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■女子大生たちの路線変更(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-09-22
 
東京に戻る途中、朝9時頃、浜名湖SAで休んでいたら母から電話が掛かってきた。
 
「放送大学の合格証が届いていたよ」
「お父ちゃんにおめでとうと言ってたと伝えておいて」
「うん。それで入学金を振り込まないといけないんだけど」
「こないだ送金したので足りなかった?」
「それが実は」
 
と母はとっても申し訳なさそう。
 
「同じ日に電気とガスと水道の引き落としがあって・・・」
 
千里はつい笑いそうになってしまった。
「いいよ。また送るよ。幾ら送ればいい?」
「30万くらい送ってもらったら何とか」
 
それってこないだ送ったのと同額じゃん!おそらくはローンの返済の引き落としとかもあったのだろう。
 
「40万送るから、滞納してるのとかもそれで払える範囲で払って」
「ありがとう」
 
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更に母は何か言いにくそうにしている。
 
「何かあった?」
「実は玲羅のことなんだけど」
「うん?」
「こないだ三者面談に行ってきたんだよ。そしたらさ」
「うん」
 
「今の成績では国公立の大学は無理だと言われた」
「あぁ。あの子、全然勉強しないからねぇ。高校進学の時それでけっこう揉めて本人は勉強しますとは言ってたけど、まあ変わらないだろうね」
 
玲羅は現在留萌市内の私立高校2年生だが、なぜか特進クラスに入っている。
 
「でも私立大学となると入学金とか授業料とかが」
「とっても高いよね」
「どうしよう。いっそのこと、就職クラスに変更しないかと言われたんだけど」
「なんで特進なんかに入ったんだっけ?」
「どうも色々資格試験とか受けるのが面倒と思ったみたい」
「うーん・・・」
 
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確かに就職クラスに入ると大量の資格試験を受けさせられるだろう。
 
「でも本人が大学に行きたいというのであれば入れてあげたら? 私立でも、そんなに高くない所もあるし、名前書けば合格させてくれるような大学もあるし」
「そんな所あるんだっけ?」
「Fランクとかいうんだよ」
「Fランク?」
「東大とか京大はSSランクで他の帝大とかそれに準じる所や早慶がSランク。私の大学はAランク。いわゆる駅弁大学やMARCH・関関同立とかがBランク。遥か下がFランク。実際にはFというのはEの下という意味ではなくてランク付けをしている予備校が不合格者を発見できなくて評価不能という意味なんだけどね」
 
「まーち?かんかん?」
「お母ちゃん、少し受験というものの勉強した方がいい。進学関係の雑誌が本屋さんにあるからさ」
「じゃ今度旭川に出た時に本屋さん寄ってみる」
 
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「私立でも、お嬢様大学みたいな所は高くつくけど、下位の大学は意外とお金かからないんだよ。その代わり授業の品質も微妙」
「でもあの子、難しい授業には付いていけないのでは?」
「うん。だから玲羅にはちょうどいい」
「少し悩んでみよう」
 
「入学金何千万とかでなかったら、私が出してあげるからさ。さすがに私立の医学部とかはやめてよね」
「それは通る頭がないから大丈夫」
 

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そういう訳で、どうも結構お金が必要っぽいしということで、千里はまたバイトを探すことにした。こないだの花火大会の時に香奈がファミレスの夜間勤務が良いと言っていたのを思い出し、コンビニの店頭に置かれているバイト情報のフリーペーパーを取って来て見ていたら、まさに地場ファミレスのスタッフ募集というのが出ていた。
 
千里はそこに連絡した上で履歴書を書き、ポロシャツにジーンズという格好で指定された店舗に出て行った。
 
千里は正直に、授業に差し障りの無い形でバイトをしたいと言い、できるだけ夜間の勤務をしたいと言った。
 
「私中学高校と6年間バスケット部に居て、今もクラブチームでやっているので体力には自信がありますから」
と言う。
 
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面接してくれた店長の横川さんは、そういうハキハキとした千里の言動を好感した雰囲気ではあった。ただ困ったような顔で言う。
 
