきしあん)への道はこちらでしたでしょうか?」
 
「直指庵ですか?ちょっと待って」
と言って京子が地図を確認する。
 
「直指庵はそちらの道を登っていくみたいですよ」
「ありがとうございます」
 
それで彼女が行きかけるが京子は
「待って」
と呼び止める。
 
「おひとりですか?」
「ええ」
 
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「そちらに行く人少ないみたいだし、ひとりは不用心ですよ。一緒にいきませんか?」
と京子が言う。
 
「えーー!?」
という声も出る。
 
「行きは20分、帰りは15分くらいみたいだから時間調整にちょうどいいよ」
「でも上り坂だよ」
「受験生は身体の鍛練だよ」
と京子。
 

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それで彼女と一緒に7人で直指庵への道を歩いて行く。
 
「中学生ですか?」
「はい。中学1年です」
「ことばが京都の人じゃないみたい。観光客さん?」
「ええ。金沢から来ました」
「ひとりで?」
「ええ、ちょっとあって」
 
千里たちの間に素早い視線の交換がある。千里は京子が呼び止めたのは正解だと思った。この子、もしかして自殺しに来たのではないかという気がした。
 
唐突に蓮菜が訊く。
「千里さ、中学に入ったときに失恋したよね。その時どんな気持ちだった?」
 
千里は少し考えて答える。
「気持ちとか言う以前の問題なんだよ。もう何も出来なくてさ、体のバランスも取れないし。中学の初めに私一週間休んだでしょ。あれ、そのせいなんだよ」
 
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「そうだったのか」
「熱が出て、病院の先生も原因が分からないって言って」
「やはり、失恋ってそういう一大事なんだね」
 
「なんかホルモンバランスも崩れまくりで、エストロゲンの注射までしてもらったよ」
と千里が言うと、鮎奈と京子が一瞬顔を見合わせていた。
 

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「さっき見て来たところでさ、祇王寺の祇王さんはあそこで余生を送ったみたいだけど、滝口入道と恋をした横笛さんはその後どうしたんだろ?」
と花野子が言った。
 
「滝口入道と会えなかったのを悲観して、そのまま川に身を投げたという説もあるんだけど、自分も尼になったという説もある」
 
「ふむふむ」
「奈良の法華寺というところで修行していたんだって」
「へー」
「その後もけっこうふたりは文のやりとりとかもしていたみたいなんだよね。贈答した歌が残っている」
「ほほぉ」
「お互いに仏の道で修行する者同士になったから、その立場で励まし合ったんじゃないのかなあ」
「それは割と良い話かも」
 
「それで法華寺には滝口入道から来た手紙を固めて、横笛が自分自身の姿を象ったという横笛像が残っている」
「像を造れるくらい、たくさん手紙のやりとりしたんだ!?」
 
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「それってお互いに出家する前のもの?」
「それが大半だろうけど、出家した後のものも割とあるかもね」
「横浜の三渓園にも手紙を固めて作った横笛像はあったはず」
「横浜?」
「なんでそんな遠くに」
「さあ、なんだろうね」
「東国まで落ちていったんだったりして」
「でも横笛のお墓は奈良の葛城にあるらしい」
「でも有名人のお墓ってあちこちにあったりするから」
「滝口入道が高野山に籠もっているからというので、高野山の麓に住んでいたという説もあるよ」
 
「横笛さん、ひょっとして意外にたくましくない?」
「かも知れない」
 

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千里たちの会話を、中学生の女の子は興味深そうに聞いている感じであった。やがて直指庵に辿り着く。
 
「着いた着いた」
「疲れた疲れた」
 
土曜というのに境内は人がまばらである。
 
「春休み前だからかもね」
「あれ、なんか女の人ばかりって気がしない?」
「もしかしてここ男子禁制?」
 
「あ、それ時々誤解する人いるけど、男性でも別に入っていいんだそうですよ」
と中学生女子は言う。
 
「まあ千里は男子禁制でも問題ないだろうね」
「むしろ千里は女人禁制の所に入れない」
「なるほどなるほど」
といういつもの会話を、中学生は不思議そうに聞いていた。
 
《想い出草》と書かれたノートの置かれた部屋まで来る。
 
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「旅の想い出帳みたいなもの?」
と梨乃が言ってノートを開いてみて沈黙する。千里たちも覗き込んで沈黙してしまう。
 
「まあ、普通に旅の想い出書いてる子もいるね」
「うん、そういう子もいる」
 
「よし。私も書こう」
と言って蓮菜が書き始める。
 
「ね、提案。先に書いた人の文章は見ないことにしない?」
と鮎奈。
 
「了解」
「これで上のは隠して書くといいよ」
と言って京子がガイドマップを出すので、以後そういうことにした。千里は隣で何か思い巡らすようにゆっくりとペンを運んでいる女子中生を見ながら「隣にいる女子中学生に幸いありますように/北海道・女16歳」と書いた。
 

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直指庵を出たところで京子が彼女に
「この後、どちらに行きますか?」
と訊く。
 
