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■女子大生たちの路線変更(7)

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千里は前期に心理学Aという、いわば科学的心理学の講義を取ったのだが、後期では心理学Bという、いわば臨床的心理学の講義を取った。心理学Aでは教官の考え方に納得できないものが多々あった千里だったが、心理学Bの方は大いに共感できるものがあり、教えてくれたT先生を結構好きになった。
 
T先生は理学部数学科の出身ということで、統計学や線形代数の知識が凄まじかった。講義の中には行列の固有値云々とか、因子分析だのF分布だのといった話もチラチラ出てくるので、そのあたりで講義内容が頭の上を飛んで行く学生もいたようである。しかし臨床心理学の分野では意外に昔から数学出身の研究者は多いのである(ユング心理学の大家・河合隼雄などがそう)。
 
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さて、この心理学Bの講義の3回目の時間に心理テストを受けさせられた。
 
別に成績評価とは無関係で、心理テストの仕組みや分析内容などを知ってもらうためだったようだが、検査はPC教室を使い全員1人1台のパソコンを使って選択肢を選んでいくものである。結果は終了後すぐに出るのだが、通常の数値と極端に離れた結果が出た場合、警告サインが出る。
 
千里はその警告サインが5つも表示されたので、わっと思った。8つの軸で検査されているものの内、5つも警告値だったのである。
 
千里の隣の席にいた渡辺君が
「なんか凄いね、これ」
と驚いていたので、先生が回って来て覗き込む。
 
「これ何か入力ミスってない?」
と言って千里が入力したシートを再表示させて見ている。
 
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「うーん・・・特に間違ってないようだけどなあ。というか、君の選択肢をざっと見た感じ、そんなに変な傾向無いのに、なぜこんな警告が出るんだろう?」
などと言って、T先生自身が悩み始めた。
 
そして1分くらい悩んだ末に、先生はある入力値に気付く。
 
「君、性別を入力し間違ってるじゃん。男を選択してるもん。それじゃ異常値になる訳だよ」
 
と言って先生は千里の入力シートの性別の所を女性に修正してしまう。
 
そして結果表示をさせると、警告は1つも出なかった!
 
「男性と女性では心理的な傾向は全く違うから、性別を間違ったら異常値と判断されるよ」
とT先生は笑って言って教壇の方に戻る。
 
渡辺君が
「つまり村山って、男としては心理傾向が異常だけど、女だったら心理的にとってもノーマルなんだ!」
と半ば感心したように言う。
 
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反対側の隣の席に居た佐藤君は「へー」という感じで見ているし、少し離れた席に居た紙屋君が忍び笑いをしていた。
 
そして後ろの席に座っていた友紀は
「そりゃ当然のことだよ。千里は女の子なんだから」
と渡辺君たちに言っていたし、前の席に座っていた朱音も
「まあ千里を少しでも知っている人なら千里の性格がいたって普通の女の子の性格であることを当然知ってるよね」
などと言っていた。
 
「ってか、先生は村山を女子学生だと思ったみたい」
と佐藤君が言うと
 
「実際そうだし」
と朱音・友紀も、そして渡辺君まで言った。
 

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千里は前期では体育はソフトボールを選択したのだが、後期ではサッカーを選択した。
 
最初の時間、授業に出ていくと、
「このクラス、男女半々くらいですね。でしたら男子対女子で試合をしましょう」
と先生が言った。
 
「一応男か女かは見た目で分かるとは思うけど、中には紛らわしい人もいるかも知れないから、ビブスをしてもらいます。男子は黄色のビブス、女子は赤のビブスを付けてください」
 
というので、みんなビブスが大量に入っている箱の中から1枚ずつ取る。千里は男子だしと思い黄色のビブスを取って着用した。
 
それで男子の代表に渡辺君、女子の代表に香奈が指名されてジャンケンをし香奈が勝ったので女子がキックオフすることになる。それで試合開始。。。。
 
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と思ったら先生が笛を吹く。
 
「そこの黄色の14番付けてるベリーショートの女の子」
 
千里は先生がこちらを見ているような気がしたので左右を見回す。14番って誰だ?と思ったら自分だ!
 
