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ロバの皮(4)

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憂鬱な気分で、その日からは娘たちも来なくなったので、ひとりでベッドに寝て「おちんちんとも今夜でお別れなのか」などと思っていましたら、枕元に美しい女の人が現れました。仙女でしょうか?きれいな花模様のドレスを着ています。ずっと昔会ったことがあるような懐かしい雰囲気がありました。
 
「あなたは王様と結婚したくないのに、結婚させられようとしていますね?」
 
「そうなんです。困っています。ボクはそもそも女になんかなりたくないのに」
 
「でしたら、こうしましょう。王様に言うのです。私と結婚したければ、空のように明るい青色のドレスが欲しいと。そうでなかったら結婚できないと言ってみましょう。そんなドレスは作れる訳がないですから、きっと王様も結婚を諦めるでしょう」
 
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「やってみます」
 
それで翌朝、ポリーヌは王様の部屋を訪ね、自分が女になって王様の奥さんになる前に作ってほしいものがあると言ったのです。
 
「空のように青いドレスか。分かった。作ってやるから、それができたら、女になって私の花嫁になれよ」
と王様は言いました。
 
しかし取り敢えず今日の手術は延期になり、この日ポリーヌが男の印を取られてしまうことはなかったのです。
 

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昔は衣服に色を付ける染料といえば、黒と赤しかなく、青い染料といえば、東洋で採れる藍とか、アフガニスタンで採れるラピスラズリを粉砕したもの(この場合は顔料)くらいしかなく、青というのは極めて貴重で高価なものだったのです。古くは同じ重さの金や銀と等価交換されたとも言います。
 
それほどの染料は手に入らないだろうとポリーヌは思ったのですが、王様は夜中城の後ろにある家畜小屋に行くと大量の黄金を持って来ました。そしてその黄金を国で一番の仕立屋の所に持ち込み、空のように青い色のドレスを作ってほしいと言ったのです。
 
これは青の染料自体を遠いアジアの地から輸入しなければならなかったので、お金も掛かりますが、日数も掛かりました。しかし3ヶ月後の冬の日、とうとうドレスができあがりました。
 
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王様は仕立屋に褒美をはずむと、嬉しそうな顔をしてポリーヌの所にドレスを持って来ました。
 
ポリーヌはまさか父がそんなものを作ってしまうとは思いもよらなかったので、驚きました。だってとってもお金が掛かると思うのに。
 
しかし見ると物凄く美しいドレスです。こんな素敵な青い色は見たことがありません。ポリーヌは一瞬、このドレスを着て王様と結婚式をあげてもいいような気がしました。
 
「では明日女になる手術を受けてもらって、3ヶ月後の春分の頃に結婚を」
 
しかし女になるのは我慢するとしても、本当に自分の父親と結婚していいのか?とポリーヌは疑問を感じました。それでポリーヌは
 
「明日まで待って」
と言いました。
 
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憂鬱な気分で、ひとりでベッドに寝てあの付近を触りながら「女の子になったら、どんな感じなのかなあ」などと思い、おちんちんを股の間にはさんで、まるで無いように見えるようにしたりしていましたら、枕元に美しい女の人が現れました。慌てて、おちんちんをしまいます。枕元に居たのは、やはり仙女のようですが、3ヶ月前に来た人より少し年上の感じで銀色のドレスを着ていました。この人にも会ったことがあるような気がしました。
 
「あなたは王様と結婚したくないのに、結婚させられようとしていますね?」
 
「そうなんです。困っています。女になるのは我慢しても父親と結婚するなんて」
 
「でしたら、こうしましょう。王様に言うのです。私と結婚したければ、月のように美しく輝く銀に真珠(**)がちりばめられたドレスが欲しいと。そうでなかったら結婚できないと言ってみましょう。そんなドレスは作れる訳がないですから、きっと王様も結婚を諦めるでしょう」
 
