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■夏の日の想い出・大逆転(1)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-12-01  
2011年の夏。それは本当に全てが大逆転した時であった。
 
6月に私はローズクォーツのメンバーと一緒に震災の避難所・絨毯爆撃ツアーなどというものをやった。1ヶ月の間に、福島・宮城・岩手の避難所を300ヶ所ほど回った。震災の避難所の数は一番多い時期で2000ヶ所くらいと言われたがこの時期は500-600ヶ所ほどになっていたので、避難所の半分くらいを回ったはずである。
 
この時期は私も事実上1ヶ月学校を休んでいるし(授業内容は友人たちに録音してもらってそれを送ってもらい聞いていた)、政子とのゲリラライブもできなかったし、さすがにKARIONの方にも全く関わることができなかった。
 
その間にKARIONの★★レコードの担当者が交替したことを和泉との電話で知った。
 
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「これまで3年間担当してくれた山村さんが退職するんで、その後任に滝口史苑さんって人が担当になることになった」
「その人、聞いたことある」
 
「うん。****とか****とかの担当もしてる。昔**レコードに居た時代は****とか****を売り出してる」
「凄腕担当者なんだ!」
 
「こないだ挨拶に行ったけど、私がじゃんじゃん売ってあげるからね、って凄く張り切ってた」
「へー!」
 

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「ところでさ」
と和泉は言った。
 
「冬、手術の跡の痛みはもう大丈夫なの?」
「うん。平気だよ」
「だって、ふつう、性転換手術受けたら半年は静養してないといけないとか言わない?」
「私の場合は回復が速いみたい」
「ほんとに?」
 
「・・・今その近くに人居る?」
「いないよ。ここ、私のマンションだから」
 
「実はかなりきつい」と私。
「やはり」と和泉。
 
「実はまだ痛くてふつうの椅子に座れないんだよ。ドーナツ座布団持ち歩いているけどね」
「出産した後と似たようなものか」
「あそこに傷を負っているという意味では似たようなものかも」
「ああ」
 
「昨日も一昨日も何度か倒れそうになった」
「性転換手術の後で、1ヶ月も経たない内にライブハウスで歌ったりも無茶だと思ったけど、まだ2ヶ月しか経ってないのに1ヶ月で100ヶ所とか無茶すぎない?」
 
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「100ヶ所と聞いてたんだけどさ、ちゃんと数えてみたら計画表には476ヶ所の避難所の名前が載っている」
「うそー!? じゃ1日16ヶ所くらい?」
「うん」
 
「健康な人でも無茶すぎるスケジュールだよ、それ」
「でも始めた以上はやり通すしかない」
「それを拒否しないのが冬の悪い癖だな」
「うーん」
 
「私さすがにちょっとそれ口出しさせてもらう」
「えっと・・・」
「それ、浦中さんの管轄?」
「うん」
「だったら、社長から丸花さん(○○プロ社長)に話を通してもらって、浦中さんに言ってもらう。いいよね?」
「うん」
 
そういう訳で、この和泉の介入で、計画は大幅に減らされ、476ヶ所の予定だったのを(他の慰問も多いであろう)都市部の避難所を中心に減らして、289ヶ所に計画は削減されたのであった。でも後で話を聞いたら、浦中さんは最初100ヶ所くらいピックアップしてよと須藤さんに言っていたのが、須藤さんが何も考えずにどんどんリストアップして476ヶ所になっていたらしい。やはりこういうのの犯人は須藤さんだ。
 
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たださすがにこの1ヶ月の仕事はきつすぎたので、結果的にこれで私はローズクォーツを辞める決心をしたのであった。
 

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7月8日、昨年の9月に録音したまま、放置されてしまっていた“ローズ+リリー・メモリアル・アルバム”『Rose + Lily after 2 years』が、ようやく発売になった。
 
ローズ+リリーの公式な音源としては、2009年6月に発売した『ローズ+リリーの長い道』以来、実に2年1ヶ月ぶりのアルバムである。しかし「メモリアル・アルバム」などというぶっそうな副題が付いていた。
 
「メモリアル」というのは追悼という意味である。更に「after 2 years」と書かれていて、ローズ+リリーが終わってしまってから2年経ったので、それを懐かしんでアルバムを作ってみた、というように取れる。つまり、これだけ見ると、これがまるでローズ+リリーの最後のCDというようにも取れるのである。
 
