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■夏の日の想い出・大逆転(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-12-02
 
「でも、冬たち今日の服は凄いね」
と和泉が言う。
 
「友だちにゴスロリの熱烈な信奉者がいてさ、着せられちゃった。そのまま借りてきた」
「ゴスロリか・・・」
と言って小風が少し考える風にしている。
 
「そうだ!いいこと思いついた」
「何?」
「ふふふ、内緒」
「なんか怖いな」
 

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取り敢えず、一緒に早めの晩御飯を食べようということになる。この日の御飯は金沢の笹寿司が大量に用意してあった。
 
「なんか凄い量だね」と政子が言う。
「みーちゃんがたくさん食べるから」と小風。
「美空ちゃん、そんなに食べる?」と政子。
「マリちゃんもたくさん食べると聞いたから、特に大量に用意した」と小風。
 
「お手並み拝見」と美空。
「よし」
 
と言って、食べ始めるが、美空も政子もペースが速い。そもそも笹寿司はひとつひとつが小さいので、ふたりとも無限に入る感じだ。
 
滝口さんがポカーンとした顔でふたりの「食べ比べ」を見ていた。
 
「美空ちゃん、今度お好み焼きか何かの食べ比べしない?」
と政子。
「あ、いいですね」
と美空。
 
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小風がニヤニヤしている。和泉は呆れたという顔をしていた。滝口さんは途中で
「ごめん。見てたら気分悪くなった」
 
と言って、部屋から出て行った。KARIONの付き人の舞田さんはさすがに出ていかなかったが、自分の分は2個ほど食べただけでやめて
「美空ちゃんたちの食べるの見てたらお腹いっぱいになった」
 
などと言っていた。すると
「あ、残すならください」
と言って美空はそれをもらっていった。
 
なお、舞田さんは、それまで担当していた望月さんが妊娠出産のため休職したので、その後任としてこの春からKARIONに付いている人である。
 
笹寿司は凄まじい量があったはずなのに、あっという間に無くなり、美空も政子も
「食べ足りなーい」
などと言っていた。
 
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18:00に開場し、18:30開演の予定だったが、入場に時間がかかり18:45くらいの開始になった。私と政子は目立たないようにスタッフの腕章を借りて腕に付け、座席のいちばん後ろに立って、彼女たちの公演を見ていた。政子の目が熱く燃えているのを感じる。
 
2年半前に、初めてKARIONの公演を見せた時、政子は和泉が書いた詩の歌だけに反応した。あれは詩人としてのライバル心に火を点けた感じだった。しかし今日はそういう反応ではなく、3人が歌っていること自体に心を燃やしている感じだ。本当に今、歌いたいという気持ちが強くなっているのだろう。
 
やがて私たちの出番の10分前になって舞田さんが来て、合図するので私たちは一緒に楽屋に移動した。
 
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「でも今日はなんで小風ちゃんがずっとMCしてるの?」
と政子は訊いた。
 
「ああ、今回のツアーはずっと小風にやらせてるらしい。たまには違った雰囲気にするのもいいのではと」
「ふーん」
 
実際は小風が逃げ出したい気分にならないように、今回全部MCをさせることにしたのである。今回のツアーで、滝口さんは「リレー歌唱方式」を提案した。KARION側はそれを拒否した。かなり険悪なムードでツアーが始まってしまったので、一触即発、小風と滝口さんが衝突・決裂する危険があると和泉が考え、責任感を持たせて小風に自制させるようにしたのである。
 
小風から今日着て来ている服のままステージに上がってくれと言われていたので、ステージ用のメイクだけしてもらい、舞台袖で待機する。やがて和泉たち3人が前半最後の曲『食の喜び』を演奏する。政子の瞳がキラキラ輝く。
 
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「なんかこの曲楽しい!」
「マーサの好みだよね」
「後で美空ちゃんに教えてもらおう」
「ふふ」
 
