広告:ここはグリーン・ウッド (第1巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・受験生のクリスマス(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-11-14

 
2009年12月。
 
受験勉強中の私と政子の元に、○○プロの浦中部長が訪れた。この日、私は政子の家に行って一緒に勉強していたのだが、電話が掛かってきて一緒にいるというと好都合ということで来てくださったのである。
 
タレントを何百人も抱えた○○プロの実質経営者で物凄く多忙な浦中さんが、わざわざこちらを訪問してくるというのは超異例である。浦中さんと部下の前田課長が、ふたりともアタッシェケースや大型バッグを両手に持っていたが、ふたりともそのかばんに防犯チェーンまで付けていた。しかも警備会社の制服を着た人が玄関のところまで付いてきた。
 
政子のお母さんが驚いて
「いったい何をお持ちになったんですか?」
と言っている。
 
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「君たちにファンからのプレゼントなんだけど、内容がもの凄く微妙だったので僕が直接持って来た」
 
と浦中さんは言う。
 
ひとつめのアタッシェケースは大量のお札やお守りである。
「君たちが受験勉強中ということで、受験祈願ということで送ってくれたみたいなんだけど、カミソリなどの危険物が入ってないか金属探知機やX線透過機で確認した上で、何人かの霊能者の人に来てもらって、変な念が込められているものがないかをチェックしてもらった。念のため最低2人以上の人にチェックしてもらうようにした」
 
「ひゃー!」
「危ないものありました?」
と政子が訊くが
 
「まあ、君たちは気にしなくていい」
と浦中さんが言うので、きっと呪いとかを封じ込んだものがあったのだろう!
 
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2つ目、大型バッグを開けると受験参考書、△△△大学の過去の入試問題、またネット模試のチケットなどの類いであった。私たちが△△△大学を受験するというのは公表していないのだが、隠してもいないので熱心なファンは知っているようだ。
 
「マリ、たくさん模試を受けられるみたい」
「ありがたくたくさん受験させてもらおう」
 
「でも参考書とかはこんなにあってもどうしようもないです。○○プロの方で高校生や受験生が家族にいる方にでも差し上げてください。
 
「うん。じゃ本の類いはそうさせてもらおう」
 
3つ目は栄養ドリンクの類いである。
 
「これはけっこうありがたいかも」
「ケイと私で半分こしよう」
「これは一部だけ持って来た。この類いはまだ事務所にもたくさんあるから、あとで届けさせるよ」
「ありがとうございます」
 
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そして最後のアタッシェケースを開けて、私も政子も戸惑う。
 
「お薬がたくさんありますが」
「危険な薬物があると困るから、これは警視庁に行って、こちらで頼んだ薬剤師の人と警察の鑑識の人と一緒に確認した」
「警察ですか?」
「覚醒剤とかが出た場合、証拠を保全しないといけないから、1個ずつ慎重に開封したので、この開封作業に3日掛かったんだよ」
「お疲れ様です!」
 
「お薬関係は全部で120個ほどあって、その内1割ほどがヤーバーとかエクスタシーとかいった違法なお薬で、これは警察が各差出人に事情を聞いたけど、みんな違法なものとは知らなかったと主張したので、厳重注意に留めたらしい。但し入手先は正直に申告してもらった」
 
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「その先を辿ればいいということか」
「でもほんとに知らなかったのかなあ」
「知ってたら堂々とファンレターで送ってこないと思うよ」
「かもね」
 
「違法ではないけど危険性のある薬が2割ほどあって、これは警察の助言に従って全部廃棄した」
「廃棄の方法も大変なんでしょ?」
「うん。焼いたりするとその煙が危険。これも警察にお任せ」
「なるほど」
 
「残りの半分くらいが違法性も危険性もない興奮剤や栄養剤の類いだったけど、これは僕の判断で廃棄させてもらった」
「ええ、それでいいです」
 
「で残る40個ほどをここに持って来たんだけどね。これは同系統の薬」
「はい?」
「ケイちゃん、これ見て何か分からない?」
「私、薬とかよく分かりませんが」
と私は言ったのだが、
 
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「あ、これエストロゲンでしょ?」
と政子が言う。
 
「あたり。正確には4割はプエラリアやザクロなどの植物性女性ホルモン、4割が本物のエストロゲンで2割がプロゲステロン」
 
私は苦笑した。
 
「ケイちゃん、可愛い女の子になって戻って来てねということらしい」
「でもこの手の薬は譲渡すると薬事法違反では?」
「警察は見なかったことにすると。これオフレコでね」
「まあ、いいか」
「じゃケイちゃん使う?」
 
「私がもらっちゃおう」
「マリちゃん、女の子がこういう薬を使うと生理不順とかを引き起こすよ」
「大丈夫です。おやつとかに混ぜてケイが知らない間に食べさせますから」
「ああ、なるほどね」
 
私は頭を抱えた。
 
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「注射液もあるけど」
「注射の上手な友達がいるので、その子に打たせます。ケイが寝ている間に」
「ふむふむ」
 

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12月13日(日)。
 
この日私は朝から自分のヴァイオリンRosmarinを持って、都内某所にあるホールに出かけて行った。この日、このホールで従姉の蘭若アスカと友人たちによるジョイントコンサートが開かれることになっていて、そのピアノ伴奏者だったのである。ヴァイオリンを持っていったのはアスカが1曲このヴァイオリンを使いたいということだったのと、幕間に私に1曲ヴァイオリン弾いてよということだったためである。
 
