広告:オトコの娘コミックアンソロジー- ~強制編~ (ミリオンコミックス75)
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■シンデレラは男の娘(1)

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(c)Eriko Kawaguchi 2017-11-10
 
昔ある所に、マニアン(Magnien *1)という貿易商が居ました。彼はアンジェリーナ(Angelina)という女性と結婚し、やがてとても可愛い男の子が生まれました。夫婦はその子にロジェ(Roger *2)という名前を付けました。
 
ロジェは男の子ですが、当時の西洋での一般的な風習に従い、7歳になるまではスカートやドレスを着せられていました。これは昔のズボンは着脱がとても大変で、小さい子供はトイレに行った時に脱ぐのが間に合わないこともあったので、ある程度の年齢になるまではスカートだったのです。
 
またロジェは髪の毛が栗色で天然でカールしており、それがとても可愛かったので、胸くらいの長さの長髪にしていました。それで可愛い巻き毛のロジェがスカートを穿いていると、てっきり女の子と思う人もありました。名前を訊かれて「ロジェ」と答えると、女の子なんだから「ロゼ(Rose *2)」だろうと勝手に思い込まれ、しばしば「ロゼちゃん」と呼ばれていました。
 
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両親も女の子に間違われるくらい可愛いというのに気を良くして、ロジェには本当に女の子しか着ないような可愛いドレスを着せたりしていました。それで結局ロジェは7歳になっても、スカートをズボンに変える「ブリーチング」をしないまま、ずっとスカートを穿かせていました。
 

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ロジェが5歳になった年、マニアン夫妻は家庭教師(グーヴェルナント, gouvernantes)のトルカンナという女性と契約し、ロジェに読み書きを教えるようになりました。
 
昔の上流階級での子供の養育教育は3〜4歳頃まで乳母(nourrice, 英語ではnanny)が行い、5歳くらいからは女性の家庭教師(gouvernantes, 英語ではgoverness)が担当していました。女の子の場合はそのまま女性の家庭教師が12-13歳くらいまで担当しますが、男の子の場合は途中で男性の家庭教師(instituteur, 英語ではtutor)に交代するのが普通です。governessはその家の「雇われ人」ではなくあくまで「契約者」なので家政婦などとは違い、別の所に住んでいて、勉強を教える時だけ通ってきます。食事も他の使用人とは別の部屋で取ります。
 
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ロジェの場合も、4歳の時までは、クレアという名前の乳母にお世話をしてもらいました。しかし5歳になったので、今度は家庭教師を付けることになり、トルカンナと契約したのです。トルカンナはマニアン家から歩いて20分ほどの所に住んでいて、死別した夫との間に2人の娘がいるということでした。
 
初めてトルカンナが家に来た時、彼女は
「素敵なお嬢さんですね」
と笑顔で言いました。
 
「いや、娘に見えるけど、実は男の子なんですよ」
とマニアンが言うと
「ごめんなさい!」
と驚いたような表情で言いました。
 
「でも女の子みたいに可愛いから、女の子に教えるような料理とか裁縫とかも教えてあげてもいいかも」
とアンジェリーナが言うので
 
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「分かりました。ではそういうお勉強もしましょうね」
と笑顔で答え、トルカンナはロジェに読み書き、算数、そして音楽や舞踊のほか、料理と裁縫など女の子にしか普通は教えないようなものも教えてあげましたが、ロジェは結構そういうのが好きなようでした。
 
トルカンナが優しいし、また実はトルカンナはアンジェリーナの親戚にもあたり、結構似た雰囲気を持っていたこともあって、ロジェは、すっかり彼女になつき、楽しくお勉強をしていました。
 

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ロジェの父は貿易の仕事で何ヶ月も留守にすることがありましたが、ロジェは母のアンジェリーナの愛情をたっぷり受け、トルカンナ先生からいろいろ教えてもらって、すくすくと育っていました。
 
「あのぉ、奥様、ロジェ様のブリーチングはどうしましょう?」
「そうねぇ、さすがにそろそろかなあ」
 
などと言っていた、ロジェが9歳の年、母のアンジェリーナが重い病気にかかりました。マニアンはエジプトまで仕事で行っていたのですが、報せを聞いて急いで帰国しました。しかしアンジェリーナは夫の顔を見ると安心したかのように息を引き取ってしまいました。
 
