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私が女の子に戻ってすぐの頃、大阪の令子から「女の子になったハルを見たい」
と言われたので新幹線で大阪まで行ってきた。
私はてっきり令子も女の子の格好で来るだろうと思っていたのに、男の子の格好で待ち合わせ場所に現れたのでびっくりした。
「すごーい。漢らしい!」
「ふふ。ハルちゃん。今日は僕とデートしよう」
「うん。いいけどね」
令子は私の腕を取って一緒に夕方の大阪の街を散歩した。
「私、もう東京暮らしも1年以上になるけど、東京より大阪の方がほっとする感じだなあ」
「やはり関西の人間の気質が身にしみてるんだよ。東京の人は『この服、1万円もしたんだよ』と友人に自慢するけど大阪の人は『この服たった1000円だったんだよ』と友人に自慢する、と言うね」
「私、『たった1000円だったんだよ』と言うタイプだな」
「ハル、大学出たら大阪で仕事探したら?」
「そうだね。大阪の方が、私の性別にも寛容かも知れないなあ。ってレイはまだ男の子続けるの?」
「ううん。今夜が最後。明日から女の子に戻る」
「ふーん」
イタリアンレストランで食事をした後、レンタカーを借りて令子の運転でドライブした。
「ドライブしながら話していると話題が途切れないよね」と私が言ったが「それはその相手と凄く相性がいい場合だと思うよ」と令子は言う。
「ああ、そういうもの?」
「あるいはどちらかが相手のことを凄くよく考えてくれている場合」
「なるほどー」
「ハルはドライブデートの経験あるんだ?」
「うん。去年の6月頃、少し男の子と恋愛っぽくなったのよね。本格的に進展する前に別れちゃったけど」
「性別問題で?」
「それカムアウトする前に壊れちゃった」
「ふーん。良かったんだか悪かったんだか」
令子は車を郊外の少し派手な外装で横長のホテル?に付けた。
「ね。。。。もしかして、ここって」
「ラブホテルだよ。正確にはこのタイプはモーテルと言うけどね」
「えー!?」
「デートだもん。やはり食事してドライブした後はホテルだよ」
「うっ。そんなこと、昔言われたな」
「そういうデートしたことあるんだ?」
「小学生の時だよ。食事はお好み焼き、ドライブは一緒に電車に乗っただけ」
「ホテルは?」
「そんなとこへ小学生が行けないし、物陰でキスした」
「その話は今初めて聞いたな」
「だって良い思い出だもん」
「優しい男の子だね」
「うん。そう思う」
「さ、お部屋へ行こう、行こう」
「えーっと。。。。」
令子に連れられて駐車場から階段を上り、部屋に入った。駐車場と部屋が直結しているから誰にも会わなくて済む。いいな、こういうの。
「さあ、Hしよう」
「ほんとにするの!?」
「だって今日は僕たちは恋人だからね。但し僕が男の子でハルは女の子だから間違わないでよね。お風呂入っておいでよ」
「うん。じゃちょっと汗流してくる」
私たちは交替でお風呂に入り、ホテルのガウンを着たままベッドに腰掛けた。「さあ、始めようか」と令子が言う。
「えー?」と私は言ったものの、令子は着衣のまま私に抱きつきキスをして、そのままベッドの上に押し倒す。ちょっと、ちょっと!?
「こんなことしてたら本気になっちゃったりしてね」などと令子が言う。私はその言葉でホッとした。本気じゃないってことだよね?
「おちんちんの無い男の子と、ヴァギナの無い女の子じゃ、Hのしようが無いしね」
「そうだよね。安心した」
「でも、ハルは男の子の受け入れ方は研究しておいた方がいいよ。手術前に男の子とHする可能性、けっこうあるでしょ」
「うーん。。。。」
「ヴァギナが無ければ、Aにインサートしてもらうか、あるいは手を丸めた中にしてもらうとか、脇にはさむとか、お口でしてあげるとか、あるいは素股とか」
「なるほど・・・・」
「こういうのは、普通の女の子でも使うテクだよ。特に若い子の中には簡単にはヴァギナを使わせたがらない子もいるしね」
「ふーん」
「おちんちんに見立てたマジックとか筆とか使って研究しておきなよ。ぶっつけ本番じゃ彼氏を気持ちよくさせてあげられないから。彼が気持ちよくなれなかったら、その後の交際に響くよ。やはり女の子とは違うなと思われちゃったら、本気で愛してもらえないもん。女の子と同等、あるいはそれ以上と思わせなくちゃね」
「そうだね。本気でちょっと研究してみようかな・・・・・」
「でも今日は楽しもう」
と言って令子は着衣の上から私の胸やあそこを触る! ひぇー!