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そしてこの時点で翌週7月15日にはローズクォーツのファーストアルバム『夢見るクリスタル』が発売されることが予告されていた。この動きを見れば私がローズ+リリーを辞めて、今後はローズクォーツで活動していくのだというメッセージに見える。特にローズ+リリーの「最後のアルバム」を出した翌週にローズクォーツの「最初のアルバム」を出す、という順序は重要であった。
 

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「ケイちゃんって、やはり嘘つきだ」
と上島先生は私に言った。
 
「だってさ、アルバムの中身を見たら分かるじゃん。ローズ+リリーのアルバムは、かなり力(りき)が入っている。先行公開していた『恋座流星群』とか『Spell on You』みたいな名作もあるけど『用具室の秘密』とか『積み木の城』
も凄く凝ったアレンジがしてあって、意気込みが見える。この2曲はケイちゃんの編曲だよね?」
 
「はい、そうです」
 
「それに対して『夢見るクリスタル』は、見劣り感が半端ない。これどうしてうちの下川に編曲依頼しなかったの? 『みんなの顔』とか凄くいい作品なのにアレンジでダメにしちゃってるよ」
 
「下川先生に依頼する予算が無いと言ってました」
「うそ。スポットなら1曲3万でやるから、20曲でも60万でしょ」
「それが、このアルバムの制作費は200万円で、上島先生への作曲御礼が4曲分80万円(印税とは別に支払う)、サポートミュージシャンさんの謝礼が60万円、スタジオ使用料が楽器のレンタル料含めて40万円、その他の雑費で10万円で、これで既に190万円。とても余裕が無かったみたいです。最終的には230万くらい掛かってしまったとこぼしてました」
 
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「えーー!? 200万円でプロのバンドのアルバム作るって無茶でしょ。シングル作る費用にもならないよ」
「ですよね」
 
「だいたい、ブックレットの制作費とか、写真代、ヘアメイク代とかは?」
「ヘアメイクは各自で自主的に。写真は須藤が自分でコンデジで撮影してました。ジャケットのデザインも須藤が作って、ブックレットはマキが書いてます」
 
「ミクシングやマスタリングは?」
「須藤が自分でやりました」
 
「それでか! ほとんど自主制作CDじゃん。これミキサーが良ければ、それだけでも印象が随分変わる。これどの曲もバランスが悪いし、音の定位が不安定で聴いてて落ち着かないんだよ。まるでドラムスのセットを持って走り回りながら打っているかのようだよ」
「ああ」
 
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「ローズ+リリーのアルバムの制作費は?」
「1500万円です。かなり抑えたんですけどね」
「それも抑えすぎだと思う。ローズ+リリーのアルバムなら制作費に宣伝費まで含めて1億掛けてもいいと思う。特に2年ぶりのアルバムだったんだから」
 
「町添さんがTVスポット打とうというのを須藤が断っていたようです」
「断る意味が分からん!」
 

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「まあ、それでさ」
と上島先生は言う。
 
「この2枚のアルバムを並べて聴いたら、ケイちゃんはローズクォーツの活動はこれで区切りを付けて、今後はローズ+リリーに主軸を移すんだろうなと思うんじゃないかな、ファンは」
 
「そうですかね・・・」
「それなのに『メモリアル・アルバム』なんて副題付けるから、ケイちゃんは嘘つきだと言うんだよ」
と言って、上島先生は笑っている。
 
「実は、これを機会にローズ+リリーはUTPからも★★レコードからも外してインディーズに移ろうかと思っていたんです。それで★★レコードと最後のお付き合いということでメモリアルというタイトルを考えたのですが、町添さんから、今後の制作は私に全部任せるから、次のアルバムも★★レコードから出して欲しいと言われました」
 
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「あはは、そりゃそうでしょ。シングルが90万枚、アルバムが40万枚も売れるアーティストを逃さないよ。無料公開した『雪の恋人たち』はあれ何万件ダウンロードされたの?」
 
