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■夏の日の想い出・2年生の夏(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-08-30  
8月3日の水曜日、その日は午前中にFM局の番組の収録をした後、午後はフリーになったので(というより意図的に空けた感じであった)、私と美智子は予め声を掛けていた政子と一緒に3人で宇都宮のデパートを訪れ、少し寂れてきつつある感じの食堂街で一緒に遅いお昼御飯を食べた。
 
「もう3年か・・・・早いもんだね」
「1年後の8月3日に美智子のブログが立ち上がって、1年半後の2月3日に事務所設立、2年後の8月3日にローズクォーツのデビュー。美智子もかなりこの日付にこだわってるよね」
「ふふふ」
「今年の8月3日は特に何も無しかな」
「今から何か起きたりして」
 
「3年前のあの日のこと、私まだ鮮明に思い出すよ」と私。
「冬は、マジであの日から人生が変わっちゃったんだもんね」と政子。「まさに『夏の日の想い出』だね」と美智子。
その時、突然BGMでその『夏の日の想い出』が流れた。
「おお」と3人とも声を上げる。
 
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「実は私、上島先生からこの曲の譜面受け取った時、あの日のこと思い出しながら演奏したんだ」
「ちょっと『パッヘルベルのカノン』とか『主よ人の望みの喜びを』とかを思わせるような感じの分散和音だよね」
「あの日、美智子にトイレに連れ込まれて、女の子に変身させられていた時実はカノンがBGMに流れていたの」
「へー。私はそれ覚えてないや。でもそれなら今度の年末のシングルにはカノンを入れようか」
「バロックはやってみようって前々から言ってたもんね」
 
「ドサ回りでは何度かやったね。『四季』とか『オンブラマイフ』とかリクエストされたんだよね。『G線上のアリア』とか『主よ人の望みの喜びを』もやったよ。『四季』は春の歌詞を即興で作りながら歌った後、冬をNHKの『みんなの歌』でやってた歌詞で歌った」
「それ歌える冬も凄いけど、演奏できるマキさんたちも凄いな」
「うんうん。このリクエストで演奏するというのはクォーツが初期の頃からやってたスタイルらしいから。過去に2000曲くらいは演奏してると言ってた」
「すごーい」
 
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「だけど『夏の日の想い出』も凄いよ。CDとダウンロード・着うたフル合わせて50万件突破寸前。おかげで、ローズクォーツの先行投資分の借金が一気に返せる」
「わあ、それは良かった」
「ケイを除く3人は給料1ヶ月20万保証、というので1年間やってきたんだけど、1ヶ月40万保証に改訂することでマキさんとは合意した。マキさん、これで結婚できるなんて言ってた」
「わあ、それはおめでたい」
「実際には今回の『夏の日の想い出』の印税だけで結婚資金は出ると思うけどな」
 
なお、私と政子の方は従来通り固定給無しで、歌唱印税のみの契約で6月に契約更新していた。また美智子は会社の増資をしたいので、もし良かったら一口乗らないかと私達に打診した。会社の資本金は設立時には500万だったのだが、今回私が600万、政子が600万と美智子自身が追加出資800万して2500万とした。それで私と政子は各々、美智子の会社の24%の株主になっていた。
 
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「あれ?考えてみたら、これ株主総会だったりして?」
「あ、確かに」
「ふふふ。取締役会議でもある」
 
この会社の取締役は美智子が代表取締役の他、美智子の母と兄が名目上の取締役になっていたのだが、美智子は株主になったついでに取締役もやらない?と打診し、私達は「じゃ名前だけ」ということで、引き受けていた。なお監査役は美智子の従兄が引き受けてくれていた。
 
また美智子は私達が株主で取締役になったことで会社の帳簿を見せてくれた。私と政子に関わる印税やギャラの事務所取り分に関しては、うちと津田社長の所と浦中部長の所で3等分していること、またこれまでローズクォーツの活動資金として、両社からあわせて毎月100万円ずつ借りていたことを知った。これを『夏の日の想い出』の印税が入った時点で一気に現金で返すことも同意済みとのことであった。津田社長からは少し株を買えないかと打診されたものの、株を持って頂かなくても、色々ご意見はちゃんと聞きますからと柔らかく断ったという話だった。
 
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食事が終わると3人は店内のスタバに移動してコーヒーを飲みながら会話を続ける。
「今回は緊急事態だったし、少しでも計算できる戦力が欲しかったんで政子にもローズクォーツの録音に参加してもらったんだけど、また次も頼めるかな」
「いいよ。録音だけなら。ステージやカメラの前で歌ったりはしないというのがうちの母との約束だから」
「じゃ、また10月か11月に次のシングル作ると思うから、その時お願いね」
「うん」
「それから今月後半にローズ+リリーのほうのメモリアル2を制作したいんだけど」
「夏休みだから頑張る」
「うん。お願い」
「今度はローズクォーツが伴奏してくれるから」
 