葬儀を済ませてから2ヶ月ほどマニアンは家に滞在していましたが、仕事が溜まっていきます。彼にはペルシャまで行ってこなければならない仕事が控えていました。アンジェリーナが亡くなって以来、トルカンナ先生は仕事の範囲を超えてロジェの世話を色々してくれていました。
 
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マニアンはトルカンナ先生に言いました。
 
「私はロジェを残したまま海外に行くのが凄く不安なのです。トルカンナ先生、ロジェはあなたのことをとても慕っている。もしよかったら、ロジェの母親になってくれないだろうか」
 
トルカンナも奥さんを亡くして沈んでいるマニアンとロジェに同情していて、その気持ちが既に同情の範囲を超えつつあったので、この申し出を受けました。それでマニアンはトルカンナ先生と再婚したのです。
 
「ロジェ、私があなたのお母さんになってあげる。本当のお母さんみたいにはできないけど、頑張ってあなたを育てていくからね」
とトルカンナはロジェに言いました。
 
「うん。僕も泣いてばかりいないで頑張る」
とロジェも答えました。
 
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それでロジェはふたりの結婚式の日、初めてズボンを穿きました。自分ももう男の子として頑張らなければと幼心に思ったのです。
 

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トルカンナはマニアンと結婚すると、それまで自分の家に住まわせていた、2人の娘も連れて来ました。上の娘はクロレンダ(18)、下の娘はティカベ(16 *3)といいました。ふたりもロジェに優しくしてくれて、ロジェもふたりを慕っていました。特にティカベはロジェと相性が良いようでした。また元々トルカンナがアンジェリーナと親戚だったこともあり、ティカベは顔立ちもロジェと似ていました。
 
「じゃお前たち、お父さんはこれからペルシャまで行ってくる。半年帰らないけど、仲良くしててくれよ」
「はい」
とクロレンダ・ティカベとロジェは答えます。
 
「お前たち、ペルシャのお土産は何がいい?」
「そうね。私は素敵なティアラが欲しいわ。女王様みたいなの」
とクロレンダ。
「私はペルシャの素敵なネックレスがあるといいな。貴婦人みたいなの」
とティカベ。
「僕は可愛いドレスがいいなあ。お姫様みたいなの」
とロジェ。
 
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「ちょっと待て。お前は男の子だろ?」
と父は呆れて訊きます。
 
「そうだった!忘れてた」
とロジェ。
 
「忘れるものなの!?」
 
「まだスカート穿いてた頃のことが忘れられないみたいね」
とクロレンダ。
「いっそのこと女の子になっちゃう?」
とティカベ。
「女の子になれるものなの?」
とロジェは訊く。
 
「ペルシャの医者なら、男を女にしたり、女を男にしたりできるらしいぞ」
と父は笑いながら言う。
 
「うーん・・・」
 
「ロジェ、あんたお父さんといっしょにペルシャまで行って、向こうのお医者さんに女の子に変えてもらう?」
とトルカンナ。
 
「どうしよう?」
とロジェが考え込むので
「悩むのか!?」
と父親は思わず言いました。
 
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「まあいいや。ロジェは男の子だから剣か何かでも買ってこようか?」
と父は訊きました。
 
その時、ロジェはふと思って父に頼みました。
 
「じゃお父さん、ペルシャの市場で煎ってない生のヘーゼルナッツ(はしばみの実)があったら買ってきてくれない?」
 
「いいよ。お前料理が得意だし、お菓子か何かにするの?」
と父は言っていました。
 

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それでマニアンはペルシャに出かけて行き、トルカンナには素敵な指輪を、クロレンダには素敵なティアラを、ティカベには素敵なネックレスを。そしてロジェには彼が望んだ通り、ヘーゼルナッツを1袋くれました。
 
マニアンはみんなへのお土産の他に、父が小さな箱をこっそり持ち帰ったのに気付いていました。夜中に父はこっそり家の外に出ると、ロジェの母アンジェリーナの墓の下にその箱を埋め、涙を流していました。ロジェはその父の姿を見て、自分も目に涙を浮かべました。
 

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マニアンはしばらく家に滞在したものの、またお仕事でインドに出かけることになりました。マニアンはみんなに「インドのお土産は何がいい?」などと訊いて出かけました。
 
