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■夏の日の想い出・新入生の夏(4)

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Chou-yaさんが力強いドラムスワークで演奏を始め、続いてPowe-eruさんのベースとYamYamさんのギター、それにサポートメンバーの人のキーボードとサックスも続いて、私は最初の曲を歌い始めた。
 
バンドというものと一緒に歌うというのは、ふだんローズクォーツでたくさんしているわけだが、そつのない演奏をするクォーツと比べて、スカイヤーズはとても野性味のあるバンドで、かなり雰囲気が違った。私は飛びはねながら歌いまた多少の音程のずれをおかしてもできるだけ叫ぶような歌い方をした。すると最初おそるおそるの感じだった、スカイヤーズの面々が徐々に乗ってきているのを感じたし、客席の興奮もどんどん上昇していくのを感じた。
 
5曲目を歌い終わった時、客席は物凄い興奮の渦にあった。司会者の人がアンコールお願いしますというサインを出している。私はさきほどの事前に合わせた時に最後にやった曲を演奏するのかと思ってそのつもりでいたら、Chou-yaさんのドラムスが違う曲を示唆している。Pow-eruさんが「え?」という顔を一瞬したのを見た。が私がOKサインを送ると安心したようで普通に前奏を始める。サポートメンバーの2人も一瞬驚いたようだったが、ああ行ける行けるという顔をしている。そして私はぶっつけ本番で、スカイヤーズの最大のヒット曲である「サヨナラ」を歌い始めた。
 
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割れるような拍手の中を私達はバックステージに引き上げた。
「いやあ。びっくりした」とYamYamさん。
「すまねー。ついやっちまった」とChou-yaさん。
「なんだ。間違いだったのか」とPow-eruさん。
「でも、ファンは喜んだと思いますよ」と私は笑顔で言った。
 
「ケイさん、こういう大観衆でのステージ経験あるの?」とChou-yaさん。
「いえ。3000人クラスの会場までしか経験なかったです」
「あがってなかったよね?」
「あの大観衆見て、凄く興奮して。もう快感で、気持ちよく歌えました」
「凄い。天性の歌姫なんだなあ」
「うん。ケイさんのおかげでこちらも落ち着けた感じがする」とPow-eruさん。スカイヤーズもこの規模のステージは初めてだったのである。
 
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「でもホント助かりましたよ。もう1時間前にBunBunが倒れた時はどうなるんだと思ったけど。取り敢えずあれだけ盛り上がったら、一応の責任は果たせたかな」
 
「でもケイちゃん、すごく女らしくなってる。もしかして改造済み?」とYamYamさん。「改造中です」と私は笑顔で答える。
「改造?」
「うん。少なくとも2年前は男の子だった」とYamYamさん。
「あはは」
「えー!?」とPow-eruさんが本気で驚いたような声を出した。
「だって声も女の子じゃん」
「それがケイちゃんの凄い所なんですよ」とYamYamさんが言っている。
「週刊誌のすっぱ抜きがあるまで、みんながケイちゃんを女の子と信じてましたから」
 
「その節は済みません。私自身は女のつもりでいたんですけどね。戸籍がそうなってないもんだから。ちなみに実態上は既に男の子ではなくなりました」
「なるほど」
「いや、女にしか見えないよ。また、何かで一緒にやりましょう。今度はBunBunとのツインボーカルで」
「はい。また機会がありましたら」
といって私はにこやかにPow-eruさんと握手を交わした。
 
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「そうだ。ケイちゃんサインちょうだい」などとYamYamさんが言い出す。
「いいですよ。ローズ+リリーのほうにしますか?ローズクォーツの方にしますか?どちらも書いていいことになっているので」
「両方!」
「私もスカイヤーズさんのサイン頂けます?」
「OK。OK。ベッドで寝てるBunBunの分までとってくるから」
ということで、私達はスタッフの人から色紙をもらいサインを交換した。
 
