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■夏の日の想い出・受験生のクリスマス(6)

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取り敢えず暖房の吹出口近くに置いていて熱くなっている缶コーヒーを飲む。
 
「ああ、やはりコーヒーは目が覚めるなあ」
「あれこれ変なものより、結局コーヒーだよね」
 
「でも最近毎晩遅くまで勉強してたから、ちょっと疲れが溜まってたかも」
などと政子は言う。
 
「じゃ帰ったら今日は勉強お休みしてぐっすり寝るといいよ。また明日から頑張ろう」
と私は言ったのだが
 
「ねぇ。寝心地のいいベッドで寝たい」
などと政子は言う。
 
「寝心地のいいベッドというと?」
「高級ホテルのベッド」
 
まあいいかと思ったので、取り敢えず政子のお母さんに電話したら笑って
「ゆっくりしておいで」
と言った。次いで自分の母にも電話したら
「あんたたち、ちゃんと避妊はしてるよね?」
と言われるので
「それは大丈夫だよ」
と答えた。
 
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実際には私たちは一度も通常の意味でのセックスはしたことが無いのだが。
 

クリスマスの晩にこんな時間から取れるホテルがあるだろうかと思ったのだが、一休で検索してみたら、帝国ホテルのツインルームが空いていたので即予約を入れた。
 
「普通のツインなの?スイートは?」
「クリスマスの晩にツインでも空いてたのが奇蹟」
「そっかー。じゃお正月は予約できない?」
「次は合格してから」
「そうだった。私受験生だった!」
 
それで取り敢えず紅川さんにお礼のメールだけしてタクシーを呼び私たちは退出した。多数の歌手・アイドルが来ているので、今日はタクシーは中まで入って来てくれて、一般の人の目に触れないようにして退出できるようになっている。それで私たちも他の人の目には触れないように、代々木アリーナから出ることができた。
 
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そして私たちは有楽町駅近くにある帝国ホテルにそのままタクシーで乗り付けチェックインする。私のカードで決済するので、唐本冬子・唐本政子と記帳した。部屋に案内してもらい、政子はまずはベッドに寝転がり
 
「すごーい。さすが帝国ホテルのベッドだ」
などと言って満足そうである。
 
「良かったね」
「でも唐本冬子・唐本政子って、同姓だとまるで夫婦みたい」
と政子は言ったが
「同性だから夫婦ということはないかも」
と私は答える。
 
「同性でも結婚しようよ」
「まあ、そういう人たちもいるけどね」
 
と答えつつ、私は政子と実際結婚することになるのだろうか、と考えてみた。まあもし本当に結婚することになったら、自分の戸籍の性別は訂正せずに男のままにして、冬彦から冬子へと改名だけしてもいいのかな、などというのも考える。
 
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交代でシャワーを浴びることにする。それで政子が先にシャワーを浴び、その後、私がシャワーを浴びて「お待たせ」と言って出て行くと、政子はすやすやと寝ていた。今日の政子はひたすら寝ている。連日の受験勉強でよほど疲れているんだろうなと思い、私は微笑む。それで、お茶を飲んで、一息つくと、和泉が作った『恋座流星群』という曲に詩を付け始めた。
 
窓のカーテンを上げて外を見る。上弦の月がもう沈み掛けている。都会なので星は全く見えない。しかし夜景が美しい。その夜景の人工的な光の数々が、私はその時、多数の流星のように思われた。天の星も美しいけど人間が作り出した星もまた美しいよなと私は思った。
 
その感動を詩に綴っていく。
 
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でも詩を書くのは数ヶ月ぶりだなあ、と思っていた時、ふと小学生の頃に出会ったワンティスの高岡さんのことを思い出した。
 
あの人の詩はほんとうに天才的だったよなと思う。政子も詩の天才だと思うが、けっこうタイプが違う。政子の詩は世界は深いけど表現はシンプルで分かりやすい。高岡さんの詩は深い上に難解だ。詩の字面だけを追っていると、意味を取りかねる所が多々あった。でも高岡さんもワンティスの活動の後期には随分分かりやすい詩を書くようになっていたよなというのも考える。何か大きな心境の変化でもあったのだろうか。
 
