広告:ここはグリーン・ウッド (第3巻) (白泉社文庫)
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■シンデレラは男の娘(4)

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手術は30分ほどで終わりましたが、この手術の結果、フェリックス君には立派なおっぱいができました。
 
「すごーい。女の子みたいになっちゃった」
といいながらシンデレラは少し感動しています。
 
「まあ女の子にする手術だからね」
とクロレンダ。
 
「でも痛そうだった」
「痛いだろうけど、今日は何とか我慢したね。来月この続きの手術をするんだろうけど」
 
「まだこれだけで終わりじゃないんだ?」
「一度にやると辛すぎるから2度に分けてやるんだと思うよ。次はいよいよあそこの手術なんだろうね」
「あそこって?」
 
シンデレラが全然分かってないようなのでクロレンダは「うーん」と悩んでから言いました。
 
「今日の手術は女の子にあって男の子には無いものを作ったでしょ?」
「おっぱいのこと?」
 
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「そうそう。だから来月は、男の子にあって女の子には無いものを取る手術をするんじゃないの?」
 
「男の子にあって女の子に無いもの??」
シンデレラは全然分かってないようでした。
 

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その日の夕方、お城では2日目のパーティーが開かれました。この日もシンデレラは姉たちの髪をセットし、きれいにお化粧をしてあげました。
 
そして母と姉2人を送り出した後で、ふと思い出します。
 
「そういえば、エステルさんに、今日も来てねと言われたんだった」
 
昨夜も女の子ではないなんてバレなかったし、今夜も女の子の格好をして行ってみようかなと思います。でも何着て行こうと思いました。昨日は母の形見の服を着ていったのですが、「少し前の流行だよね」などと言われてしまいました。
 
「じゃこちらを着ようかな」
と言って、シンデレラは自分のワードローブの奥から、先日自分で縫ったドレスを取り出しました。端切れを組み合わせて作っているのですが、色の違う布が結果的に切り替えのようになっておしゃれな感じになっています。
 
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それでシンデレラはまたシュミーズの上にそのドレスを着たのです。お化粧もきれいにしてみました。
 
それで出かけようかなと思った時、どこかでガタッという音がしました。
 
何だろうと思って見に行くと、暖炉の上に掛かっていた時計が落ちていました。見てみると時計を掛けていた釘が曲がったようです。それでシンデレラはその釘を抜くと、新しい釘を打ち、そこに時計を再度掛けようとしました。
 
ところが掛けようとした時、この時計が異様に重いことに気付きました。
 
なぜこんなに重いの?
 
と思い、少し振ってみるとカタカタ音がします。なんで?と思って裏のふたを開けてみました。
 
するとそこに何か箱が入っていることに気付きます。
 
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何だろうと思い取り出して開けて見ると、そこには金色の婦人靴と金色の小鳥の形をしたブローチが入っていました。
 
これ・・・お母さんが1度だけ履いているの見たことある。お母さんが自分の結婚式の時に履いた靴だと言っていた。あれを履いていたのも多分誰かの結婚式に出席する時だったんじゃないかな。
 
などと思います。そしてこの時計が動かなくなったのは母が亡くなった後だということにも気付きました。
 
きっと・・・母の遺品を父が箱に入れてこの時計の中に隠したんだ。父はトレカンナと結婚したから、前妻の物を取っておくとトレカンナに悪いと思い、でもこれだけは処分できなくてここに隠したのかも知れません。
 
それでシンデレラは今日はこの靴とブローチを借りようと思いました。
 
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それでその日もシンデレラは歩いてお城まで行きました。衛兵の立っている門をくぐる時はけっこうドキドキするのですが、衛兵は何も言いません。
 
また昨日と同じように庭を通り、階段を登ってお城の中に入りました。そして通路を通り会場の中に入ります。
 
会場は昨日と同様に多数の人がいて、楽団が音楽を演奏し、多数の人が踊っていました。お料理もたくさんあります。
 
料理も美味しそうだなあ。昨日は自分では全然食べられなかったからと思い、少しお料理ももらっておこうかなと思い、料理の並んでいるテーブルに行きかけたのですが、声を掛けられます。
 
