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■女の子たちの修学旅行・高校編(3)

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それで2階に移動した所で、鮎奈から言われる。
「千里、そのスポーツバッグちょっと見せてくれる?」
「え?なんで?」
「いいじゃん、いいじゃん」
と言われるので渡すと開けて中を見ている。蓮菜と京子に留実子も寄ってくる。
 
「ああ、やはり男子制服を持って来ているね」
「うん。みんなが来る前に着替えて来なくちゃ」
「これは没収」
「え〜〜〜!?」
 
「だって千里が男子制服を着ていたら問題多発」
「そうそう」
「だいたい千里、旅行中にトイレはどっちに入るつもりよ」
「えっと女子トイレだけど」
「五分刈りで男子制服を着て女子トイレに入っちゃいけないよね」
「痴漢で捕まるよ」
「それよくやってるけど捕まったことないんだけど」
 
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「捕まったら大変だよ。先生が弁明してくれるだろうけど余計な時間を食ってスケジュールに遅れが出たりしかねない。トラブルは事前に防がなきゃ。あと京都で男女別行動になって西陣織会館に行くでしょ?」
 
「うん。そこでも男子制服を着た子がいたら面倒」
「そうそう。他のお客さんが着替えられないじゃん」
「うーん・・・・」
 
「部屋も女子はホテルの女性専用フロアに割り当てられているから、そこに男子制服を着た丸刈りの子が歩いていたらホテルの人に咎められかねない」
「えっと、私、女子の方の部屋になるんだっけ?」
「千里を男子と同室にできる訳ないじゃん」
「確かに私も男子と同室は困るけど」
 
「ということで、千里は女子制服で参加してもらわなくちゃ」
「ということでこの男子制服は没収ね」
 
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そう言って鮎奈は千里の男子制服を別途用意していたバッグに入れてしまう。その時、千里の男子制服と入れ替えに鮎奈は何かビニール袋を取り出した。中身を出す。
 
「ウィッグ?」
「これは、るみちゃん用」
「えーーー!?」
「その頭だと千里同様トラブルの元だから、この修学旅行の間はちょっと性転換して、女の子になっておいてよ」
「しょうがないなあ。じゃ借りるよ」
 
「あ、つけてあげる」
と言って蓮菜が留実子の頭にセミロングヘアのウィッグをかぶせた。
 
「千里より長い」
「そんな髪の長いるみちゃんって違和感ある」
 
「るみちゃんに、千里の男子制服を着せちゃうという案もあったのだけど、るみちゃんは男湯に入れられないし、男子と同室にもできないから、やはり申し訳ないけど、女の子でいてもらおうということになったんだよね」
 
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「まあ6日間くらい我慢するよ」
 

「ついでに千里の荷物、もう少しチェックしちゃおう」
と言って鮎奈は千里のスポーツバッグの中身を見ている。
 
「あ、リュックも持って来たのね」
「うん。着替えとかはこのスポーツバッグに入れたけど、これを持ってあちこち歩き回ったらきついじゃん。毎日の荷物はそちらのデイパックに入れる。機内やバスの車内にもそれだけ持ち込む」
 
「でも可愛いデイパック」
「うん。お母ちゃんに買ってもらった」
「ふーん。これって女の子用だよね?」
「さすがに男の子はこんな花柄使わないだろうね」
「千里のお母ちゃんって、結構千里を女の子として扱っているよね」
「えへへ」
 
「でも男子制服にこのリュックだと変だったよね」
「そうかな」
「どうかすると、観光地とかで警備しているお巡りさんに、誰か女の子のを盗んだんじゃないかって疑われる所だよ」
「ああ、あり得るあり得る」
「そういうトラブルを未然に防ぐのにも千里に女子制服を着せたのは正解だな」
「うむむ」
 
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「おっ。ショートヘアのウィッグも入ってる」
「撮影でもしかしたらそちらも使うかもと思って念のために持って来た」
 
