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■女の子たちの修学旅行・高校編(2)

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「ところで私、河内先生から訊かれたんだよ。千里、中学の修学旅行ではお風呂どうしていたのかって」
と蓮菜が言う。
 
「面倒掛けてごめーん」
「お風呂どうしたのかは実は誰も知らないんです、と答えておいた」
「正確な答え、ありがとう」
「でもきっと女湯に入ってますよとも言っといた」
「なんて親切な」
 
「るみちゃんとお風呂の中で遭遇したという話は聞いてたけど、それは言わなかったよ」
「ありがとう。何でか、るみちゃんとは良くお風呂の中で会うんだよね」
「千里とるみちゃんが、果たして女湯で遭遇しているのか男湯で遭遇しているのか、はなはだ疑問だし」
 
「るみちゃん、人の居ない間を狙って男湯に入ろうとしたことはあるらしい」
「危険なことするなあ。それで千里は、知り合いの居ない間を狙って女湯に入っているんだよね」
「あははは」
 
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「千里って小学校の修学旅行でも女湯に入った疑惑があったしなあ」
「うーん・・・」
「中学の修学旅行なんて、そもそもセーラー服着てたし」
「まあね」
「そもそも勉強合宿では、小さな民宿だけど間違い無く女湯に入ってたしね」
「えへへ」
 
「千里の実態は私もだいたい理解してるから、無理には聞かないけどさ」
 
うーん。。。問題は「理解されすぎて」るのではないかということなんだけどね。
 

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千里は同じ日に卒業式を迎えた元彼の晋治にも「卒業おめでとう」のメールを送っておいたので、夕方電話が掛かって来た。
 
「メールありがとう。それから少し早いけど誕生日おめでとう」
「ありがとう。入試のほうは手応えどうだった?」
「手応えはあった。でも合格しているかどうかは発表になってみないと分からない。今、後期の試験に向けて勉強してるよ」
 
晋治は2月末に北大医学部を受験した。センター試験の自己採点がかなり良かったので、行ける確率は高いとは本人も言っていたが、開けてみるまで分からないのが入試である。万一北大に落ちた場合は、後期は旭川医科大学を受けるらしいが、そちらは合格しても浪人するつもりのような口ぶりであった。
 
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「でも野球はやめちゃうの、ホントに?」
「それ、入試の結果が出てから考えるけどさ」
「うん」
 
「うちの野球部にしても他の高校の奴ででも、札幌方面に行く奴、結構いるんだよね。それで某高校のキャッチャーやってた奴で、教育大札幌校を受けてる奴から草野球のチーム作らないかって誘われてるんだよね。もしかしたらそのチームに入るかも知れない」
 
「ああ。いいんじゃない? 大学の部活とかになるとマジになっちゃうけど、のんびり趣味で続けるというのもいいと思うよ」
 
「うん。甲子園が終わった後、ずっとマウンドに立ってなかったら、時々すごくボールが恋しくなるんだよ」
「だろうね」
 

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「だけど千里、まだ声変わりが来ないんだね」
「うん。でもさすがに、そろそろ来ると思うよ」
「千里さ、医学的検査を受けて女子と確定したんで、新人戦からは女子選手として出場したって、赤坂から聞いたんだけど」
 
その情報は、どこをどう伝わっていったら赤坂さんに辿り着いたんだろう千里は訝った。
 
「うん、私もよく分からないんだけど、確かに女子選手としてのIDカード発行してもらって新人戦には女子の方で出た」
 
「医学的検査を受けて女子と確定したってことは、既に性転換手術してるんだよね? だったら声変わりも来るわけないよね?」
 
「あの診断は不思議でならないんだよ。私、男なのに」
「なんかそういう千里の言葉って全然信用できないんだけど!」
 
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「私信用ないのかなあ」
「千里は信頼はできるけど、信用はできない」
「あははは」
「千里ってほんとに嘘つきだから」
 