「ロゼ」
 
振り向くと、エステルが立っていました。
 
「また来てくれたね。今日の君にはこれをあげよう」
 
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と言って、エステルは従者の持っている袋から、白い薔薇を2本取るとシンデレラに渡しました(*6)。
 

「踊ろうか」
「はい」
 
シンデレラは笑顔で応じて、エステルと踊り始めました。
 
やはりこの人と踊るのは凄く楽〜と思います。ステップが正確なので複雑な動きをした時も、うっかり彼の足を踏みそうになることがありません。安心して動くことができます。
 
ふたりが踊っていると、周囲の噂する声が聞こえます。
 
「エステル様と踊っている子、昨日も来てたね」
「踊りがうまいよね。エステル様もうまいから、ふたりが踊っている様がすごくきれい」
 
「昨日は少し古風な服を着ていたけど、今日のは斬新だね」
「なんか色々端切れをつないだ服のようにも見える」
「いや、それがやはりお金持ちの趣味なんじゃない?」
「配色が凄くセンスいいよ。きっとあれ高名なドレスメーカーさんが作った服だと思う」
「うん。曲線のカットの仕方が凄く大胆だし、美しいカーブを描いているもん」
「あれはかなり技術力の高い洋裁師が裁断して縫製したものだと思う」
 
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それで2曲踊り、休憩タイムになります。それでシンデレラはエステルに礼をして、離れます。そして今日やっとテーブルから小ぶりのサンドイッチ(*7)を取り、女性がするように口元を手で隠して食べました。
 
美味し〜い!
 
やっと食べられた。
 
飲み物は無いかなと思いグラスの並んでいる所に行きます。シンデレラは素直に近くに居る人に訊きました。
 
「これってミネラルウォーターではないですよね?」
 
「それはビールですよ。ミネラルウォーターは向こうにある青いグラスに入ってますよ」
 
「ありがとうございます!」
 
それでシンデレラは今日はちゃんと水を飲むことができました。昨日はワインで酔っぱらってしまったので今日は気をつけようと思います。
 
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それで水を飲んでいる内にまた音楽が始まってしまいました。殿方たちが女性を誘って踊り始めます。それを眺めていたら、
 
「ロゼ踊ろう」
とい声がします。エステルです。
 
「ありがとうございます。でも同じ方と続けて踊っていいのかしら?」
とシンデレラは訊きました。
 
「君が気にしなければ僕は続けて踊りたい」
「ではお供させて頂きます」
 
それでシンデレラは水のグラスを使用済みの所に置き、エステルと踊り始めました。
 
そしてこの日、シンデレラはひたすらエステルとだけ踊り続けたのです。
 
「エステル様、あのお嬢さんが気に入ったみたい」
「ずっと踊ってるね」
 
「他の女性がエステル様に自分で売り込みにいっても断られているみたいだし」
「うん。昨日エステル様と踊ることのできた子でも今日はダメみたいね」
 
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「でもふたりともダンスが上手〜い」
「美男子と美女の組合せだからきれいだし」
 
「あの娘(こ)、昨日は銀色のブローチつけて銀色の靴を履いてた。今日は金色のブローチと金色の靴だよ」
 
「だったら明日は何を着けるのかしら?」
 

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エステルは話術も巧みでした。彼の話はしばしば遠いインドや中国などのことまで及びます。シンデレラの父もインドには数回行っていたので、エステルの話にシンデレラは結構付いて行きました。
 
「君はよく知っているね」
「私の父が何度か貿易でインドまで行っていたので」
「ああ、貿易商の娘さんか」
「でも亡くなってしまったんですよ」
「それは悪いこと聞いたね」
「いえ。いいんですよ」
 
「ロゼは知ってる?中国の更に向こうにジパングという島があってそこは黄金が満ちあふれているらしい」
「それは知りませんでした。中国がこの世の果てかと思ってました」
 
「そのこの世の果ての更に向こうだから、きっと仙人とか仙女とかが住んでいるんだと思うよ」
「わあ」
 
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「そこは家とか道路も全部黄金でできていて、人々が着ている服まで黄金らしい」
「それは凄い。でも黄金の服って重くないですか?」
「重いだろうね!君はやはり面白い」
 