「僕としては村山さん、凄くいいなと思うんですけどね。実は募集出していたフロア係は女子の枠はもういっぱいになってしまったんですよ」
 
「女子枠って、私男ですけど」
「えーーー!?」
「履歴書にも、性別男と書いていますが」
「え?」
と言って、横川店長は履歴書を見直す。
 
「あ、ほんとだ。ごめーん。僕はてっきり、君、女性かと思っちゃった」
「まあ、よく私、性別間違われるんですけどね」
「なるほどねぇ。確かに男子枠は実はまだ応募が無かったんだよ」
「だったら、やらせてもらえませんか?」
 
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店長は履歴書の住所の所を見ている。
 
「けっこう住所が遠いね。ここへはどうやって通勤します?」
「スクーター持っていますから、それで通勤します」
「ああ、それなら安心ですね」
 

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それで一応検討した上で結果は郵便で通知しますということであったものの、翌々日には仮採用の通知が来ていた。2ヶ月間の試用期間の後、よければ本採用とするということであった。保証人が必要ということだったので母と叔母に頼むことにして、電話で了承をもらった上で、書類を留萌と旭川に送付した。
 
「制服を渡すね。君サイズは何だろう?」
「たぶん男性用ならSで行けるだろうと思います」
 
店長は一瞬千里の《男性用なら》ということばに考えたふうであったが、取り敢えず男性用の制服のSを取り出してくる。
 
「ちょっと着てみて」
と言われたので、男子更衣室に入って着替えて来た。
 
「すみません。上はいいんですが、ウェストがあまりすぎて。でもヒップは少しきついです」
 
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「君、ウェスト何cm?」
「59です」
 
「・・・・79?」
「いえ。59です。実はズボンもいつも探すのに苦労してて。レディスサイズでも63くらいからしか、なかなか置いてないんですよね」
 
それを聞いて店長は女性のスタッフをひとり呼ぶ。シニアクルーのリボンを付けている牧野さんという人だった。
 
「女性用のズボンのさ、いちばん小さいのってウェスト何cm?」
「女性用のSは61ですが」
「ちょっとそれ持って来てくれない?」
「はい」
 
それで牧野さんが持って来てくれた女性用Sのズボンを穿くと、何とかなる感じだ。
 
「こちらの方がヒップが楽です。でも歩いていたらずれ落ちそうなので、ベルトしてもいいですか?」
「うん。じゃ、それと同色のベルトなら」
「用意します」
 
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「でもなぜ女性クルーに男子用制服を着せるんですか?」
と牧野さんが訊く。
 
「あ、この子、一見女の子に見えるけど、男子だから」
と店長さんが言うと
 
「えーー!?」
と牧野さんは言った上で
「ごめん。驚いたりして」
と言う。
 
「いえ、私、いつも性別間違えられるから」
と千里は言っておいた。
 

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それで千里は今月いっぱい昼間のスタッフの多い時間帯にOJTで訓練を受けた上で、10月から夜勤に入ることになった。大手のファミレスなら、きちんとしたマニュアルがあって、システマティックな訓練を受けるのかも知れないがここは千葉県内と一部東京都内・茨城県内に合計15店舗しかない地場中堅のファミレスなので、そのあたりは、かなりアバウトである。まともな指導は基本的な作業の流れ、挨拶のことば、レシピの見方の説明、注文用POTの操作(それも凄く簡単に)など20分で終わってしまい、あとは他の人がしているのを見て分からなかったら誰かに訊いて、ということになった。
 
しかし千里は人当たりが柔らかいので、すぐに上手に接客できるようになる。最初は厨房での補助作業を中心に、手の足りない時は配膳の仕事などをしていたものの、初日も後半になると、むしろお客様のテーブルへのご案内、注文取り、配膳、と接客中心に作業するようになった。
 
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注文を取ってから、厨房の方へ戻ろうとしていたら、60代の男性に呼び止められる。
 
「お姉ちゃん」
「はい?」
「済まないけど、自分のテーブルが分からなくなって」
「ご案内します。こちらへどうぞ」
 
と言って千里はその客をちゃんと自分のテーブルまで案内した。
 
「あ、ここだ、ここだ」
「ごゆっくり」
「お姉ちゃん、ありがとね」
「どういたしまして。あ、お冷やが少なくなっていますね。新しいのお持ちします」
 
と言って千里はいったん厨房に戻り、お冷やを並べている所から1個取ってお盆に乗せ、テーブルまで運んで、そのお客様のと交換した。戻る途中、別のテーブルの客から
 
「あ、ウェイトレスさん、マイルドセブン1つ買って来て」
とタバコを頼まれる。
 
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千里はお客様のテーブルにある箱を見る。
「そちらにお持ちの、アクアメンソール1mgの100sでよろしいですか?」
「うん、これこれ」
 
