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■桜色の日々・中学3年編(6)

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最初、立命館・同志社を巡る標準コースの子たちの乗るバスに同乗させてもらって、この2校を回った。その後別れて同志社から京都女子大に行く。今日のコースは京都市内を西から東に横断する感じだ。
 
「みちるは実際問題としてどこ狙ってるの?」
「うん。同志社女子大もいいなあと思ってるんだけどね」
「今日のコースに入ってない」
「だって遠いもん」
「確かに・・・」
 
「でも女子大の入ってるコースで、ハルは・・・と先生に言われたからセーラー服着せます、ということで納得してもらえたけど、実際問題として入れてくれるのかね?」「それまでに戸籍も女になってれば問題無いんじゃない」
「あれ、20歳まで戸籍の性別は変更できないんだよ」
「不便ね」
「でも身体だけでも直してれば、個別交渉で許可してもらえる可能性もあるかも?」
「どうなんだろうね」
 
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「だけど、受験勉強してる最中に性転換手術とかあり得ないしなあ」
「高校に入る前に手術しちゃったら?」
「18歳以上でないと手術してくれないんだよ。20歳以上でないとダメという病院も多い」「不便ね」
 
「ハルの誕生日って何月だったっけ?」
「5月だよ」
「ってことは高校3年の5月以降なら、一応手術可能か」とみちる。
「むしろハルは赤ちゃんの内に性転換しておくべきだったね」とカオリ。「私は幼稚園の頃から、ハルのことは女の子と思ってたよ」と令子。
 

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この女子大の学食でお昼にする。重箱に入ったお弁当が美味しそうだったので3人ともそれを食べるが、大勢の女子大生でごった返していて、賑やかである。 
「でもそれぞれの大学ごとに何か空気が違うね」
「ああ、それは感じた」
「私、同志社より立命館の空気の方が馴染みやすい気がした」とカオリ。「まあ、庶民的だよね」
「たぶん、そのあたりを感じ取っておくことが、この見学の目的だろうね」
 
「あれ、ハルのお兄ちゃん、同志社じゃなかった?」
「うん。上の天兄(あまにい)ね。天兄にはあの空気が合ってる気がするよ」
「へー」
「基本的には同志社・関西学院(かんせいがくいん)がお嬢様・お坊ちゃま、立命館・関西大(かんさいだい)が庶民的ってところなんだろうね」「なるほど」
 
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「かんせい?」
「ああ。関西学院って『かんさいがくいん』じゃなくて『かんせいがくいん』なんだよ」「えー?そうだったの? 私『かんさいがくいん』と読んでた」
「まあ、直接関わりがある人や地元の人以外は、ついそう読んじゃうよね」
「へー」
 
「ちなみに東京で関学出身です、と言ったら関東学院大学と思われちゃう」
「関東学園大学もあったりして」
「『めいだい』出身と言って、関西じゃ名古屋大学を想像するけど、関東じゃ明治大学を想像するようなもの?」「『きんだい』も大阪周辺じゃ近畿大学だけど、北陸じゃ金沢大学だし」
「同じ漢字で『神大』と書いても『しんだい』と読むと神戸大学、『じんだい』と読むと神奈川大学」「漢字が同じというのなら『長大』は『ながだい』と読むと長野大学か長岡大学、『ちょうだい』と読むと長崎大学」「『しんだい』は信州大学・新潟大学もだよね」
「『じんだい』には仁愛大学もある」
 
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「でも関関同立のポジションは大きいけど、ここの京都女子大もけっこう良いポジションに付けてるよね」「有力私大のひとつだよね」
 
「私、こういう女子大の雰囲気も割と好きだなあ」と私が言うと
「じゃ、やはり大学受験前に性転換しなくちゃ」と言われる。
「うーん。。。。」
 

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お昼を食べた後は京都駅に移動し、JRで吹田まで行って、関大に行く。 
「ああ、ここも雰囲気が柔らかくていいなあ」
「少し立命館と似てるね」
「というより、大阪の町のノリがそのままここにはある雰囲気だよね」
「私、もしここに入ったらジャージで通学しちゃいそう」
「ああ、そういう学生もいそうだね」
「女を忘れた4年間になったりして」
 
「そのあたりは女子大の方がもっとやばいよね」
「ああ・・・それはとってもそうかも。男子の目が無いと凄く適当になりそう」
 

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最後は阪大の豊中キャンパスに行った。
 
令子が何だか目を輝かせている。
「どうしたの?」
「私、ここ好き」
「へー」
「ここに通いたい」
「だったら、かなり勉強しなきゃ」
「うん。頑張る。ここの空気を感じて、やる気出てきた」
「ほほお」
 
