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■夏の日の想い出・生存競争の日々(2)

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2015年3月11日(水)。ローズ+リリーの20枚目のシングル『不等辺三角関係』が発売された。
 
昨年7月にリリースした『Heart of Orpheus』以来8ヶ月ぶりのシングルである。その間、私たちはアルバム『雪月花』の制作に忙殺されていた。ローズ+リリーのシングルは2013年3月『言葉は要らない』、4月『100%ピュアガール』、8月『花の女王』、2014年4月『幻の少女』、7月『Heart of Orpheus』と5作連続ミリオンを記録している。今回も『雪月花』がひじょうに大きな話題となっていたことから、予約自体が80万枚入り、初動でいきなり100万枚を突破した。
 
ローズ+リリーのシングルでそれ以前にミリオン売れているものが『甘い蜜』、『神様お願い』、『夏の日の想い出』、『涙のピアス』、『天使に逢えたら』の5枚で、これでローズ+リリーのミリオン・シングルは11枚目となった。
 
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なお、アルバムでミリオンを達成しているのは 
2012年3月『Month before Rose+Lily, A Young Maiden』
2013年4月『Rose+Lily the time reborn, 100時間』
2013年6月『RPL投票計画』
2013年7月『Flower Garden』
2014年12月『雪月花』
 
の5枚で、100時間から雪月花まで4枚が連続ミリオンである。前作『Flower Garden』は最終的に国内盤210万枚、国外盤80万枚が売れている。『雪月花』も2月末の時点で国内180万枚、国外90万枚が売れていて前作を上回る売上げになりそうな勢いであった。
 
私はFM番組でこの売り上げについて訊かれて答えた。
 
「たいへんありがたいことだと思います。買ってくださったひとりひとりの方に感謝したいです。また良いものができたら出して行きますので、これからもよろしくお願いします」
 
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と私は簡単に感謝のことばを述べた。
 

「一昨年、ケイちゃんは何かのイベントの時、これからも素敵な音楽を届けて行きたい、みたいなことを言っていた。でも先日の放送では、良いものができたら出して行きたいと言った。方向性が変わったんだね」
 
そう上島先生は言った。
 
「去年、色々なことがあって私も考えさせられたんです。特に昨年は色々なクリエイターの方とお話する機会がありまして。DTMで独自の世界を築いておられる進藤歩さん、ひたすら可愛い曲を書いている萌枝茜音さん、うちの民謡の家元の若山桜盛、ベテラン作曲家の東堂千一夜先生・東郷誠一先生・山本大左先生、FireFly20の全ての曲の歌詞を書いておられる月村山斗先生、独自の世界観で創作をなさっている田中晶星先生、それに上島先生と蔵田さん、と同世代の作曲家である、浜名麻梨奈、醍醐春海」
 
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「醍醐君とは元々親友だったんでしょ?昔から話していたんじゃないの?」
「親友ではありましたが、作曲家をしているなんてのは昨年の夏まで全然知りませんでした」
「へー!」
 
「彼女は醍醐春海あるいは大裳の名前で書いている曲って年間15-16曲にすぎないけど、ゴーストライターで書いているものが無茶苦茶多いみたいですね」
 
「なんか僕もそのあたりの実態って見えないね」
と上島先生は言う。先生はゴーストライターが大嫌いなのである。もっとも先生の盟友・雨宮先生は逆にゴーストライター斡旋の元締めのひとりのようである。
 
「そして醍醐はどうも埋め曲の達人みたいなんですよね」
と私。
 
「いや、そういう人材は必要だよ。ここだけの話、自分で言うのも何だけど、僕の作品も98%くらいは埋め曲だから」
「私も正直な話、水沢歌月の名前で書いている曲はかなり洗練するのですけど、ケイや鈴蘭杏梨の名前で書いている曲はけっこう妥協が多いんですよ」
 
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「うん。それは分かるけど、それ売れる方向に妥協してるでしょ?」
「そうなんです。でも世間に受け入れられる方向に突き進んでいけば全ての楽曲はワンパターンになってしまうと思うんですよね」
 
「1990年代に爆発的なブームとなった某プロダクションがその道を歩んだよね。ひたすら売れるよう曲を規格品のように大量制作して、ひたすら売れるようなアーティストを何組も世に出した。その結果、ブームが去ると全て売れなくなった」
 
「まあ同じ物をたくさん出せば飽きられてしまいますから」
「そうそう。同じカゴに盛った卵は落とせば全部一気に割れる」
 
「それは投資の格言ですけど、あそこはまさに同じカゴに盛った卵でした。どんなに凄いものでも、結果的に同じものをたくさん書くと価値は無くなります。ルノワールの『ブージヴァルのダンス』は凄い絵だけど、『ブージヴァルのダンス』の真作が1000枚あったら、少なくとも商業価値は低くなります」
 