演奏が終わった所で小風が観客に向かって話しかける。
 
「それでは私たち3人はちょっとお休みを頂きます。その間、今日のゲストの方に歌って頂きます。ちょっと面白いふたりですよ」
と昂揚した顔で言う。
 
「紹介します。ローズ+リリー」
と言うと
「えーーーー!?」
と観客の声。
 
しかしそれに続けて小風は
「の、そっくりさんで、ゴスロリを着たゴース+ロリーのおふたりです」
 
と言うと客席は爆笑となる。そこで私は政子を促して出て行く。
 
「こんにちは、ローズ+リリーじゃなかった、ゴース+ロリーといいます。よろしく!」
と私が挨拶すると、客席は笑いながらもたくさん拍手をしてくれる。
 
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チラッと政子を見る。政子はその拍手だけで気合いが入っている感じ。マイナスワン音源が鳴り出す。和泉たちと伴奏陣・コーラス陣が舞台から去る。私たち2人だけがステージに残る。歌い始める。
 
「夜空を見上げてごらん」
「恋する気持ちで見ていたら」
「きっとそこに流れ星」
「あなたは見つけることでしょう」
 
きちんとした形でCDを発売しなかったのに、カラオケや有線のリクエストだけで大手ランキングの10位以内に食い込んだ名曲『恋座流星群』である。私としては実はちょっと脛に傷のある曲なのだが、この曲をマリが、わざわざKARIONの公演のゲストコーナーで歌うと言ったのには驚いた。やはりそういう巡り合わせだったのだろうかと思いながら、私は歌っていた。
 
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客席は物凄い手拍子と歓声である。マリは本当に気持ち良さそうに歌っている。青葉の言った通り、もう政子の心のリハビリは終わっているのかも知れない。本当にそういう気がしてきた。
 
歌い終わると、物凄い拍手。そして歓声。
 
「ゴースちゃーん」
「ロリーちゃーん」
などという掛け声まで聞こえてくる。私は微笑んで政子を見詰める。政子も見詰め返す。2曲目の音源がスタートする。『坂道』を歌う。高校3年の秋に「価格0円」
で販売した曲である。元々富山の八尾で書いた曲なので、この北陸の地で歌うのに、しっくりする気持ちもする。政子はそんな私の気持ちに何か感応するかのように、静かに歌っている。
 
『恋座流星群』のような元気な曲も、この『坂道』のような静かな曲も、政子はほとんど音程をずらさずに歌っている。政子は本当に歌が上達した。これをAYAが聴いたら青くなるだろうな。そう思うと、ちょっと楽しい気分になった。
 
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そして最後は『Spell on You』である。強烈なダンスナンバーだ。私は前奏で軽くダンスを入れてみた。するとマリも乗ってきて、私たちは即興でペアになって踊る形になった。こんなの過去のローズ+リリーのライブでもやったことのない試みだ。
 
歌の部分になると、身体を停めて直立し、歌に集中する。しかし間奏部分ではまたふたりで踊った。そのダンスにまた拍手が来る。基本的には歌に集中したいので、あまりステージで踊るのは好きではないのだが、たまにはこういうのもいいかも知れないという気がした。
 
そして演奏終了。
 
大きな歓声と拍手が来るのに、私たちは手を挙げて応えた。そこに小風がひとりで出てきて
 
「ローズ+リリーさんでした。あ、違った。ゴース+ロリーさんでした」
と言った。
 
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後で見たネットの反応。
 
「今日のライブで出てきたの、実は本物のローズ+リリーということは?」
「まさか」
 
「顔は似ていた」
「声も似ていた」
「いや違うと思う。マリちゃんが、あんなに歌うまい訳ない」
「確かにそうだ!」
 
「顔が似ていると声も似るんだよ。声って喉の形や顎の形で個性が出るから」
「なるほど」
 
「それに歌いながら踊るというのもローズ+リリーとは違うよ」
「だよねー。ケイちゃんもマリちゃんもダンスが下手だから、ステージでは踊らないんだと聞いたし」
 
そういうやりとりのログを見て、政子は面白そうにしていた。
 

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10日後。8月12日。この日は横須賀でサマー・ロック・フェスティバルが行われる。実はローズ+リリーに出場依頼があったのだが、政子が「まだ自信無い」
などと言うので、代わりにローズクォーツを出してもらうことにした。折しも『夏の日の想い出』がローズクォーツ名義で出してヒットしていたので、それが選考基準に合致するという言い訳も立った(実際には出場者選考は5月には終了しているので、ローズクォーツは基準に達していなかった)。
 
