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そして2人は気がつくと、コンスタンティノープルの宮殿前にいました。
2人は驚いたものの、すぐに皇帝の執務室に行きます。
「おお、お前たち無事、戻って来たか!」
と皇帝は大喜びで2人を歓迎しました。
「あの後、私は皇子から酷く責められていたぞ、かよわい娘をそんな遠い所にやるなんてと」
「私たちは元気です。それより早く、この“命の水”を皇后陛下に」
「うむ」
それで皇帝の案内で2人は皇后の居室に向かいます。看病していたグルセがアレナクサンの顔を見てびっくりしています。
皇后はかなり衰弱していて、このままではあと1月ももたなかったのではとアレナクサンは思いました。しかし、アレナクサンが皇后に命の水をグラスに注いで飲ませますと、皇后の顔にみるみる内に赤みがさしてきて
「あ、私少し調子がいい」
とおっしゃいました。
「おぉ!」
妹のグルセも驚いています。
「この水をくださった方によると、水は1日グラス1杯くらいずつ飲ませなさいということでした。あまりにも急に回復させると、身体がその変化に耐えられないそうです」
「分かった。グルセよ。そなたがこの瓶は管理して毎日グラス1杯飲ませなさい」
「はい。かしこまりました」
「グラス1杯ずつなら、一週間くらい持つかな」
とアレナクサンは言ったのですが、不思議なことにこの瓶の水は1日置くといつの間にか増えていて、皇后は毎日グラス1杯の水を飲むことができました。そして1ヶ月ほどの間にずいぶん体調を回復させて歩けるほどまでなったのです。
「グルセ様。キリマ・ンジャロの麓の王国で、ゲンコ閣下のお母さんの弟さんが国王をなさっていて、王からお母さまに手紙を言付かりました」
「あ、その話、あなたたちが出発した後に義母から聞いて、私もびっくりした」
とグルセも言います。
それで手紙はグルセが預かり、義母(ゲンコ・アカイ大臣の母エリエ)に届けることになったのです。
アレナクサンはいったん自室に戻ります。2人が無事戻って来たのを見て、ザベルは泣いて喜び、カリナとまず抱擁し、その後でアレナクサンとも抱擁します。
「あれ?アレナクサン様、身体の感じが違う」
「えへへ、私女の子になっちゃった」
「女になる手術を受けたんですか?」
「手術を受けたんじゃないんだけど、女神様と遭遇して、女の身体に変えてもらったんだよ」
「へー、そんなことがあるんですか?」
「旅の話はまた後で」
「皇太子殿下がお待ちですよ」
「うん」
それでアレナクサンは長旅で汗も掻いているので、お風呂に入らせてもらい、カリナが垢などをこすって落としてくれました。カリナ自身もザベルとお互いに垢すりをしています。
そしてお風呂からあがると、たっぷり良い香水も付け、あのブルーのドレスを着ました。
そしてカリナとザベルに付き添ってもらい、皇太子殿下の部屋に行き、謁見します。
「心配したぞ。お前たちが出発してから話を聞いて、私は随分皇帝をなじった」
「はい、そのように聞きました」
「よく無事で戻った。私は本当に嬉しい」
「お心掛け頂いてありがとうございます」
「私の妻になってくれるよね?」
「もちろんです。殿下」
それで殿下が強く望むので、“本番”は結婚式の日までとっておくことにして、その夜は“何もしないまま”アレナクサンは皇子に添い寝したのです。
「ちょっと触るくらいはいい?」
「入れなければ」
「入れたいなあ」
と言いながら、皇子はアレナクサンのあの付近に随分触っていました。
きゃー。こんなことまでされるのかとアレナクサンは焦りましたが、女の身体になって良かったぁと思ったのでした。カリナに教えられた通り、殿下のアレを舐めてあげたら殿下はものすごく喜び、あっという間にアレナクサンの口の中で逝ってしまいました。その夜はそれだけで殿下も満足してくれたようでした。
皇帝は翌日、皇子とアレナクサンの結婚を発表しました。結婚式は、父のアルマン侯も都に呼んで、3ヶ月後に行われることも発表されました。
仲の良い、アイセ姫・ネシア姫が、アレナクサンを改めて祝福してくれました。
「キリマンジャロまて行ったと聞いてびっくりしたけど、よく無事に戻ってきたね」
「神様の加護があったんだと思う」
「そうでもないと、厳しい旅だよね」
自分の娘を皇子の妻にと画策し、夢枕に天使が立ったなどと称してアレナクサンを遠い旅にやったグルセは、アレナクサンが取ってきてくれた“命の水”であと何日もつかという状態だった姉が回復するし、義母が40年ぶりに弟の国王と連絡が取れて喜んでくれたしで、アレナクサンに頭があがらない状態になりました。グルセはアレナクサンと話しました。