「85万DLです。でも実力で売れた訳ではないですけどね。私のスキャンダルで売れたようなものだから」
「スキャンダルなんて、きっかけにすぎない。みんなが知ってくれて、その結果評価してもらえたら、それでいいんだよ」
 
と上島先生が言うと、そばで聞いていた奥さんの春風アルトさんが
「あなたみたいに、しょっちゅう女性スキャンダル起こしてたらもう今更気にならないでしょうけどね」
などと言った。
 
「いや、こないだのはスキャンダル未遂ということで」
と上島先生。
 
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実は上島先生と人気女優さんとの密会写真を週刊誌が報道しようとしたのだが、その女優さんのプロダクションがいち早く察知して雑誌社に圧力を掛け、表沙汰になる前に停めたのである。
 
「いや、ホテルに行ったのなら既遂じゃん」
と奥さんは言った。
 

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「とうとう既遂になっちゃったんだね」
と小風は言った。
 
私は四月上旬に性転換手術を受けたのだが、私は4月中は自宅で静養していたし5月はゴールデンウィークにローズクォーツの「瀬戸内海ツアー」をやり、その後、山村星歌の音源制作、ローズクォーツの『夢見るクリスタル』の制作、『一歩一歩』の制作をした後、6月は避難所絨毯爆撃ツアーをしたので、全然和泉や小風たちと会う機会が無かった。KARIONの方も、4月は東北方面で激励無料ライブをする一方、主として関西や九州で支援チャリティーライブをやっていて、忙しかったのである。私は和泉たちと電話ではたくさん話しているが、なかなか会えずにいた。
 
「まあ、手術が終わって、意識を回復してから『おめでとう、これであなたは女になれましたよ』と看護婦さんに言われた時は、とうとうやっちゃったな、という気分だった」
と私も言う。
 
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「さっさと性転換しちゃいなよ、とかなり煽ったけど、正直実はもう性転換済みなのではという気もずっとしてた。本当にまだ手術してなかったんだね」
と小風。
 
「してなかったよ」
 
「でも冬、凄く顔色がいい。とても性転換手術から3ヶ月程度の人とは思えない」
 
「それがさ、実は先月末に凄腕のヒーラーさんに偶然会ってね。私を見て、『これは痛いでしょ』と言うんだよね。それで、その人にヒーリングしてもらったら、劇的に痛みが引いたんだよ」
 
「へー」
「実はその人の勧めで、胸に入れてたシリコンバッグも抜いちゃった」
「え? じゃ、それマジ胸?」
「うん」
 
「これだけ胸があったら、そもそもシリコンなんて入れる必要無かったのでは?」
「胸が小さいの悩みだったから」
「だって、冬は高3の頃に既にDカップくらいあったよね」
「そんなには無いよぉ!」
 
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「ね、ね、4月に性転換手術受けたって実は嘘なんじゃないの?」
「なんで〜?」
 
「だってね」
と言って、小風は美空・和泉と顔を見合わせる。
 
「高校時代に既に冬は性転換済みなんだろうとしか思えなかったし」
「まだ付いてたよー」
 
「その付いてるの誰かに見られたことある?」
「うーん。。。。見てる人は凄くレアという気もする。高2以降ではマリしか見てないよ」
 
「マリちゃんじゃ信用できないよね」
「うん。口裏合わせそうだもん」
 

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「まあ、それでさ。小風を既遂にしないようにしようというのが今日のテーマでさ」
と和泉は言った。
 
「そんなに不満なの?」
と私は小風に訊く。
 
「正直、みーちゃんが私が辞めるの絶対許さない、なんて言わなかったら、今日、私は芸能契約解除申入書を提出してたよ」
 
と言って、小風はバッグの中から書類を出して私たちに見せた。親の署名捺印も入っている。
 
「だって滝口さんのやり方にはどうしても納得できない」
 
小風はその場で★★レコードの新しいKARION担当になった滝口さんのことを激しく非難した。
 
「そもそも、アレンジャーの田中さんがKARIONのことを全く理解していない。KARIONの魅力は4人の声のハーモニーだよ。それを下手なアイドルグループみたいなリレー歌唱で歌うというのは納得いかない」
と小風。
 
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今回の『恋のブザービーター』では全曲をアイドル歌謡の編曲に定評がある田中廣台さんがアレンジを手がけている。
 
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