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■アレナクサン物語(4)

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そして2人が合奏をしていると、周囲に人が集まってきます。そして熱心にふたりの合奏を聴いていました。うそー。恥ずかしーとアレナクサンは思いましたが、むろん逃げ出すわけにもいきません。ミスしないように神経を使って頑張って吹き続けました。
 
そして演奏が終わると周囲から凄い歓声があがります。みんな布を振って称えてくれます。アレナクサンは急に恥ずかしくなって、
「失礼します」
と言って、逃げるように部屋に帰りました。
 

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しかしアレナクサンはその後も何度も彼と小川のほとりや林の中の泉の近くで遭遇し、そのたびにアレナクサンの笛とアリムのウードで様々な曲を合奏しました。時にはアリムのウードに合わせてアレナクサンが歌ったり、時にはアレナクサンが有無・・・ではなくアリムのウードを借りて演奏して、それに合わせてアリムが歌うこともありました。
 
それでアレナクサンも次第に彼に気を許すようになっていきました。
 
「ねえ、君可愛いから、一度僕の部屋に来ない?」
 
などと彼はある時言いました。
 
部屋に来ないか?というのは当然セックスしたい!という意味でしょうけど、生憎アレナクサンには男性とセックスする機能が備わっていません。それでアレナクサンはアリムのことが嫌いではなかったものの
 
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「すみません。まだねんねなので、男の方のことはよく分からないので」
などと言って逃げておきました。
 
彼とはその後も何度も会い、度々彼に部屋にこないかと誘われたのですが、そのたびに適当な言い訳をして逃げておきました。彼も強引なことはしないようでした。
 

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ところで、皇帝の奥様(ファルマー皇子の母:つまり皇后)はずっと病気で寝ていたのですが、いつも大臣ゲンコ・アカイの奥方グルセが看病をしていました。グルセは実は皇后の妹でもあったのです。そして、グルセは自分(と大臣)の娘・フルバをぜひ皇子の妃にしたいと思っていました(結婚すれば従兄妹同士の結婚になる)。
 
「私も自分がいつまでもつ分からない。私が生きている内にファルマーの結婚式を見たいものだけど」
 
「良かったら、うちの娘をもらってくれない?一度皇子の部屋に行かせようか?」
 
実は行かせようかと言いながら、既に数回、夜這いを掛けさせているのですが、皇子は逃げ出してしまい、一度も“成って”いないのです。皇后はその話を息子から聞いていたので、きっと息子はフルバ姫が好きではないのだろうと考えていました。それで妹の言葉は黙殺して、こんなことを言いました。
 
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「皇子の嫁選びも兼ねて、皇帝が呼びかけて国中からたくさん美しい姫君たちが集まってきていると聞きます。しかしひとりひとりの姫は、あまり皇子と話す機会も無いでしょう。一度、パーティーのようなものでも開いて、皇子にたくさんの娘たちと会話をさせましょう」
 
「そんなことしなくても、めぼしい娘何人かとお見合いでもさせれば」
と言いつつ、グルセとしては、ライバルの将軍の娘・ラーレには取られたくないななどと考えています。
 
「もちろんパーティーには、フルバちゃんも参加するよね?」
「もちろん!」
とグルセは答えました。
 
それで皇后の提案で、夏至の夜(mid summer night)、パーティーが開かれることになったのです。
 
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皇子の嫁選びだけでなく、有力貴族の子弟たちも参加して、各々の嫁選びをさせようということになります。国中から集まってきている領主の娘たちも、皇子様は高嶺の花(誤用)だとしても、誰か有力貴族の息子などに見初められたらと張り切りました。
 
