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■夏の日の想い出・大逆転(8)

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その後、政子を帰して私はひとりでDAWソフトを操作し、最初に伴奏をいじり始めた。
 
今回は2枚のシングルを同時発売し、各々4曲入りなので合計8曲なのだが、その内、ローズクォーツが伴奏しているのは6曲で2曲は打ち込みである。その打ち込みの伴奏に私は不満があった。最初その2曲の打ち込みデータを作り直そうと思った。
 

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しかしここで考えた。
 
打ち込みで伴奏を作った2曲は、ぶっちゃけた話、割とどうでもいい曲だ。時間があるなら、その打ち込みを作り直した方がいい。しかし時間が無い中で伴奏を改善するなら・・・・むしろ中核曲の伴奏を直すべきである!
 
時刻は深夜だったが、私は和泉に電話した。
 
「何か明日からの(KARIONの)音源制作の件?」
「それなんだけど、ローズ+リリーの音源制作の手伝いをして欲しい」
「なんで〜?」
「KARIONのライバルに塩を送るのは嫌?」
 
それで私は、須藤さん主導でローズ+リリーの音源を作ったが、その出来が不満なので作業をやり直しているのだと説明した。
 
「『恋のブザービーター』は私も、小風の味方して滝口さんと衝突決裂しても自分たちの考えを押し通すべきだったかもと反省したからなあ。分かった。手伝ってあげるよ」
 
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それで和泉は深夜タクシーで青山まで出てきてくれた(和泉は神田のマンションに住んでいる)。
 

「私は何をすればいい?」
と和泉は訊いた。
 
「『花模様』と『恋の間違い探し』と『渚の思い』の伴奏を作って欲しい」
「スコア譜は?」
「それを考えながら作る」
「私が考えていいの?」
「『恋座流星群』は美しい曲だよ」
「私が作曲したのは中学1年の時以来だったけどね」
 
『恋座流星群』は実は、当時私が立て続けに豊胸手術と去勢手術を受け、手術の痛みが辛すぎて、とても曲が書けなかったので、和泉が代わりに書いてくれた曲なのである。作曲のクレジットは一応《マリ&ケイ》にしているが、印税は政子と和泉に半々支払うようにサマーガールズ出版のホストコンピュータに登録している。これを知っているのは私と和泉だけだ。
 
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「でも元はちゃんとバンドで演奏したものなんでしょ?」
「そのアレンジに問題がありすぎるんだよ」
「聴かせて」
 
というので須藤さんの作ったマスター音源を聴かせる。
 
「これは酷い。多分5-6万枚しか売れない」
「そこまで酷い?」
「冬はどのくらい売れると思った?」
「8-9万枚かな、と」
「似たようなものじゃん。この曲の素材なら、まともなアレンジ、ミックスすれば多分ミリオン行く」
「うん。そんな気がする。だから手伝って。私は『涙のピアス』『あなたの心』、『可愛くなろう』の方をやる」
 
「あとの2曲は?」
「放置。時間が無い」
「確かにこの6曲とその2曲は、元々の曲の出来に差があるね」
「うん。だから買ってくれる人には申し訳無いけど、売れるはずの曲に集中する」
「了解」
 
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それで私と和泉は、深夜のスタジオで、お互い時々相手に聴いてもらいながら、この6曲の伴奏を打ち込みで作って行った。
 
「でもこれ、クォーツの人たちが『あれ?自分たちの伴奏じゃない』と不思議に思わない?」
 
「大丈夫。須藤さん、昨日、クォーツのタカに電話して、時間が無いから伴奏を打ち込みで作ると言っていた。須藤さんは最後に追加した2曲の伴奏を打ち込みするというつもりで言ったんだろうけど、あの電話、タカは全曲打ち込みにするという意味にとった気がした」
 
「なるほどー。でもなんでリーダーのマキさんじゃなくてタカさんに言うの?」
「それはマキでは話にならないから。実際クォーツを動かしているのはタカだよ」
「面白いバンドね」
 
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そんな話もしながら、私たちは翌朝9時頃まで掛けて、この6曲の伴奏を作ってしまったのである。
 
