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■夏の日の想い出・長い道(6)

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11時からリハーサルを始める。
 
このリハーサルでは私も一緒に前面に立って歌ってと言われたので、和泉たちとお揃いのステージ衣装を着け、いつものように和泉と美空の間に立ち、休憩をはさんで2時間ほど、約20曲を和泉のMCを混ぜながら歌った。この様子を全部スタッフが撮影していた。
 
リハーサル用の衣装と言われたものの、まるで本番用のように凝っていて、衣装の引き抜きもあった。
 
「これ本当にリハ用なの?」
「そうだよ。本番用はまた同じ仕様のを用意しているから」
「お金掛かってる!」
 
今回のステージのセットは直前に出たシングル『恋愛貴族』に合わせてヨーロッパの貴族の邸宅のような雰囲気の演出をしている。ステージ衣装も小公子か何かの世界という雰囲気である。
 
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ステージ上には、古い家具などのセットも並んでいるが前面にいくつか豪華な雰囲気の柱まで立っている。
 

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「で、この柱が出入りできるんだよね〜」
と言って、畠山さんは柱の後ろの出入口を開けてくれた。
 
「中にちゃんとステージと客席のモニター画面・モニタースピーカー装備」
 
「あの〜。もしかしてこの中で弾けとか?」
「正解。ホリゾントの後ろよりマシ」
 
「私たちはこの柱のそばで歌うから、私たちと一緒だよ」
と小風が言った。
 
「衣装も私たちとお揃いの本番用衣装を着てね」
と和泉も言う。
 
「で、これヴァイオリンね。ケーブルつないで、今はPAにつながってるけど、ここのスイッチ切り替えたらヘッドホンで聴けるから調弦とかはそれでして」
と畠山さん。
 
「ちょっと失礼します」
と言って私はヴァイオリンと弓を持った。
 
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今回渡されたのはヤマハのサイレント・ヴァイオリンSV-200である。楽器本体からは音が出ないので、ヴァイオリン奏者が入っていることに気付かれずに済む。SV-200は自分でも持っていて自宅での練習に使っているので、気持ち良く弾くことができた。
 
多くの曲で私の代わりにS2(Soprano2)パートを歌う、コーラス隊のリーダーの子が声域的に歌えない幾つかの曲と、本格的な四声アレンジの曲(『鏡の国』や『Diamond Dust』など)は、私は間奏・前奏などの部分を除いて楽器を置き、歌を歌うことにした。
 
「で、こちらのキーボードは?」
 
Yamaha MOTIF XS8 が置いてある。
 
「『優視線』と『遠くに居る君に』はキーボードを弾いてくれない? やはり『優視線』は蘭子以外には弾けないんだよ。『遠くに居る君に』もかなり難しい」
 
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「分かりました」
 

楽屋(今回のツアーでは4人だけ別室)で昼食を食べながら休憩し、やがて本番の時刻となる。
 
ステージは新曲『恋愛貴族』から始まった。これも本質的な四声曲なので、ヴァイオリンは弾かずに歌唱に参加するのだが、この曲は幕を開けずに演奏した。それで私は3人と並び(美空・和泉・私・小風の順)、最前面で歌ったのである。カーテンの向こう側の客席の手拍子と歓声が凄い。2月のライブも11月のライブから随分熱狂度が高くなったと思ったが、今回は2月より倍か3倍くらい熱狂している感じだ。
 
歌が終わり、コーダが演奏されている間に私は柱の中に隠れる。それを見計らって緞帳が上がり、また歓声が高まる。
 
「こんにちは、KARIONです」
と和泉たちが声を揃えて言う。その時、私も一緒にその言葉を言った。3月のファン限定イベントの時、小風に「最初の挨拶、蘭子しなかったでしょ?次はちゃんと挨拶してよね」と言われたので言ったのだが、これって2007年11月以来だよな、という気がした。
 
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『恋愛貴族』の後、前半はひたすら森之和泉作詞・水沢歌月作曲の作品を歌う。
 
私はそれらの曲であるいはヴァイオリンを弾き、あるいはマイクを持って歌った。
 
『空を飛びたい』『水色のラブレター』『恋のクッキーハート』『遠くに居る君に』
『Diamond Dust』『Gold Dreamer』『Snow Squall in Summer』『Phantom Singer』
そして『優視線』で前半を締めた。
 
『遠くに居る君に』と『優視線』のピアノ伴奏も調子良く演奏した。この曲では私が柱の中でキーボード Yamaha MOTIF XS8 を弾き、ステージ上でキーボードを弾いている人(KORG OASYS 使用)が逆にヴァイオリン・パートを演奏している。「神プレイ」の所は拍手が来たが、キーボードは舞台後方に設置しているので、その人が弾いているのではないことに多くの観客が気付かないであろう。
 