「へー。龍笛も持って来たんだ?」
「必要になりそうな気がしたから」
「それ、例の40万円したって笛?」
「違う違う。こちらは7000円だよ。プラスチック製」
「それでも結構高い」
 
「五線紙がたくさん入ってる」
「うん。思いついたら曲を書こうと思って」
「へー、カード型のキーボードか」
「音を探すのに便利かなと思って。実は最近いつも持ち歩いている」
 
それは12月に東京に行った時に雑貨屋さんで見かけて買っておいたものである。MADE IИ JAPAИ (原文ママ) という怪しい刻印がある。ボタン電池式(LR43)で1オクターブ半(A-D)しかないが、意外に便利である。
 
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「ミニレターが7枚も」
「彼氏との交換日記か」
「えへへ」
「サロンパスが大量」
「たぶん必要になる」
 
「下着は女の子下着だけだね」
「私、男物の下着持ってないよぉ」
「それで男子として参加しようという魂胆が間違っている」
「そうだそうだ」
 
「こちらのバッグは空港で見送ってくれる教頭先生が預かってくれることになっているから」
と鮎奈は言う。
 
つまり教頭先生もグルか!
 

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飛行機は旭川から羽田まで行き、乗り継いで伊丹まで行く。羽田で乗り継ぎの時にお弁当が配られ、羽田から伊丹まで行く間に食べることになっていたものの、おしゃべりに夢中になってて、伊丹に向けて降下しますという段になって「あ、まだ全然食べてない」などと言う子が結構居た。
 
機材は旭川から羽田はA300-600R, 羽田から伊丹はB777-200だったがどちらも似た座席レイアウトなので、席順はほぼ同じであった。蓮菜・千里・鮎奈・京子と中央の席に4人並び、ひたすらおしゃべりしていた(お弁当はしっかり食べた)。留実子はひとつ後ろの席に孝子・梨乃・智代と4人で並んでいて、気配り抜群の孝子がうまく話題を振って元々口数の少ない留実子にかなりしゃべらせていたようである。
 
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伊丹からはバスで比叡山に行き(機内でお弁当を食べそこねた子はこのバスの中で《山道に入る前に》食べていた)、クラスごとの記念写真を撮った上で、根本中堂でお坊さんのお話を聞いたが、足がしびれる子が続出していた。最初に足のしびれない座り方というのをお坊さんから教えられたものの、それでもみんなしびれていた。
 
その後、京都郊外の旅館に入る。この旅館に3泊する。部屋は本来は4人部屋っぽい部屋に6人単位で詰め込まれていた。千里は蓮菜・鮎奈・京子・留実子・孝子と一緒である。取り敢えず体操服に着替える。
 
食事は各部屋に料理が運び込まれて来た。典型的な日本旅館の食事という感じで、極端な少食の千里、逆によく食べる留実子、偏食の多い鮎奈が入っているものの、気心知れた同士なので適当に料理を融通しながら楽しく食事をすることができた。
 
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「さあ、お風呂行こう」
と蓮菜が楽しそうに言った。鮎奈も何だかワクワクしたような顔をしている。
 
「ボク、寝てようかな」
と留実子が言う。留実子は遠慮のいらない友人ばかりなのでウィッグを外して短髪の頭を曝している。
 
「るみちゃんのウィッグは耐水・耐熱だから、そのままお風呂に行けるよ」
「もっとも今くらいの時間に行くとうちの生徒ばかりだろうから、短髪のままでも問題無いよ」
 
「私も寝てようかな」
と千里は言ったが
 
「千里疲れてるでしょ。お風呂に入った方がぐっすり眠れるよ」
と京子も楽しそうに言う。
 

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それで千里は提案した。
 
「ね、ね、お願いなんだけど。私別に悪いことするつもりもないし、別に隠すつもりもないけど、あんまり騒がれたくもないから、この時間帯は避けて夜遅く入りたいんだけど。多分、るみちゃんも似たような気持ちかな」
 