「じゃ午後からはKARIONの音源制作だからね。ちゃんと遅刻せずに出て来いよ」
「了解〜」
 
と言って引き上げる。
 

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そして自宅マンションに戻って寝ようとしていたら須藤さんがマンションまで来たので、私は驚愕する。今回こっそりやろうとしていた作業がばれたのだろうか?悠子には須藤さんには言うなと言っておいたが、告げ口されたか?とも思ったのだが、須藤さんが私に言ったのは、私の恋愛問題だった。須藤さんはこの少し後には政子の自宅も訪問して同じ事を言っている。
 
この時期、ちょうど私は木原正望と、政子は同じ大学の国文科の男子学生・直哉君と、それぞれ交際を始めていた。私と政子はUTPや★★レコードとの契約に恋愛禁止ルールは入れていないが、交際する時は事前に言ってくれと言われていた。しかし当時私と政子は須藤さんのやり方に少々不満を持っていたので、須藤さんにわざと言わなかった(★★レコード担当の南さんには交際のことを言っている)。
 
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しかし須藤さんは○○プロ側からの照会でそのことに気付き、私と政子に恋愛は禁止しないから、ちゃんと言っておいてくれと注意した。
 

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須藤さんが帰ったのは11時くらいだったので、私はその後一睡もしないまま、KARIONの音源制作がある渋谷のKスタジオに出て行った。そして最初私と和泉、TAKAO,SHINの4人で、アレンジについて話し合った。だいたいの方針が決まったところで私は
 
「ごめん。1時間寝せて」
 
と言って仮眠させてもらった。
 
「あの後寝なかったの?」
「寝ようと思ったら、須藤さんが来て、私に彼氏が出来たこと言わずにいたことを、そういうの言ってもらわなきゃ困ると注意されたんだよ」
 
「彼氏だと?」と小風。
「そんなの作るのが悪い」と和泉。
「私たちは音楽が恋人だよ」と小風。
「えーん」
 
「彼氏とHした?」と美空。
「まだしてないよー」と私。
 
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「4月に手術したばかりでしょ?使えるの?」
と三島さんが心配そうに訊く。
 
「過激なプレイをしない限りは大丈夫だと、先日診察してくれた先生には言われました」
「でも、冬って無茶苦茶忙しいもん。たぶん彼氏作っても、デートする時間が無くて、呆れられて捨てられるよ」
と美空に言われる。
 
「冬って仕事を断れない性格だからね。きっと付き合うことになっても七夕デート状態になりそう」
と小風。
「オリンピックデートかも」
と和泉にまで言われる。
 
「うーん・・・・」
 

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その日は夕方でKARIONの方の作業は抜けさせてもらい、私は再度スタジオにひとりで入り、ミクシング作業に入った。ひとりで全部は無理なので、スタジオのミクシング技術者さんにお願いして、分担してやることにした。
 
『涙のピアス』『花模様』『可愛くなろう』『恋の間違い探し』を私がミクシングし、残りの『あなたの心』『熱風』『渚の思い』『トライアングル・ラブ』
はスタジオの技術者さんにお願いした。スタジオの技術者さんといっても★★レコードの付属スタジオの技術者さんである。一流の腕を持っているので、安心して任せられる。微妙なところは全部こちらに確認してもらえたので、かなりこちらの意図通りのミクシングをしてもらえた。
 
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ミクシングが終わったのが午前3時頃だった。マスタリングについては私は技術者さんとで話し合いながら朝7時頃まで掛けて作業をし、新しいマスター音源が完成した。私は技術者さんに御礼を言ってタクシーに乗り、工場に直接音源を持ち込んだ。
 
技術者さんには、規定の報酬だけでは申し訳無いので個人的に「賄賂ですけど」
と称して、サイゼリヤの御食事券を渡したが「おお!汚職事件だ」などと言って喜んで(?)くれていた。
 

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KARIONの音源制作は10月30日に終了した(私たち4人の作業は28日に終わり、29-30はスタジオ技術者さんの作業になったので、私は29日と30日はクロスロードのメンバーと一緒に温泉に行った)。
 
31日月曜日、私と和泉は『星の海』の仮ミクシングした音源と『恋のブザービーター』の新録音分を持って、都内某所で加藤課長・町添部長と内密に会った。
 
「『星の海』は本当に美しい曲だ」
「『恋のブザービーター』は見違えたね」
と言われる。
 
「冬、あれも聴かせなよ」
と和泉が言うので、私は『涙のピアス』『可愛くなろう』の、ローズクォーツが演奏し須藤さんがまとめた音源と、最後の2日で私が政子・和泉と作り直した音源を聴かせる。
 
