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■夏の日の想い出・2年生の夏(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-08-29/改訂 2012-11-11,11-28
 
大学2年生の夏は7月1日、ローズクォーツの4枚目のシングル「一歩一歩/峠を越えて」の発売で幕を開けた。更に8日にローズ+リリーのメモリアルアルバム「Rose+Lily After 2 years」、15日にはローズクォーツの初アルバム「夢見るクリスタル/みんなの顔」が発売になった。前月末には私の写真集2冊「天国の島ケイ18」と「復興の島ケイ19」が発売になっており、お互いの相乗効果が出て、全て好調な売れ行きであった。
 
ローズクォーツのシングルは『萌える想い』が累計10万枚、『バーチャル・クリスマス』が8万枚、『春を待つ』が12万枚、売れていたが『一歩一歩』は最初の一週間で5万枚と順調な滑り出しで、これまでの最高の売り上げになるのではと美智子は言っていた。
 
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7月の上旬、私は東北のある港町で知り合った川上青葉という気功師?の少女(本人はMTFと言っているが全然そう見えなかった)の勧めで1年前豊胸手術で埋め込んでいたシリコンバッグを抜く手術を受けた。
 
「ホルモンでかなり発達してるでしょ?抜いても充分なサイズあるはず」
と青葉ちゃんは言っていた。実際抜いても私のバストはCカップ近くあった。
「9月頃にはDカップのブラが使えるようになること保証する」
などと言う青葉ちゃんから、私は7月から8月に掛けて何度もヒーリングを受けた。「身体の各所の気の流れを調整するの」と彼女は言っていた。
 
私は受験生の頃から軽い肩こりを抱えていたのだが、まずこの肩こりが消えてしまった。そして4月に受けた性転換手術で形成した女性器の感触が全然変わってしまった。手術の痛みがほとんど無くなってしまったし、なんだかそれがずっと昔から自分にあった器官のような気がしてきたのである。
 
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「ここまでやっておけばダイレーションしなくても大丈夫と思う。念のため週に1回くらい入れてみて感触が変わってないか確認して。それとお風呂とかも大丈夫ですよ」などと彼女は言っていた。そしてバストも、明らかに大きくなってきた。実際7月末くらいにはもうCカップのブラがきつくなってきたので、私はDカップのブラにパッドを入れて使うようになり、8月末にはそのパッドも不要になった。そのバストの成長で私は青葉ちゃんを完全に信用するようになった。
 
「女性ホルモンも飲む量減らして大丈夫ですよ。気の流れが完璧になったら飲む必要も無くなると思うんだけど、そこまで行くのは年末頃かなあ」
などと青葉ちゃんは言っていた。
「あの・・・・青葉ちゃん、私生理が来るような気がするんだけど」
「はい。来て当然。冬子さんの身体は今内面的にも女性になってますから」
 
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青葉ちゃんは二次性徴が来る前に自分で去勢してしまったという話で、声も4オクターブの見事な女声を持っていた。私は彼女から発声についても指導を受け、それまで女声(メゾソプラノ)ではG3〜A5くらいの2オクターブ強の声域しか無かったのが、彼女の指導のもとで練習を重ねた結果、F3〜C6くらいまで2オクターブ半の声が出るようになった。
 
少し時計を戻して7月15日。この日はローズクォーツの初アルパムの発売日でもあったが、今年のサマーロック・フェスティバルの出演者が発表される日でもあった。一昨年までは1ステージのみという古いスタイルを保持していたが、昨年からは3ステージ制となり、今年は更に5ステージ(内1つは室内ステージ)となり出演者も50組と大幅に増えていた。出演者数だけなら4大夏フェスにも迫る大型イベントになってきた。
 
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「8月12日は確実に予定空けておいてね」と美智子が事前に言っていたので、内輪に通知が来ているんだろうなとは思ったが、いざ「ローズクォーツ」の名前がそこに並んでいたのを見た時は嬉しかった。
 
ただ今回はメインステージには入っていなかった。Bステージのラスト前という指定だった。
「まだローズクォーツとしてのビッグヒットが無いからね。来年こそはメインステージを狙おうね」
と美智子は言っていた。
 
その次の月曜日(仕事は休みの日)、私は仁恵の誕生日なので、政子や礼美、高校時代の数人の友人たちと一緒に仁恵のアパートに行き、政子が買っていったケーキを食べ、他の友人が調達してきたシャンパンやジュースを飲み、また私が揚げて来たフライドチキンを食べた。
 
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「これ、まるでケンタッキーみたいな味ね」
「結構、っぽいでしょ。圧力鍋使ってないから骨までは食べられないけど」
「レシピ教えてくれる?」
「OKOK」
 