ローズ+リリーの代替なので、本来は歌手や歌唱ユニット中心のBステージの予定だったのだが、Aステージに出場するはずだったクリッパーズが突然解散してしまったので、その穴埋めでAステージに移動になった。
 
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この日、出場するのは私だけなので(政子のパートは音源で流す:サトは音源を聴きながらドラムスを打つ)、政子は友人の礼美・仁恵・博美・小春と一緒に客席の方にいたが、ローズクォーツのステージの後、興奮してステージそばまで来てしまったので、結局その後は、ステージ近くにあるVIP席の所で見ることになる。
 
私はローズクォーツの直後のスイート・ヴァニラズのステージ、午後1番のスカイヤーズのステージにもちょっとだけ顔を出したのだが、それが終わった後で、スカイヤーズの次のタブラ・ラーサの演奏中、私は政子に声を掛けた。
 
「ちょっと出ない?」
「ん?」
 
それでその場を仁恵に託し、私は政子を連れてAステージを離れた。
 
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「どこに行くの?」
「Bステージ」
「ふーん」
 

それで政子を連れてBステージに行き、Bステージのバックステージパスを見せて控室に入る。
 
「なんで私のまであるの?」
「そりゃ、無かったら中に入れないからね」
 
「おはようございます、杉山さん」
と言って私はポーラスターの杉山さんに挨拶する。政子も一緒に
「おはようございます」
と言って挨拶する。私は更にポーラスターの神原さんと「ごぶさたー」と言ってハグする。
 
「ケイちゃん、手術しちゃったって噂聞いたけど?」
と神原さん。
「4月にやっちゃいました。10月に20歳の誕生日が来たら性別変更も申請します」
と私。
「おお。それはめでたい。でもケイちゃんって昔から女の子の感触だった気がするなあ」
 
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「あれ?もしかしてAYAのバックバンドの人?」
と政子。
 
「そそ」
「何するの?」
「AYAのバックで演奏する」
「誰が?」
「私とマーサが」
「うそ!」
 
「さっき私がローズクォーツと歌ったのに、物凄く興奮したでしょ?」
「うん」
「歌いたいと思わなかった?」
「歌いたい。でもまだこんなステージで歌う自信無い」
「だから、バックで演奏してみようよ」
「いいの?」
 
「マーサが演奏してくれると思って、今日はヴァイオリニスト手配してない」
「ヴァイオリン持って来てない」
「あるよ」
 
と言って、私は政子の愛用ヴァイオリン『アルちゃん』を取り出す。昨夜のうちにAYAのマネージャーの高崎さんに渡しておいたのである。高崎さんは私とはドリームボーイズのバックダンサー仲間であった。
 
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「なんでここにあるの〜?」
「ふふふ。演奏しない?」
「冬も何か演奏するの?」
「私はクラリネット吹くよ」
「へー!」
 
実は政子がどうしても演奏に同意しなかった場合は私がヴァイオリンを弾くつもりでいたのである。しかしやる気になっているので、私は政子に二〇加煎餅(にわかせんべい)のお面を渡す。
 
「何これ?」
「以前政子、二〇加煎餅のお面付けるって言ってたじゃん」
「それ随分昔だね」
「今日のポーラスターは全員これ付けるんだよね」
「へー!」
 
「やるよね?」
「うん。でも、これ使うならタコ焼き食べたい」
「いいよ。明日大阪に連れて行ってあげる」
「よし!」
 

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政子が大丈夫そうなので、神原さんに政子のことは託して、私は控室を出た。走ってステージの下手側の脇まで行く。
 
「遅い」と小風から言われる。
 
「ごめん、ごめん」と言って、舞田さんから私の愛用ヴァイオリンGreenWitchを受け取る。プラスチック製の電気ヴァイオリン(イギリスのBridge社製)である。炎天下でも雨でも全然平気な、屋外ライブの強い味方のヴァイオリンである。緑色のヴァイオリンなのでイギリスのグリニッジに引っかけてGreenWitch(みどりの魔女)という愛称を付けている。
 
KARION, トラベリングベルズと一緒にステージに登る。こちらは今日は伴奏陣全員仙台のゆるキャラ《むすび丸》のお面を付けている。東北復興支援の意味も兼ねている。
 
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そして私はKARIONのステージで30分間ヴァイオリンを弾いた。
 

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■夏の日の想い出・大逆転(5)

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