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■女の子たちの修学旅行・高校編(4)

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「いらっしゃいませ。タオルと浴衣をどうぞ」
 
と言って全員に渡してくれた。千里も留実子も「ありがとうございます」と声に出して言ってそれを受け取った。これは旅行前に蓮菜が2人に提案していたことである。性別によって扱いが変わるような場面で、その性別判定に迷っても声を聞けば女と思ってくれるはず、というのが蓮菜の主張であった。
 
「なるほど。男の人が間違ってこちらに来たらここでお帰り頂くわけか」
という声が出る。
 
「男湯の方にも、カウンターがあるんですか」
と京子が訊いたら
 
「あ、いえ。男性用の浴室はセルフサービスになっておりまして」
と申し訳なさそうに言う。
 
「るみちゃん、男湯には係の人居ないらしいよ」
「うーん。真夜中に突撃してみようかな」
「お客様、危ないことはおやめください」
 
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それで脱衣場に入る。時間帯が遅いせいか、他には客は居なかった。それで安心して千里も留実子も服を脱ぐ。
 
まずは体操服の上を脱ぐ。更に防寒用に着ていたシャツにキャミソールを脱ぐと上半身はブラのみとなる。しかしブラ姿はいつも体育の着替えの時にみんなに曝しているので今更だ。
 
それから体操服のズボンと靴下を脱ぐ。これでブラとパンティのみである。ここまでは着替えの時にクラスメイト全員に曝している。
 
ブラを外す。
 
「へー」
と孝子が言った。このメンツの中で孝子だけが千里の生バストを見たことが無かった。
 
「ちゃんと女の子の胸だね!」と孝子が言う。
「うん」と千里も微笑んで答える。
 
そしてパンティも脱いじゃう。もうここは敢えてタオルで隠したりはしない。
 
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「やはり女の子なんだ!」
と千里のフルヌードを初めて見る、鮎奈・京子・孝子が言う。
 
「千里は病院でも検査されて女の子であることが確認されていたんだから、今更だよ」
と留実子が言う。
 
「そうか女子選手のIDカードもらったんでしょ?」
と京子。
 
「うん、それがなきゃ女子の試合には出られないから」
と千里も言う。
 
「さあ、入ろう入ろう」
と自分もさっさと脱いでいた蓮菜が言い、ぞろぞろと浴室の中に入った。
 

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各自からだを洗ってから、また湯船の中で集まる。浴室にも千里たち以外には誰も居なかった。
 
「今日は飛行機に2回も乗って、距離的に凄い移動だったけど、明日はかなり歩くことになりそうね」
「というか今回の修学旅行って毎日けっこうな距離を歩かされるっぽい。多分明日がそのいちばんかも知れないけど」
 
「実は鍛錬遠足だったりしてね」
「受験に体力は必要だもんね」
 
「でもみんな小学校・中学校の時は修学旅行どこだった?」
「小学校は札幌」
「うちは函館」
「うちは知床半島」
 
という感じで、どうもみんな道内のようである。
 
「中学校でも網走・知床・釧路だった」
「うちの中学は千歳空港を見学だけして、苫小牧・登別・室蘭・洞爺湖」
「うちは旭川・層雲峡・大雪山ロープウェイに上った後、知床五湖・摩周湖・阿寒湖・オンネトー」
「湖ばかりだ」
「いや、それって関東方面からの観光客の人気コースじゃん」
「うちは稚内・野寒布岬・宗谷岬を見てから利尻・礼文、最後は留萌・旭川」
「なんてストイックな旅だ」
 
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「みんな結局北海道から出てない訳?」
 
「道外に出るとお金掛かるもんね〜」
「花野子の中学は東京に行ったらしいよ。《はまなす》で青函トンネル抜けて延々と汽車の旅。帰りは大洗からフェリー」
「ああ、それも体力使いそう」
「飛行機よりは安いかも知れないけど」
 

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「でさ。ここだけの話。他言無用」
と言ってから鮎奈は千里に訊く。
 