でもこれ気持ちいいじゃん!!
「おっぱいは絶対揉まれるし。もう少ししっかり育てなよ。ハル、まじめにホルモン飲んでないだろ?」
「うん。中学生の頃はわりとまじめに飲んでたけど、あまりバスト大きくならなかったから、少し挫折して高校時代はそれほど飲んでない。大学に入ってからは男装生活してたから、かなり量を減らしてた」
「中学時代はタマが付いてたからじゃないの? 機能停止してても付いてるのと付いてないのとでは違うと思う。今のハルの体質なら、ちゃんと飲んでればちゃんと育つよ」
「そうかな・・・・そうかもって気もする」
結局その日は着衣のまま私たちはベッドの上で30分ほどじゃれあった。令子はペニバンを持ってきていて、それを穿いて、私に触らせたり舐めるように言ったりしたが、最後はこちらのアソコの入口に当てられた。
「ここにインサートしちゃっていい?」
と言いつつ、既に先が少しもう中にめり込んでいる。
「いやぁ、やめてー!」
「しょうがないな。やめとくか」
と言ってやめる前に令子はそれを確かに私の中に少し挿入した。きゃー。
「でもさ。僕も今日で男の子やめちゃうから、おちんちん切っちゃう」
と言うと、令子はバッグから大型のカッターを取り出して、ペニバンのペニスに当てた。
「ね、一緒に切り落とさない?」と令子が言う。
「えーっと」
「ハルも遠くない時期に自分の切るでしょ?予行練習」などと言って、令子は私の手を取り、ふたりで一緒に、そのペニスを切り落とした。ポロッとペニスが床に落ちる。私は一瞬、自分のが切り落とされたような錯覚を覚えた。
「ふふふ。ふたりの初めての共同作業」
「結婚式なの?」
「結婚式でペニスをふたりで一緒に切り落とすってシュールじゃない?」
「シュールすぎる!」
「ペニス入刀ですって司会がアナウンスして。あ、そうだ。男の子同士で結婚する時はジャンケンで負けた方が結婚式でおちんちんを切り落とされるなんての、どうだろ?」
「そういうカップルは双方付いてるから楽しいんじゃないの?たぶん」
「かもね。さて、これで私は女の子になれたけど、ハルもちゃんと女の子になれますように、おまじないしようか?」
「おまじない?」
「私のを触ってみてよ。女の子の構造、よく分かってないでしょ?ハル」
と言って、令子はペニバンを脱ぎ、更にはその下に付けていたブリーフまで脱いでしまった。
「えー?でも」
「小さい頃はお互いのずいぶん触ったじゃん。今日は私はハルのをかなり触ったし、ハルも遠慮せずに、私のを触って自分の形をどうしたいのか、しっかりイメージを持った方がいい」
「よし。じゃ、触っちゃうよ」
と言って、私は令子のあの付近に生で触った。ちょっとどきどき。
「あ、そこがクリトリスだよ」
「なるほど・・・・ここ、おしっこ出るところ?」
「うん」
「ここがヴァギナか・・・・」
「ちょっと指を入れてみてごらんよ」
「それはまずいよ」
「私、別にバージンじゃないから大丈夫だよ」
「そうなの?いつの間に・・・」
と言いながら、私は令子のヴァギナの中に少しだけ指を入れた。
「凄く湿ってる」
「興奮したからね」
「あ、そうか。興奮もしたよね」
「普段はそこまで湿ってないよ」
「人工的に作ったヴァギナって、たぶんあまり湿られないよね」
「さあ。私もそのあたりは詳しくないけど。色々やり方はあるんじゃないの?ローション使うとか」
「うん」
「ローションは、手とかAとか素股とかでする時も使うといいと思うよ」
「あ、なるほど!」
「アナル・ホト?」
「へ?」
「その言い方は、こう聞こえるってこと」
「むむむ」
私たちは過激なじゃれ合い、触り合いの後、普通の服に着替えて(令子は『もうおちんちん切っちゃったから』と言って、女物の下着を付けた)時間までお茶を飲みながら、ふつうに会話をした。その後、精算してホテルを出る。
「へー。そのカプセルにお金入れるんだ」
「面白いでしょ?」
カプセルに5000円札を入れてボタンを押すと、カプセルはパイプの中に吸い込まれて行った。ほどなくカプセルが戻ってくると、お釣りの500円が入っていた。
「なんだか楽しい!」
「ね!」
「前にも使ったことあるの?」
「うん。ここじゃないけど、男の子と一緒に来たことあるよ」
「すごーい。私、大学に入ってからはまだHって未体験」
「予言してあげる。ハルは今年中にはこの手のホテルにきっと来るよ。男の子と一緒にね」