「はい?」
 
「君なんで男子のエンドに入ってるの?キックオフ前には、ちゃんと自分のエンドに居ないと反則だからね。だいたいビブスの色を間違っているし」
 
「えっと・・・」
 
「千里、ちゃんと赤のビブスを付けなよ」
と香奈が言うので、千里はまいっか、ということで
 
「済みませーん。間違いました」
と言って、ビブスを交換してくる。そして女子のエンドに入って、香奈がキックオフし、試合は始まった。
 
ということで、この後期のサッカーの授業では千里は女子チームに参加することになったのであった。
 
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10月10日(土)。千葉県クラブバスケットボール選手権の準決勝と決勝が行われる。
 
千里たちの準決勝の相手はフドウ・レディースという20代後半のOL主体のチームで昨年の選手権で2位、今年春のクラブ大会では優勝している。フドウは成田不動から来ているようだ。練習を見た感じでは、どうも実業団OGが複数入っている感じであった。
 
こちらの練習を見て一番強そうな人が千里のマークに付いたが、千里は強い人にマークされるのは、もう慣れっこである。どんなに強い人でも常時こちらだけを見ている訳ではなく、ゲーム全体の流れや敵味方の動きを確認するために一瞬集中が切れる瞬間がある。
 
その瞬間千里は相手の前から姿を消す。
 
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するとそこに麻依子からパスが飛んでくるので、即スリーを撃つ。
 
パスを受け取ってから撃つまでの時間の短縮。それが千里が中学生の頃から現在に至るまでの7年間に遂げた最も大きな進化であった。
 
一方麻依子自身も本気モードになっているので、相手のディフェンスのわずかなほころびを見つけてはそこから制限区域に進入し、どんどんシュートを撃つ。麻依子が撃った瞬間、夢香は中に飛び込んでリバウンドを狙う。
 
結局千里と麻依子の超本気モードが炸裂して、試合は90対60の大差でローキューツが勝利した。
 

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午後からの決勝戦の相手は昨年の覇者・サザン・ウェイブスを激戦の末1点差で破って勝ち上がってきた、フェアリードラコンというチームであった。
 
(そういう訳で昨年の1・2位はいづれも今年は関東選手権への進出を逃した)
 
「フェアリードラゴン」と思わず《空目》してしまいそうだが、元々ゴルフをやっていた人たちで、余技で始めたバスケットの方にハマってしまい、今ではもうゴルフなど全然練習せずにバスケットに打ち込んでいるらしい。
 
キャプテンの人が高校のバスケ部の万年補欠だったという以外は、高校までは体育でしかバスケをやったことがなかったという人たちばかりらしかったが、無茶苦茶強いチームであった。恐らくメンバーの元々の身体能力が凄いのと、指導者も優秀なのだろう。
 
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よく動き回るし、積極的にプレスをしてくる。第1ピリオドはこちらが気合い負けしてしまった感じで 24対16とリードを許す。
 
しかしインターバルでキャプテンの浩子が「自分たちのバスケをしよう」とメンバーに呼び掛け、浩子自身も、夢香も夏美も冷静さを取り戻した。
 
声を掛け合って相手がスティールを狙って近づいて来たような場合に注意を促す。攻撃の時はあまり戦略は考えずに、確実にパスが通る子にパスを繋ぐというのを心がける。無理せず着実にゴールできる所から撃つ。
 
それで第2ピリオドの終わりまでに42対48と逆転に成功する。
 
そして後半になると、プレスのやりすぎか疲れが目立ってきた相手チームに対して、麻依子と千里はスタミナ充分だし、浩子も最近毎朝5km走るトレーニングをこなしているおかげで体力が持つ。動きの鈍くなってきた夢香・夏美を下げて元気の残る菜香子・沙也加を入れて頑張ってもらったのもあり、最終的には67対98と結構な差を付けて勝利した。
 
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こうしてローキューツはこの千葉クラブ選手権を制して、2月に山梨で開かれる関東クラブ選手権への進出が決まった。
 

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「関東選手権は初めてだよ」
「たぶんこないだの関東選抜とはレベルが違う」
「気合い入れて練習頑張ろう」
「でもあまりきついのは嫌」
 
