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■男の娘と魔法のランプ(6)

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ランプの精に豪華な夕食も用意させます。それで食事をする部屋に入ります。
 
入口の所で侍女が言いました。
 
「刀など持ったまま姫の御前に出るのは無礼である。武器は外すように」
「ああ、分かった」
と言って、腰に着けている刀を外し侍女に渡します。この侍女の顔をよく見なかったことをアシムは数分後に悔やむことになります。
 
アシムとしては、どうせこの宮殿には、男は自分だけで、残りは姫と侍女、あとは、むしろ女の服が似合いそうな優男の宦官だけだし、と思います。侍女が席に案内しますが、そこはテーブルをはさんで、姫と相対する席でした。
 
「ここに来て以来、食事などをずっと提供してもらっている故、特別に我と同席することを許す」
と姫は言いました。
 
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「ありがとうございます」
 
侍女ウマイマがアシムの用意した白酒を、まず姫の銀の杯に注ぎ、続いてアシムの金の杯に注ぎます。自分に黄金の杯を渡したというのは、この家の主人として礼してくれているのかなとアシムは思いました。
 

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それでアシムはその金の杯を持って立ち上がると
「バドルルバドール皇女殿下、お誕生日おめでとうございます」
と言いました。
 
ところが、姫は明らかに怒った顔をして、自分の持っている杯をアシムの顔に投げつけました、
 
「何をなさるんです?」
と左目にまともに当たったので、その左目を手で押さえながらアシムは訊きます。
 
「姫様の名前を間違うとはとんでもない奴だなあ」
という“男”の声がするので、ギョッとして見ると、そこに立派な身なりの男性がいます。
 
ジャマール皇子なのですが、アシムはこの皇子の顔を知りません。
 
誰だっけこれ?宦官ではなさそうだぞ。何でこんな所に男が居る?とアシムは混乱する頭の中で必死に考えました。
 
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「マハ、君の手を汚させることもない。こいつはボクが倒す」
と言って皇子が剣を抜きます。
 
「マハ!??」
 
アシムはあの時“姫”とだけ言いました。それでランプの精は。バドルルバドールではなく、マハを飛ばしたのです。マハも皇族の血を引いている(皇帝の従姪に当たる)ので間違いなく“姫様”です。しかしランプの精もかなりとぼけています。
 

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アシムも剣を抜こうとしましたが、空振りします。
 
しまった。刀は預けたんだった。
 
「侍女!俺の剣をよこせ」
と刀を預けた侍女に飛び付くようにして言ったのですが、
 
「やーだよ」
などと言って剣を持ったままするりと逃げます。
 
「何?」
と言ってその侍女をよく見ると、女装のアラディンではありませんか。
 
「アラディン、貴様、いつの間にここに来た?」
とアシムは言ったのですが、彼はアニトラの返事を聞く間もありませんでした。
 
ジャマール皇子の剣がアシムの身体を貫き、アシムは倒れて2度と動くことはありませんでした。
 

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1週間前。
 
朝起きて、外の風景を何気なく見た皇帝は、そこに“何も無くなっている”のを見て仰天しました。
 
そこには昨日まで大臣が彼の財力を尽くして?建築してくれた新宮殿が建っていたのです。
 
宮廷人たちも驚いて右往左往していました。
 
「誰か、誰か、ジャマール皇子を見なかったか?」
 
「皇子殿下はおそらく新宮殿におられたものと思われます」
「新宮殿、それに皇子はどこに行ったのだ!?」
 
ただちに大臣ワラカを呼び出します。
 
「大臣、そなたが建てた新宮殿が突然姿を消した。ジャマール皇子の行方も分からない」
 
「実は我が娘マハの行方も分かりません。もしかしたら、新宮殿で皇子殿下と密会していたのかも知れません」
 
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「マハは時々ジャマールと会っていたのか?」
「マハは最近度々、夜間外出しておりました。たぶん殿下と会っているのだろうと思っておりました」
 
「どうすればいいんだ?」
「実はあの宮殿はアラディン殿が建設したのです。アラディンに尋ねてみましょう」
 

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それで皇帝がアラディンを呼びにやります。
 
「一体何事でしょうか」
と急ぎ参内したアラディンが尋ねます。
 
「新宮殿が突然消えた。そしてジャマール皇子とマハの行方が分からない」
と皇帝。
 
「まさかおぬし、ジャマール殿下を亡き者にして、自分とバドルルバドール様との子供を次期皇帝にと考えているのではあるまいな?」
と大臣が詰問します。
 
「そんなことはありません。私には何も権力欲はありません。私に権力欲があるのでしたら、陛下から宮廷の役職を与えると言われた時にそれを受けていますよ」
と弁解しながら、女同士では子供作れないから、ボクとバドルルバドールとの間に子供ができることはないし、などと考えています。
 
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すると皇帝は玉座から降りてきてアラディンの手を握って泣きながら言いました。
 
「頼む、アラディン。頼れるのはそなただけだ。新宮殿はどうでもいいから、何とかしてジャマールの行方だけでも捜し出してくれ」
 
アラディンもこんな皇帝の姿を見たのは初めてでした。
 
「陛下。私に40日下さい。必ずや殿下やマハ姫様の行方を突き止めます」
「頼む」
 

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アラディンは急ぎ帰宅しました。ランプの精に尋ねて行方を捜そうと思ったのです。ところが、自分の部屋にいつも置いているランプが見当たりません。
 
嘘!?
 
