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■夏の日の想い出・事故は起きるものさ(7)

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ファミレスの化粧室で軽くメイクをしてからまた千里の運転で放送局に入る。千里は私たちの出番の間寝ているということであった。その後、カーニバルのイベントが行われるイベントホールに行き、★★レコードのスタッフさんと合流する。観光課の人と少しお話した上で私たちは会場のステージに立ち、ポルトガル語で『雪月花』の中の『花の里』『光る情熱』『ファイト!白雪姫』を歌った。白雪姫を歌っていた時は、昨夜の事故の後で政子にキスして起こしたことを思い出した。
 
しかしあれは不思議だ。結構な事故だった気がするが、3人とも全く怪我していなかったし、車もほとんど無傷であった。でもあの炎上していたのは何だったのだろう。夢でも見ていたのだろうか。
 
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ステージはかなり盛り上がり、アンコールされたので『雪を割る鈴』を歌ったが、日本語で歌わせてもらった。ポルトガル語の歌詞は、さっきの3曲しか覚えていなかったのである。
 

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イベントが終わったら、青葉も到着していた。
 
「もう呪いは完全にクリアされていますね。大丈夫です」
と彼女も言った。
 
それで神戸で一泊してから帰ろうなどと言っていたのだが、そこにメールが入る。町添さんからで「緊急に話がしたい」ということだった。それで私たちは新幹線で東京に向かうことにした。
 
「車は私と青葉で交代して東京まで回送するよ」
と千里。
 
「うん。お願い。マンションの合い鍵も渡しておくから勝手に入って調べててもらえる?」
と言って鍵を渡してから私はふと思いつき
 
「青葉もう免許取ったんだっけ?」
と訊く。
 
「まだ取ってません。今度の夏休みに取るつもりですが」
 
と言って青葉も困っている様子。
 
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「無免許運転させるの〜?」
「青葉充分うまいけどなあ」
「一応千里が全部運転してよ。時間はかかって構わないから」
「了解了解」
 

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それで私と政子は新神戸駅まで送ってもらい新幹線に乗る。ホームの売店にもう夕刊が出ていたので、何気なく買って車内で広げる。その時、私はその記事に衝撃を覚えた。
 
《不酸卑惨、東北道でワゴン車横転。2名死亡》
 
それで記事を読むと、不酸卑惨のメンバーが乗っていたワゴン車が昨夜東北道を走行中、折からの雪が積もった路面でスリップし、中央分離帯に激突。死者が2名出ているということであった。その記事では死亡したのが誰かは書かれていなかった。
 
私たちは個室に乗っているので、千里に電話してみた。青葉が電話に出る。
 
「千里姉さんは今運転中なんですよ」
と青葉。
 
「不酸卑惨のニュース聞いた?」
「今スマホで情報収集中です。本人確認に手間取ったようなんですが、死亡したのはネズダベさんとゴキガバさんです」
「わぁ・・・・・」
 
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「術者は冬子さんと政子さんを殺そうとしていました。つまり2人分の骸(むくろ)が必要だったんです。それでその2人が死んだんだと思います」
 
「じゃ、彼らが呪いを掛けたの?」
「冬子さん、事故が起きたの23:13だったって言っておられましたよね」
「うん」
「その数字《不酸卑惨》と読めるんですよ」
 
「うっ・・・・」
「ちなみに、こないだ本坂さんがお風呂で亡くなったのも23時すぎくらいなんです」
「まさか・・・・」
 
「あれは呪いだと私、聞いた瞬間思いましたよ」
 
「ね・・・まさか、青葉最初から彼らが私に呪いを掛けたと知ってた?」
「疑ってはいましたが、確信を持てないことは言わない主義なので」
 
うーん。。。。。
 
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「これ呪いを掛けたのはどっち?」
「それは知る必要は無いと思います」
 
私は考えたが青葉の言う通りだと思った。
 
「うん。私はこのことは忘れることにする」
「それがいいです」
 
後から報道されていた内容によると、ワゴン車はリーダーのネズダベさんが運転していたらしい。中央分離帯に激突した時、助手席に乗っていたゴキガバさんがシートベルトをしていなかったため車外に投げ出されて路面に叩き付けられ即死。そこに後続車が来て何重にも轢かれたため、遺体がひどい状態になっていたらしい。ただ検死で彼が即死していたことが明かであったので、轢いてしまった後続の車のドライバーは責任は問われなくて済むらしい。ネズダベさんは救急車で運ばれたものの病院で死亡が確認されたとのこと。彼も衝突の衝撃で顔が潰れていたらしい。
 