「色々変なことしたりしてごめんね。私、あなたに借りを作っちゃった」
「頭をあげてください。とにかく皇后陛下が回復なさったのはよいことです」
と言う。
そしてアレナクサンはカリナ・ザベルと話し合ったことを言ってみました。
「グルセ様、私は王宮に後ろ盾とかが無いのです。もしよかったら色々教えて頂けませんか」
「もちろん!」
グルセとしては、この娘と仲良くしていれば、息子(フルバ姫の兄)の出世も期待できるという計算です。
それで結局大臣一派が、アレナクサンの後ろ盾になってくれることになったのでした。
長男のサルマナスに領地を託して、アール山麓の領地から駆けつけて来たアルマン侯は、アレナクサンが皇子と結婚するという話に戸惑いを隠せないようでした。
「お前、男なのに、皇子の嫁になれるの?」
「父上、私、女に変わってしまったんですよ」
と言って。アレナクサンは父に自分の胸を触らせました。
「信じられん!そんなことがあるものなのか」
「きっと神の思し召しなのでしょう」
とアレナクサンは微笑んで言いました。
「アレもナクなったの?」
と父は小さな声で訊きます。
「もちろん。あんなのが付いてたらお嫁さんになれませんから。男の印が無くなって、女の印ができたんですよ。見ます?」
「いや、いい!」
と慌てて言った上で父は確認しました。
「だったら、お前、皇子と契れるんだな?」
「はい。契れるはずです」
カリナがアルマン侯に言います。
「アレナクサン様はアレがナクなって、ちゃんと女の形になっています。お風呂に入る時にお世話しておりますよ」
それを聞いて、アルマン侯も安心したようでした。
「いや。結婚するという話になって男とバレたら、私もお前も死刑になるかと思ったよ」
「大丈夫ですよ。ご負担をおかけしますが、これからも父上にはご支援お願いしますね」
「ああ、できることは何でもするよ」
とアルマン侯は言いました。
アレナクサンは、大臣様やその奥様たちが自分たちを支援してくれると言っていると言いました。するとアルマン侯も、
「うん。王宮内にそういう後ろ盾がないと、こういうのは辛い。後で会わせてくれる?挨拶しておきたい」
「では昼食後にでも」
アルマン侯と一緒にシベル叔母様も来てくれたのですが、アレナクサンに
「もしかして女になったの?」
と訊き、アレナクサンが
「そうなんですよ。女神様のおかげです」
と言うと
「見せて見せて」
といい、アレナクサンに下半身の服を脱がせて、お股をしっかり観察しました。
「すごーい。きれいに女の子になったね」
と言って、わざわざ開いてみて、あそこを触ったりしますので
「叔母様、恥ずかしいよぉ」
とアレナクサンは声をあげました。
「穴はちゃんとあるかな」
と指を入れようとするので
「アレナクサン様はまだ処女ですのでご勘弁を」
とカリナが言い、止めました。
「まだ皇子様に抱いてもらってないの?」
「結婚式の夜に本番をすることになっています」
「結婚前にちゃんとセックスして相性確認しなきゃ」
と叔母様は過激なことを言っています。
「殿下の笛は吹かせて頂いたのですが」
とアレナクサンが遠回しの表現をすると
「あんた笛は大得意だもんね!」
と叔母様は笑顔で言いました。
(日本では尺八と言うが、英語にも blow job という表現がある。漢字熟語では吸茎)
叔母様には頂いたブルーのドレスを着た所も見せましたが、
「凄く似合ってる!奮発して良かった」
と喜んでいました。
結婚式は各地の領主たちが列席して、盛大に行われました。皇后も“命の水”のおかげで、すっかり元気になり結婚式に出席しました。
ちなみに、それまでいくら使っても翌日までには元の量に戻っていた“命の水”の瓶が、皇后が完全に回復すると、無くなってしまいました。
アレナクサンは特注の純白のドレスを着て結婚式をし、披露宴では例のブルーの美しいドレスを着ました。外国からのお客様もたくさん来ていました。
キリマ・ンジャロ麓のあの王国の王も結局、姉と会うのも兼ねてきていました。王はまだ15-16歳くらいの若い奥さんを連れていました!(多くの人から孫だと思われていた)
披露宴では、皇子のウードとアレナクサンの横笛の合奏、皇子の伴奏によるアレナクサンの歌唱、更にはアレナクサンのハープシコード演奏なども披露し、列席している諸侯や外国からのお客様たちの耳を楽しませました。