アラディンはアニトラの姿に戻ってから、バドルルバドールの部屋に行きました。
 
「姫様、ちょっとお尋ねします」
「どうかした?アニトラちゃん」
「私の部屋にいつも古いランプを置いていたのですが、姫様それを見たりはしていませんよね?」
 
「ああ、あのランプは昨日、お兄様の使いの方が来て、お店の方で使うのでとか言うので、渡したけど」
 
「え〜〜!?」
 
「まずかった?」
と姫も急に不安になり尋ねます。
 
「いえ。私もあの大事なランプを無造作に置いていたのが悪いです」
「もしかして、その使いの者って偽物?」
 
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「姫様のせいではありませんよ。私の管理が悪かっただけです」
「何とかなる?」
「何とかします」
「ごめんね」
 

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アニトラは自分の部屋に籠もり対策を考えました。
 
姫を欺してランプを持ち出したのは、おそらくアシムだろう。それでアシムがランプの精の力を使って、宮殿を移設し、皇子とマハはそこでデートしていたので巻き添えになったのだろうと推察します。
 
でもアシムも大きな宮殿が欲しければ新たにランプの精に作らせればいいのに。なんでわざわざ皇子が住んでいる宮殿を移設するのだろう?と疑問を感じました
 
(アシムは宮殿を空き家と誤解していた。アラディンが他人の住む宮殿を作ってやったとは思いも寄らないのでアラディンが出入りしていないことから、ここに入居予定なのだろうと誤解した。欲の張った人間は無欲な人間の思考を想像できない)。
 
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アニトラは朝からずっと丸1日あれこれ考えていましたが、少し冷えてきたなと思います。暖房でも入れさせようかと思いながら、手をすり合わせました。
 
指輪の精が出現します。
 
「ご主人様、何なりと命令をお申し付け下さい」
 
あ、この子のこと忘れてた!とアニトラは思ったのですが、同時にこの子に頼めば何とかならないかと考えました。
 
「あのさ、皇子の新宮殿と中に居た皇子にマハ姫を元の場所に戻してくれない?」
 
「申し訳ありません。それはランプの精殿がなさったことなので、私にはそれを取り消すことはできません。ランプの精殿の方が私よりも上位なので」
 
ああ、魔神の世界も上下が厳しいんだろうなとアニトラは思いました。
 
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「だったら、ボクを皇子やマハの居る所に飛ばしてくれない?」
「たやすいことでございます」
 
と指輪の精が言うと、アニトラはどこか知らない場所に来ていました。
 
見慣れた新宮殿が建っています。そっと近寄って窓を覗くと、見たことのない娘がいました。しかしそのそばに付いている侍女には見覚えがあります。アニトラは窓の中に忍び込み、その娘と侍女の方に歩み寄りました。
 
「何者じゃ?」
と娘が厳しい声で言いましたが、そばに付いている侍女ウマイマが
「アニトラ様!」
と言います。
 
「そなた評判のアニトラか?」
「はい、呉服屋のアニトラでございます。皇帝陛下の命令でお探しに参りました。マハ様でいらっしゃいますか」
 
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「うむ。イシムとかウシムとかいう男に連れ去られた」
「お怪我はありませんか」
 
「当然じゃ。あのような下種(げす)に汚されたりすることはないぞ」
 
アニトラは純粋に物理的な怪我がないか尋ねたのですが、マハは別の意味に取ったようです。しかし普通の怪我もしていないようです。
 
「さすが、皇族の姫君ですね。私みたいな庶民の女とは違います。皇子殿下にはやはりマハ様がお似合いですよ」
 
「そうか?」
と言って、どうもマハは何か不満な様子です。何だろう?とアニトラは疑問を感じました。
 
「ジャマール殿下もご一緒ですか?」
「皇子もいるが、どうもあのイシムとかいう者はそのことに気付いていないようだ。皇子は倉庫に隠れている。夜中に警備している振りをして宦官に食事を運ばせている」
 
