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■夏の日の想い出・生存競争の日々(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-06-12

 
2月初旬、唐突にテレビに美少女が踊りながら歌う『恋の妖分身』という曲のCMが流れた。そのビデオの中で少女は最初ひとりでソロで歌っていたのが途中で2人に分身してデュオ(ソプラノ・アルト)で歌い、やがて3人に分身してトリオ(ソプラノ・メゾ・アルト)で歌い、最後は4人に増えてクァルテット(ソプラノ1・ソプラノ2・メゾ・アルト)で歌うという技(?)を見せた。
 
見た目も可愛いし、歌も上手いし、その分身の映像効果も、本当に一卵性四つ子が歌っているみたいというので話題になる。
 
「しかしこの子、どんだけ広い声域持ってるんだよ?」
「上はソプラノのD6、下はアルトのF3まで出てる」
「声域が3オクターブ? すげー!」
「しかも音程取りが物凄く正確。ピッチのズレが細かい音符を除けば2-3Hz以内。見た目は14-15歳くらいだけど、この年齢でここまでの歌唱力があるというのは物凄い新人だぞ」
 
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やがてその曲は2月下旬から放送開始された特撮番組『東京新撰組』の主題歌であることが明らかにされる。番組の放送開始とともにCDとダウンロード音源も発売され、予約を(公式には)いっさい受け付けていなかったにも関わらず初動で15万枚を売る物凄いヒットとなる。
 
そしてこの歌を歌っている宮城イナイという女性歌手についてもレコード会社に問い合わせが殺到するも、レコード会社は日本人で誕生日は6月9日であることだけを明らかにしただけで、年齢や出身地に関する情報は明らかにしなかった。
 

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3月3日、宮城イナイのCDを発売している新興レコード会社ЮЮレコードは社長自らが出席する記者会見を開き、衝撃の告白をおこなった。
 
それは宮城イナイというのは、仮想アイドルだというのである。
 
彼女の歌は声優の道川佳美の声素を使用して組み立てたボカロイドであり、そのプログラミングと調整は新進のソングライター・佐原メルによるものであること、伴奏は同じく新進の作曲家・松居夏鈴がDTMで組んだもの、そして画像は新進の映像作家・横井友奈によるCGであるというのである。
 
「宮城イナイの宮城というのはかつての仮想アイドル伊達杏子をリスペクトして伊達から宮城という連想、イナイというのは文字通り『居ない』ということで、非存在をあらわします」
 
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とまだ28歳の三方社長は説明した。
 
この衝撃の告白に対して日本中で宮城イナイに憧れていた人たち(特に若い男性)から悲鳴の声があがり、同じ日に十二単を着た「美少女姿」を見せたアクアの記者会見がかすんでしまうほどの話題になったのである。
 
翌日のワイドショーは時間の半分をアクアに、半分を宮城イナイに割いて熱論をしていた。
 
この件に関しては三方社長は不当表示防止法違反容疑で東京地方検察庁から事情聴取されるというおまけもついた(容疑不十分で不起訴処分)。
 
しかしそんなことも更に話題となって宮城イナイの『恋の妖分身』のセールスはあっという間に30万枚/DLを越え、その影響で『東京新撰組』の視聴率も上がるという現象が起きる。
 
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レコード会社では検察側の判断が出たところで、宮城イナイのライブをこの夏に実施することを発表した。方式は初音ミクのライブと似たようなものになるという説明があった。
 
一応、声素を提供した声優の道川佳美、作詞者で歌のプログラミングをした佐原メル、作曲者で伴奏作成者の松居夏鈴、CG作成者の横井友奈、振付担当のエヴリン・ジュペ、服飾デザイナーの伊藤みゆき、の6名が「宮城イナイ」のプロジェクト・メンバーということであった
 
「私は最初に声を録っただけで、その後は関与してなかったんですけどねー」
 
などと声優の道川佳美は言ったのだが、彼女は宮城イナイの声で話すことができるので、イベント関係にはしばしばチーム代表という名目で出て行くことになる。(顔は全然違うのだが)『恋の妖分身』で宮城イナイが着ていた衣装を着てコスプレなども披露していた。ちなみに彼女自身は歌は極端な音痴なので私の生歌は勘弁してください、などと言っていた。
 