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『優視線』の演奏が終わる。和泉たちが歓声と拍手に手を振って応える。
 
いったん緞帳が降りる。
 
それで私は柱の中から出て、和泉たちと一緒にいったん楽屋に下がった。
 
すぐに緞帳が上がり、ゲストが登場する。
 
今回のツアーのゲストコーナーは毎回その地のローカル・アイドルさんに出てもらう趣向で、この日は那覇市を中心に活動している女の子のアイドルグループが賑やかに登場して踊りながら歌って、何だか物凄く受けていた。
 
私たちは休憩しながらそれをモニターで見ていたが
「ああいうのもいいよねぇ」
と言い合う。
 
「小風も、以前あんな感じで歌ってたんでしょ?」
「やってた、やってた。あれはあれで楽しかったよ」
と小風は少し懐かしむような顔をしていた。
 
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後半は樟南さんの曲『Shipはすぐ来る』から始まる。背景に元素記号の列が動画で投影されていた。ダジャレに満ちた楽しい曲で、今日の観客の主体である中高生世代にはかなり受けていた感じである。
 
その後、スイート・ヴァニラズから提供された『サダメ』を歌った後、広田・花畑ペアの作品『鏡の国』『トライアングル』、福留さんの作品『嘘くらべ』
『広すぎる教室』『楽しくやろうよ』、ゆきみすず先生の作品『小人たちの祭』
『風の色』『丘の向こう』『夏の砂浜』と歌い、葵・醍醐ペアの作品『積乱雲』
を歌った後、櫛紀香さんの作品『秋風のサイクリング』で後半の演奏を終えた。
 
すぐにアンコールで呼び戻される。
 
最初トラベリングベルズの中核5人が伴奏に入ってデビュー曲『幸せな鐘の調べ』
を歌う。そしてセカンドアンコール。その伴奏5人が下がり、ピアニストとグロッケン奏者が入って『Crystal Tunes』を歌い、ライブを終了した。
 
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このアンコール2曲では、私も柱の中で、和泉たちと一緒に歌った。こうしてゴールデンウィーク・ツアーの初日、沖縄公演は終了したのであった。
 

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「なんかホテルも2月の時よりグレードアップしてるね」
 
などとホテル内のレストランの個室で、私たちは打ち上げを兼ねた軽食を取りながら言った。女の子だけの方がくつろげるでしょうということで、私たち4人と望月さん・三島さんの6人だけである。
 
「今CDが無茶苦茶売れてるからね」
「夏のツアーではもっといいホテルに泊まれるかな」
「だといいね」
 
「予算も潤沢になってきたみたい。今日のステージのセット凄かったし」
 
「あれを明日は福岡に運ぶんですか?」
と美空が訊く。
 
「1日で運ぶのは厳しいみたい。それで今日のセットは明日札幌に転送する」
と三島さん。
 
「へー」
「福岡は別のセット。福岡のセットはトラックで頑張って運んで翌日名古屋に使い回し」
「何か違うんですか? 今日のと明日のと?」
と私は訊いてみた。
 
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「構成はほぼ同じだけど、色合いとかを変えたみたい。今日のは金ピカ仕様だったけど、福岡版は銀色基調」
「そうすると複数の公演に行く人も楽しいですね」
「うん、うまく両方のセットに当たるとね」
 
「でもCDほんとによく売れてるみたいですね」
 
「『優視線』が結局30万枚行って初プラチナ、『みんなの歌』も12万枚でアルバム初ゴールド。『恋愛貴族』も初動で11万枚くらい行ってるから」
と三島さんがiPhoneの画面を見ながら言う。
 
「わあ、印税が楽しみ!」
「30万枚売れると幾らもらえるんだっけ?」
「えっとね」
と言って和泉が携帯で電卓を呼び出して計算している。
 
「1人あたり67万円」
「すごーい! 何買おう?」
 
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「あとで税金払わないといけないことを忘れないこと」
「税金って幾ら?」
「年間所得695万円までは30%, 1800万円を超えると50%」
「3割も取られるんだ!」
「たくさん売れると5割になる」
「いや、さすがにそこまでは売れないかも」
 