「うーん。本気で少しHのしかた、研究しよう」
ホテルを出た後、私が深夜のJR高速バスで東京に戻るので、バスターミナルまで、車で送ってくれた。
「ふーん。女性専用車両のチケットだ」と令子から指摘される。
「私はふつうに電話で予約しただけなんだけど、女性専用車両になってた」
「土日は客が多いから、できるだけ男女を分離したいんでしょ、バス会社も。じゃ、気をつけてね」
「うん。ありがとう。そちらもね」
「あ、言い忘れる所だった」
「ん?」
「8月13日に同窓会やるから」
「同窓会?」
「6年3組のだよ。詳細はメールするね」
「うん。どこで?」
「大阪。帰省する子はそのまま車に分乗するなりJRや高速バス使うなりして帰ればいいしね」
「なるほど」
「来るよね。ってか頭数に入ってるから来てよね」
「了解! その時はもう令子は女の子だよね?」
「もちろん。今夜で男の子はおしまい。おちんちん切っちゃったしね」
「確かにね!」
小学校の6年3組のメンツというのは妙に団結力が高く、これまでも中学や高校の夏休みに集まったこともあったが、高校を卒業してからは初めてになる。どうも大学1年でやると、浪人中の子もいるからというので昨年は見送ったものの、今年はやろうよということになったようであった。
クラス委員だった、みちるは岡山の大学に通っているのだが、彼女がコンサートで大阪に出て来た時、偶然会場で大阪在住の環と会ったことから、具体的な話がスタートしたらしかった。環が同じ大学に通っている木村君と話し、木村君の方で男子の方に連絡が取れるだけ取り、女子の方は、みちる・環から出発して、同じく大阪にいた令子、京都のカオリなどからもつながりのある子にどんどん連絡してということで、32人の同級生の内、30人まで連絡が取れたという。中高生の頃はあまりこの手の集まりに来てなかった子や、私立の中学に進学して中高生時代は交流が途切れていた子まで来ていた。医学部を目指すために2浪中の子も来ていて、みんなに励まされていた。
「でも捕捉率が高いね」
「mixiの利用者検索で4人発見したからね」
「凄っ」
同窓会は8月13日の土曜日午後に大阪で開かれた。帰省する子たちは、そのまま島根に帰ろうということだったが、私は帰省しないつもりだったので、新幹線で東京から大阪往復の予定で行った。
「あれ!?吉岡が女になってる」
と笹畑君に言われた。
「え?なんで?私、ずっと女だったじゃん」
「でも、男に戻ったというか男になったって聞いてたのに」
「それは2ヶ月前までの話だね」と私は答える。
「うん、情報が古いよ」と令子も言うと
「あれ?我妻も男になったとか言ってなかった?」と笹畑君は言うが
「毎朝ヒゲ剃るのは大変だぞと聞いたからやめた」などと答えていた。
「ヒゲって、我妻、男性ホルモンとかやったの?」
「やってない。女をやめる決断はできなかった」
「吉岡は男やめたの?」
「ハルは小学生の頃にもう男はやめてたね」
進平の「どうして晴音は大学に入ったころ男の格好をしてたんでしょうね?」
という問いに対して荻野君はしばらく考えていたようであったが、やがて口を開いて言った。
「ちょっとあったみたいですね・・・・言っていいのかな・・・いいことにしよう。寺元君、優しそうだし、過去のことは気にしないでいてくれそうだし。僕なんかには何も言わなかったんですけどね、どうも高3の秋に失恋したみたいで。それで女の子でいることに自信を失って、卒業間際のころから、男の子の服を着ていることが多くなったんですよね。もう卒業間際だったから、その変化自体に気付かなかった人も多いんじゃないかと思うんですけど」
「ああ、なるほどね。性別を越えるって、元々かなり無理をしているから、ちょっとしたことで自信を失うと、そうなっちゃう時期もあるんでしょうね」
「こんなことも聞いちゃっていいかな・・・・」と荻野君。
「ん?」
「寺元君自身、ひょっとして、女の子になりたいとか思ったことってなかったんですか? こないだもふと感じて、今も微妙に感じるんですが」
「あははははは。それはない、それはない」
「そうですか」と荻野君は少し楽しそうに言った。
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桜色の日々・男の子をやめた頃(4)