「しまった。私車で来たのにシャンパン飲んじゃった」と礼美。
「泊まってけばいいよ。朝まで飲みあかそう」
「こらこら、朝まで飲んでたら明日の夕方くらいまで運転できなくなるよ」
 
3時間くらいの予定だったのがオールナイトになりそうな雰囲気であった。途中で飲み物・食べ物がなくなると、買い出し隊がコンビニやドラッグストアまで行って食料を調達してきた。結局免許を持っていてアルコールを飲んでないのは途中で私だけになってしまったので、買い出しのドライバーはもっぱら私の役目になった。
 
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「でも偉いね、冬、アルコール飲まないで頑張ってるなんて」
「だってまだ誕生日前だもん。酔ってる所人に見られて写真撮られて投稿とかされたら謹慎ものだから」
「こないだ△△△の子が未成年飲酒で写真週刊誌に載って、無期限活動停止くらってたね」
「うん。あれ可哀想。私も歩いてる時の信号無視とかも絶対するなと言われてる」
「たいへんね。私は高校入った頃からお酒飲んでるけど」
「それはさすがに早すぎ」
 
しかし夕方くらいにはかなりできあがっている子もいる。
「冬〜、先週、彼氏に振られたんだよぉ」と言って寄ってきたのは高校時代の同級生の琴絵である。
「よしよし」と頭をなでなでしてあげる。
「今夜はHすることになりそうと心の準備して会いに行った日に新しい彼女が出来て、その子と婚約したといわれたのよ。ひどくない?」
「ああ可哀想。でもそれ、ありがちなんだよ。複数の子と付き合ってる場合、誰かに強烈にアタックしようとしている時、他の子にもまるで気があるかのような接し方になりがちなの」
 
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「えーん、Hしたかったのに」
「よしよし。そのうち、コトとHしたいって男の子現れるから」
「冬、Hさせて〜」
「私、もうおちんちん取っちゃったからできないよ〜」
「あ、そうだった」
「4月に手術したよ」
「おちんちん取る前に誰かとHした?」
「したことないよ」
「1度経験してから取れば良かったのに」
「あはは」
隣で政子がニヤニヤ笑っている。
 
「政子は冬とHしなかったの?」
「そんなのしてないよ。何度か触りはしたけどね」
「うーん。その付近がふたりの関係のよく分からない所だ」
 
「土日、泊まりがけの仕事で同じ部屋で泊まったりしてたしね。お互い平気で着替えたりしてたし、一緒のベッドに寝たこともあるし、ちょっとふざけて触りっことかもしてた」
「それは羨ましいな」
 
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「やっぱり恋人関係だったの?」と初美。
「そういうのは無いよね」と私と政子が同時に答える。
「それでよく目の前で着替えられたね」
「私は最初から冬のこと、女の子と思ってたから、まあ少しくらい形が違うのはあまり気にしてなかった」
「慣れもあったけどね」
「うん、そうだね。でも冬、私の胸に触りながら『ボクもおっぱい欲しい』
とか、よく言ってたよ」
「ははは」
「本人たちは恋人ではないとは言っているが、実際の関係は一目瞭然だな」
と仁恵。
 
「でも冬ったら、おっぱいかなり大きくしたもんな」
と言って琴絵は私の胸に触る。
「あれ?私酔ってるせいかな。以前もう少し大きくなかった?」
「うん。今月初めまではEカップだった。シリコンバッグ抜いたから」
「わあ、じゃこれマジ胸?」
「そうそう。フェイクは終了」
「それでも充分な大きさあるな。私のより大きくない?ね、触って」
「どれどれ・・・・同じくらいのサイズかな」
すると琴絵は私に抱きついてきた。
 
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「冬〜、女の子同士でもHはできるんだよ。ちょっと隣のへやに籠もってやらない?」
「ちょっと、ちょっと。私レズじゃないから。キスだけしてあげる」
といって私は琴絵の頬にキスをした。
「キスは唇だよー」
「しょうがないなあ」
といって私は琴絵の唇にキスをする。琴絵が舌を入れてこようとしたので私は慌てて離れる。
「入れるのはダメ」
「ちぇっ」
 
夕方以降はそんな感じで、とても親には見せられないような乱れた状態になってきた。琴絵は服を脱いで下着だけになっていた。礼美も暑いと言って下着姿になっていた。
 
それは20時頃だった。もうパーティー?が始まってから7時間ほどたち、私はちょっと疲れが出てうとうととしていた。そこに突然の揺れ。
「わっ」と言って飛び起きる。
「久々に来たね」
「うん、けっこう強かった」
「キュピパラ・ペポリカ」
「え?」
「キュピパラ・ペポリカ・・・誰かメモ用紙持ってない?」
「メモ用紙というより、これでしょ」
と言って政子がさっとバッグから五線譜とボールペンを出して渡してくれた。
「ありがとう」
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夏の日の想い出・2年生の夏(1)

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