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■アレナクサン物語(8)

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【短い解説】
 
『アレナクサン−女になる息子』は民話蒐集家 Lisa Tetzner (1894-1963) が蒐集した民話集の中に見られる『アレグナサン−男になった娘』という物語をベースにリライトしたものです。
 
元々の物語では娘3人(サルマナサン・サマサン・アレグナサン)しかいないアルマン侯が、娘たちに誰か男装して皇帝に仕えてくれないかと言い、姉2人は挫折したものの、三女が男並みに勇気があると認められ、男名前アレグを名乗り、男装で都に行き、皇帝に仕えるというものです。皇帝の危機を救ったりして認められ、皇女(Kaisertochte)のヌヌファル(Nunufar)姫に見初められ、婿にと望まれますが、本人は男ではないので姫と結婚できないと悩みます。姫はアレグが自分の思いを受け入れてくれないので悩み病気になってしまいます。
 
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そしてヌヌファル姫をぜひ自分の息子と結婚させたいと思っていた大臣の奥方が、ライバルを排除しようと、アレグを命の水を取ってくる旅に出します。
 
アレグは途中で鳩が飛んできて羽衣を脱いで美女に変身し、水浴びをするのを目撃し、その羽衣を隠してしまいます。困った天女が「羽衣を返してくれたらあなたに男の印をあげる」と言い、それでアレグは本当の男にしてもらいました(Geschlechtsumwandlung : sex transformation)。命の水も鳩が取ってきてくれました。
 
その後魔女によって石化された町を救うことになります。魔女は「自分は男になった女にしか倒せない」と言いますが、アレグナサンにあっさり倒されてしまいます。
 
最後はアレグが持ち帰った命の水でヌヌファル姫は回復し、アレグも姫の思いを受け入れて結婚するというものです。
 
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石化された町を救い魔女を倒すエピソードは正直な話、とってつけたように付加された感じで、本筋には全く関係ありません。でも民話にはしばしばこういう“本筋と関係無い話”が混入するんですよね。恐らくは元々別の物語のエピソードだったのではと思います。
 
でも「娘が男に変わった時にしか自分は倒されない」と魔女が言う話は、シェイクスピアの『マクベス』で、主人公が占い師に
 
「女の股から生まれた者はマクベスを倒せない」
「バーナムの森が進撃して来ないかぎり安泰だ」
と予言されたものの、どちらも裏切られることになる話と似ています。
 
マクベスを倒したのは、帝王切開で生まれたマクダフでした。また彼は部下たちにカモフラージュに頭に木の枝葉などを乗せたまま移動させたので、まるで森が動いているように見えたのです。
 
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この物語は社会思想社・教養文庫「新編世界むかし話集6ソ連・西スラブ編」
(山室静編著)に翻訳されて収録されており、山室氏はこの物語はテツナーの「メルヘンヤール」という民話集から採ったと書いていますが、どうしてもLisa Tetznerの著作の中にそれらしきタイトルの本を見つけることができませんでした。
 
この物語はその後、イラストレーターでやはり民話蒐集家である Helga Gebert のイラスト付き本 Woher und wohin? - Maerchen der Frauen (どこからどこへ?女の昔話)という本の中にも収録されています↓Amazonのリンク
https://www.amazon.de/dp/3407800371
 
(収録話:Der Mond und das Maedchen, Die Himmelsfrau, Aregnasan, Zottelhaube, Umtschegin und die Schwanenmeedchen, Des Nebelbergs Koenig.)
 
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この物語をできるだけ原典に近い形で読むには現時点ではこの本を買うしかないようですが、私もまだ入手していません。
 
テツナーはアルメニアの民話として蒐集したようで、ゲバートも同様にアルメニアの民話としていますが、この情報にどの程度の正確性があるのかは不明です。多分アルメニアまで行って調査しないと分からないでしょう。
 
私は高校時代に学校の図書館でこの物語を読んでドキドキしました。それはもっと大きなハードカバーの世界民話集の中にあったのですが、その本は既に絶版になっていたので、入手できる本がないか調べていて、上記・山室静さんの世界民話集の中にも収録されていることに気づき本をゲットしました(もしかしたら最初に読んだのはこの本のハードカバー版か何かだったかも)。この本は現在紙の書籍でも中古なら入手可能ですし、Kindleでも読めるようです。
 