スカイヤーズの面々や町添部長などと話しているうちにお昼になり、私は政子とメールで連絡を取り合い(音が凄いので通話は不可能)、休憩場所に行った。みんなから拍手で迎えられた。
「凄い凄い。ステージに立っちゃったね」と仁恵。
「いやあ。もうびっくりした。でも私って代役ついてるんだなあ」
「凄い観客でしょ。上がらないの?」と礼美。
 
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「全然。こんな大観衆の前で歌ったの初めてだったから、もう凄い興奮した」
「興奮するんだ」と博美。
「ふだんとノリが違ってたよね」と政子。
「スカイヤーズが野性味のあるバンドだから、ああいう感じがいいかなと思って。でも来年は自分のユニットで出場したいね。このメインステージに」
「うん。頑張って」
 
お昼をみんなで食べながらおしゃべりに興じていたら、須藤さんからメールが入り、今居る場所を返事すると、すぐにやってきた。
「冬ちゃん、お疲れ様〜」と言って、いきなり私をハグする。
「ちょっと、ちょっと」
「私は入場ゲートの方にいたから、アナウンス聞いてぶっ飛んだよ」
「ちょうど出演者係で詰めていた甲斐さんが私を推薦してくれて、居合わせた町添さんも、ああケイちゃんなら歌える、と言ってくださったということで直前の20分くらいで合わせて、本番」
 
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「どうだった?夏フェスのステージの味」
「美味。凄く気持ちよかった」
「あがったりしなかった?」
「全然。快感で物凄く興奮しちゃった」
「そこが冬ちゃんの凄い所なんだよね〜。それにあの歌い方、BunBunさんの真似でもないし、ケイちゃんの本来の歌い方でもないけど、スカイヤーズに合った歌い方だよね。あの場で思いついたの?」
 
「うん。このバンドにはこんな感じかなあと思って」
「そういう器用さがまた凄いのよねえ。私、ますます惚れ込んじゃう。来年は自分達のバンドで出ようね。もちろんメインステージにね」
「うん。今そんな話をしていたところ」
 
須藤さんはすぐ戻らないと行けないから、といって戻っていった。
そのあと入れ替わりで甲斐さんが来て、私に客席の方に戻ると騒ぎになったりするとまずいので、特別席に案内しますからということで6人全員でそちらに移動した。ステージのすぐそばのテントの下であった。
「ちょっとアングルが悪くてごめんね」
「いえ。ステージにこんな近い所なら」
「屋根があるなんて、なんかVIP気分」と礼美。
などと言っていたら、こちらに手を振る男性がいる。
 
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「きゃー、上島先生。マーサ、挨拶に行こ」
「あ、うん」
私と政子は飛んでいって、上島先生に挨拶をした。特に政子は2年前の12月以来会っていなかったので、「ご無沙汰しておりまして済みません」などと言っている。「今度2人でアルバム制作するんでしょ?」と先生は耳が早い。
「はい。ここしばらく書きためた曲があるもので、それをふたりで歌おうと」
「じゃ、僕も1-2曲書いてあげるよ」
「ありがとうございます!でも発売が思いっきり遅くて年末か、ひょっとしたら年明けになるかもなんですけど」
 
「うん。聞いてる。今年録音して年明けてから発売するって。面白いことするなと思って町添さんから聞いてた。次のアルバムは来年録音してからすぐに発売するらしいね」
「そういう話、私達もまだ聞いてないです」
「あはは、じゃ聞かなかったことにして」
「はい」
 
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上島先生は先程の私の歌も褒めてくださった。
「ああいう歌い方は初めて見た。君ってまだまだ未知の可能性を持ってるね」
などと言われた。
 
10分くらい話してから仁恵たちの所に戻る。午後はかなり日差しが強くなり、倒れる観客も続出して救護係が大忙しであったのだが、私達はテントの下にいたおかげで、体力の消耗を抑えることが出来た。しかしそれでも、激しく身体を揺すり、手を振り、声援を送っているので、けっこうな体力を使う。最後のバンドの演奏が終わった時、私達は全員ぐったりと疲れていた。
 