「でも、ローズクォーツの録音にマーサが参加した場合と、ローズ+リリーの録音の伴奏をローズクォーツがした場合と、結果的に同じにならない?」
と私は先日から持っていた疑問を出してみた。
「やってる人は同じだけど、ローズクォーツとローズ+リリーはコンセプトが違うからね。違ったものに仕上がる」
「なるほど」
「おはぎとぼた餅の違いみたいなもの?」
「ピラフとチャーハンの違いかな」
「うーん。シチューと肉じゃがくらいの違いでは」
 
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そんな感じで、私達は活動のこと、音楽のこと、また様々な雑談をしていた。その時、美智子の携帯が鳴った。この着メロは町添さんからの電話の筈だ。「お早うございます。須藤です」といって電話に出ながら店外に出る。
「え!?はい。。。何ですって!?。。。。わぁ。。。それは大変でしたね。。あ、はい。。。。はい。。。。はい、もちろんやらせて下さい。頑張りますので。ありがとうございます」
と言っているのが聞こえる。
 
美智子が電話を切って店内に戻ってきた所で尋ねる。
「何があったの?」
「実はさ、今日これからビッグニュースとして流れると思うんだけど」
「うん」
「クリッパーズが解散した」と小さな声で美智子が言う。
「えー!?」と私達も小声である。
「前々からボーカルのyasuさんとリーダーのkaoruさんって仲悪かったでしょ」
「うんうん」
「新曲のアレンジめぐっての喧嘩から、対立が決定的になっちゃったみたいで。音楽の方向性が違うので今後は別々に音楽活動をする、と」
「きゃー」
「他のメンバーもyasuさん側とkaoruさん側に2人ずつついて、完全に真っ二つ。今までふたりの間に入ってまとめ役になってたベースのnakaさんはもうこれを機に音楽活動を引退すると言っている」
「嘘ーっ。私クリッパーズ好きなのに」と政子。
 
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「クリッパーズは今月全国20ヶ所のツアーをする予定だったけど当然中止」
「げっ。全国のイベンターが泣きますよ、それ」
「だよね。凄い損害が出る」
「あれ?クリッパーズは今年のサマーロックのヘッドライナーでしたよね」
「そうなのよ。それで今大騒ぎしているところで」
「どうなるんですか?」
「去年ヘッドライナー務めたサウザンズに今年もヘッドライナーお願いすることで話がまとまった」
「えー?でも今年はサウザンズ出ない筈だったのでは?」
「うん。日程のぶつかる茨城のフェスに出る予定だった。そちらをキャンセルして、こちらに出てくれることになった」
「わあ」
 
「まあ、向こうのフェスでの扱いに若干不満があったみたいで、渡りに船ではあったみたい。それで茨城の方には、同じ事務所のトライアル&エラーが出る」
「トライアル&エラーは今年のサマーロックの午後トップでしたね」
「サウザンズをこちらに連れてくる以上、そのクラスを向こうにトレードしないと、向こうが納得しない」
「あはは」
「それで、こちらの午後トップには午前中ラストの予定だったスカイヤーズ」
「ああ。。。。」
「午前中ラストには、その前に演奏予定だったスイート・ヴァニラズが横滑り」
「なんか関わってるバンドばかりだ」
「で、そのスイート・ヴァニラズの前にBステージからローズクォーツを引っこ抜き」
「やった!」と政子が叫ぶ。
 
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「それで頑張りますと・・・」
「そういうこと」
「頑張りましょう!」と私も言う。
「他のメンバーにも連絡入れるね」と美智子は言ってから
「なんなら、ローズクォーツ、スイート・ヴァニラズ、スカイヤーズと3組に連続してケイちゃん出る?」
「あはは。それはさすがに辞退しておく。でもメインステージに立てるって夢みたい」
「去年も立ったじゃん」
「ローズクォーツでだよ〜」
 
「今、『夏の日の想い出』がヒットチャート上位でずっと売れてるから、それが考慮されたみたいよ。今、50万枚でこのままなら70万枚は行くだろうから、一応ビッグヒットのあるアーティストというメインステージ基準をクリアした」
「なるほど」
「町添さんは、ローズ+リリーに90万枚ヒットがあるんだからいいじゃんと前々からローズクォーツを推してくれていたらしいけどね」
「ああ」
美智子は店外に出て、電話を掛け始めた。
 
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ローズ+リリーの最後のシングル「甘い蜜」は当時80万枚売れたのだが、昨年の私のサマーロックやスイート・ヴァニラズのライブでの露出のせいで再度売れ、また今年出したメモリアルアルバムに刺激されてまた売れ、ここまでの累計売り上げは93万枚くらいになっていた。ひょっとしたら3年がかりのミリオン到達もあり得る、などという話になっていた。
 
「しかしさあ・・・・・」と私は政子に言う。
「私って、ほんと代役ついてるんだな」
「代役でも何でもいいじゃん。チャンスはものにしよう」
「うん。頑張る」
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