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「なるほど」
 

「それで皇子と話し合っていたのだが、私と皇子が協力すれば、何とかあの下種(げす)を倒せるのではないかとは思うのだが、その後、国に帰れるだろうかというのが心配で」
 
「それは私がお連れします。ご心配なさるな」
「分かった」
「ところで、アシムは古いランプをどこかに置いていませんか?」
 
「ああ、何か古いランプをいつも腰に下げてるな」
「なるほどですね」
 
自分も腰にぶらさげておけば良かったのかなあとも思いますが、とにかくもアシムがいつも身体に着けているのであれば、奪い取るのは難しそうです。それで、アニトラはマハとジャマールが考えたアシムを倒す計画に乗ることにしたのです。
 
個人的にはアニトラはアシムを自分に身を立てることを覚えさせてくれた恩人と思っていたので、アシムが中国に戻って来たらまた一緒に商売をしたいとも思っていました。しかしこの状況ではアシムを倒す以外は無いと思い切りました。
 
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しかしアシムはなんでマハを口説こうとしてるんだ?バドルルバドールを口説くとかいうのなら、まだ分かるけど?とアニトラは不思議に思いました。
 
(まさか人違いしているとは思いも寄らない)
 

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姫の誕生日だと偽って、アシムを宴席に招待する。そして中国のお酒を用意させ、彼が持つ杯に毒を塗っておきそれを飲ませて倒すというのが基本的な計画です。この時、わざわざ中国のお酒を用意させるのは、一口飲んだ時に風味の違いに気づきにくいようにするためです。
 
万が一にも杯を取り違えないように、姫には銀の杯、アシムには金の杯を用意することにしました。それに銀の杯は毒に反応して変色するので誤って自分が毒を飲む危険が少ないのです。
 
念のためアシムの武器は取り上げることにし、その作業をアニトラが侍女の振りをしてやることにしました。侍女はみんなベールをしていますから、人相は分かりにくい筈ですし、アシムもまさか自分がマグリブに来ているとは思わないでしょう。
 
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そしてこの計画を実行したのです。アニトラはうまくアシムの武器を取り上げることができました。そしてまさに毒を飲ませようとした時、アシムが
 
「バドルルバドール皇女殿下、お誕生日おめでとうございます」
 
と発言するので、アニトラは「は!?」と思います。それよりマハが激怒して自分の杯をアシムに投げつけました。
 
まさかアシムはマハのことをバドルルバドールと思っていたのか?
 
(深窓の姫君は普通は家族以外に顔を見せないから、アシムがバドルルバドールやマハの顔を知らなかったのも無理はない)
 
マハが杯を投げつけたことで、アシムが自分の杯の酒を飲むのを中断してしまいました。やばいなと思っていたら、ジャマール皇子が姿を現し、剣を抜きます。アシムが自分に預けていた剣を取ろうとしますが、当然アニトラは彼から逃げて剣を取らせません。
 
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「アラディン、貴様、いつの間にここに来た?」
 
とアシムが驚いたようにしてアニトラの顔を見て言いました。
 
しかし次の瞬間、ジャマール皇子の剣がアシムの身体を貫き、アシムは倒れました、
 

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ジャマール皇子が、アシムが絶命していることを確認します。
 
アニトラは、自分が取り上げていたアシムの剣を使って、彼が腰の所にランプを結び着けていた革紐を切りました。
 
「皇子殿下もマハ姫もここに居てください」
と言ってアニトラは部屋を出ますとランプをこすってランプの精を呼び出しました。
 
「おお、ランプを取り戻しましたね。わが主人であれば、いづれ奪還なさるだろうと思っていましたよ。だからあの馬鹿の命令は適当に処理しておきました。さて、御用をお伺いします」
 
「まあボクも油断してたね」
と言って、最初にアシムの埋葬を命じました。屈強な男が2人でアシムの遺体を棺に納め釘を打ちます。宮殿から運び出し、穴を掘って埋葬します。爆竹も鳴らします。アニトラと皇子が墓の前で合掌しました。
 
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その後、アニトラはランプの精に命じます。
 
「ボクや皇子・マハ姫や使用人ごと、宮殿を元の場所に戻して」
 
「たやすいことでございます」
とランプの精が言うと、宮殿は空に浮かび、東に向かって飛んで行きます。そして、真夜中に皇宮の隣の元新宮殿があった場所に着地しました。
 

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皇宮では真夜中に物凄い音がするので、みんなびっくりして飛び起きます。しかし見ると、新宮殿が再び姿を見せていたので、みんな驚きました。
 
皇帝は真っ先に新宮殿に飛び込んで行きました。
 
「ジャマール?ジャマールは居るか?」
と探し回っていると、当の本人か姿を見せます。
 
「陛下、数日留守をして申し訳ありませんでした」
「よいよい」
 
皇帝がジャマール皇子を抱きしめて涙を流しているのを見て、アニトラは
 
「マハ姫様、大臣閣下の御自宅までお送りします」
と言いました。
 
「うむ。ご苦労である」
 
それでアニトラは馬車を用意させ、姫を大臣宅に送り届けたのです。大臣も泣いて娘との再会を喜びました。
 

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男の娘と魔法のランプ(6)

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