宴自体は3日3晩続くのですが、皇子とアレナクサンは途中で退席し、休ませてもらいます。(アルマン侯やシベルが代わりにたくさん諸侯に挨拶して回る)
「やっと君を僕の物にできる」
「私はパーティーで選んで頂いた時から、既に殿下のものですよ」
「でも君はすぐ逃げて行きそうで」
「だったらしっかりつかまえていて下さいね」
それで皇子はアレナクサンにキスしました。ふたりで一緒にベッドに入ります。
「服は自分で脱いだ方がいですか?殿下が脱がせます?」
実はこれまでふたりは数回同衾しているのですが、いつも着衣だったのです。
「実は僕も女性との経験が無いから、女の服の仕組みがよく分からなくて」
「だったら自分で脱ぎますね、殿下」
「殿下はやめてよ。アリムでいいよ」
「分かりました。アリム」
それでアレナクサンはベッドの中で服を脱ぎました。皇子も既に裸になっています。
「いいよね?」
「もちろん」
それでアリムはアレナクサンを抱きしめ、乳首を舐め、あのあたりを指で刺激します。ここまではいつもされています。そしてアレナクサンが気持ちいーと思っている内に彼は入ってきました。
アリムが入ってくる時「痛い」と思いましたが、これは我慢します。アリムが頑張っています。アレナクサンはカリナに言われた通り“締める”感じを保ちました。そして生まれて初めて体験するその感触にドキドキしていました。
やがてアリムはアレナクサンの中で逝ってしまいます。これまでお口の中や手の中では逝っていたものの、あそこの中で逝くのは初めてです。
アレナクサンはアリムが脱力して身体を自分の上に乗せてきたので、重い!と思いながらも、彼の背中を撫でてあげました。
カリナおよび、皇子の側近侍女が、2人が結ばれた時刻を記録します。2人で目を合わせて一緒に部屋の外に出ました。
10ヶ月後、アレナクサンは玉のような男の子を産みおとしました。いきなりの世継ぎ誕生に、皇帝も皇子も、そしてアルマン侯も大喜びでした。
「いや、娘は小さい頃から、自分が結婚したいと思うほどの可愛い娘でしたよ」
と皇帝とワイングラスを交わして語るアルマン侯は、すっかり脳内で“わが娘・アレナクサン”の幼き日の妄想が勝手にできあがってしまったようでした。
アレナクサンはその後2年おきに男の子2人、女の子2人の4人の子供を産みました。
カリナは若い中尉殿と結婚。ザベルは大臣の腹心の役人と結婚。彼女たちも母親になりました。アイセ姫・ネシア姫は各々国の有力領主の所に嫁ぎました。
兄たちのその後。
アレナクサンが皇子と結婚すると聞いた兄たち、サルマナスとカムソンですが
「まあ、あの娘もよくやってるわね」
などと女言葉で言いました。
実はあれ以来、2人とも女装にハマってしまったのです。2人とも領主屋敷の中でも、領内を見回る時も、女の服を着ているので、アルマン候を嘆かせました。
サルマナスは「俺のことはサルマナサンと呼んでくれ」などと言って、武術の練習はやめてしまい、昔はしたこともなかった、楽器(主としてウード)やアレグが残していったハープシコードを習って弾いたりするようになります。屋敷内に花壇を作って自分でお花を育てたりしていました。
領主の長男という立場上、しばしば領内を見回って、争いごとの仲裁などをしていましたが、男性時代(?)は厳しい処断をすることが多かったものの、女性に性転換(??)した後は、優しい処分をするようになって、かえって領民たちからの評判は高まりました。
彼は男性時代は、何度か女性の恋人を作って、筆降ろしも済んでいたのですが、女性の格好をして過ごすようになってからは
「女の子とのセックスは楽しくない」
などと言って、男性の恋人を作るようになります。
そして結局、「男と結婚したい」と言っていた、近くのテルカブバ伯爵の次男と男同士で結婚してしまいました。もちろんサルマナスあらためサルマナサンが花嫁衣装を着ましたが、両国の領民たちはお似合いのカップルだと言って祝福してくれました。そういう訳で、サルマナサンは、テルカブバ伯の所へお嫁さんに行ってしまったのです。
ちなみに結婚式の前に獣医!の手で睾丸を除去してもらい、男を廃業してから嫁いだという噂もありました。
次男カムソンもすっかり女装にハマってしまい「僕のことはカマサンもしくはおカマサンと呼んでね」などと言い、女装して日常を送るようになりました。男性時代はしたこともなかった料理や裁縫を習い、結構上達しました。そして厨房で侍女たちとと一緒にお料理やお菓子を作る姿が見られるようになりました。
そして彼は、例の女戦士・アルチンと結婚してしまったのです!