「さあ、プール行こう!」と私がいうと、博美などは「げ、元気ね?冬」とバテた顔で言う。「疲れてるからプール行くのよね」などと政子は笑って言う。「5分休ませて〜」と座り込んでいる礼美。「ほんと冬と政子は体力あるね」
と同じく座り込んでいる仁恵。「でもどうせ出るのに時間掛かるからその間に体力回復するよ」と早めにBステージが終わってしまったので戻って来ていた小春が言った。
 
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私も出るのに時間がかかると思っていたのだが、特別席にいた人たちは全員別ルートで先に外に誘導された。上島先生は用意されていた車で先に帰っていったし、私達もマイクロバスで駅まで連れて行ってもらった。思いがけず早く駅に着いてしまったので、私達はガストで栄養補給・水分補給してから、プールに行くことにした。ガストにしたのはドリンクバー目当てであったが礼美などはほんとに喉が渇いていたようで、ウーロン茶を10杯くらい飲んでいた。
 
「でも去年も思ったけど、このフェスはほんとに実力重視だよね。外れが全然無かったもん」
「そうそう。このフェスでは演奏技術と楽曲の品質が選出の重要ポイントらしいのよね。人気があっても実力が伴ってないバンドにはお声が掛からない」
「エアギターとかじゃダメってことか」
「そうそう。そんな中で、女性バンドで唯一メインステージに出ていたスイート・ヴァニラズは凄いね」
「うんうん。でもホントうまいもん、あの人たち。曲の品質も高いし。私もよくエレクトーンで弾いてるよ。スイート・ヴァニラズの曲は」
 
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「冬、グレード試験行けそう?」と政子。
「今の感じなら大丈夫と先生からは言われてる」
「何級受けるの?」と仁恵。
「6級」
「わあ、すごい。私は7級に3回落ちて挫折した」と博美。
「今度はね、唐本冬子の名前で受験する」
「おお」
「実は先月末引っ越したマンションも唐本冬子名義で契約したんだ」
「着々と女性化が進んでるのね」
 
「うん。パソコンのソフトとか買ってユーザー登録する時も全部冬子の名前にしてるしね」
「銀行口座は最初から冬子だったんだよね」と政子が言う。
「そうなんだよね。あれ須藤さんがうまいこと作っちゃったのよね」
「へー」
「もともと銀行口座は通称で開設できるようになってるのよね。実は」
「あとはもう戸籍変更しないと変更できないものしか残ってないんじゃない?」
「うん、そうかも。美容室とかの会員カードも当然最初から冬子名義だし」
 
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最初はガストで30分ほど休んでからプールに行く予定だったのだが、みんなでおしゃべりに夢中になっている内に気付いたら2時間近くたっていた。
「えーっと門限のある人は?いないね」
「よし、ラストまで泳ごう」
行く予定のプールは21時までの営業である。
 
昨年は私はバストの付近を誤魔化しやすいワンピース水着を着ていたのだが、今年はビキニを持ってきていた。
「わー、冬おっぱい大きい」
「人工だけどね」と私は笑いながら言う。
「布面積が小さいな」
「えへへ」
 
「さ、泳ぐぞ、冬」と充分休んで体力を回復している政子が私を25mプールに連れていく。いつものように、政子が先行して私がそのあとを追う形で10往復くらいした。途中からこちらに来てプールサイドで声援を送っていた博美が、私達が上がってくると「ふたりともすごーい」と言う。
 
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「そのビキニ、泳ぎにくくない?」
「外れたりしないだろうかって結構気になった」
「外れるとフライデーされるぞ」
「あはは。でも開き直るとまるで裸で泳いでいるみたいな感覚で気持ちいいことは気持ちいい」
「なるほど。それはあるかもね」
 
プールの営業終了時刻である21時まで泳ぐつもりだったのだが、一部の子が「お腹空いた」と主張するので20時すぎにみんなであがって更衣室に引き上げた。みんなでおしゃべりしながら着替える。
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