と言って五百円玉を渡される。それで入口の所に行って自販機に五百円玉を入れ言われた銘柄を選び、(レジの所に1枚置いてある)タスポをタッチして購入する。お釣りとタバコをテーブルにお持ちする。
 
厨房に戻ってから、副店長の芳川さんから言われる。
 
「いい動きしてるね。こういう仕事したことあった?」
「飲食店は初めてです。中学高校時代はずっと神社でバイトしてたんですけど」
「へー。神社も接客業かも知れないけど、飲食店とは全然違うよね」
「そうですね。頑張って仕事の仕方覚えますので」
 
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「うん頑張ってね。でもさっきのは、よくお客様の居たテーブルを覚えていたね!」
「私、人の顔や名前覚えるの得意なんですよ」
「それは凄く接客業向きだよ!」
「スナックのママさんできると言われたことあります」
「うん、できるできる」
 
と言ってから芳川さんは少し考える。
 
「男でもママさんでいいんだっけ?」
「さあ、そのあたりは私も良く分かりません」
「それと、今のお客さん『お姉ちゃん』と言ってたね」
「ああ、だいたい私、女に見られることが多いです」
「ってか、君を見て男と思う人がいるのかどうか疑問を感じるけど」
「ああ、初対面の人で私を男と思った人っていないですよ」
「なるほどねー」
 

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トイレで若干のトラブルがある。
 
千里は一応男を主張しているしと思って男子トイレを使っていたのだが・・・。トイレに入って(当然個室を使用するが)、個室から出た所で男性のお客様が千里を見て「あ、ごめん」と言うと、飛び出していくものの、しばらくして、おそるおそる、またトイレのドアを開ける。
 
「お客様、こちらで合ってますよ」と千里。
「あ、あんた従業員さんか。びっくりした!」とお客様。
 
この手のトラブルが初日に2回、2日目にも1回、3日目には3回発生する。それに気付いた芳川副店長が、女性スタッフのリーダー月見里(やまなし)さんと何やら相談していたが、やがて千里を呼ぶ。
 
「あのさ、君、悪いけど、女子トイレを使ってくれない?」
「えっと・・・」
「どうも君が男子トイレに入る度に、男性のお客様を驚かせているみたいで。まあスタッフは掃除や点検のために男女どちらのトイレにも立ち入ることはあるから問題ないと言えばないんだけどね」
と芳川さん。
 
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「村山さん、女子トイレに居ても全然違和感がない気がするのよね」
と月見里さん。
 
「でも男の私が女子トイレを使ってもいいんでしょうか?」
「スタッフは男女どちらのトイレに居ても変じゃないから」
「ああ、そうですよね」
 
「それに君、男子トイレでもいつも個室を使っているよね?」
「はい。私、個室しか使ったことないですから」
 
芳川さんは少し考えている。
 
「君、実は女性ってことないよね?」
「え? 私、男ですけど」
 
芳川さんは更に考えていた。
 
が、ともかくも千里はこの後、お店では女子トイレを使うことになる。
 

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更に更衣室で大いにトラブる。
 
千里が勤務終了後、男子更衣室で制服を脱ぎ、普段着に着替えようとしていたら、そこに入って来た男性スタッフが「わっごめん!」と言って飛び出していく。そしてすぐに
 
「ちょっと君、こっち男子更衣室なんだけど」
と言われる。
 
「えっと私、男ですけど」
「え?そうだった? ごめーん」
 
ということで入っては来たものの、千里を見て、5秒でドアの方に行く。そして後ろを向いたまま言う。
 
「ね、君、着替え終わったら言って。俺、後ろ向いてるから。むしろ外に出てようか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
 
そんなことが初日・2日目・3日目と続き、4日目には入ってきた男性が後ろを向いてくれている間に別の男性が入って来て、彼もまた後ろを向いていてくれるという異様な状態の中で千里は着替えて
 
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「すみませーん。ご面倒かけまーす」
と言って更衣室を出た。
 

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