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「やってみます」
 
(**)ヨーロッパの場合、真珠は時代によってはダイヤモンドより高価であった時期もある。
 
それで翌朝、ポリーヌは王様の部屋を訪ね、自分が女になって王様の奥さんになる前に作ってほしいものがあると言ったのです。
 
「月のように美しく輝く銀と真珠のドレスか。分かった。作ってやるから、それができたら、女になって私の花嫁になれよ」
と王様は言いました。
 
しかし取り敢えず今日の手術は延期になり、この日ポリーヌが男の印を失うことはなかったのです。
 

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王様は夜中城の後ろにある家畜小屋に行くと2日そこに籠もった後、大量の黄金を持って出て来ました。そしてその黄金を国で一番の仕立屋の所に持ち込み、真珠がちりばめられた銀のドレスを作ってほしいと言ったのです。
 
仕立屋は銀はすぐに貴金属商から買うことができたのですが、真珠の調達に少し時間が掛かりました。当時真珠はアジア方面でしか採れない貴重なジュエリーだったのです。仕立屋は貿易商人に頼み、アラビア半島から大量の真珠を輸入し、それが到着するまでの間に頑張ってシルクのドレスに銀箔を貼っていきました。結局2ヶ月ほど経ってから真珠は到着し、それを服にきれいに縫い付けて、ドレスは完成したのです。それはポリーヌが月のドレスをねだってから3ヶ月経った春の日でした。
 
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王様は仕立屋に褒美をはずむと、嬉しそうな顔をしてポリーヌの所にドレスを持って来ました。
 
ポリーヌはまさか父がそんなものを作ってしまうとは思いもよらなかったので、驚きました。だって凄まじくお金が掛かると思うのに。
 
しかし見ると物凄く美しいドレスです。こんな素敵に輝くドレスは見たことがありません。ポリーヌは一瞬、このドレスを着て王様と結婚式をあげてもいいような気がしました。
 
「では明日女になる手術を受けてもらって、3ヶ月後の夏至の頃に結婚を」
 
しかしもうここまでわがままを聞いてもらったら、女になってもいいかなあという気はするのですが、やはり自分の父親と結婚するというのに抵抗を感じます。それでポリーヌは
 
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「明日まで待って」
と言いました。
 

ゆらぐ心のまま、ひとりでベッドに寝てちんちんにナイフを当て切るまねをしてみます。私って小さい頃から「女の子だったらよかったのに」とか「女の子に変えてもらいません?」とか言われていたし、女の子になってもいいのかもなどと思います。「でも女の子になっても、私ほんとにちゃんとやっていけるかなあ」などと思っていましたら、枕元に美しい女の人が現れました。慌ててナイフとおちんちんをしまいます。
 
枕元の女性はやはり仙女のようですが、3ヶ月前に来た人より更に年上の感じで金色のドレスを着ていました。この人にも会ったことがあるような気がしました。
 
「あなたは王様と結婚したくないのに、結婚させられようとしていますね?」
 
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「そうなんです。困っています。女にはなってもいいけど、父親と結婚するなんて」
 
「でしたら、こうしましょう。王様に言うのです。私と結婚したければ、太陽のように美しく輝く黄金にダイヤモンドがちりばめられたドレスが欲しいと。そうでなかったら結婚できないと言ってみましょう。そんなドレスは作れる訳がないですから、きっと王様も結婚を諦めるでしょう」
 
「やってみます」
 
それで翌朝、ポリーヌは王様の部屋を訪ね、自分が女になって王様の奥さんになる前に作ってほしいものがあると言ったのです。
 
「太陽のように美しく輝く黄金とダイヤモンドのドレスか。分かった。作ってやるから、それができたら、女になって私の花嫁になれよ」
と王様は言いました。
 
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しかし取り敢えず今日の手術は延期になり、この日ポリーヌが男の印を消されることはなかったのです。
 

