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■夏の日の想い出・受験生のクリスマス(3)

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学校は12月23日の天皇誕生日をはさんで、12月24日(金)は正常授業をした上で25日が終業式である。町はジングルベルに満ちているが、受験生にクリスマスは無い。絵里香さんから
「今年はサンタガールできないよね?」
と念のため打診があったが
「無理〜!」
と答えておいた。この年のサンタガールは貞子ともうひとり後輩の子がしたようである。貞子は今年のインターハイ女子400m,200mの二冠を取ったのを手土産に、静岡県の企業に入り、陸上部で活動することが内定している。
 
終業式の後、仁恵・琴絵と一緒に政子の家に行く。詩津紅も誘ったのだが、今日から塾の集中講座に行ってくるということであった。
 
「受験生はたいていそんなものだよね」
「クリスマス会をしようなどという私たちが多分非常識」
 
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などと言いつつ、11時頃から早めのお昼を兼ねてミニクリスマス会となった。政子のお母さんが用意してくれていたクリスマスケーキを食べ、お母さんが揚げてくれたチキンなども食べながら、
「大宝律令」
「なおいい国に、701年」
「平安遷都」
「鳴くようぐいす平安京、794年」
 
などとやっている。
 
「元寇」
「ひどい船酔い1274年文永の役、二敗目喫す1281年弘安の役」
「なんか、それ暗記法を覚えるのに苦労する気が」
 

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それで12時半頃には「じゃ各自頑張って勉強しよう」などと言って解散するが、政子が私と一緒に出かける態勢なので
 
「あんたたちどこか行くの?」
と琴絵に訊かれる。
 
「内緒」
「秘密」
 
「まあ、デートするのもいいけど勉強も頑張れよ」
「うん。参考書持って行く」
 
などということで、私たちは13時頃に、今日の《アイドル・クリスマス》が行われる代々木アリーナに入った。入館証を見せて中に入り控え室に行くが、政子は「眠くなった。少し寝る」と言って寝てしまう。それで毛布を借りて掛けておいた。
 

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13時15分頃、和泉から電話が掛かってくる。
「小風ダメになった」
「えーー!?」
「今朝、模試の結果を受け取ったんだけど、お父さんが条件としていた点数に2点足りなかった。小風は2点負けてくれないかと言ったらしいけど、お父さんはその2点が足りなくて落ちるのが入試だと言って、許可出ず」
「あらら」
「仕方ないから、3人バージョンのアレンジ使うから、冬は小風のパートを歌ってよ」
「分かった」
「小風の顔マスク用意しておくから」
「用意がいいね!」
 

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政子が当面起きる気配がないので、私は政子が起きたらきっと「お昼御飯」と言うだろうと思い、食料を調達するのに会場近くのコンビニに行った。イベントは13時からだが、最初の方で歌う子たちはあまり知名度の無い子たちなので、まだ会場近くに観客らしき人影は少ない。
 
政子はたくさん食べるだろうからなあと思い、お弁当を5つにパン、お茶などをかごに入れる。お昼の時間帯を過ぎているので、お客さんは少ない。小さな3-4歳の女の子を連れた25-26歳くらいのヤングママがいる。眠そうな顔をした背広姿のサラリーマン風の男性がいる。
 
おやつを選んでいた時、ジャージを着た高校生の女の子数人と遭遇する。向こうもカゴいっぱいにおにぎりや弁当などを入れている。何となく目が合って会釈するが、向こうはこちらの素性には気づいていない雰囲気。
 
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「今日も勝てて良かったね」
「1点差でしたけどね」
「その1点差に悲喜があるから」
「でも先輩たちが凄い実績あげちゃったから、私たちプレッシャーがハンパないです」
「でもだいぶ場慣れもしたでしょ?」
 
グループの中にひとりセーターにジーンズで胸くらいまであるロングヘアの女子がいたが、その子が「先輩」と呼ばれているようである。私は彼女をどこかで見たような気がしたが、思い出せなかった。
 
「だけど現地に来るまで、私、東京体育館って代々木アリーナのことかと思ってた」
などとひとりの子が言っている。
 
「まあ混同する人もいるね。それにウィンターカップは初期の頃は代々木アリーナの第二体育館で開かれていたんだよ。当時は春の開催だったんだけどね」
とロングヘアの女子が言う。
 
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「春にやるのにウィンターカップなんですか?」
「いや、東京体育館に移動して時期も冬になってからウィンターカップと呼ばれるようになったんだよ」
 
「なるほどー」
「びっくりしたー」
「高校生で出られる最後の大会になるからね。一応年明けのオールジャパンもあるけど」
「今年はこちらに出るからオールジャパンは無しですね」
「だけどF女子校とかウィンターカップにも出てオールジャパンにも出るんですね」
「代表選考の方法が都道府県ごとに違うからね」
 
ああ、この子たちは東京体育館で今開かれているバスケットボールのウィンターカップに出る子たちなのか、と私は理解した。昨年、ローズ+リリーの活動で超多忙だった時期に、強引に蔵田さんに呼び出されて、一緒にウィンターカップのテーマ曲を書いたなあ、などというのも思い出す。試合の招待券ももらっていたのだが、大騒動のさなかでとても見に行けず、チケットは詩津紅に譲ったのであった。
 
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「代々木アリーナって戦後間もない頃の東京オリンピックの時に作られたんでしょ?」
「戦後間もなくでもないよ。東京オリンピックは1964年だから、終戦から19年も経っている」
「あれ?結構経ってたのか」
「東京体育館は最近できたんですか?」
 