そんなことも話している内にあっという間に時間が過ぎてしまい、広間の時計は11時45分を指します。
 
「ごめんなさい。そろそろ帰らないと叱られるから」
と言ってシンデレラはエステルから離れます。
 
「明日も来てくれるよね?」
「はい。参ります」
 

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それでシンデレラは広間から退出すると、小走りに廊下を進み、宮殿の階段を駆け下りて中庭を進みます。そして門を出た後は、全力で走って家に戻りました。
 
すぐに靴を脱ぎ、ボロ布できれいに拭いて、金色の小鳥のブローチと一緒に箱に納め、時計の中に入れました。時計を元の所に戻します。そしてお化粧を落とし、ドレスを脱いで自分のワードローブの中に入れました。エステルからもらった薔薇は昨日と同様、畑の端、昨日のピンクの薔薇の左側にさして、水をあげました。
 
疲れたのでベッドに入ってうとうととしていたら、トルカンナとクロレンダ・ティカベが帰って来ました。
 
「シンデレラ寝てた?」
「ごめーん。お腹も空いたし寝てた」
 
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今日のシンデレラはお城のパーティーで最初はサンドイッチを食べたものの、その後はひたすらエステルと踊っていたので、結局それ以外は何も食べられなかったのです。何も食べてないのにはひたすら踊っていたのでかなり疲れていますし、お腹も空いていました。
 
「今日も料理をくすねてきたよ」
「ありがとう!」
 
それでシンデレラはティカベが持って来てくれた料理を味わって食べたのでした。
 

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「お姉ちゃんたちは、誰か男の人と踊った?」
「全然」
「誰からも申し込まれなかったね」
「だからひたすらおしゃべりして、料理食べてた」
「それもいいなあ」
 
「あんたも女の子なら一緒に来られるのにね〜」
 
「そうだ。王子様はお気に入りのお嬢さんが見つかったみたいよ」
「へー!」
 
「昨夜最後に踊ったお嬢さんなのよ」
「ふーん」
「今日は最初から最後までずっと王子様はその人とばかり踊ってた」
「凄い。完全にお気に入りになったんだ?」
 
「可愛い子だったね」
「でもどこのお嬢さんだろうねと話してたのよね」
「凄く若い感じだったから、きっと今まであまり表に出してなかったお嬢様なのかもね」
「なるほどー」
 
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翌3月5日、ガバン公の家で、ペルシャの医師が奥方の出来物を取る手術をするので今日も見ない?とクロレンダが誘ったので見に行きました。
 
右のお乳に出来物ができているということだったのですが、今日の奥方は昨日のフェリックス同様、ベッドに手足を縛り付けられ、口にも布を押し込められて手術を受けました。見ていると、医師は右の乳房を全部切り落としてしまいました。
 
「おっぱい取っちゃうんだ!」
「出来物の部分だけ取っても、出来物の悪い成分がその近くにも広がっている可能性があるんだって。だから、おっぱいまるごと取ってしまうのがいいらしい」
とクロレンダは説明します。
 
「でもおっぱい無かったら困らない?」
「たぶん落ち着いてから、昨日フェリックスにしたのと同じような手術をしておっぱいを作るんだと思うよ」
 
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「なるほどー!そうだ。あのおっぱいの所に入れていた丸いのは何だったの?」
 
「特殊な粘土を入れた革袋らしい。触った感触がおっぱいそっくりなんだって」
「粘土なのか・・・」
 
「あんたもおっぱい欲しい?」
「えー?別に要らないよう。僕男の子だし」
「女の子になる気は?」
「うーん・・・・」
 
「そうか。悩むのか」
と言ってクロレンダは可笑しそうにしていました。
 
「あ、そうそう。フェリックスはおっぱいもできたし、もう今日からは女の子ということで名前もフェリシアに変えたんだよ」
「へー!やはり名前も女の子らしくするのね」
「女の子なのに名前が男みたいな名前だったら変だからね」
 
 
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