「印税で1800万円って何枚売れた場合?」
「シングル換算で800万枚くらい」
「それはモー娘。クラスだな」
 
「蘭子、性転換手術代も出るよ」
「えっと・・・」
 

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「でもあんたたち筋がいいよ」
と三島さんが言った。
 
「何か良い傾向ありました?」
「プラスのことばかり話してる。ホテルがグレードアップしたと言う話から売れなくなったらグレード下がるよねと言い出す子たちは、ほんとに下がる。でも上がることばかり言ってる子は、やはり上がるんだよ」
 
「ほほぉ」
 
三島さんは以前大手のプロダクションに勤めていたので、栄枯盛衰を見てきているのだろう。
 
「下がったら下がった時だよね」
「4人でギターでも持って街頭ライブやりつつ全国歩くのもいいんじゃない?」
「CD手売りして、各地のライブハウスで演奏して日銭を稼いで」
 
「まあ、それも楽しいかもね」
 
「やっぱり、あんたたちポジティブだよ」
と三島さんは楽しそうに言った。
 
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ホテルは例によって、私と和泉が同室、小風と美空が同室である。今回予算があるし全員個室にしようかという話もあったのだが、おしゃべりしていたいし相部屋がいいですという希望を出してこうなった。実際、11時くらいまで和泉と私の部屋に小風と美空も来て4人でずっとしゃべっていた。お風呂もこちらで4人で交替で入った。
 
ここまでプライベートでも仲の良いユニットは珍しいようである。私生活でもパートナーであるローズ+リリーやXANFUSは別として、スリーピーマイスは基本的に公私は別という立場でお互い干渉しないことにしているようだし(だいたい公演先でバラバラのホテルに泊まることもあるらしい)、AYAも3人だった時代に地方公演に行く場合、3人とも個室に泊まっていたらしいし、仕事以外ではあまり話はしていなかったと言う。後に私が関わることになったスリファーズも凄く仲が良いようだが基本的に3人とも個室である(初期の頃は春奈の性別問題もあった)。
 
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三島さんから「そろそろ寝なさい」という電話が掛かってきて、小風たちは向こうの部屋に引き上げる。
 

「私なんだか汗掻いちゃった。もう1度シャワー浴びてくる」
と言って和泉が浴室に行く。
 
それで私はノートパソコンを取り出して、編曲作業中の曲を出して、作業をしていく。この時期は、6月発売予定のローズ+リリーのアルバム『長い道』
の編曲をしていたが、それ以外にも政子と個人的に作った曲の譜面確定作業などもしていた。
 
が。。。疲れが溜まっていたのか、いつの間にか眠ってしまった。
 
「冬、そこで寝ると風邪引くよ」
と言って和泉に起こされる。
 
「あ、ありがとう。つい眠っちゃった」
 
「何の曲?」
と言って和泉が覗き込む。
 
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「あれ?これ新曲?」
「うん。つい3日ほど前に作った曲だよ」
「見ていい?」
「まあ、いいよ」
 
それは先日政子とふたりでホテルに行き、そこで書いた『エクスタシー』という曲だ。和泉は歌詞入りの譜面を読んでいた。
 
和泉の顔が次第に真剣になっていく。
 
そしてやがて和泉は私のパソコンの前から離れると、自分のパソコンを取り出し、どうも詩を書き出したようだ。
 
政子の詩を見てきっと凄く刺激されたのだろう。私はコーヒーをいれて和泉のそばに置いてあげた。和泉はコーヒーはブラックで飲む。
 
「ありがとう」
と言って、それを飲みながら、和泉は詩を書いている。いや既に校正作業に入っているようだ。和泉はこれに時間を掛ける。校正をほとんどしない政子とは、これも対照的だ。
 
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「私ももう1度シャワー浴びてくるね」
と声を掛けて私も浴室に行く。出てきた時まだ和泉は詩の校正をしている。
 
結局1時間以上掛けて、何とか本人の満足する出来になったようだ。
「冬、これに曲付けて」
「いいよ」
 
それは『愛の悪魔』という曲で、7月発売のシングルに入れることになる。KARION『愛シリーズ』の第1曲である。
 

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「マリちゃん、絶好調じゃん」
「詩の方は復調した」
「歌の方は?」
「まだ人前で歌う自信が無いと言ってる」
「ふーん」
 
「それでさ、友だちだけ呼んでどこかでライブしようかと思ってる」
「スタジオとか借りて?」
「いや、ホールを使う。PA入れて、照明入れて」
「本格的だね!」
 
「和泉たちも招待しようか?」
「いや。遠慮しとくよ、ビデオにでも撮ってみせてくれない?」
「いいよ。撮影してもらうことになっているから、それを和泉たちに見せるよ」
「うん」
 

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■夏の日の想い出・長い道(6)

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