結婚式ではふたりとも花嫁衣装を着たので、神父様が「どちらが夫だっけ?」と悩んだとか。
兄(姉?)のサルマナサンが他国にお嫁に行ってしまったので、侯爵家はこの次男(次女?)おカマサンが継ぐことになりました。でも彼(彼女?)はいつも女の服を着てニコニコしているだけなので、実質アルマン侯爵領を管理したのは妻(夫?)のアルチンでした。アルチンはしっかり者で、武術にもすぐれるので領民たちは彼女を頼りにし、アルマン領は安定しました。
ドレス姿のおカマサンと武装のアルチンの並ぶ姿は様になっていて、肖像画などにもたくさん描かれました。
なおふたりの家庭ですが、アルチンは料理などできないものの、おカマサンは料理が上手になっていたので、おカマサンはすっかり“奥さん”をしていました。
おカマサンとアルチンの結婚は結婚式の時は2人とも花嫁姿ではあったもの、実際には男同士の結婚と思った人も随分あったようです。それでアルチンが最初の子供(女の子アマゾン)を産んだ時には随分驚かれました。
「最近は男同士でも子供ができるんだっけ?」
「それでどっちが産んだの?」
「おカマサン様では?」
「おカマサン様は、バグダッドの医者に手術してもらって女になったらしいよ」
などという会話が領民たちの間であったそうです。
実を言うと、おカマサンは、インドの秘薬を使っておっぱいを膨らませたのですが、バグダッドの医者に掛かって、おっぱいを大きくしたという説も流布し、更にはその時、ちんちんは取っちゃったのだろうと思った人も多かったようです。おカマサンはアルチンからおっぱいを揉まれたり舐められたりして幸せな気分になったそうです(アルチンは本物の女の子とも寝た経験があるらしい)。
「アレナクサン様もバグダッドの医者に掛かったんだっけ?」
「いや、あの方は元々女の子だったんだよ。でも病弱だったから、そういう子は男の格好をさせて育てると育つということで男の子の格好をしていただけだよ」
「そうだったのか」
どうもアレナクサンは元々女の子だったという説が領民たちの間では信じられていたようです(アルマン侯自身が広めている感じもある)。
おカマサンと結婚したアルチンは子供を女の子3人・男の子3人の合計6人も産み、侯爵の地位はおカマサンとアルチンの子孫へと引き継がれていきました。
アレナクサンが窓の外を見ているとカリナが入ってきました。
「何してるの?」
「景色見てた。ボスボラス海峡が美しい」
「うん。きれいだよね」
「私、アール山の景色も好きだったけど、ここの海峡の景色も好きだなあ」
「私もすっかりコンスタンティノープルが好きになったよ」
「でもキリマ・ンジャロも美しかったね」
「世界でいちばん美しい山かもね」
カリナはアレナクンサンに聞きました。
「女になったこと後悔してない?」
「後悔も何も戸惑っている内に女になっちゃったし」
「まあアレナは、女になる以外に生きる道が無かったからね」
「まだ夢を見ているようだよ」
「夢だとしても一生見続ければいいのよ」
「そうだね」
とアレナクサンは言い、カリナに笛の合奏をしようよと言いました。
皇太子妃の私室から、二声の笛の音が響いてくるので、皇宮の人々はその美しい調べに手を休めて聴き惚れていました。