ところがその3ヶ月後、父の乗った貿易船が暴風雨のため沈没し、父も含めて乗組員が全員死亡したという報せが入りました。
 
ロジェは母が亡くなった上に父までも亡くなったことでショックを受けました。トルカンナもショックでしたが、トルカンナにはしなければいけないことがたくさんできました。
 
荷主などへの補償、亡くなった船員さんの遺族への補償などに駆け回ることになります。そのため、所有していた金貨や宝石の類いはもちろん土地なども処分し、最後は住んでいた屋敷まで売却するハメになります。
 
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住むところまで無くなってしまったのですが、一家に同情した知人が小さな家と少しばかりの畑を貸してくれたので、トルカンナやロジェたちはその家に引越し、畑を耕してギリギリの生活を送るようになります。
 
引越の時、ロジェは母の墓を持っていきたいとトルカンナに言いました。
 
「あんたが自分で持てる範囲でなら持っていっていいよ」
 
と言ったので、ロジェは墓石はとても重たくて持てないので、墓を掘り返して遺骨の一部と、父がペルシャから帰った時にここに埋めた箱を掘りだして持っていき、新しい家の裏手に埋めました。
 
そして埋めた場所の目印になるかなと思い、ペルシャ土産に父からもらったヘーゼルの実を1個埋めました。するとヘーゼルはやがて芽を出し小さいながらも木として育ち始めました。
 
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トルカンナは一連の仕事で疲れ果ててしまい、そのせいもあり自分が苦労した原因を作ったマニアンの息子であるロジェにしばしば八つ当たりしてしまうことがありました。ふたりの姉たちも豊かな暮らしができるようになって快適だったのが一転して以前より厳しい生活になってしまったことから、母親に同調してロジェをしばしば、いじめました。ロジェはトルカンナたちの豹変に困惑し、つい泣いてしまうこともありましたが、家の裏のヘーゼルを見ると、トルカンナさんだって辛いんだよと思い直し、自分も頑張らなきゃと思い直すのでした。
 
引っ越した家はとても狭く、台所の他には居室が1つしかありません。その家に4人分のベッドを入れるのは苦労しました。居室はどう頑張ってもベッドを3つ入れるのがやっとでした。
 
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「ロジェは男の子だから同じ部屋にする訳にはいかないよね」
 
と言われ、居室のベッドにトルカンナと2人の娘が寝て、ロジェは台所の暖炉の傍に置かれたベッドに寝るようになりました。
 
「ここ暖炉の傍だから少しは暖かいし」
と言われたものの、夜は暖炉の火は落としていて、煙突を通して外の冷たい空気が入ってくるので、寒い上にたくさん暖炉の灰をかぶってしまいます。しばしば朝起きた時、灰だらけになっているので、上の姉・クロレンダは
 
「あんたの名前はもうシンダラス(Cinder-Ass 灰だらけの尻 *4)でいいや」
などと言いましたが、ロジェに少しは同情的な下の姉・ティカベは
 
「お姉様、それはひどいわ。もう少し可愛くシンデレラ(Cinder-ella 灰かぶり娘)くらいにしましょうよ」
と言った。
 
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「娘なの〜?」
とロジェは言う・
 
「シンデレル(Cinder-el 灰かぶり息子)より少し可愛い気がするし。本人時々こっそりとスカート穿いてたりしてるし」
とティカベ。
 
「見たの〜?」
と言ってロジェは恥ずかしがりました。
 
しかしトルカンナさんは言いました。
 
「1年の内に同じ家で人死に2人出たら、もうひとり取られてしまうことがあると言います。ロジェまで死んだりしたら私は悲しい。こういう場合の魔除けとして、3年間別の名前で過ごせば無事で居られるという言い伝えがあるのですよ。だから、ロジェ、あなたの名前は13歳になるまではシンデレラということにしましょう」
 
それでロジェはシンデレラと呼ばれることになったのです。
 
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ところでこの暖炉の上の時計、動かないみたいだけど壊れてるんだっけ?」
とクロレンダが言います。
 
「それはマニアンが初めて航海した時に、旅先のアルジェで買ったものらしいのよ。マニアンの遺品も補償金作りのために大半を売っちゃったけど、これはどうせ動かないし、役に立たないから売れないのよね。だからここに掛けておこうと思ってさ」
 
とトルカンナは言いました。
 
クロレンダは
「動かない時計なんて意味無い」
 
と文句を言っていますが、トルカンナが父の遺品を大事にしてくれているのを感じて、シンデレラは最近色々八つ当たりもされるけど、この人もいいところがあるんだな、と思いました。
 

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