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(でも高校時代にカラオケで歌った歌声が流出して「ホントに下手だ!」とネットには書かれていた)
 
チームでは、しばしば「宮城イナイの今日の出来事」なる短いムービーを動画掲載サイトに無償公開し、これがけっこう話題になっていた。
 
内容は「目玉焼きを作ろうとして、卵を割ったのはいいが、うっかり中身の方を捨てちゃった」とか、「遅刻しそうになってキビダンゴ咥えて走っていたら道の角で桃太郎とぶつかった」とか、しょうもないエピソードで時間も30秒程度ではあったものの、CG自体はふつうに実写に見える精巧なもので、ネットの住民たちから称賛があがっていた。
 
また「宮城イナイ」プロジェクトでは彼女の「出身地」「在籍している高校の名前」「血液型」などといったデータを投票で決めるというイベントを行ってこれもまた彼女の人気を高めた。
 
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プロフは福島県南相馬市生れ、永遠の高校1年生、私立浪江実業高校美術科、血液型はABといったものが、ファン投票によって決められた。
 

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「大学合格おめでとう」
と私は3月7日、電話で沖縄の麻美さんに言った。
 
「ありがとうございます。入試会場に行ってもまわりが若い子ばかりだったし、私世間の動きを全然知らないからけっこう戸惑ってますけどね」
と彼女は言った。
 
麻美さんは高校1年の秋に原因不明の病気に罹って入院し、昨年夏まで7年弱の入院生活をした。現在23歳である。一応2010年3月に高校の卒業証書は特例でもらっているが、実際問題として2011年頃までは勉強などする余裕がない状態で病気と闘っていた。しかし病気が快方に向かい始めた2012年頃から高校の教科書を友人から譲ってもらって読むようになり、昨年夏に退院した後は頑張って予備校に通い、地元の国立大学の医学部保険学科(看護師等養成コース)に美事合格したのである。
 
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「看護婦とか激務だと思うけど、身体には差し障りない?」
「薬はずっと飲んでいないといけないですけど、昨年秋以来、毎朝ジョギングするようになったからだいぶ体力付きましたよ」
「ジョギングはひとりでしてるの?」
「陽奈ちゃんと、お姉さんの花奈さんが付き合ってくれて3人でジョギングしてます」
「陽奈ちゃんも頑張るね!」
「私にとってはケイさんたちと並ぶ恩人です」
「いやいや、私たちは何もしてないから」
 
「あ、そうだ。あのぉ、こんなことケイさんに頼むのは失礼だとは承知の上なんですけど」
「ん?どうしたの?」
「ケイさん、アクアちゃんとお知り合いだそうですね。彼のサインとかもらえませんよね?」
 
私は苦笑した。
 
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「いいよ。書いてもらってそちらに送るよ」
「ありがとうございます!」
 

「だけどアイドルも一気に世代交代した感があるよね」
 
その日私は美空・小風の2人とお茶を飲んでいた。和泉は大型二種の免許取得のため運転免許試験場に行っていた。彼女は高校1年で原付、高校2年で小特を取った後、高3で普通免許と自動二輪、大学1年で中型免許と大特、大学2年で大型免許と牽引、大学3年で大型自動二輪、大学4年で普通二種、昨年中型二種と大特二種を取った。これで今年大型二種を取り、このあと牽引二種を取れば晴れてフルビッターになれるのである。それも夏くらいまでには取りたいと言っている。
 
ただし2017年には普通免許と中型免許の間に「準中型免許」が新設される予定なので、9年も掛けてやっとフルビッターになったのに、和泉がフルビッターで居られるのはわずか2年ほどである。
 
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生年度別アイドル・元アイドル一覧(デビュー年)  
1991 貝瀬日南(2007), 秋風コスモス(2007), Rose+Lily,AYA,KARION,XANFUS(2008) 
1992 ピューリーズ(2009), 浦和ミドリ(2008), 川崎ゆりこ(2009) 
1993 小野寺イルザ(2010), 谷崎聡子(2009), ステラジオ(2011), 谷川海里(2013) 
1994 桜野みちる(2010), 槇原愛(2011), 丸山アイ(2014) 
1995 杉田純子(2012) 
1996 スリファーズ(2010), 山村星歌(2010), 坂井真紅(2009) 
1997 富士宮ノエル(2010), 篠崎マイ(2014), LLL(2014) 
1998 南藤由梨奈(2014), 遠上笑美子(2014), 鈴鹿美里(2013) 
1999 丸口美紅(2013), 光丘ひなの(2014), 品川ありさ(2014) 
2000 森風夕子(2013), 北野天子(2014) 
2001 アクア(2015) 
 