しかし高岡さんのことを考えていたら、何だか調子よく歌詞が綴られていく。こういう時は、一種の勢いで書いている。途中でいったん止まってしまうとその先が書けない。自分の詩の書き方は政子と少し似ているかもと思った。和泉は詩を書いている途中でもしばしば筆を止めて色々考えている感じだ。
 
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詩はたぶん20分くらいで書き上げた。その後、和泉が書いたメロディーに合わせ付けていき、結局40分くらいでひととおりの完成となる。合わせ付ける段階で、メロディー上の、単純な誤りと思われる音は修正させてもらった。
 
詩を書き上げても、まだ政子は寝ている。
 
私は寝ている政子にそっとキスをしてから、再度デスクの前に座り、今度は新たな曲を書き始めた。
 
『眠れる愛』
と最初にタイトルを書いてから曲を書き始める。メロディはすやすやと寝ている政子を見ていたら自然に頭の中に流れて来た。
 
しかし今夜、ホテルに泊まり込みで勉強している子たちもいるよなと思うと政子は少しのんびりしすぎではと心配になったが、次の瞬間、そういう自分も受験生だったことを思い出し、つい吹き出してしまった。
 
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その少し楽しい気分の中でメロディは五線紙の上に降着していく。
 
夜は静かにふけていきつつあった。
 

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「冬、風邪引くよ」
と言われて政子に起こされた。
 
私は曲を書きながら眠ってしまったようであった。
 
「せっかくこんないいホテルに泊まっているのにベッドに寝ないなんてもったいない」
と政子は言うが、ほんとにそうだ!
 
「今から少し寝ようかな」
「それがいいかも。でも先に朝ご飯食べよう」
 
それで朝食バイキングに行くが、さすが帝国ホテルである。美味しい!政子もご機嫌でたくさんお代わりしていた。政子がこれだけ食べてくれると1人3800円でも充分元が取れた感じだった。
 
部屋に戻ってから「じゃ、私せっかくだから2時間くらい寝る」
と言ってベッドに入る。すると政子は机の上に置いてある楽譜を見る。
 
「曲を書いてたの?」
「うん。ひとつは詩・曲ともにできてる。もうひとつは曲を書いている最中に寝ちゃった」
 
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「ふーん。詩まで書いたんだ?」
と言って政子が読んでいるので
「もし良かったら添削して」
 
と言ったのだが
「この詩は直す必要がないと思う」
と言う。
 
「そう?」
「うん。まとまりがいいから、これはこのまま。でも細かい表現で直した方が良さそうなところだけ直しておくね」
 
と言って、私の言葉の使い方の誤りとか、文法の間違い、また修飾関係の分かりにくいところだけ直してくれた。
 
「こちらは詩はまだなのね?」
「うん。曲もあと少しいじりたいけどね」
「よし、こちらは私が詩を付けてあげるよ」
「よろしくー」
 

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それで私が寝ている間に政子は『眠れる愛』に詩を付けてくれていた。ついでに寝ている私の顔にマジックで落書きして(落ちなくて困った!)、更に私の腕にエストロゲンの注射をしたところで私も目が覚めた。
 
「痛い!痛い!」
「あれ〜、あまり痛くないように針を刺したつもりだったのに」
「自分の腕で練習してから、他人には刺してよ」
「だって私、エストロゲンなんか打ったら生理が乱れるし」
「マーサ、一昨日それ私に打ったばかりなのに。効き過ぎるよ」
「おっぱい大きくなるよ、きっと」
「うちのお母ちゃんと、高校卒業するまではホルモンやらない約束してたのに」
「もうすぐ卒業だからいいじゃん」
 

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「そうだ。さっきの曲に詩付けたから、歌ってみてよ」
 
と政子が言うので、政子が詩を書いてくれた『眠れる愛』の譜面を見ながら歌ってみせる。
「おお、いい感じ、いい感じ」
と喜んでくれる。
 
私は政子に喜んでもらうために曲を書いているのかも知れないなとふと思った。
 
「こちらの『恋座流星群』も歌ってみてよ」
「うーん、まあいいか」
 
それでそちらも歌ってみせる。
「格好いい〜。何だか冬が書いた曲じゃないみたい」
 
まあ、それ書いたのは和泉だからね。
 
「ねえ、この曲、大学に入ってから私たちが活動再開する時の最初のCDに入れようよ」
「え?」
 
私は困ったなと思った。これは和泉と一緒に作った曲なのでKARIONで使うつもりだった。しかし政子は乗り気だ。私はいっそKARIONのことを説明しようかとも思ったが、政子が乗り気なら、KARION用にはまた別の曲を用意してもいいかなとも思う。
 
