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■夏の日の想い出・事故は起きるものさ(3)

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「あの子、最初は別の所に里子に出されていたと言っておられましたね」
と私は上島先生に振る。
 
「うん。実はそのことを僕や支香さえも知らなかったんだよ。だからどういう経緯でふたりが龍虎を友人の所に託したのかは分からない。でも託されていたミュージシャン夫婦の旦那さんが崖から転落する事故で亡くなって、ちょうどその頃、あの子が大病をして、高岡たちが死んだ後、養育費の送金も途絶えていたらしいんだよね。それで病院代も負担しきれないし、そもそも旦那が死んで生活にも困る状態になっていたので、音楽関係者のツテをたどって支香の所に何とか連絡を付けて泣きついて、それで支香は龍虎の存在を知ったんだよ」
 
「DNA鑑定とかはしたんでしょ?」
 
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「した。それで高岡と夕香の子供で間違い無いという結論に達した。実は戸籍自体存在していなかったので、そこから作った。だけど高岡の父親はいろいろ疑心暗鬼になっていて、その鑑定結果を信じてくれなかった。7年経った今でもそうなんだけどね。それで取り敢えず支香が彼の後見人になったんだよ」
 
「ちょうどその頃、あの子はずっと入院していたんですね」
と千里が言う。
 
「そうそう。2年くらい入退院を繰り返しているから幼稚園の年長から小学1年生に掛けて、半分以上病院の中に居たし、その間、診断名がコロコロ変わったんだよ。結局、渋川市の病院にその方面に詳しいお医者さんがいることが分かり、そこに最終的に転院した。結局、体内のちょっと難しい部位に腫瘍が出来ていたんだけど、普通の検査ではそれを見付けきれなかった。それで診断が二転三転していたみたいだね。小児癌とかとも性質が異なるらしくて、ホントに珍しいケースだったらしい。最新の化学療法で腫瘍を小さくした上で最終的には摘出手術。でも髪の毛が一時は全部無くなるほどの化学療法と長時間に及ぶ大手術に耐え抜いて、その後は再発することもなく元気になったからね。運が強い子だと思う」
 
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と上島先生が言うと、千里が何か微笑んでいる。私はその千里の表情の意味を読めなかった。
 
「手術の後も数ヶ月病院で療養していたのだけど、その時病院内で田代夫婦と知り合ったんだよ。詳細は分からないのだけど、あの夫婦、医学的に子供が作れないらしくて。それで龍虎とすっかり仲良くなったもので、自分たちの子供にならないか?と言って、支香もミュージシャン活動の傍ら龍虎の世話をするのには困難を感じていたので、田代夫婦に託すことになったんだよ。生活資金は僕が毎月送金していた」
 
と上島先生。
 
「私、6年前に龍虎と会った時、彼、自分のお父さん・お母さんは死んじゃったと言ってたけど、その記憶、たぶん最初の里親のお父さんとの混線もあったかもと後から思った」
 
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と千里が言う。
 
「川南ちゃんも凄く龍虎の支えになったみたいだね」
と上島先生。
 
「そうなんですよ。かなり龍虎にちょっかい出していて。それで川南を通して私も龍虎が新しいお父さん・お母さんの所に行ったという話を聞いたんですよね。川南はよく龍虎と手紙のやりとりとかして、何度か会いにも行っていたみたいだし」
と千里。
 
「それでついでに女の子になれよと唆して」
と私。
 
「そうそう。川南は龍虎が凄い美少年に成長すると予想していたみたい」
と千里。
 

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「僕がちょっと心配しているのはね。あの子の腫瘍の治療に使用した制癌剤があの子の生殖機能に打撃を与えていて、それであの子第二次性徴が遅れているのではということなんだけどね。かなり強いもの使ったみたいだから。ちょっと受診してみない?と訊いてみたんだけど、自分は今のままでいいと言うので」
 
と上島先生。
 
「そのあたりもあるかも知れないけど、あの子、否定はしているけど、けっこう女の子の服着ているみたいで、女の子の服を着るのに、睾丸をほぼ常時体内に格納しているみたいなんですよね。第二次性徴の遅れはその影響もある気がします」
と千里は言った。
 
「私や千里と似た感じか」
 
「人為的な停留睾丸状態だよね。それから川南に、おちんちんいじってたら切られちゃうぞと脅かされて、オナニーがしたくてもずっとせずに我慢していたらしい。なにせ実際におちんちん切っちゃった私という存在を見てますからね。脅しがよく効いているんですよ。それも男性器の発達を遅らせてるかも」
 