「うん。ボクとしては自分の身体がそうだから仕方無く女湯に入るけど、実はあまり女の人に自分の身体を見られたくない」
と留実子。
 
「そっかー。るみちゃんとしては女の人に身体を見られるってのは、異性に見られるってことなんだよね」
と京子がそれに理解を示すように言う。
 
すると孝子が言う。
「確かにそうだよね。じゃさ、夜10時すぎてから、この6人で行かない? 何か言われたりした時に、私たちも居た方が弁明しやすいしさ」
 
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すると京子も
「そうだね。じゃ、千里とるみちゃんの実態は私たちだけの胸の中にしまっておくということで」
と言う。
 
「そうだなあ、まあ私は何度か千里のヌードは見てるんだけどね」
と蓮菜。
 
「まあ千里はパンダじゃないしね」
と鮎奈。
 

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それまでおしゃべりしてようということになるが、飲み物が欲しいねという話になり、ジャンケンして孝子と蓮菜で買いに行くことになる。それで全員お金を出していたら、千里の財布に蓮菜が目を留める。
 
「なんか良い財布使ってる」
「あ、LizLisaじゃん」
「可愛い!」
「うん。もらったんだよ」
「誰に?」
「えーっと」
「もしかして彼氏に?」
「えへへへ。誕生日のプレゼント」
「あ、そうか。千里は3月3日が誕生日だった」
「お、ハッピーバースデイ」
「ありがとう」
「でも彼氏も奮発したね」
 
「ね、千里少し前から気になってたんだけどさ」
「うん?」
「千里の携帯に付けてあるストラップ」
「これ?」
「まるで指輪みたいだよね」
「えっと・・・」
「何何?それも彼氏からのプレゼント?」
 
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「うーんとね。これは実は彼とのお揃いなんだよ」
「指輪をお揃いって、まさか」
 
千里が真っ赤になるので、みんな顔を見合わせる。
 
「私たち、結婚しちゃった」
「えーーー!?」
 
「永遠の愛の誓いの印?」
「ううん。私に声変わりが来るか、どちらかが進学か就職で北海道を出るまでの期間限定」
「面白いことするね」
「だって、旭川と大阪とかで遠距離恋愛を維持する自信ないよ、さすがに」
 
「確かに高校生だと厳しいかもね」
「おとなだと毎月飛行機で会いに行ったりするんだろうけどね」
「いや大阪まではおとなでもきつい」
 
「でも彼、大阪に就職するの?」
「分かんない。本人は旭川市内を考えているとは言ってたけど、遠くに行きそうな気がするんだよね」
「ああ、そういう千里の勘って当たるもんなあ」
 
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「だけど声変わりが来るかって、声変わりは来ないはず」
「うん。千里には睾丸が無いはずだから」
「いや、実は卵巣があるのではという疑いもある」
 
そんなことを言われた時、後ろで《いんちゃん》がクスクスと笑ったのが千里は気になった。
 

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お茶を買ってきた後、おしゃべりは続き、結局就寝時刻を過ぎて、11時になってから、6人で一緒にお風呂に行った。人目が少ないしということで千里も留実子もウィッグは外している。
 
「しかし不思議だ。るみちゃんの方がまだ髪長いのに、るみちゃんは男の子に見えて、千里は女の子に見える」
と京子が言う。
 
「まあ中身がそうだからね」
と蓮菜。
 
この旅館は男女の浴場が離れた場所にある。「→女湯」の表示に沿って進み、やがて「ゆ」と書かれた暖簾が見えてくるが男女表示は無い。但しピンクの色になっている(後で男子に聞いたら男湯はブルーらしい)。
 
「色弱の人は間違う危険もあるな」
 
などと言いながら暖簾をくぐって先に進んでいくと、小さなカウンターがあって女性のスタッフが居る。
 
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女の子たちの修学旅行・高校編(3)

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