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「そういう意味ではモネの『積藁』とか『睡蓮』は凄い」
「あれは画商も頭が痛かったかも」
「いや、当時は割と売れたかも知れないけどね」
 
「ですね。でも創作家は究極の作品を追及したらダメだと思うんですよ」
「うんうん」
 
「究めようとしたら、全てベートーヴェンの第九になっちゃうと思うんです。ベートーヴェンという音楽史上最高の天才がその人生全てを掛けて辿り着いた究極の作品ですよ。それを越えるものが作れる訳が無い」
 
「かも知れないね。僕なんかは思いついたら全部作品にしてるだけだけどね」
「醍醐は芸術は最大(maximum)のものを追及しても意味無い。極大(maximal)であればいいと言うんですよね。私は必ずしも賛成できないんですけど」
 
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(数学用語で、最大とは全てのものより大きいもののこと、極大とはそれより大きなものが無いこと:つまり比較不能なものが存在する可能性がある)
 
「いや、それはある意味当たっていると思う」
「私はそれでも最大を目指していたんですけどね。しばしば完成していると思うものを捨てて新たな発想で書いたり」
 
「でも方針を変えるんだ?」
「ここしばらく自分の作品がどうしても似てきていることに危機感を感じているんです」
「そういう危機感を持つことはいいことだと思う。いかに新境地を開拓するかだよね」
 
「ですね。ケイは忙しすぎるんだよ。もっと仕事を絞った方がいい、と浜名からも醍醐からも言われました」
 
「うん。僕の轍を踏んじゃいけないよ」
「先生の場合は凄すぎます。私にはやろうとしてもできないですよ。でも醍醐はどうしてもケイの名前の作品が必要なら、私がケイの名前で書いてあげるよなんて言うんですけどね」
「あはは」
 
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「これ、彼女がサンプルで書いてくれた作品なんですよ」
と言って私は上島先生に『ボクのコーヒーカップ』という作品を見せる。
 
「これケイちゃんが書いたとしか思えない!」
「でしょ? 私も自分が過去に書いた作品で忘れているものではと思っちゃいましたよ」
「彼女ってコピーの天才なんだね」
 

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「ケイちゃん、宮城イナイをどう思う?」
と上島先生は訊いた。
 
「ああいうアーティストが出てくるのは時間の問題だったと思います。私、初音ミクのライブなども見ましたけど、充分いいライブ・パフォーマンスをしていたんですよね。あとは技術力だけの問題でした」
と私は答える。
 
「宮城のCGは作成者の横井さんが自作のスーパーコンピュータで作っているらしいね」
「ええ。インテルのCore i7オクタルコアを32個並列したお化けマシンらしいです。実際に組み立ててOSとかを調整したのはTS大学の院生さんらしいですけど。でもこんなのを使わないといけないのはあと数年で、その内 1 CPUでこのくらい楽々と生成できるパソコンが出てきますよ、と横井さんはおっしゃっていたようです」
 
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「だけど僕は思うんだけど、そもそもアイドル自体が虚像だよね」
 
「同感です。たとえば最近売出中の丸口美紅ちゃんにしてもファンが見ているのは丸口美紅プロジェクトが作り出した虚像であって、木村聡海ちゃんは実は丸口美紅というキャラクターを演じている人にすぎないんですよ」
 
「でも多くのアイドルはいつかその虚像を捨てて本来の自分を見せ始める」
「それとともに人気も凋落するんです」
 
「まあ中には30歳、40歳までその虚像をキープする人もいるけどね」
「ええ。それもまた驚異的です」
 

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「ところで宮城イナイ、男の娘疑惑というのがあるらしいね」
「ええ。あの子の顔の部品の配置が男の子っぽいらしいです」
「顔写真から性別判定するソフトに掛けたら80%の確率で男性と出たとか」
 
「でも、アイドルって目鼻立ちのハッキリした子が多いから、わりと男顔の女性アイドルっているんですよね」
「うんうん。そういえばうちのアクアなんだけど」
「ああ、女顔と判定が出たらしいですね」
「そうそう」
と言って上島先生は笑っている。
 
「実は女の子なのに、男の子のふりをしているだけではとか疑われたらしい」
「そんなこと言われても困っちゃう、とかアクアは言っていたけど、またその困った風な感じが女の子っぽくて」
 