「何を着て出ようか」
とアレナクサンは悩みましたが、
 
「ちょうど、シベル叔母様(アルマン候の妹)から、素敵なドレスが送られてきています。それを着ましょう」
と言って、ザベルは昨日届いたばかりの箱を開けました。
 
「きれーい!」
とアレナクサンは声を挙げました。それはアレナクサンも初めて見る、美しいブルーのドレスでした。
 
「ガンダーラ(アフガニスタンの地方名)で採れた染料(ウルトラマリン *)で染めたもので、金貨30枚(きっと500万円くらい)もしたらしいですよ」
 
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「きゃー!」
とアレナクサンは声を挙げました。
 
「シベル様、そんなにお金あるんだっけ?」
「可愛い“姪”のために、奮発したと言っておられたそうで。皇子様の赤ちゃん産んでねと言っておられたそうです」
 
「産めないよぉ」
 
と言いながらも、アレナクサンはドレスを見につけてみました。凄く華やかな気分になりました。
 
(*)ウルトラマリンは比較的古くからある顔料でラピスラズリを細かく砕いて作る。むろん物凄く高価なものである。現代で一般的な青の顔料・コバルトブルーはその代替品として19世紀に発明されたものである。
 

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それでアレナクサンはカリナとザベルを連れて夏至の夜のパーティーに出ました。
 
アレナクサンの豪華なドレスは注目を集めます。仲の良いアイセ姫、ネシア姫も「なんか凄いドレス着てきたね」と言ってくれました。アイセ姫は白いドレス、ネシア姫は赤いドレスで、ふたりのドレスも充分美しいものでした。
 
会場には多数の男性も来ているので、アレナクサンはパーティーが始まってからたくさんの男性にダンスを申し込まれ、一緒に踊っては色々お話をしました。
 
何とか公の何とかとか、何とか伯の何とかとか色々言われましたが、とても覚えていられません。でもちゃんとザベルが書き留めてくれていたようです。
 
途中、アイセ姫やネシア姫とも何度も遭遇します。
 
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「たくさん踊って目が回りそう」
「私も!」
 
アイセ姫は23歳、ネシア姫も21歳と年齢が高いので、21歳になったばかりの皇子様のお嫁さんというのは最初から望んでもいないのですが、もっと年齢の高い貴族たちも多いですし、ふたりとも結構可愛いので、このパーティーで結婚相手が決まる可能性もありそうです。
 

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パーティーも始まってから3時間近く経ち、そろそろお開きかなという感じになってきた時、アレナクサンに声を掛ける男性がいました。
 
「アレナクサン、僕と踊ってよ」
 
アリムでした。何だか豪華な服を着ています。
 
「はいはい。あなたもこのパーティーに出ていたのね?」
「浮世の義理でね」
「宮仕えも大変ネ」
 
そういえば、王宮内でよく遭遇するし、お城の事務方か何かの仕事をしているのでしょうか。筋肉とかはそんなに付いていないし、武官とは思えません。
 
それでアレナクサンはアリムと踊り始めました。ふたりが踊っていると、みんなが場所を空けてくれて、何だか悪い気がしました。
 
彼と踊るのは初めてでしたが、彼は踊りもうまく、アレナクサンを上手にリードしててくれるので、とても踊りやすい感じでした。
 
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「合奏もしようよ」
「ええ。でも楽器が」
とアレナクサンは言ったのですが、カリナが寄ってきて
 
「ネイ、ライナキ、ウード、持って来ております。ハープシコードは持ってきておりませんが」
と言います。
 
「ハープシコード抱えてこられたら凄いね!」
 

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皇子がウード同士で合奏しようよというので、アリムのウードとアレナクサンのウードで合奏しましたが、その美しいハーモニーを聞いて周囲に人だかりができます。でも、いつも皇宮内の小川や泉のそぱで演奏している時もたくさん人に見られているので平気です。
 
1曲演奏した後で、
「今度はライナキを吹いてよ」
とアリムが言うので、ライナキを持ち、アリムのウードとアレナクサンの横笛で合奏しました。しかしそもそも横笛の音を聴くのが初めての人も多かったようで
「美しい音がする笛だ」
と言っている人も多くありました。
 
演奏が終わるとたくさんの人が称賛の声をあげ、布を振る人も多数いますし、アレナクサンに小袖を渡す女性もいます(服を渡すのは最大限の称賛の意味。日本でも鎌倉時代初期までこういう風習があった。とりかへばや物語の“若君”はたくさん自分の服を配っていて足りなくなり自室に取りに来て、妻の浮気現場を見てしまう。源頼朝は静御前に自分の服を渡している)。
 