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このアレグナサンの物語の類話に、インドの昔話で、やはり娘が男装して王に仕え、姫と結婚してくれということになるというのがあります。その物語では、暴走する馬車が池に飛び込んだ時、その水を浴びた主人公の性別が変わってしまい、無事姫と結婚できる身体になったというもので、単純な筋になっています。
 
どちらの物語も性別が変わる時に水が関与しています。アレグナサンの物語では水浴びしていた天女の羽衣を隠しますし(意地悪された天女が色々してくれるという筋立てが私には納得できない)、インドの物語では池に突っ込んで性別が変わります。
 
きっと、いったん子宮の中に戻ってリセットされて性別が変わるというシンボリズムなのでしょう。水は羊水の象徴だと思います。アレグナサンの物語では、主人公の代わりに天女が水浴びしているのでしょう。
 
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しかし水に入ると性別が変わるというと、早乙女乱馬もですね!
 

先日から何度も書いていますが、女の子だったはずが男に変わってしまうというのは、多分昔から時々発生していたと思われる、5α還元酵素欠損症ではないかと思われます。
 
中国の古典には、女が男に変わるのは吉兆だが、男が女に変わるのは凶兆であると書いたものがあります。更にこのようなことも書かれています。
 
献帝の建安七年(202年)、越雋(四川省)で男が女に変わった。その時、周翠が意見をたてまつり、かつて哀帝のころにもこのような異変があったが、これは革命が起こりそうだという前兆であると述べたが、建安25年になって果たして献帝は帝位を奪われ、山陽公に封ぜられたのであった。
 
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(昔図書館で見かけてコピーを取っておいたのですが、何の本のコピーか記録するのを忘れたので原典不明!)。
 
こういうことが中国の古典に書かれているということは、昔から、女が自然に男に変わったり、男が自然に女に変わってしまうことは、割と時々起きていたのではないかと思います。
 
男性の女性化はよく分かりませんが、完全な女性化でなくてもよければ、アロマターゼ過剰症などの例もあります、中国の“都市伝説”縮陽(ペニスが小さくなっていき最終的には消滅する病気)なども、ひょっとしたら、アロマターゼ過剰症なのかも知れません。(肥満による陰茎埋没+糖尿から来る勃起障害という説もある)
 
そもそも中国の古典の話は、陰陽五行説に基づくもので、女(陰)が男(陽)に変わるのは、陰転じて陽になる事例で国の勢いが付いていく時期だが、男(陽)が女(陰)に変わるのは、陽転じて陰となる事例で国の勢いが落ちていく時という解釈なのでしょう。
 
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しかし易歴40年の私に言わせれば、陰陽は元々対になるもので、どちらがよい、どちらが良くないということはないと思うのですけどね。だからこそ、陰極むれば陽に転じ、陽極むれば陰に転じるのでしょう。夜がふけていけばいつか朝になり、昼がすぎていけばいつか夕方になるのと同じだと思います。
 

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私はこの物語を男女逆転させて、男の子が女に変わり、王子と結婚する話を書こうとして2000年に合計400行ほどの文章を書いて途中まで配信していましたが、挫折しました。ずっと気になっていて、あれの続きを書きたいと思っていたのですが、数年前当時の途中まで書いた文章を見たら、あまりにも稚拙すぎて、使い物にならないと判断しました。それで完全に新しく書き直す機会を狙っていました。
 
元々の発端は“アレグナサン”という名前を「“あれ”を無くそう」ということでアレナクサンと改変しようという思いつきから出発しています。父親の名前がとても怪しいですが、“アルマン侯”というのは、山室版の通りの記述です。別に“あるマンコ”と掛けた訳ではありません。山室版ではアララト山になっていましたが、現地名に従ってアール山と書き改めています。
 
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山室版との名前対照
 
長女サルマナサン→長男サルマナス(女装名サルマナサン) 
次女サマサン→次男カムソン(女装名カマサン−おかまさん?) 
三女アレグナサン(男装名アレグ)→三男アレグ(女装名アレナクサン) 
ヌヌファル姫→ファルマー皇子
 
サマサンをカマサンに変更したのは、長女がサルマナサン、次女がサマサンというのでは、次女の名前が長女の名前の亜流になっており適当すぎて可哀想と思ったからで、サ行をカ行に変更して、立派なおカマさんになりました!
 
なお、今回のリライトで登場した多数の固有名詞は、アルメニアやトルコの俳優さん・女優さんの名前を借用しています。
 
アルチンの名前は、ロシアの伝説的な女勇者アルティン・アリーグから採っています。アルチン・アルマンで両性具有になる!?
 
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