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■夏の日の想い出・新入生の夏(5)

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その時「あれ?」という声を掛けて来た人がいた。私が振り向くと、なんと!
「Eliseさん!?」
それはスイート・ヴァニラズのリーダーでギターのEliseさんだった。
「ケイちゃんだよね、スカイヤーズと一緒に歌ってた」
「はい。ケイです。初めまして」
「ナイスボディだなあ。それにセクシー水着。でも奇遇だね〜、こんな所で会うなんて。あれ?そちらにいるのはマリちゃんでしょ」
「はい。ありがとうございます。マリです」と政子も挨拶する。
 
「話聞いたけど、30分くらい前に突然言われたんだって?」
「ええ。それまでここにいる友人達と一緒に観客席にいたのですが」
「凄いね、それでさっと歌えるなんて」
「たまたま知ってる曲ばかりだったので」
「ね、うちの曲も歌える?」とEliseさんが身を乗り出す感じで訊く。
「歌えます」と私は即答した。
 
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Eliseさんはとても楽しそうな顔をして
「いいお返事するなあ。そういうお返事する子、私大好き。ねね、明日私達と一緒に歌わない?」と言ってきた。
「明日って、もしかしてサンプラザ※※ですか?」
「よく知ってるね」
「先日FM**に出演なさった時にそんなことをおっしゃってたように思ったので」
「ああ、あれ聴いてたんだ」
 
「はい。スイート・ヴァニラズのスコア譜は出る度に即買ってますし。私、エレクトーン弾くので、スコア譜をエレクトーン譜に自分で書き直して、弾いてるんです」
「おお、じゃ本当に行けそうだ。じゃ明日朝9時にサンプラザの楽屋まで来てくれない、スタッフに話しておくから。マリちゃんも一緒に」
「はい、行きます」
「私も?」とマリが驚いている。
「付き添いということで」と私は笑いながら言う。
 
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「あの、もう少し付き添いいてもいいですか?」とそばで聞いていた礼美。
「じゃ、他のお友達は観客席の方で。開演前に来てもらったら席は何とかするから」
「ありがとうございます!」
「何人来るかな?」
「行きます!」とその場にいる全員が答える。
「4人ね。でもみんな、いいお返事!類は友を呼ぶか」といってEliseさんは楽しそうにしていた。
 
Eliseさんが「じゃお先に」と言って出て行ったあと、私はすぐ須藤さんに電話を入れた。びっくりしていたが「私も明日朝行って細かい問題、話すね」
と言っていた。
 
翌日、朝8時半に※※駅で私と政子と須藤さんは待ち合わせて、9時5分前にサンプラザホールに入った。
「おはようございます」と挨拶して中に入る。
「おはよう、ケイちゃん、マリちゃん」とEliseさん。
「美智子ちゃん、お久しぶり」とスイート・ヴァニラズのマネージャーさん?「ご無沙汰、奈津子ちゃん」と須藤さんは言って、ふたりは抱き合ってる。
「ローズ+リリーのマネージャーさん?なっちゃん、お友達?」
「その昔、私も美智子ちゃんも現役だった頃、今でいえばAKB48みたいな感じの多人数のアイドルグループがあってさ」
「ほとんど売れなかったけどね」と須藤さんが笑っている。
「ふたりとも、そのメンバーだったのよ」
「でも、あのグループのメンバーって、こういう稼業に転じた子が多いね」
「ほんとほんと。恵子ちゃんとか、美春ちゃんとか、由紀子ちゃんとか」
 
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「それってホテルのラウンジとかでピアノの弾き語りとかしてたというのより」
「それより前。十七・八の頃だもん。私もまだ高校生だったのよ」
「わあ、それは知らなかった」
 