王様は夜中城の後ろにある家畜小屋に行くとそこに3日籠もった上で、大量の黄金を持って出て来ました。そしてその黄金を国で一番の仕立屋の所に持ち込み、ダイヤモンドがちりばめられた黄金のドレスを作ってほしいと言ったのです。
 
仕立屋は金は貴金属商に頼んで金箔を作ってもらったのですが、ダイヤモンドの調達に少し時間が掛かりました。当時ダイヤモンドはインドでしか採れない貴重な石でした。仕立屋は貿易商人に頼み、インドから大量のダイヤモンドを輸入し、それが到着するまでの間に頑張ってシルクのドレスに金箔を貼っていきました。結局2ヶ月ほど経ってからダイヤモンドは到着し、それを服にきれいに縫い付けて、ドレスは完成したのです。それはポリーヌが太陽のドレスをねだってから3ヶ月近く経った夏の日、母のジャンヌが亡くなってからあと少しで3年経つという日のことでした。
 
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王様は仕立屋に褒美をはずむと、嬉しそうな顔をしてポリーヌの所にドレスを持って来ました。
 
ポリーヌはまさか父がそんなものまで作ってしまうとは思いもよらなかったので、驚きました。だってとんでもなくお金が掛かると思うのに。
 
しかし見ると本当に美しいドレスです。こんな素敵できらびやかなドレスは見たことがありません。ポリーヌはもう、このドレスを着て王様と結婚式をあげてもいいような気がしました。
 
「では明日女になる手術を受けてもらって、3ヶ月後の秋分の頃に結婚を」
 
ポリーヌは答えました。
 
「分かりました。お妃になります。明日手術も受けます」
 
王様は物凄く喜んでいました。
 

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ところが翌日の朝、昨年秋に妊娠したコレットが産気づき、玉のような男の子を産み落としました。ポリーヌは自分の血を継ぐ王子が生まれたことに大いに歓喜します。
 
「よくやった」
と言ってポリーヌはコレットにキスしましたが
 
「王子様、今ポリーヌ様になっているのに」
と言いました。ポリーヌは今、ポールでもポリーヌでも構わない気がしました。
 
男だろうと女だろうと、自分は自分だもん。
 
「この子の名前はあなたが付けてください」
とコレットが言うので
「それでは明け方に生まれたから太陽のような子ということでソレイユにしよう」
「まんまですね!」
「だめかな?」
「いえ、ソレイユでいいですよ。立派な名前です」
 
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コレット付きの侍女リリアは徹夜でコレットを見ていたようなので、しばらく休むように言い、お昼近くまでコレットと2人で話していましたが、ポリーヌは少しずつ父親になった喜びが湧き上がってきました。
 
続いてお昼頃には大臣の娘ソフィが可愛い女の子を産みました。ポリーヌはこの子にも付いてて手を握ってあげました。名前はシエラ(“空(そら)”cielの女性形)にしました。
 
更に夕方には大公の娘バルバラがこちらも女の子を産みました。この子は月が出る頃に生まれたのでルナ、そして夜になって将軍の娘ヴィヴィアンが今度は男の子を産みました。この子にはエトワール(“星”という意味)という名前をつけました。
 
こうしてポリーヌは1日にして王子2人・王女2人の父となったのです。
 
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この騒ぎで、ポリーヌが受けるはずだった女になる手術はうやむやの内に翌日に延期になってしまいました。
 

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興奮した気持ちのまま、ひとりでベッドに寝て「とうとう明日には男の子とはサヨナラして、女の子になっちゃう。頑張らなきゃ」などと思っていましたら、枕元に美しい女の人が3人現れました。9ヶ月前に現れた花のドレスの人、6ヶ月前に現れた銀色のドレスの人、3ヶ月前に現れた金色のドレスの人です。やはり3人とも仙女のようです。
 
「あなたはもう女の子になってもいいの?」
「はい。覚悟を決めました。国民にはポリーヌ王妃が必要なのです」
「だったら王様と結婚してもいいの?」
「父親だというのは忘れて結婚することにします」
 