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「彼女とはうまく行ってる?」
と千里は訊いてみた。
 
「ここ2ヶ月ほどはほとんど休止状態。メール交換も1日1通、250文字以内ということにしている」
「お互い受験で忙しいよね。でも彼女も北大志望なんでしょ?」
「うん、一応ね」
 
「ふたりとも合格したら同棲すんの?」
「いきなりしないよ!」
「しちゃえばいいのに」
「だって・・・・まだセックスどころかキスもしてないんだよ」
「奥手だなあ。合格記念にセックスしちゃいなよ」
「う・・・・」
「避妊はちゃんとしてね」
「いや、もしそういうことになった時はちゃんとするけど。千里は彼氏とセックスするの?」
 
「してるよ」
 
なんか残念そうな空気が伝わってくる。男の子って彼女が居ても、他の女の子のことが気になるのかなあ。
 
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「でも、してるってことは、やはり性転換済みなんだ?」
「どうかな」
「あれが無くてもできるんだっけ? まさか後ろ使うの?」
「あそこは使わないよ。私を好きになる人って晋治もそうだけど、ノーマルだからね。私が女の子でなかったら冷めちゃうし、なえちゃうだろうしね」
「僕さ、昔から千里にチンコがある状態をどうしても想像できなかったんだけど」
「うふふ」
 

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翌日3月2日(木)。母が札幌まで行って###銀行に千里名義の口座を作ってくれて、午後学校までその通帳・印鑑を持って来てくれた。
 
「キャッシュカードは後で郵送するって」
「ありがとう。面倒掛けて。これ交通費と口座に入れてもらったお金の分と印鑑代」
と言って母に封筒を渡す。
 
「ありがとう。でもバイトの入金先と聞いたけど、H銀じゃダメだったの?」
「うん。そこ本社が東京にあるんで、都銀かそれに準じる銀行でないとダメなんだって」
「へー。でもどういうバイト?」
と母は本気で心配そうに訊く。
 
「うん。データを入力したりする仕事なんだよ。その作業用のパソコンは無料で貸してもらったし。今はネットがあるから、全国どこででもその手のお仕事できるんだよね」
「あまり無理しないようにね」
 
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と言ってから、母は思い出したように
「そうだ。1日早いけど、誕生日のプレゼント」
と言って手提げ袋を渡してくれた。千里はじわっと来た。母から誕生日のプレゼントもらったのって多分6〜7年ぶりではなかろうか?
 
「ありがとう。開けていい?」
「うん」
 
中身を取り出すと、花柄の可愛いリュックである。デイパックという感じだ。
 
「わぁ、可愛い」
「安物だけどね」
「ううん。こういうの好き」
「修学旅行だからと思って」
「うん。使うよ」
「お前、修学旅行の代金は自分でバイトで貯めたお金で払ったって聞いたけど」
「うん。ギリギリ足りたんだよ」
「ごめんね。全然送金できなくて」
「ううん。こちらは何とかするから、お母ちゃん少し余裕があったら玲羅に問題集でも買ってあげて。あの子、全然勉強してないから、へたしたら地元の公立高校にも落ちちゃうよ。私立高校は授業料高いよ」
「それはまずいわね」
 
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翌日3月3日(土)。貴司が留萌から出て来た。千里は月曜から期末試験だから会えないと言ったのだが、誕生日プレゼントだけでも渡したいからと言って出てきたのである。
 
「ごめんねー。試験前に」
と美輪子のアパートまでやってきた貴司は最初に言った。
 
「ううん。こちらこそちょっとしか会えないのにわざわざ出て来てくれてありがとう」
と言って千里は貴司と握手したが、美輪子が
 
「何やってんの?そこはキスでしょ?」
と煽るので、貴司はちょっと頭を掻いてから千里にキスした。
 
美輪子がお茶を入れてくれる。
 
「で、これプレゼント。誕生日おめでとう」
と言って貴司は小さな箱を渡した。
 
「ありがとう。前回の貴司の誕生日には私、何もあげてないのに」
「まあ、あの時期は恋人ではなかったからね」
「それと、これ少し早めのホワイトデー」
と言って貴司は大きな箱を渡す。
 