ふたりが旧知の仲ということで、契約上の問題は「適当に」という一言で済んでしまった。「一応、友情出演ということで」「うんうん、それがいい」
「この会場のあと、札幌・大阪・名古屋・福岡・横浜とやるんだけど、もしよかったら、それにも出ません?」
「日程確認させて」
「日程はこれ」
「福岡がちょっと予定とぶつかってるけど、調整する」
「じゃ、全公演行きましょう」
 
出演はライブの半ば、息抜きを兼ねたところで、スイート・ヴァニラズのメンバーが演奏のみをして、私がスイート・ヴァニラズのヒット曲のひとつである「青い鳥見つけた」を歌うということで話がまとまった。更にもう1曲「海辺の秘密」を1コーラス目まで歌ったあと、2コーラス目からスイート・ヴァニラズも加わって一緒に歌うという趣向になる。
「ぶっちゃけ、メンバーがみんな1時間半歌いっぱなしなので、少し喉を休ませたいのよ。昨日までは歌無しで流して、バックダンサーの人たちの踊りだけでつなぐつもりでいたんだけどね」
とマネージャーの河合さんは言っていた。スイート・ヴァニラズは全員がボーカルでリードボーカルも曲により交替で務めるスタイルである。
 
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なお、政子は歌わないのだが(政子の芸能活動契約書ではライブなどには出ないということになっているので出演不能)、臨時に須藤さんの代わりに私のスタッフ代りということで全公演に帯同することになった。最後の横浜の公演にはまた須藤さんも来ることになった。
 
早速、「青い鳥見つけた」と「海辺の秘密」を合わせてみた。私は昨日のスカイヤーズとの共演からは一転して、あまり身体を動かさず、手を振ったり各楽器の見せ場のところでそちらを向いたり、程度の仕草を入れて歌った。
 
「一発で合っちゃったね」とドラムスのCarolさん。
「ほんと、歌うまいね」とベースのSusanさん。
「凄い、正確な歌い方。音程ぴったり」とセカンドギターのMinieさん。「なんか3-4年一緒にやってるみたい」とキーボードのLondaさん。
「いい感じ、いい感じ。でもケイちゃんって、色んな歌い方できるのね」
とEliseさんも感心していた。
 
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そういう訳で、私と政子は8月後半はスイート・ヴァニラズと一緒に札幌から福岡まで飛び回ったのであった。会場は各公演ともとても盛り上がった。最後の横浜公演では「海辺の秘密」を歌ったあと、拍手が凄まじかったのでEliseさんが舞台の袖にいた政子を引っ張ってきて私の横に立たせて一緒に挨拶した。ローズ+リリーの一瞬の復活だった。「きゃー」などという声が出て、拍手も一段と盛り上がった。
 
後で須藤さんは「まあ、ステージで歌った訳じゃないから、いっか」などと頭をかきながら苦笑していた。
「元々、ローズ+リリーのファン層って、うちのファン層と重なってない?」
と打ち上げの席で河合さんが言う。
「うんうん、かなり重なってると思う。かっこいい女の子に憧れる層だよね」
と須藤さんは頷いていた。
「実は福岡と札幌のチケットは少し売れ残りがあったんだけどさ、東京公演にケイちゃんが出たというのがネットに書き込まれた直後に両方ともソールドアウトしたんだ」
「いや、それは東京公演が盛り上がったのが伝わったからだと思いますよ」
「でもこういうチケットの売れ方を見たの初めてだし」
 
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そうしてスイート・ヴァニラズのメンバーとは、その後も交流が続いていき、その年の暮れに出たスイート・ヴァニラズのアルバムには私も一曲、曲を提供するとともに、複数の曲で政子といっしょにコーラスに加わった。そして、そのアルバムには協力者としてローズ+リリーの名前も刻まれたのであった。
 