コンサートでは最初に友人たち3人(アスカ・美奈・望海)によるヴァイオリン三重奏でパッヘルベルのカノンを演奏した。司会役の友人・治枝さんに各々紹介された後、今年はアスカ→美奈→望海の順に30分ずつ演奏する。私はアスカの伴奏だけを務めて、望海さんと美奈さんの伴奏は各々別の友人が担当することになっていたのだが・・・・
 
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当日になって
「えーー!?風邪を引いた〜?」
 
ということで演奏できないという話になる。前日ふたり一緒に名古屋でのコンサートに行っていたらしいのだが会場の空調が不調でかなり寒かったらしく、ふたりとも風邪を引いてしまったらしい。慌ててあちこちに電話するものの、なかなかピアニストがつかまらない。
 
「今日いきなり出てきて、初見に近い状態で伴奏する自信が無いとみんな言うんだよね」
「どうする?」
「お母ちゃん、弾けないよね?」
とアスカが自分の母に訊くが
 
「美奈ちゃんのは弾けると思うけど、望海ちゃんの曲って難しいから無理」
と尻込みする。
 
「電話掛けた子たちも、みんな曲名聞いて出来ないって言った」
 
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電話しているのは、アスカたちと同じ大学のピアノ科や弦楽科の生徒たちなのだが、セミプロの彼女たちでもためらうほど今日の望海の楽曲は伴奏が難しいのである。
 
「こうなったら、冬が弾くしかないね」
「それ無茶です!」
と私は抗議する。
 
「だって音楽大学のピアノ科の生徒さんが弾けないと言う曲を、私が弾ける訳ないじゃないですか」
「でも今日の望海の演奏曲は、冬、知ってるよね」
 
「CDで聴いたことはあります」
「聴いたことあるなら、冬なら弾けるはず」
「無理です。私が弾けるならピアノ科の生徒さんなら誰でも弾けるでしょ?」
 
「彼女たちは恥ずかしい演奏をする訳にはいかないんだよ」
「えっと・・・」
「うまく弾けなかったら、音楽大学のピアノ科の学生のくせにこの程度しか弾けないのかと言われてしまう。でも冬なら下手なの当たり前だから問題ない」
 
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「世の中難しいですね。でもちょっと待ってください。それなら私よりもっと若い子を呼び出します」
 
と言って私は後輩の美野里に電話する。
 

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「おはよう」
「おはようございます、冬子先輩」
 
美野里は私が女声で話しかけたので、『冬子』と言ってくれたようだ。
 
「美野里ちゃん、今日は暇?」
「友達と新宿にドリームボーイズのフィルムコンサート見に行くつもりでいたんですけど」
 
「じゃさ、2月13日の博多ドームでのドリームボーイズのライブチケットあげるから、代わりに今日はこちらに出てこない?」
「えーーー!? あれ手に入るんですか? だって2時間で売り切れたのに。友達と4人で電話し続けたのに、一度もつながらなかったんですよ」
 
「じゃお友達の分まであわせて4人分あげるよ」
「でもあれ入場時に身分証明書照合するから、譲渡はできないはず」
「ちゃんと、美野里ちゃんたちの名義にしてあげるから」
 
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「ほんとですか!? じゃ、行きます。どこですか?」
 

「冬。ドリームボーイズのチケットなら私も欲しい」
 
「美野里には難しい伴奏をしてもらうお礼ということで」
「その子に弾かせようというんだ?」
「彼女なら弾けますよ。この曲もお母さんのヴァイオリンと一緒に演奏しているの見たことあるから」
「ほほぉ!」
 
美野里は30分ほどでやってきた。私が事情を説明すると
 
「ああ、大丈夫だと思いますけど、本番前に合わせてみたいです」
と言うので、リハーサルを兼ねて望海と一緒に演奏してもらった。
 
「すごーい。この難曲をよくこんなに簡単に弾くなあ」
と美奈さんが感心している。
 
「こんなに弾けるなら、うちのピアノ科においでよ」
「私M音大からも、K大学からも、E音大からも勧誘されていて」
「ここまで弾ける子はきっと授業料も要らないと思うよ、うちなら」
「そうそう。K大学とかはそういう制度無いから」
「うーん。。。悩むなあ」
「一度うちの**教授に紹介するよ」
「わぁ!**先生は一度お会いしたいです」
「OKOK」
 
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それでオープニングではアスカの母がピアノを伴奏してアスカ・美奈・望海の3人がパッヘルベルのカノンを演奏した。その後、美奈・望海が下がり、ピアニストもアスカの母から私に交代して演奏をする。
 
今日はアスカはブラームスのハンガリー舞曲1〜6番を続けて演奏して、最後は箸休めに『美しきロスマリン』を演奏するというもので、ハンガリー舞曲は彼女が今年5億円で入手した銘器《Luciana》を使用したが、最後の1曲は曲名にちなんで私の《Rosmarin》を使用した。
 
私たちが下がって交代で美奈と、伴奏者のアスカの母が出て行こうとしたのだが・・・こけてしまった。
 
アスカの母が舞台袖に置いてある照明器具のコードに靴のヒールを引っかけて転んでしまったのである。
 
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「大丈夫?」
「イタタタタ」
 
アスカの母は左手の指を押さえている。
 
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