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「でもよくオナニー我慢できるね」
と上島先生が言っている。
 
「雨宮君によると、オナ禁ってのはいったん壁を越えると後は何とかなるらしいよ」
と加藤さんが言う。
 
「でもあの先生はオナニーはしないかも知れないけど、たくさんセックスしてるから」
「毎月2−3人とやってるみたいね」
などと千里と私が会話すると上島先生が笑っている。
 
「でもあの子は女の子になりたい男の子じゃないと思う。ただ、もうしばらくは『男』にならずに『中性的な子供』に留まっていたいだけなんじゃないかな。モラトリアムをむさぼっているんだよ」
 
と千里。
 
「そうそう。あの子はたぶんモラトリアム・ボーイなんだよ」
と上島さんも同意するように言った。
 
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その言葉を聞いて、私は、そういえば自分も男になるか女になるか決断ができなくて、ホルモンニュートラルの状態にしていた時期があったなと昔のことを思い起こしていた。
 
千里の場合はどうも話を聞いているとニュートラルどころか(本人の意志と無関係に?)最初から大量の女性ホルモンを投与されているっぽい。
 

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さて、その龍虎=アクアであるが、年末に放送された女装コンテスト番組であまりに可愛い美少女姿を全国に曝したことから物凄い勢いで人気が急騰する。それで急遽CDデビューすることになったのだが、その楽曲について、打ち合せしたいということで私は1月6日、横浜市内の料亭に呼び出された。来ていたメンツを見て私は驚いた。
 
町添部長の他に、上島先生、千里、まではいいのだが、もうひとりその場に居たのが元アイドルの日野ソナタさんである。
 
「お互い初対面の人もありそうなので紹介しましょう」
と町添さんが言う。
 
「こちらは作曲家の上島雷太先生、こちらはシンガーソングライターのケイ先生、作曲家の醍醐春海先生、そして作詞家の霧島鮎子先生」
 
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この紹介の順序はクリエイターとして活動し始めた時期の順序かなと私は思った。しかし私は驚いていた。
 
「霧島鮎子って日野さんだったんですか!」
 
霧島鮎子というのは昨年唐突に出てきた名前であった。作曲家の桜島法子さんと組んで2年以上掛けて日本のあちこちの離島の写真を撮って回りふたりでたくさんの曲を書いた。その一部をローズクォーツが歌って昨年11月に『アイランド・リリカル』というアルバムで発表したのである(ボーカルはOzma Dream)。
 
「その件は内緒で」
と日野さん。
 
「ついでに私の正体も内緒で」
と千里も便乗して言っている。
 
「醍醐さんとは、春風アルトと上島先生の結婚式の時にもお会いしましたね」
と日野さんは言う。
 
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「はい、ご無沙汰しておりました。でも私も霧島さんが日野さんとは知りませんでした」
と千里。
 

日野ソナタ、春風アルト、夏風ロビンは§§プロに所属していたのだが、2008年の秋に夏風ロビンは事務所と対立し、契約解除を巡り裁判で争う事態になる。その時、東郷誠一さんが事務所とロビンとの間を取り持ち、両者を和解に至らせた。彼女はその後別の事務所に移ってシンガーソングライターとして活動し始めたものの、全く売れなかった。
 
しかし2010年に木ノ下大吉さんが失踪騒ぎを起こして引退してしまった後、木ノ下先生が楽曲を提供していた坂井真紅に新たに桜島法子という作曲家が楽曲を提供するようになる。この桜島法子というのが、実は誰かの仮名ではと随分詮索されたのだが、昨年あたりから、夏風ロビンなのではという噂が一部の関係者の間で囁かれるようになった。
 
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そして秋、霧島鮎子は桜島法子と組んで『アイランド・リリカル』を制作したのである(ただしふたりは楽曲を提供しただけで、ローズクォーツの制作現場には顔を出していない。制作を指揮したのは雨宮先生から指名された田船美玲さんである。彼女はバインディングスクリューの事実上のプロデューサーだ)。
 
「§§プロのタレントさんは桜島さんとは交流禁止になっているかと思っていました」
と私は言う。
 
「昨年春に、私と東郷先生が仲介して、桜島が紅川さんを招待する形の席を設けたんだよ。その場で桜島は再度紅川さんに謝罪して、それで両者手打ちということにしたんだ。それで『アイランド・リリカル』を公開することができるようになったんだよ」
 