「千里さ。正直に言ってよ。身体は手術して直してる訳?」
「直してない。あそこはちょっと特殊な技法で誤魔化してる。御免ね」
「やはり玉だけ取って棒の方は誤魔化してるのか」
「ごめん。玉も取ってない」
「いや、さすがに玉はある訳ない」
 
「おっぱいは本物?」
「うん。このおっぱいは本物。学校では時々この上に偽乳をつけてることもあるけどね」
「ああ。千里のおっぱいって大きい日と小さい日がある気はしてた」
 
「いや、千里は心は女の子だから構わないんだけどさ」
「お医者さんの診断書はホントに謎なんだよ」
 
「でもこうやって千里の身体見てると、完璧に女の子の身体つきだもん。やはり千里は女子選手として試合に出ていいと思うよ、私は」
と鮎奈は言う。
 
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「ボクこそ男子の試合に出たいんだけどねー。お医者さんが君は女だと言うから」
と留実子が言う。
 
「るみちゃんってさ、彼氏がいるから身体を男性化させるのを我慢してるの?」
と鮎奈は訊く。
 
「それは彼の存在を自分で言い訳にしている気はする。多分ボク、恋人がいなくても、男性化させる勇気無いよ」
 
「ああ。そんな気がした。るみちゃんって男の子の部分が大きいけど、女の子の部分も持っているんだよね」
「うん。自分でもそんな気はする」
 
「MTFやFTMの人って、実際問題として男女が混じっている人が多い気がする」
「千里みたいに純粋な女の子って子が珍しいよね」
などと蓮菜が言うが
 
「私も混じっているよぉ」
と千里は主張してみる。
 
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しかし
「いや、混じりっ気が無い」
とみんなから言われた。
 
「でもMTF/FTMでなくても混じっている人は結構いるよね」
 
「私はよく男っぽいと言われるよ」と孝子。
「男みたいにスケベだと言われる」と京子。
「男になったら?とよく言われてる」と蓮菜。
「小学2年の頃までは喧嘩で男の子に負けたこと無かった」と鮎奈。
 
「多分特進組にはそういう子が多い」
「そういう意味ではこのメンツの中で千里がいちばん女らしい」
「ああ、それはそう思う」
 

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2日目はホントに良く歩き回った。
 
朝バスで東寺に行き、その後バスで三十三間堂に移動した後は、そこから清水寺まで歩き、境内を地主神社まで往復した後、三年坂・二年坂を通って八坂神社まで歩く。更に知恩院まで歩いた後、やっと遅めのお昼御飯である。
 
それで一息ついた所で今度は下鴨神社にバスで移動してここの長い参道を歩く(途中の河合神社にも寄る)更にバスで移動して上賀茂神社を見た後、バスで移動して金閣寺を夕日の中で見る。夕日の中の金閣寺は美しかった。この金閣寺でクラス単位で記念写真を撮った。
 
この日はみんなくたくたに疲れていて、もうお風呂にも入らずに寝た子も結構いたようである。千里たちの部屋の6人は12時近くになってからお風呂に入りに行った。
 
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「サロンパスが欲しい」
という声が出た所で千里のスポーツバッグから本当にサロンパスが出てくる。
 
「おお、助かる助かる」
「千里、ほんとに用意が良いね」
 

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「でも千里、今日みたいにたくさん汗掻く日に、あんな長いウィッグ付けてたら、蒸れなかった?」
「うん。私も思った。ショートの方でもいいのに」
 
「なんかね。この髪でお参りしないといけない気がしたんだよ。この髪を付けているのが私の正装だから」
 
「ああ、なんとなく分かる」
 
「でもこのウィッグ作ってから1年弱? 傷んでないね」
「うん。メンテはちゃんとしてるから。週に1回シャンプー、コンディショナー、トリートメントしてるよ。特にトリートメントが大事みたい。キューティクルを維持しないといけないから」
 