「ううん。東京体育館の方が古いよ」
「へー」
「東京体育館はその10年くらい前に建てられて1958年のアジア大会でメイン会場に使用されたんだよね。東京オリンピックでも一部の競技は東京体育館で行われている」
「だったら、もう50年以上経ってるんですか!」
「15年くらい前に建て直したはずだよ」
「ですよね。そんなに古くは見えなかったから」
「むしろ代々木アリーナの方が最近は老朽化が問題になってる。コンサートとかする時も音が悪いしね」
「へー。でも今日は何か看板が掛かってましたね」
「アイドル・クリスマスってイベントやるみたいだよ。第一体育館の方で。13時から21時まで8時間ぶっ通し。30分交代で16組のアイドルが出演する」
「アイドルならどうせ歌が下手だから音響もどうでもいいか」
 
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などという声に私は心の中で苦笑する。
 
「W6出ますかね?」
「ラインナップ見た限りでは入ってなかったよ」
「残念!」
「でも16組の内出場が予告されているのは10組だけなんだよね。残る6組は当日会場に居ないと分からない」
「そういうのも面白いですね」
 

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彼女たちがレジの所に行き、私はその次に並んだ。やがて精算が終わり、彼女たちががやがやとおしゃべりしながら出て行く。
 
が、その時、出入口のあたりまで行っていたロングヘアの女の子が「あ、ちょっと待って」というと、私の所に来た。そして小さな声で言った。
 
「水沢歌月さん、これ沖縄で波上大神から言付かったのですが、たぶん歌月さんに渡すものだと思ったから」
と言って、私に水色の鈴を渡した。
 
私は突然「水沢歌月さん」などと呼ばれてびっくりし、それで反射的に鈴を受け取ってしまった。
 
「えっと、どなたでしたっけ?」
「通りがかりの横笛吹きです」
 
と彼女は言ってにこりと笑うと、先に店の外に出ている後輩たちを追うように出入口の方へ行く。その瞬間、私は彼女のことを思い出した。
 
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そうだ!あの子、2年前に唐津でインターハイがあった時、私がParking Service のパックダンサーで行っていた時に遭遇した、笛の上手な女の子だ。でもあの後、私全然横笛の練習してない! でもあの時はあんなに髪は長くなかった。現役引退してから伸ばしたのかな?
 
そんなことを考えていた時、ちょうどコンビニの出入口の所に、マスクをして顔を半分隠した和泉が入って来ようとしていた。一瞬、私と目が合う。すると、ロングヘアの女の子は
 
「森之和泉さん。これ沖縄で波上大神から言付かったのですが、たぶん和泉さんに渡すものだと思ったので」
と言って、私に渡したのと同じ鈴を和泉に渡した。
 
この時和泉は、(後で聞いた話では)彼女が私と言葉を交わしているのを見たので、私の関係者かと思い、つい受け取ってしまったのだという。
 
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「あ、はい」
と言って和泉は鈴を受け取る。
 
するとロングヘアの女の子はそのまま私と和泉に会釈をすると、先行しているジャージ姿の高校生たちの集団の方に小走りで行った。
 
和泉が私の所に寄ってきて
「なんか鈴をもらったけど」
と言う。
 
「私ももらったー」
と私も答えるが、この鈴、どうすればいいんだ?
 
と言っていたら、若いお母さんに連れられてアイスクリームを選んでいた3-4歳の女の子が私たちのそばに寄ってきて
 
「お姉さんたち、それ掌の上に乗せるんだよ」
と言った。
 
それで私も和泉もそれを掌の上に乗せる。
 
すると鈴はスッと消えてしまった。
 
「あれ?落とした??」
と言って和泉が床を探すが私は言った。
 
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「いや、今私も和泉もあの鈴を受け取ったんだと思う」
 
女の子は私たちにニコリと微笑むと、母親の所に駆けて戻っていった。
 

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控え室にいったん寄るが、政子は熟睡しているのでお弁当だけ暖房の影響の少なそうな窓際に置き、鍵を掛けて和泉たちの控え室に行く。
 
「おはようございます」
「おはようございます」
と美空や望月さんとも挨拶を交わし、出番の順序と歌う曲目を確認する。
 
「じゃ今日はローズ+リリーが先で、その後KARIONか」
「うん。まだ人が少ない内にやっちゃおうということで、15:30チェリーツインの後、本来はすぐ16:00から秋風コスモスが歌うんだけど、その前に私と政子が出て行って、何も名乗らないまま1曲歌う」
 
「でも伊豆と違って東京は反応がいいと思うよ。後ろの方の観客にもよく見えるようにジャンボビジョンもあるし。バレるんじゃない?」
と和泉が心配するように言う。
 
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「ジャンボビジョンには映さないらしい。まあ、バレた時はバレた時で。こないだのXANFUSの時みたいにマスクかぶることも考えたんだけどね」
と私。
 
「マスク??」
とその話を知らない美空が尋ねる。
 
「先月沖縄のXANFUSのライブに、冬と政子ちゃん、ちゃっかりゲストタイムに出演して数曲歌ったのよ。その時、正体がばれないように、プロレスラーがかぶるようなマスクかぶってたんだって」
 
と和泉が説明する。
 
「なんかいろいろやってるな」
と美空は楽しそうに言った。
 

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