また、私が大きな会場に何度も露出したこともあって、ローズ+リリーの楽曲のダウンロードが跳ね上がった。サマーロックの日とその後数日、スイート・ヴァニラズの公演の日と翌日は特に跳ね上がった。ローズクォーツの方のダウンロードも反応していたが、知名度に差がありすぎるので、ダウンロード数としては、やはりローズ+リリーのほうがローズクォーツの5倍近くダウンロードされて8月後半だけで、ローズ+リリーのベストアルバムと最後のシングル「甘い蜜」
が合計で7万件もダウンロードされたのであった。ベストアルバムは1年振りに大手ランキングの週間ランキング24位まで浮上した。
 
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9月上旬はそのおかげで、あちこちのラジオ局からお声がかかり、私は毎日のように関東圏内の各地のラジオ局を訪れた。関西方面からもけっこう声が掛かっていたので、8日から10日までの水木金は新幹線で大阪に行き、それを拠点に関西方面のラジオ局に多数出演して、ローズクォーツをアピールしてきた。
 
そのおかげでローズクォーツの「萌える想い」は9月になってもコンスタントに売れ続け、9月末までに合計6万枚売れたのであった。一方ローズ+リリーの「甘い蜜」「その時」やベストアルバムもそれ以上に売れ続けていた。そういうわけで、9月の中旬から下旬に掛けて私と政子がローズ+リリーの
「メモリアルアルバム」の制作をした時、演奏をしてくれた近藤さんなどから「ローズ+リリー復活ですか?」と訊かれたりしたのであった。
 
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ローズクォーツとしても、8月9月は都内のライブハウスに何度か出演したのだが、なにしろメンバーが全員兼業なのでどうしても活動時間が限られてしまっていた。結局、この時期はどちらかというと、私ひとりで飛び回っていた感じだった。録音でもいい番組の場合、マキさんが何とか都合をつけて一緒に出ることもあったが、どうしてもFMのトーク番組は日中の生放送が多いので、私ひとりの出演になることが多かったのであった。
 
そういうわけで9月はエレクトーンのグレード試験もあったが、前半は各地のラジオ出演、後半はローズ+リリーのアルバム制作で過ぎていった感じが大きかった。クォーツのメンバーは全員9月末までに昼間の仕事を辞めてバンドの専業になったが、辞める前は仕事のケリを付けるのに忙しく、私と政子がローズ+リリーのアルバム制作をしていた時期は、ほとんど仕事の方に忙殺されていた。
 
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9月26日・日曜日。私達は前日までにローズ+リリーのアルバム制作が終了し、その日は臨時の休日になったので、私はひとりで宇都宮のデパートに来て、屋上でコーラなど飲みながらぼんやりとしていた。
「午後1時から屋上憩いの広場にて、○○○のミニコンサートがあります」
などというアナウンスがある。ああ、懐かしいななどと思ったりした。△△社さんだろうか?誰か知ってる人に会っちゃうかも知れないな・・・・などと思っていた時だった。
 
小さな女の子がちょこちょこと走ってきて「ママ〜」と言って私に抱きつく。へ?と思いながらも、可愛い子だったので、よしよしと頭を撫でてあげた。その時「あ、すみませーん」といって、28-29くらいかな?と思う女性が走ってきて、その子の腕を取った。「ママはこっちよ」「あれ?」「御免なさいね」
「あ、いいえ。可愛い子ですね。おいくつですか?」「今3歳なんです」
「お名前、訊いていい?」「あやめと言います」「あやめちゃん。美人になりそうね」「ありがとうございます。では失礼します」「はい」
 
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などという会話をしたが、去っていく母娘の後姿を見ながら、私はふとなぜか母親のほうの顔が思い出せない気がした。あやめちゃんの顔はしっかり思い出せるのに。あれ?
 
その時「唐本さん」という声がして振り返ると、△△社の遠藤さんだ。「あ、こんにちは」「お仕事ですか?」「いや。今日は休暇です」などと話しながら、さっきの母娘のほうをもう一度見ようとしたら、その方角には誰も人影が無かった。
 
 
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夏の日の想い出・新入生の夏(5)

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