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「須藤君の音源なら10万枚しか売れないけど、作り直した音源なら80万枚行く」
と加藤課長は言った。
 
「私は最初のだと5万枚、作り直したのはミリオンと思いました」
と和泉。
 
「そうかも知れない」
と部長。
 
「やはりさ」
と町添部長は言う。
「前から言ってたけど、君とマリちゃんはUTPと手を切るべきだと思う」
 
この時期、UTP以外の所(○○プロ・△△社・★★レコード・私の自宅・上島先生の御自宅)に私と政子はローズクォーツから「独立して欲しい」というお手紙が大量に届いていたのである。
 
その背景には、ローズクォーツのファーストアルバムが出るまでローズ+リリーのアルバムリリースが凍結されていたことがバレたのに反発された(実はローズクォーツのCDの不買運動まで起きていた:これも『起承転決』の売上不振の原因のひとつ)ことや、この時期私が毎週ローズクォーツの生番組に出演していたので、それで実際問題として私のスケジュールに余裕がなくなっているので、ローズ+リリーがなかなか本格的に始動しないのでは?と懸念されていたこともあった。
 
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またそもそもローズクォーツとの作業は私と政子がローズクォーツに埋没する形になっていたので、ファンとしては、むしろローズ+リリーとバックバンドという形を見たいという声が強かったのである。
 
クォーツに代わる「ローズ+リリーの純粋なバックバンド」として、AYAのバックバンドということにはなっているものの実際にはあまり仕事が無い(AYAの音源は全て打ち込みで作られている)ポーラスターや、△△社のインディーズバンドで、過去にローズ+リリーのツアーに帯同してくれたこともあるCrewsawなどを推す声もあった。
 
私は答える。
 
「その問題については先日からマリと何度か話し合いました。夏からマリが事実上ローズクォーツの活動に参加しているし、ローズ+リリーの伴奏をローズクォーツが務めているので、実はローズ+リリーとローズクォーツが区別付かなくなっているんですよ」
 
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「ああ、それは僕も思っていた」
と加藤課長。
 
「それで近い内に、私とマリの共同で須藤に申し入れをするつもりです。ローズクォーツの活動については、全部須藤に任せるから、ローズ+リリーは元々私とマリの個人的な活動ということで全部こちらに任せて欲しいと」
 
「なるほど」
「演奏しているメンツが同じでも、プロデュースする人が違えば、別の音楽になるはずです」
 
「確かにプロデュースする人次第だというのは『恋のブザービーター』で僕もよくよく分かったよ」
と加藤さんは言う。
 
「万一須藤と決裂した場合は、違約金を2億円ほど払って、UTPとの契約を解除するつもりです」
 
「その場合は、須藤君が法的な手段とかに訴えないように浦中さんあたりから圧力を掛けさせるよ」
と町添さんは言った。
 
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「UTPと契約解除した場合、アーティスト契約はどうするの?」
と和泉が訊く。
 
「その場合は△△社と契約することで津田さんとは話をしている。逆に△△社なら須藤さんも文句が言えないんだよ」
と私。
 
「でもまあ穏やかに話ができるといいね」
「うん」
 
「冬だけだと不安だけど、マリちゃんが付いていれば大丈夫そうな気がする」
などと和泉は言う。
 
「私じゃ信用無い?」
「ダメ。冬はすぐ押し切られる」
「うーん・・・」
 
町添さんも加藤さんも笑っていた。
 
「でもさ、冬」
「ん?」
「ローズ+リリーだけじゃなくて、KARIONにもミリオン行く曲を書いてよ」
「来年中には行かせるよ」
と私は答えた。
 
「よし。それを信じて私、マンション買っちゃおうかな」
「引っ越すの?」
「今住んでいる賃貸マンションがどうも建て替えになりそうなんだよ。すぐ近くで今新しいマンションが建設中なんだよね」
 
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「神田のマンションなら高いでしょ?」
「4LDKで7000万円」
「ミリオンを7発出せば払えるかな」
 
「まあ、頑張って稼ごうか」
 

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翌日、11月1日。裁判所から、私の法的な性別を女性に変えることを認可する書類が届いた。
 
これまで20年間男として生きてきたのが大逆転でこれからは女として生きる。
 
私は性別だけでなく全ての状況が変化して行くことを予感した。
 
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■夏の日の想い出・大逆転(8)

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