「同志社と雰囲気少し似てるけど、緊張感の系統が少し違うよね」
「うんうん。私、こういう緊張感は好き」と令子。
 
「私も、この緊張感いいなと思った」と私。
「ハルは早稲田狙いだっけ?」
「実は内心、一橋か筑波あたりもいいなと思ってる。でもまだそんなことは言えない成績だけどね」「言うだけはタダだよ。東大理3狙いです、と言っておけばいい」
「それ言ったら笑われるよ」
 
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「ハル、人に笑われるのは平気な性格と思ってたけど」とみちる。
「うん、まあ割とそうだけどね」
「むしろ、笑われたりするのを楽しんでるよね、ハルって」とカオリ。「目立ちたがり屋だもんね」
「だいたいセーラー服着たり学生服着たりしてるのも注目されたい心理が働いてる面無い?」「おお、新たな見解だ」
 
「やはりタレントさんとか向きかな」
「会社勤めなら絶対営業向きだよね」
「化粧品のセールスとかしたら、凄い成績あげそう」
「ああ、言えてる。ハルって雑学で、どんな話題にも付いてくしね」
「しかも相手を立てるのがうまい」
「他人とおしゃべりする仕事に向いてるよ」
「ああ、そうかもね」と私は言った。
 

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修学旅行が終わった週末、地元のお祭りがあったのだが、ここで私たちの学校のチアチームにお呼びが掛かった。地元出身で中堅の歌手の里帰りコンサートをこのお祭りに合わせて県民会館大ホールで行うことになったのだが、そのバックダンサーを頼まれたのである。
 
そういう話を家でしていたら、その日たまたまうちに来ていた伯母(母の姉)が「あら、そのコンサートのチケット、私2枚もらったのよ。うちの父ちゃんはコンサートなんて分からんって言ってたし、晴音(はると)ちゃんも出るんなら一緒に見に行かない?」と母を誘う。
「あ、そ、そうね・・・・」
と母は少し焦っていた。
 
当日。公演は2時間ほどであるが、2時間ずっとという訳では無く、途中のブレイクタイムと、アンコールの時という指定だった。チアのメンバーの中にファンだという子が数人居て、サインをもらって喜んでいた。
 
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前半、ノリのいいナンバーを歌っていく。伴奏はいつもこの人の伴奏をしているバンドを連れてきている。ほか、PAも専属の人を連れてきていたが、照明は地元のイベンターが手配した人がしていたようであった。都会でのコンサートなら歌に合わせてみんな手拍子を打つところだが、この公演はチケットを地元の商工会と農協・漁協で配っていることもあり、そういうコンサートに慣れていない田舎のおじちゃん・おばちゃんばかり集まっているので、歌の間は手拍子がなく、一曲終わるごとに拍手が入るクラシック方式だ。手拍子無しでは歌手も少し歌いにくそうな雰囲気。
 
チアチームの中で「ちょっと可哀想」と言っている子もいた。
 
「まあ、田舎だし許してね、ということで」とカオリ。
「これ、アンコールの拍手も来なかったりして」
「あ、アンコールは拍手が無くても、強引にやっちゃうらしい」と真奈。「アンコールという概念自体を知らない観客が多そうだもんね」
 
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やがて前半最後の曲となる。ここに「美保」「粟嶋」「玉造」「黄泉比良坂」など、地元の地名を何個か歌詞の中に読み込んだ歌を歌う。ここで私たちは上手と下手から12人ずつステージに走り込み、歌手の後ろで踊り始めた。全員、赤いポロシャツに白いミニプリーツのお揃いの衣装。色とりどりのボンボンを持って笑顔で踊る。何ヶ所か「ゴーゴー」とか「ヤー!」などといった合いの手も入れる。それまでちょっと歌いにくそうにしていた歌手が、このバックダンスで少し気分良くなった雰囲気だった。
 
途中、右端にいた真奈と左端にいた朱絵が隊列から飛び出して、手拍子を打ち始めると、客席の中にも手拍子を打ち始める客が出て、最後はほんとにノリノリの雰囲気になって、前半のステージが終了した。
 
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歌手が衣装換えのために舞台袖に下がり、バックバンドの人たちも下がるが、私たちは踊り続ける。音楽は録音したものが流れ続けている。私たちは4組に別れてピラミッドを作って、上に乗っている子(私とカオリと2年の彰菜・佐紀)が、そのまま空中で宙返りしたり、中央に大きなピラミッドを作った上で、その前で朱絵と2年生の雪帆が連続後転などのタンブリング技を見せたりすると、客席にかなりどよめきが起きる。
 