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「いや、埋もれさすにはもったいない作品ですよ」
 
「なんかCDも写真集も飛ぶように売れているんでびっくりしている」
と日野さんは言っていた。
 

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「だけど醍醐さんも、世間には全然露出してないよね」
と上島先生が水割りを飲みながら語る。
 
「まあ最初お仕事を頂き始めた頃、まだ高校生でしたので」
と千里。
 
「いや高校生であれだけの作品を書くのは凄い」
と上島先生が千里を褒める。上島先生は千里が鴨乃清見でもあることを知っている。
 
「いや中学生であれだけの作品を書いていたケイがもっと凄いです」
と千里は言う。
 
「私は中学生時代は純粋に楽譜の整理をしていただけだよ。自分の作品で初めて満足の行く出来になったのは高校1年の夏に書いた『あの夏の日』」
 
「醍醐さんの最初の作品って何だろう?」
「ここだけの話ですが、雨宮先生のお名前で書いた『走れ!翔べ!撃て!』。Parking Serviceが歌った2007年インターハイ・バスケのテーマ曲です」
 
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「へー」
「そのお披露目の時に、会場の唐津体育館でParking Serviceのバックで踊ったPatrol Girlsの中にケイが居た訳で」
と千里。
 
「へー!!!」
 
「なんか私と醍醐って、微妙に絡み合っていたんですよ」
と私は言う。
 
「ケイちゃんがPatrol Girlsだったとは知らなかった」
と上島先生。
 
「あの日だけ臨時で徴用されたんです。たまたま浜松町駅で白浜さんにバッタリ出会って。で、そのバスケットの開会式フロアに醍醐は居たんですよ」
 
「それはまた何で?インターハイのスタッフか何か?」
と上島先生が訊く。
 
「インターハイに出場した選手ですよ」
と私。
 
「醍醐さんってバスケット選手なんだ!?」
と上島さんも日野さんも驚いている。
 
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「雨宮先生が、バスケのルールもよく分かってない自分が書くより選手の私が書いたほうがいい曲になると言って、私を乗せてあの曲を書かせたんですよ。でも自分が出場するインターハイの開会式に自分の曲を聴いたのは凄い感激でした」
と千里。
 
「それは素晴らしい。醍醐さん、インターハイに出られるって凄いね」
「千里、その腕時計を上島先生に見せてあげなよ」
 
と私は言う。それで千里は自分の左手にはめていた銀色のティソの腕時計を外すと上島先生に渡す。
 
「え〜〜!?凄い!」
 
と上島先生は文字盤の裏に刻まれた文字を見て言った。日野さんものぞき込んで驚いている様子だ。
 
「この世に5個しか存在しないものです」
と千里。
 
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「それを普段使いにしてるんだ?」
「だって腕時計は腕にはめてもらうために生まれてきたんだから、飾っておくのは可哀想ですよ」
 
「ああ、そういう考え方、僕も好き」
と上島先生は言うが
 
「いや、私ならガラスのケースに入れて警報装置付けておく」
と日野さんは言っている。
 
「彼女はインターハイで2年連続スリーポイント女王になってますから」
「スリーポイントの名手なんだ?」
「まあ、それしか才能が無いというか」
 
「現在A代表でシューティングガードとして活躍している花園亜津子さんが唯一認めたライバルらしい」
と私。
 
「そんなに凄いのか!」
 
「今、どこかの実業団とかに所属してるの?」
「いえ。東京の40minutesというクラブチームです。実は私が自分で設立したチームなんですけどね。ですからアマチュアですよ」
 
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「今月末に関東クラブ選手権に出場します。5位以内に入れば全日本クラブ選手権です」
と私。
「うん。久しぶりの全国大会、行きたいけどね。ちなみにケイがオーナーをしているチームも同じ関東クラブ選手権に出場します」
 
「それは楽しみだね」
と上島先生。
 
「なんかインターハイとか、更にそのスリーポイント女王とか、雲の上の世界だなあ」
と日野さんが言うが
 
「多くの女の子にとって、日野さんとか春風アルトさんとかは雲の上の存在ですよ」
と千里は言う。
 
「それは時々言われることあるよ」
と日野さんも言った。
 

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