「それでか。端の方とか枝毛になってもおかしくなさそうなのに、きれいなままだね」
と言って鮎奈が千里のウィッグに触る。
 
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「うん。端は時々美容用のハサミでカットしてるから」
「ああ、カットしてるんだ。だったら春先より少し短くなってるのね」
「ううん。ほとんど変わらないよ」
「なんで?」
「どうしても伸びてくるからさ。逆に切らないと長くなりすぎるんだよ」
 
「・・・・・・」
 
「ちょっと待て」
「伸びるの?」
「うん」
 
「ウィッグなのに?」
「ああ。これウィッグなのに、私が付けてると、オーラがちゃんとウィッグの所まであるんだって。そのせいじゃないかな」
 
「いや、それは物理学的に有り得ない!!」
とみんな言うが千里は冷静だ。
 
「だって人形の髪の伸びる奴だってあるじゃん」
「それは怪談!!」
 

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3日目は朝から伏見稲荷に行った。
 
まずはここでもクラス毎の記念写真を撮る。
 
「伏見稲荷って何の神様だっけ?」
「伏見稲荷はお稲荷(いなり)さま」
「キツネの神様?」
「キツネはお使いでしょ」
「宇迦之御魂(うかのみたま)の神という神様だよ」
「なんか難しい名前だ」
「でも多分、お稲荷様と呼んだ方が正確。実際ここには五柱の神が祭られている。宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)、佐田彦大神(さたひこのおおかみ)、大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)、田中大神(たなかのおおかみ)、四大神(しのおおかみ)。宇迦之御魂大神はその代表」
「なんか難しい話だ」
 
「稲荷寿司とは無関係?」
「それは油揚げがキツネの好物だから。異説では油揚げがキツネの色に似てるから」
「ほほお」
 
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「お稲荷さんは穀物神だと思うよ」
「キツネが大事にされるのも、キツネは米を食べちゃうネズミを食べてくれるからだって」
「ネズミを食べるのならネコでもいいのでは?」
「ネコは昔は日本にいなかったから」
 
「稲荷の神は伊勢の神宮の外宮(げくう)の神と同じ神とも言われる」
「意外に格が高いんだ!」
 
「商売繁盛の神様でもあるよね」
「デパートとかには必ず屋上とかにお稲荷さん祭ってあるもんね」
「ラーメン屋さんとかも店内にお稲荷さん祭っている所よくあるね」
 
「日本全国のお稲荷さんの数は日本全国の神社の総数を上回っているという説もある」
「ちょっと待て。その話は原理的におかしい」
「多分神社庁に届けられていないお稲荷さんが大量にあるんだよ」
「ああ、そういうことか」
 
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「ここの奥の院の一ノ峰・二ノ峰・三ノ峰を回ってくると、すがすがしい気分になるらしいよ」
「どのくらい掛かるの?」
「私たちの足だとたぶん3時間くらい」
「登山かな」
「たくさんのおキツネ様と戯れるのかな」
「次来た時に挑戦してみよう」
 
などと千里は言ったが、そう遠くない時期に本当に戯れることになるとは千里はこの時は思っていなかった。
 

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伏見を出た後、男子と女子に別れ、男子はトロッコ列車に乗った後、太秦に行くということであった。女子は西陣織会館で十二単(じゅうにひとえ)の着付け体験をした後、嵯峨野に行く。十二単の着付けは各クラス1名(女子クラスの1組のみ2名)ということで、その場でジャンケンして着る人を決めた。千里たちのクラスでは梨乃が勝って着付けしてもらったが「これすごーい」と凄く嬉しそうにしていた。
 
「かなりたくさん着るね。重くない?」
「あまり重くないよー」
 
女子クラスの1名、バスケ部の夏恋は敢えて男性用の束帯の着付けをしてもらっていたが、身長170cmある夏恋は束帯姿が似合っていた。
 
「夏恋ちゃん、並んで写真撮ろう」
などと言われて、十二単を着た他の子全員と並んで記念写真を撮っていた。
 
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