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なお、ワゴン車には他のメンバー3人も乗っていたものの、全員シートベルトをしていたおかげで軽傷で済んだということであった。しかし警察が現場検証をしていたら車内から違法な薬物が発見された。それでその3人は尿検査を受けさせられ、3人とも陽性であったため、全員塀の中の人となってしまった。彼らはステージの度に薬物を使用していたことを告白した。
 
そもそもの事故の原因も薬物を摂取しての運転ではないかと警察は推測したようである。
 
彼らのCDは速攻で大手レンタル店も含めて店頭から回収され、後日、不酸卑惨の解散、CD廃盤が事務所から発表された。
 

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その事故が起きた日、私たちが★★レコードに駆け付けると、話はやはりその事故のことであった。
 
★★レコードの制作部フロアに到着すると氷川さんが「こちらへ」と言って会議室に招き入れる。町添部長・松前社長・加藤課長が難しい顔をして並んでいる。私たちが入って行くと、町添部長が
 
「実は昨夜、不酸卑惨のメンバーが乗ったワゴン車が東北道で横転してね」
と切り出した。
 
「新聞と速報で見ました。ネズダベさんとゴキガバさんが亡くなったそうですね」
「うん。それなんだけど、ネズダベ君の個人ブログに穏やかならざる書き込みがあってね」
「へ?」
 
「マリちゃんは見ない方がいい。ケイちゃん、ちょっと見てくれる?」
 
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というので私は政子に目をつぶっているように言って、それを見た。タイムスタンプが23:13だったので私はゾッとした。
 
《俺たちを復興支援イベントから排除した邪悪なるローズ+リリーに今鉄槌が振り下ろされた。そもそもケイはオカマの上に、醜悪なニセ作曲家である。ケイの名前で発表されている曲の大半は、水沢歌月・柊洋子・美冬舞子という女性3人が分担して書いている。このような嘘で固めたニセ女のニセ作曲家には天罰が与えられるべきである。先日のニセ作曲家・本坂と同様にこの世から消えてもらう。これでもう2008年組の時代は終わった。ケイがこの世から消えたことで★★レコードも潰れるであろう。これからは我らが《不酸卑惨》の天下である》
 
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私は読んで顔をしかめる。
 
「水沢歌月も柊洋子も美冬舞子も私自身の別名なんですが」
と私は戸惑うように言った。
 
「ね?」
と町添さんも呆れたように返事する。
 
「水沢歌月がケイちゃんと同一人物だってのは音楽業界じゃもう知らない人は居ないと思っていたんだけどね」
と松前社長が言うが
 
「私それを知らないふうの人物をふたり知っています」
と氷川さんが言う。
「UTPの須藤社長とローズクォーツのリーダーのマキさんです」
 
「そんなケイちゃんの近くに居る人がなぜ気づかない?」
「勘の悪い人たちっているんですよ」
と氷川さん。
 
「じゃネズダベ君もその部類か」
「思い込みの激しい人って情報を正確に判断する能力がないから」
「しばしば怪しげな情報ほど信じるよね」
 
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「それでこの書き込みは、事務所の人が気づいて速攻で削除した。彼らが変なことを書いたりしないように、書き込みがあったら事務所スタッフにメールが入るように設定していたんだよ。それで投稿されてから担当者の判断で即消されるまでの時間は約1分。その間のアクセスは2件だけだけど、ネットなどに転載された気配は無い」
 