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「あの子、僕は本当は神取忍さんみたいな男の中の男になるのが理想です、と言って、神取忍さんは女性ですがと突っ込まれてました」
「神取忍さんの性別を誤解していたみたいだね」
 

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3月9日(月)。私は★★レコードの加藤課長から相談したいことがあると言われ出て行った。行くとЯRテレビの高梁制作部長も来ている。
 
「実は10月放送開始予定のアニメの企画を練っているのですが、週刊カトレアに連載中の『ハイスクール・ロッカー』を原作に使う予定なのです」
 
と高梁さんが説明する。
 
週刊カトレアは昨年創刊された史上初の少女漫画週刊誌である。少女漫画家は少年漫画家に比べて絵のディテールにこだわる人が多く結果的に遅筆な人が多い。しかし少女漫画を原作としたアニメは大量のオリジナルストーリーを追加した上でちゃんと週単位の制作が行われてきた。
 
この雑誌はそういうアニメ制作の理論を雑誌制作の現場に逆輸入した体制を取っている。1週間というスパンで漫画を完成させるため、徹底的なデジタル化と社をあげての組織的なアシスタント運用を行っている。アシスタントは漫画家から手当をもらうのではなく雑誌社から給料を支給されておりタイムカードに従って残業代もきっちり払われている。純粋に作画のみのお仕事であり、食事作りなどの雑用をする必要もない。
 
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ほとんどの作品でネームと絵を分担しており、『ハイスクール・ロッカー』も2人のネーム作者と1人の絵担当者の3人でチームを組んで描いている。絵もメインキャラ(この漫画の場合はバンドメンバーの4人と主人公・副主人公の憧れている男の子、合計6人)以外はアシスタントが描く。但しキャラごとに担当するアシスタントは固定されていて絵柄がぶれないようにしている。ネームは基本的に隔週の交代なので「今週のネームは**だからなあ」などといった会話が読者の間ではなされていたりする。
 
その新しい試みの少女漫画週刊誌の中で『ハイスクール・ロッカー』はこの雑誌の人気の中核となっており、女子中生・女子高生などのアンケートを見ても、この漫画を読みたいからこの雑誌を買うという人がかなりあるようである。
 
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「それでその作品内で登場する女子高生バンド『ピーチ・ピッキー』の演奏を番組内で流したいのですが、この手の過去の映像作品では、だいたい大人のソングライターが、女子高生っぽい雰囲気で書いた作品が多かったんですよね」
と高梁さんは言う。
 
「でもそれは高校生らしい未熟さが無いですよね」
「そうなんです! 特に放送局や企画側が良質のものを求めるほど、とても女子高生の作品には見えなくなってしまうんです」
 
「そこにリアルさを求めるのでしたら本当の女子高生作家に書かせるしかないと思います」
と私は言った。
 
「私もそう思ったんです。それで、ちょっと小耳にはさんだのが、槇原愛の最近の作品を書いている鈴蘭杏梨絵斗という作者が実は女子高生とかで。作品は実際に女子高生の作曲家が書いたものをケイさんがとりまとめておられるとお聞きしたので、ちょっとご相談できないかと思ったんですよ」
 
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なるほどー。私は青葉のマネージャー役か!
 
私は若干青葉に嫉妬の心を持ちながらも笑顔で応じる。
 
「そういう用途にでしたら、彼女はとても使えません。これが彼女の渾身の作品ですよ」
 
と言って私は高梁さんにKARIONの『黄金の琵琶』を聴かせる。
 

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「これ、KARIONですよね? 今年のRC大賞候補になると思います」
「要するに彼女はうますぎるんですよ。全然女子高生らしくない」
「音楽関係の高校とかに在学しておられるんですか?」
「いや。そういう教育を受けている人にはこういう才能をそのままぶつけたような作品は書けないです。彼女はひじょうに高い霊的な能力を持っていて、アカシックレコードから浮かび上がってきたイマジネーションをそのまま作品として固定する力を持っているんですよ。それでこういう作品になる。だからもっとへたな人を探した方がいい」
 
「そうなりますか・・・・。実は、オーディションをやってみようかとも思ったのですが、そうすると優秀すぎる作品ばかり集まりそうな気がして」
 
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「女子高生離れした凄いのばかり応募されてくるでしょうね」
と私は苦笑しながら言う。
 
「それでですね。実はこの絵斗というか固有名では大宮万葉の名前を使っているのですが、その大宮の友人に、今一所懸命作曲の勉強はしているものの、まだまだ未熟な子がいましてね」
と私は言った。
 
「おお!その人を紹介してもらえませんか?」
と高梁さん。
 
そこで私は清原空帆を紹介することにしたのである。
 

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