「なんかその練習嫌というセリフをいちばん多く言っているのは千里のような気がする」
と夏美。
 
「ああ、千里は高校の頃も、練習嫌いで知られていたんだよ」
と麻依子が言う。
「えへへ」
 
「でも練習嫌という割りには、かなりハードな自主トレをしているっぽい」
「千里のスタミナって凄いよね」
「40分間の最後の最後でも全力疾走できるんだもん」
 
「まあ私のはバスケの練習じゃないからなあ」
「どんな練習してるんだっけ?」
「雪山を丸一日歩き続けたり」
「今の時期に雪山ってヒマラヤにでも行ってトレーニングしてる?」
 
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「ヒマラヤか。。。先週ちょっとマナスルに行ってきた、なんて言っても信じないよね」
と千里。
 
「いや信じれる気がする。千里が実は男だとか言われるより信じたい」
と夢香が言うと、麻依子が苦しそうにしていた。
 
「あ、そうそう。この大会で2位以上になったから12月6日・12日の選抜には出場しないから、予定表に入れていた人は解除しといて」
 
「了解〜」
 

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千里がファミレスの夜勤に入るのは、原則として火木土の夜である。月水金はローキューツの練習があるし、日曜日は神社で奉仕しているのでそれを外している。但し火木土でも、実際には麻依子と2人で夕方1〜2時間汗を流している。
 
9月中は玲央美も一緒だったのだが、玲央美は勤めていた会社を辞めて、10月から東京の実業団チームで関東2部に属するJJ信金という所に入団した。I種登録なので、システム上はプロ選手ということになる。
 
「プロとはいっても給料安いからなあ」
と玲央美は苦笑しながら言った。
 
「いくらで契約したの?」
「とりあえず来年の3月まで30万」
 
「月30万だとけっこう生活厳しいね。バスケって結構お金掛かるし」
「あ。違うよ。月30万じゃない」
「ん?」
「3月までの6ヶ月で30万」
 
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「うっそー!?」
「じゃ月5万?」
「一応それ以外に出場した試合1つにつき5000円もらえる」
 
「それにしても。どうやって暮らすの?」
「お母ちゃんに泣きついた」
「お母さんも大変ね」
「あとアパート解約して、先輩の家に居候中」
「家賃払えないよね!」
 
「まあ活躍したら給料も上がるだろうし」
 

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10月15日。千里が寝ようとしていたら《いんちゃん》が言った。
 
『千里、明日強制排卵起こすから』
『え?ほんと?』
『こないだ生理が10月5日にあったでしょ?』
『うん』
と千里は手帳の赤い丸を確認して答える。
『このままだと次の生理は秋季選手権のさなか11月2日に来る』
『ちょっと辛いね』
『だから2日早く排卵を起こすから、生理は選手権の前日10月31日になる』
『前日ならいいよ。1回戦・2回戦は万全の体調でなくても何とかなるから』
『11月1日はタンポン使った方がいいよ』
『高校時代、生理の直後なのにナプキン付けたまま試合に出たら外れちゃって大変だった。羽根付き使ったのに』
『バスケットは動きが激しいから』
『でも私タンポン使えるかなあ』
『タンポンよりずっと大きなもの入れてるんだから大丈夫でしょ』
『確かに!』
 
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『但しタンポンって入れる時は小さいけど出す時は大きくなってるから注意して』
『それっておちんちんと逆だね』
 
《いんちゃん》が思わず吹き出した。
 

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『でもさ、強制排卵って以前にもしてくれたよね』
『うん』
『それをやる度に私の生理周期ってずれていくんでしょ?』
『そういうこと』
『そのずれた結果の女子大生の身体を私は高校時代使ってて、その生理周期で生理が来ていたんだよね』
『そうだよ』
『すっごい予定調和!』
『その生理の予定表部分は実は大神様がご自身で千里のプログラムにお書き加えになったんだよ。美鳳さんや安寿さんにもそこまでは分からないから』
 
『私ってプログラムで動いてるのね?』
『うん』
『何だかアンドロイドみたい』
『まあ神様製のアンドロイドだよ』
『むむむ』
 
『だけど排卵って、私、まさか卵巣あるの?』
『まさか』
『うーん・・・』
 
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どうもこの件に関しては《いんちゃん》は口を割らないようである。
 

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女子大生たちの路線変更(7)

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