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「じゃそれは検討してみるよ」
「よろしく、よろしく」
 

その後はチェックアウトまでホテルの部屋でうだうだしながら、少しだけ受験生であったことを思い出して、英単語の練習をする。私が単語を言って政子が和訳を答えるというのを30分くらいやった。もっとも脱線も多かった。
 
「exchange」
「性転換」
「それはsexchange。exchangeは交換」
「ああ、男女の性別を交換するのね」
 
「gay」
「同性愛」
「確かにそういう意味もあるけど受験英語だから『陽気な』で」
「なんでそれが同性愛の意味になっちゃった訳?」
「元々は楽しいという意味から、性的に奔放なとか、放蕩しているといった意味で使われるようになったんだよね。その頃は gay man というのは女遊びの激しい人、gay woman というのは誰とでも寝る女、あるいは売春婦みたいな意味だったらしい。それが性的に不道徳な行いということから20世紀半ば頃に同性愛の婉曲表現として使われ始めて、それが定着したという話」
 
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「まあ言葉って意味がずれていくよね」
「まあ言葉は生き物だから」
 
「オカマが御飯を炊く道具から、女装してる人の意味になっちゃったみたいな?」
 
「うーん。それは、お釜とオカマの言葉のつながりが見えないから無関係なのではという意見も多い。インドの性神カーマ(「カーマ・スートラ」のカーマで、ギリシャ神話のエロス=ローマ神話のキューピッド/日本では愛染明王に相当する)から来たという説、江戸時代の陰間(かげま)からカマという言葉が出たという説、あるいは歌舞伎の女形(おやま)から言葉が訛ってオカマになったという説もある。ただ昔は男性同性愛の女役の意味と、女装者の意味とが混同して使用されていたのが、現在では女装者の意味だけで使用されるようになったんだよね。でもオカマというのは差別用語であるとして使わない方がいいということになってる」
 
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「でも冬、オカマとか言われてなかった?」
「言われてたけど、別に軽蔑表現としては私は取ってない。むしろ親しみを込めて言われていたことが多いと思う」
「でもオカマと言われて傷つく人もいるよね?」
「だと思う。私は平気だけどね。だから使わない方がいい」
「なるほど」
 
「ただオカマという表現が一般的に使われるようになったのって、ごく最近っぽいんだよね。多分1970年代後半以降だと思う」
「へー」
「1960年代、年代的には今の40-50代くらいの人たちは男女(おとこおんな)と言われていたらしい」
「ほほお」
「その少し前の世代はシスターボーイなんてのもあった」
「その言葉は知らない」
「美輪明宏さんというか当時は丸山明宏だけど、あの人なんかがシスターボーイと言われた世代だよ」
「ニューハーフというのは?」
「それは松原留美子さんと一緒に広まったことばで1980年代以降。この言葉を作ったのはサザンオールスターズの桑田佳祐さん」
「不思議な人が」
 
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「ミスターレディは?」
「それは1978年のフランス映画『La Cage aux Folles』、直訳すれば『変な人達の鳥かご』って感じかな。それの邦題として『Mr.レディMr.マダム』というのが考案されたのに端を発するけど、実際使われ始めたのは『笑っていいとも』の『Mr.レディの輪.Mr.タモキンの輪』(1988-89)あたりからだと思う」
「シーメール(shemale)というのは?」
「アメリカの方で使われていた言葉で1980年代に日本に入ってきているけど、あまり普及してないと思う。アメリカではトラニー(tranny)という言葉もあるけど日本ではほとんど知られていない」
「レディボーイ(Ladyboy)」
「タイとかのアダルトサイトで使われているものかな。あの手のサイトは自動翻訳した日本語のおかしさがけっこう日本ではネタにされてる」
 
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「だけど、シスターボーイ、男女、ミスターレディ、シーメール、レディボーイ、全部男性を表す言葉と女性を表す言葉の合成語なんだね」
「まあ発想は同じだね」
 
「よし、そのテーマで詩を書こう」
「勉強は〜?」
「忘れてた!」
 

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