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そしてアリムのウードの伴奏でアレナクサンが歌を歌うと、その美しい歌声に更に称賛の声が集まるのでした。
 
アイセ姫が寄ってきて
「アレナクサン、ほんとに歌が上手いね」
と言いました。
 
ネシア姫は
「その横にして吹く笛、私も欲しいー」
と言います。
 
「職人さんに作らせて1本贈るよ」
とアレナクサンはカリナを見ながら言いました。カリナも頷いています。
 

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皇帝陛下がおいでになりますので、アレナクサンは会釈して、下がろうとしました。ところがアリムがアレナクサンの手を握って離しません!え?なんで?と思いますが、アリムが手を離さないのでその場に留まります。
 
「アリム、よい姫が見つかったか?」
と皇帝は言いました。
 
「はい、私はこの娘アレナクサン・アルマンと結婚したいのです」
とアリムは言いました。
 
アレナクサンはアリムから「結婚したい」と言われたことより、なぜアリムがそんなことを皇帝陛下に言うのか理解できませんでした。
 
「そうか。それでは後日、正式発表を。アルマン候の姫君であったな。よろしくな」
と言って、皇帝陛下は向こうに行かれました。
 
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「じゃ後でお使いをやるから」
とアリムもアレナクサンに言い残して皇帝の後に続いて向こうに行ってしまいました。
 

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アイセ姫とネシア姫が寄ってきて
 
「アレナクサン、おめでとう!凄いことになったね。皇子様に見初(みそ)められるなんて」
 
と言います。
 
アレナクサンは全く事情が分かっていません。
 
「アリムって、まさか皇帝陛下の親戚か何か?」
と尋ねました。
 
「何を言ってるの?ファルマー・アリム・カエサル、皇太子様じゃない」
とネシア姫が言います。
 
「え〜〜〜〜〜〜!?」
とアレナクサンは超絶驚きました。
 
「皇子様、アレナクサンと凄く親しそうだった。もう何度か抱いてもらったんでしょう?聞いてなかったの?」
とアイセ姫。
 
抱いてももらってないけど・・・まさかアリムが皇子様だなんて、思いもしなかったよぉ、とアレナクサンは思いました。
 
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アレナクサンは想像(妄想?)しました。
 
アリムと盛大な結婚式をあげる。そして夜になってアリムの部屋に召される。
 
「君が欲しかったよ」
と言われて、ベッドの上に押し倒され、裸に剥かれる。
 
「君可愛いね」
などと言われてキスされる。
 
ところがアリムがアレナクサンの胸を触ると
「君、おっぱい小さいね」
などと言う。
 
「まだ12歳になったばかりなので」
「そうか。その内大きくなるかな」
などとアリムは納得するが、その小さなおっぱいを舐められる。
 
「してもいいよね?」
などと言って、アリムの手がアレナクサンのお股に伸びる。
 
「僕が入れる場所はどこかな?」
などと言って、手でまさぐられる。
 
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「あれ?穴が見つからない」
 
あはは・・・
 
「あれ?なんか変なものがある。これ何?」
「えっと・・・それはすりこぎです」
 
「どうして君、こんな所にすりこぎ入れてるの。あれ?ここにも変なものがある」
「えっと・・・それはお手玉です!」
「君、どうしてこんな所にお手玉なんか入れてるの?これどけてよ」
とアリムが言いますが、アレナクサンは、どうしたら、アレナクせるのだろう?と悩みました。
 
そこまで空想(妄想)した所で、アレナクサンは声に出して言いました。
 
「まずいよぉ」
 
アレナクサンが悩んでいるようなので、ネシア姫が心配して言いました。
 
「どうしたの?もしかして月の者が来てる最中?」
 
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「そういう時は殿方を酔い潰して、2〜3日は結合する余力がないようにしておくといいよ」
などとアイセ姫は言いました。
 
 
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