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「小さなツヅラと大きなツヅラみたい」
「昔話同様に、小さなツヅラに入っているものの方が高い」
「ほほぉ」
 
「開けていい?」
「うん」
 
それで大きな箱から開けると《白い恋人》である。
「なんか毎年同じものでごめーん」
「ううん。私《白い恋人》好き〜。叔母ちゃんも一緒に食べようよ」
「だったら紅茶入れるね」
 
と言って美輪子はフォションのフレバーティーを入れてくれた。
 
「あんたヴァレンタインは貴司さんにどんなのあげたの?」
と美輪子が訊くと
「巨大なハート型のチョコをもらいました」
と貴司。
「ふむふむ」
「結構ボリュームがあって食べるのに苦労しました」
「うふふ」
 

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「じゃ、小さなツヅラ開封」
と言って千里は小さな方の箱を開ける。
 
「凄ーい!これ高かったでしょ?」
 
LizLisaのハート柄のお財布であった。
 
「お年玉を使わずに取っといたから」
「へー。ありがとう! これ、可愛い!」
 
「千里、シナモロールのお財布使ってるけど、高校生だし、このくらいの持っててもいいかなと思って」
「うん。そうだね」
「もう16歳だもん。女の子は昔なら成人年齢だからね」
「えへへ」
 
「現代でも結婚できる年齢だよね」
と美輪子が煽る。
 
千里は頬を赤らめて少し考え貴司に訊く。
「貴司、いつ帰るの?」
「今日は練習休みだけど、明日はあるんだよね。だから、えっと」
と貴司が言いよどむと
「明日の朝一番?」
と千里は訊く。
「うん、そうしようかな」
と貴司。
 
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「あ、でも私、勉強もしなきゃ」
「昼間、旭川の友だちに会ってくるよ。夕方また来ていい?」
「うん」
と千里は笑顔で頷いた。
 

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期末テストも終わると、校内は少し慌ただしい雰囲気になってくる。
 
3月9日。千里は朝から修学旅行に出かける準備をしていた。昨夜の内に用意しておいた旅行の荷物を再度チェックしてから、朝御飯を作り叔母と一緒に食べていたら、鮎奈から電話が掛かってくる。
 
「千里さ、今日旭川空港でDRKの次のCDに使う写真を撮ろうって話になったのよ。だから女子制服着て来てくれる? ウィッグも付けて。修学旅行の集合時刻は旭川駅8時だけど、その30分前の7時半に集合して、みんなより一足早く空港に移動する。この件は先生の承認済み」
「了解〜」
 
それで千里は男子制服をスポーツバッグに入れ、女子制服を着てロングヘアのウィッグもつけた。念のためショートヘアのウィッグも荷物に入れた。
 
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「あれ?それで行くの?」
と叔母から訊かれる。
 
「うん。なんか記念写真撮るんだって。その後で男子制服に着替えるよ」
「あんた、むしろ女子制服で修学旅行に参加した方がいいんじゃないの?」
「えー? そういう訳にはいかないよ」
 
などと言って出かける。(結局叔母が駅まで車で送ってくれた)
 
千里が着いたのは7:10くらいであったが、すぐにDRKのメンバーが集まる。撮影係として、梨乃の友人の芳香が来てくれていた。それで一緒に空港連絡バスに乗って旭川空港に移動した。そして空港の玄関前に並んで撮影した他、空港のビル内でも数ヶ所で撮影した。また大雪山系の写真も撮っていた。後で合成するのだと蓮菜は言っていた。
 
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「お疲れ様〜」
「芳香ちゃん、ありがとね〜」
「2階の出発ロビーで待っておけばいいって」
 

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