と加藤課長が言う。
 
「実は昨夜、富山の大宮万葉から連絡がありまして」
 
と言って、私は青葉から誰かが自分たちに呪いを掛けたことを聞いたことを告げる。
 
「それで大宮万葉の姉の醍醐春海がちょうどうちに来たので、神戸までの運転を頼んだんですよ。私が運転したら、絶対事故が起きるからと言われて」
 
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「それは良かった!」
と加藤課長。
 
話が面倒になるので政子が運転していて事故ったことは言わない。そんなことを言ったら、恐らく政子に免許を返上させろと言われる。
 
「いや正直君たちの無事な顔を見るまで僕は気が気じゃ無かったんだよ」
と松前社長。
 
「だいたい今回の復興支援イベントって、向こうから出演拒否したんじゃないんですか?」
 
「だと思うんだけどねー。向こうでは例の音楽番組の発言で自分たちがローズ+リリーに嫌われたと勝手に思い込んでいたふしがある」
 
「怒ったのは芹菜リセさんでしょ。私は全然気にしてないのに」
と私は言うが
 
「ケイちゃんのそういう寛容な性格を理解できなかったんだよ」
と町添さんは言う。
 
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「他人に寛容になれない人って、他人の寛容さも理解できないんですよね。勝手に嫌われたとか怒ってるとか思い込む」
と氷川さんが言う。
 

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「だけど実際問題として、うちの会社のケイちゃんへの依存率は物凄く大きいんだよね。ほんとに今ケイちゃんに何かあったらうちは倒産するよ」
と松前社長が言う。
 
「他に上島先生もでしょ?」
 
「うん。あらためて加藤君に計算してもらったんだけど、大急ぎで計算したので名義借りの分を全部計算しきってないかも知れないけど、売上金額の依存率の高さでは、ケイちゃん・マリちゃんがトップ。それから上島君、それから後藤正俊さん、田中晶星さん、その次くらいが醍醐春海こと鴨乃清見さん、スイート・ヴァニラズのElise,Londaさん。この6組で実にうちの売上げの9割を占めている」
 
確かにそのメンツなら9割行くかも知れない。
 
「後藤さんにしても、醍醐さんにしても自分の名義で書いている以外のものが多くて、実はよく分からない。ひょっとしたら上島君を抜いているかも知れない」
 
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「上島先生は多数のレコード会社にまたがってますから」
「それもあるし、上島君の場合、売れてる曲も書いてるけど売れてない曲が多くて、曲数では年間300曲以上あるけど、売上ベースでは1割程度にすぎない」
 
「とにかく緊急役員会を開いて、この6組にドライバーを★★レコードの費用で雇うことにした」
 
「えーー!?」
「もちろん君たちに車の運転を禁止するわけではない。特にケイちゃんとか醍醐君とか、運転しながら曲を思いつくんだとよく言ってるよね」
 
「はい」
 
「だから自分で運転してもいいけど、ちょっとでもきついと思ったらその専任ドライバーを24時間いつでも遠慮無く呼び出して欲しい」
 
「その運転手さんの体力が心配です」
「10人くらいでチームを組むので、その時対応できる人が対応する。彼らには充分な給与を払って他の仕事をしなくても大丈夫なようにするから」
 
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「だったら安心ですね!」
「女性の作曲家さんにはできるだけ女性のドライバーを行かせるけど、タイミング次第では男性になる時もあるかも知れない」
「それは気にしませんよ。着替える時は向こう向いててもらったらいいし」
 
「買物とかデートとかの私用でも自由に使っていいし、遠出している時に必要になった場合でも、こちらで近くの★★レコードの支社とか営業所に連絡して誰か行かせるから」
 
「分かりました」
「専用の呼び出し電話番号・メールアドレスを後日連絡するね」
 
「遠慮無く使わせてもらうかも」
「うん。とにかく疲れたとか眠いという時は絶対に無理しないで」
「ええ。そういう時は締め切りが過ぎていても休ませて頂きます」
 
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と言ったら、氷川さんは笑っていたが、加藤課長は困ったような顔をしていた。
 

「しかしさっきの書き込みから見ると、本坂さんもひょっとして呪いを掛けられていたのかね?」
 
と松前社長が言う。
 
「それは間違い無いと大宮万葉が言っていました」
 
「彼女って日本で五指に入る霊能者だと言っていたよね?」
「そうです」
 
「だとすると、ちょっと気の毒だね、本坂さん」
 
「その件、先日私と上島先生・東郷先生の3人で、立ち話の状態で話していたのですが、レコード会社から長年の貢献に対して慰労金か何かを遺族に渡せないだろうかと。特に里山さんは法的な婚姻関係が無かったので、遺産ももらえないと思うんですよ。子供たちの親権の行方も心配で。お父さんを亡くしたのに、お母さんからまで引き裂かれたら、あの子たち可哀想だと」
 
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と私は言う。
 
「それはちょっと私が関係各方面と早急に調整してみる」
と松前社長が言ってくれた。
 

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