最後はハイ・スプリットを2基(トップは彰菜と佐紀)作り、大きな拍手を受けたところでまた左右に分かれて舞台袖に下がる。入れ替わりに歌手とバンドが再登場して、後半のステージを始めた。
 

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後半、私たちは主催者の依頼で、客席の脇の通路に立ち、歌手の歌に合わせて手拍子を打った。すると、それにつられて歌を歌っている最中に手拍子を打つ客が少し出てきて、後半はやっと普通のコンサートっぽくなってきた。どうも若い頃、ライブに行っていた経験のある人たちが観客の中に少しいたようで、その人たちが「手拍子打ちたいけど、打っていいのかな・・・誰も打たないし」という感じで遠慮していたのが、ちゃんと打ってくれるようになった雰囲気だった。それで後半はかなり盛り上がったコンサートとなり、アンコールの拍手もしっかり、テンポ100くらいのゆっくりしたリズムで会場全体が統一された。 
歌手とバンドが再登場する。アンコールのお礼の挨拶をしている間に私たちは客席側から直接ステージに駆け上がり、歌手の後ろでスタンバイした。バンドの人達の演奏が始まるのと一緒に踊り出す。真奈と朱絵は最初から大きな身振りで拍手をしている。会場もしっかり拍手をしている。
 
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そして、私たちのダンスをバックに歌手は2曲歌って、ライブを終了した。 

控え室で、学校の体操服に着替えてから私たちは解散した。カオリたちとおしゃべりしながら帰ろうとしていたら、会場前に母と伯母がいた。きゃー。 
「晴音(はると)ちゃん、どこにいたの? 私全然分からなかった」と伯母。「あ、えっと・・・」
「あ、ハルは後ろの列にいたのよ。赤いポロシャツに白いショートパンツ。前列は女の子ばかりにして男の子は後ろだったから、分かりにくかったわよね」と母。
「うん、まあ」
 
カオリが吹き出しそうなのをこらえていた。実際には私とカオリが前列の中央にふたり並んで、まさに歌手のすぐ後ろで踊っていたのであるが。スポットライトが結構まぶしかったが、なかなか楽しかった。
 
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後日、主催者の方から、その歌手のすぐ後ろに私とカオリがいる写真データを記念にもらった。私は大事に自分のパソコンの中にしまった。なお歌手が下がっていた間の演技は許可を得て顧問の先生が撮影してくれていたので、それもコピーさせてもらって一緒に格納した。
 

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翌週から学校では体育で水泳の授業が始まった。私は小学校の時は水泳の授業は全部見学してしまったのだが(6年生の水泳大会だけ女子水着で出た)中学では、もう完全に開き直って女子用水着を着て、授業に出ていた。もちろん女子更衣室で着替える。
 
「なるほど、そうか」と突然由芽香が言うので
「何?」と訊くと
「ハルって、水泳の授業がある日はセーラー服で出てくるのか」
と言う。
 
「いや、校長先生から女子更衣室使う時はセーラー服でって、釘刺されたし」
と私は言うが
「いや、女子更衣室使う時だけじゃなくて、ハルは、いつもセーラー服を着ていればよろしい」とみんなから言われる。
 
「でもハルの彼氏はハルが学生服を着てる方がいいんでしょ?」
「そうみたい。でももう気にしないことにした」
「ふーん。わりとドライなんだ」
「そうだね。別に好きって訳でもないから」
 
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「好きじゃないの〜?」
「うん」
「それでなぜ付き合ってるのさ?」
「うーん。成り行きというかサービスだよ」
 
「まさか援交ってわけじゃないよね?」
「まさか。お金のやりとりは無いよ」
「あ、でもハルって援交が出来る性格のような気がする」
「うーん。。。そうかな?」
 

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「ハルは本当は森田君が好きなんじゃないの?」
「え?違うよ。私が好きなのは荻野君だよ」
「あ、そっちか!」
 
「荻野君とはデートとかしたことないの?」
「うーん。。。。日時決めて待ち合わせしてってのはしたことないけど、町とかで偶然会って、そのまま少し散歩したり、公園で缶ジュースとか飲みながら話したりしたことはあるよ」「充分デートのような気がする」
「キスは?」
「えっと・・・・したことある」
「あるんだ!」
「セックスは?」
「したことないよ〜! だいたい私、男の子とセックスする機能無いし」
「いや、きのうがなくても、あ・・すならあるよね」
 
「今何か凄く大胆な発言を聞いた気がした」
 

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