「ところで、王様がどうやってドレスを作る代金を得たと思う?」
「それは不思議に思っていました。そんなにお金が余っている訳でもないのに」
「実は王様はお城の裏の家畜小屋で、密かにロバを飼っているのです」
「ロバ?」
「そのロバは黄金の糞をするのですよ。その黄金で王様はドレスの代金を支払ったのです」
 
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「そんなことが・・・」
 
「でもあのロバは本当は邪悪な存在です。王様も知らぬことですが毎夜出歩いては人を喰っています。ジャンヌ様が亡くなったのも、あのロバのせいです。あのロバは王様に黄金を与える代わりにその奥方の寿命を吸い取るのです。ですから、ポリーヌ、あなたが王様と結婚した場合、あなたはロバのせいで早々に命を落とすでしょう」
 
「うそ!?」
 
「だから、こうしましょう。王様に言うのです。私と結婚したければ、お城の裏の家畜小屋で飼っているロバの皮を欲しいと。そうすれば王様はみすみす黄金を産むロバを失いたくないからあなたとの結婚を諦め、あなたは死ななくて済みます」
 
「やってみます」
 
「それから、これもあなたにあげましょう」
と言って、花色のドレスの仙女がポリーヌに指輪を渡しました。
 
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「もしあなたに本当に好きな殿方ができて、自分はその人の妻になりたいと思ったら、この指輪を使いなさい」
「この指輪は?」
「それを指に通せばあなたは女になります。痛い手術を受ける必要はありませんよ」
「へー」
と言ってポリーヌはその指輪を填めてみようとしたのですが、入りません。
 
「入らないということは、あなたが本当に好きな殿方はまだ存在しないということ」
 
ポリーヌはその言葉をゆっくりと考えてみました。
 
そして翌朝、ポリーヌは王様の部屋を訪ね、自分が女になって王様の奥さんになる前にほしいものがあると言ったのです。
 
「今度は何が欲しいのだね?」
とさすがに王様は不機嫌そうに言います。ポリーヌは言いました。
 
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「王様は城の裏手の家畜小屋でロバを飼っておられますね。そのロバの皮を頂けないでしょうか?」
 
王様はしばらく考えていました。
 
「分かった。1日待ちなさい」
 
それで取り敢えず今日の手術は延期になり、この日ポリーヌが男の印を取ってもらうことはなかったのです。
 

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そして夕方、王様はポリーヌの所にやってきました。
 
「ロバを殺したら、何か黒いものが多数逃げて行ったよ。あれは邪悪なものだったに違いない。私は欺されていたのかも知れない」
 
ポリーヌは父に母君が死んだのはそのロバのせいだとはとても言えませんでした。しかし同時に巨万の財産を産みだしてくれるロバを殺しても息子である自分を妻に欲しかったのかと思うと、父王の気持ちが少し怖くなってきました。
 
「取り敢えずこれはその皮だ。お前にやるが、これをどうするのだね?」
「ちょっと使い道があるのです」
 
そしてその夜遅く、ポリーヌはこの皮をかぶり、僅かな路銀だけを持ち、王宮を出たのでした。王妃が亡くなって3年経った夏の日でした。
 
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翌朝、侍医が
「姫様、手術の時間です」
と言って、ポリーヌの居室に来ましたが、ポリーヌのベッドはもぬけのからでした。
 
王様は国中におふれを出してポリーヌの行方を捜そうかとも思いましたが、ポリーヌの不在が分かれば国民が動揺するのは避けられません。それで思い留まり、身近な手の者数名に命じて探索させました。しかしポリーヌの行方はようとして知れませんでした。
 
追手となった側近の幾人かが、ロバの皮をかぶった女を見たのですが、まさかそれが国中で最も美しいポリーヌであるとは思いも寄らなかったのです。
 
 
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