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「去年くらいまでは坂井真紅・富士宮ノエルがトップアイドル、山村星歌やスリファーズがそれに続く感じだったけど、スリファーズは大学受験のため半年間休業していて、坂井真紅は先月18歳になってしまったし、ノエルも7月にやはり18歳になっちゃう。するとその下の世代の森風夕子、丸口美紅、光丘ひなのといったあたりが台頭を伺う。去年爆発的に売れた南藤由梨奈とか遠上笑美子・篠崎マイあたりも、うかうかしていられない」
 
「そこに、アクア、宮崎イナイという強力新人が出てきたし、今まだセールスは小さいけど、北野天子はあれかなり売れると思う」
 
「でもアクアは男の子だし、宮崎イナイは仮想アイドルだし」
「いや、仮想アイドルって絶対にスキャンダルとか起こさないから、2次元の恋人としての需要がかなり伸びると思うんだよね。アクアの場合、女の子たちは美形男の子アイドルとみなすし、男の子たちは女の子みたいに可愛い子とみなす。実際ダウンロードサイトでの売れ行きを分析してみると、あの子、男女半々くらいに売れているんだよ」
 
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「まあどっちみち、私たちはもうアイドルと呼ばれることはないだろうね」
「うん。後は実力だけの勝負の世界になる。芹菜リセ・松浦紗雪・松原珠妃・鞍元真須子といったあたりと真っ向勝負だよ」
 
「あれ?年末くらいにその4人ともうひとり誰かの名前あがってなかったっけ?」
と美空が言い出すが、小風はえーっと・・・と言って考えている。私はおかしくなった。
 
「冬、分かってるみたい」
「青嶋リンナだよ」
「あっそうか」
「でも彼女は元々大して売れてないし」
と美空が言うので
 
「シー!」
と小風が言ってあたりを見回す。
 
「そういう発言は危険だから慎むように」
と小風が注意する。
「はーい」
と美空は気のない返事をした。
 
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「だけど私たちがデビューした2008年頃を境にアイドル戦国時代に突入した気もする」
「うんうん。最初は多人数のアイドルグループが売れ始めたんだけど、やはり秋風コスモス、AYAが出て、そのあと山村星歌・坂井真紅・富士宮ノエルが出てきて、小野寺イルザが出てきて、ほんとに多数のソロ・アイドルも出てきた」
 
「まあ秋風コスモスに少し遅れて貝瀬日南も出ているんだけど」
「忘れてた!」
 
「日南ちゃんの場合は時間を掛けて売れるようになっていったけど、話題にもされずに消えていくアイドルも多いね」
「まあ北嶋花恋(現在KARIONのマネージャー)もそういう子のひとり」
「確かに確かに」
 
北嶋花恋は2008年にデビューしたものの全く売れずにCDを1枚出しただけで事実上の引退状態になってしまった。契約は存在していたものの仕事の話が全く来ないので、開き直ってスーパーの店員をしていた時に三島さんと出会って、誘われてマネージャーに転身したのである(元の事務所から移籍金1円でトレードしてもらった)。
 
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「だけど私たちはもう脱アイドルしてしまったけど、秋風コスモスはまだ10年くらいはアイドル続けます、なんて言ってたね」
「いや、100歳までアイドルしますなんて言ってた」
「100歳のアイドルはそれなりに存在価値がありそうだ」
「きんさん・ぎんさんみたいな?」
 
「まあ彼女は実力派ポップス歌手とかにはなれないから」
「あれだけ音痴で8年も歌手を続けてられるというのも凄いね」
「でも幕張を満員にするからなあ」
「ライブは物凄く盛り上がるみたいだもんね」
「もっともあの子のライブは4割くらいがトークらしいけど」
「うん。そしてお色直しの間に伴奏陣が歌抜きで演奏しているのも好評だとか」
「CDも歌抜きのカラオケバージョンの再生率が高いという説もある」
 
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■夏の日の想い出・生存競争の日々(1)

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