「滝口寺に行きます」
と言うので
「じゃ途中まで一緒に行きましょう」
と言って坂道を降りて行く。
 
「ね、君、名前を訊いていい?」
と京子が訊くと
「江与子です」
と彼女は名乗った。
 
そしてかなり降りてきて、大覚寺が見えてきた所で、唐突に彼女は荷物の中から朱塗りの横笛を取り出すと、それを持って吹き始めた。
 
その美しい調べに千里たちは立ち止まり、ただ見とれていた。笛は篠笛のようである。やがて千里は自分のリュックの中から、龍笛(樹脂製)を取り出す。そして彼女の笛に合わせて千里も自分の龍笛を吹き始めた。
 
江与子の篠笛と千里の龍笛。ふたつの笛の共演は何分も続いた。髪の長い少女がふたり笛を吹いていると物凄く美しい絵である。花野子は写真を撮りたい衝動を抑えていた。
 
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演奏は10分くらい続いたろうか。やがて江与子が笛をやめる。千里もやめる。そして微笑みあった。
 
「素敵な笛でした」と江与子。
「君こそ凄かった」と千里。
 
「もし良かったら、笛を交換しません?」と江与子。
「これ安物だけど」と千里。
「私のも安物」と江与子。
 
それでふたりは笛を交換した。そして何となくそのまま交換した笛を吹く。江与子の龍笛に千里は衝撃を受けた。
 
こんな凄い龍笛の音があったのかと千里は自分の認識を新たにした。それは龍笛が鳴っているというより、龍そのものが鳴いているかのような音だった。千里が少し天空に気を配ると、大きな龍が3体も来ている。そして龍たちは天空に巴を描くかのように連なって舞い踊り始めた。
 
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江与子の龍笛に千里の篠笛が音の彩りを添える。15分ほど演奏は続いた。霊感の少しある蓮菜・京子・梨乃が時々上空にも目を遣っていた。
 
「皆さんにはバレちゃったかなと思ったけど、私死のうかと思ってここまで流れて来ました」
と江与子は言った。
 
「失恋しちゃって」
と笑いながら言うが、そんな言い方ができる所まで彼女の心は立ち直ったのであろう。
 
「また頑張ります」
「うん。辛いけど頑張ろうよ。もし辛くなったら私に電話してもいいよ」
と言って千里はメモ帳に自分の電話番号を書いて渡した。
 
「ありがとう。また会えるといいですね」
「うん。またその内」
 
それで江与子は千里の龍笛を持って、道を降りて行き、滝口寺の方に行く道に折れた。千里たちはそれを見送っていた。
 
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「それ何の笛?」
と花野子が訊くので
「これは篠笛だよ」
と千里は答える。
 
「それも樹脂製?」
「竹に漆を塗っているみたい。これ、かなり年季が入っている。元々はあの子のお母さんかお祖母さんのものだったかも。もらっちゃって良かったのかなあ」
と千里は笛を指で軽く弾きながら答える。
 
「今思ったんだけどさ」
と蓮菜が言う。
 
「《よこぶえ》という文字の中に《えよこ》という名前が隠れてるよね」
「へ?」
「まさか、今のは横笛本人だとか?」
 
「平家物語の横笛って、横笛も吹くんだっけ?」
「確か琴とか歌がうまかったという話」
「でも横笛という名前を付けられたくらいだから横笛も吹いたのかもね」
 
「ね、もしかして今の子、人間じゃないって意味?」
と花野子が尋ねる。
 
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「私、この子は人間じゃないかもって、直指庵で思ったよ」
と梨乃が言う。
 
「えーーーー!?」
 
「梨乃も結構霊感あるもんね」
「だけど霊感ゼロの花野子にも見えてるふうだから、違うかなとも思ったんだけどね」
「私も霊感ゼロだけど見えてた」と鮎奈が言う。
 
「江与子ちゃんの履いてた靴、千里の靴と同じものだったよね」
と蓮菜。
 
「え?気付かなかった」
「痛み具合まで似てた。精霊みたいなのが人の前に姿を現す時って、しばしば近くに居る人の服装の一部を借りるんだよね」
「へー」
 
「千里って霊媒体質だからさあ」
と蓮菜は言う。
 
「あ、確かに私何度か『入られた』ことある」
と千里。
 
「元々千里って実は女の子なのに、男に憑かれているんだったりして」
「うむむ。新しい説が」
「だったら憑いてる男を祓っちゃえば千里は本当の女の子になれる」
「どうやって祓うの?」
「そうだなあ。プーケットあたりに連れて行って手術台に乗せて、男の依代を切り取っちゃう」
「ふむふむ」
 
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嵐山まで降りて行っても、まだ半分くらいの子が戻って来ていなかったので、結構待つことになる。それで待っている間に千里が何か書いているので
「何書いてるの?」
と蓮菜が訊くと
「さっきの曲を書き留めてる」
と千里は言う。
 
「ああ、江与子ちゃんと吹いた曲か」
「うん。凄くきれいな曲だったからね」
「それ、横笛の譜面?」
「そうそう」
「なんか訳が分からん」
「ふふ」
 

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