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■夏の日の想い出・星の伝説(6)

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うちの中学は6月に体育祭がある。
 
1年生の時は、全員参加の徒競走(100m)の他、綱引き、男子全員による体操、に参加した。この時期はまだ私の「化けの皮」がまだあまり剥がれていなかった時期であった。
 
でも私が女子仕様のショートパンツを穿いていて、髪型も女の子っぽいので、体操競技の時は「あれ、女子がひとり混じってるね」などと言われていたらしい。また、綱引きではどうしても隣の子と身体がぶつかる。それで隣で引いていた小学校の時の同級生女子から
 
「冬ちゃん、胸がある」
と言われて、笑って誤魔化しておいた。
 
しかし2年生にもなると、私の「実態」がかなりバレている。体育祭の一週間前の昼休み、クラス委員の良子と日下君が私の所に来て言った。
 
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「冬ちゃんさ、男子の体操じゃなくて、女子のダンスに出なよ」
と良子が言う。
 
「いいのかなぁ」と私。
「だって冬ちゃんってダンス大得意だよね。普段の体育の時間もダンスの時は女子の方に来てもいいのにって、こないだ道田先生言ってたよ」
「うーん・・・」
 
「唐本さあ、触った時の感触が女の子だから、組体操で組む奴が恥ずかしがって、きちんと組まずに怪我したりしたらいけないから」
と日下君まで言うので、私は女子のダンスに参加することにした。
 

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「で練習は、いつからだっけ?」
「明日から毎日放課後1時間。男子は校庭、女子は体育館だから間違わないでね」
 
と言われたのだが、その日の放課後、チア部の協佳が来て
「冬、ちょっと来て」
と言われて、生徒会室に連れて行かれる。
 
「おお、アドバイザー来た、来た」
とチア部の部長で3年生の由乃さんが言う。何だか吹奏楽部の3年生の知花さんに、女子の体育の先生・道田先生もいる。知花さんはチア部を兼部しているので、結局これはチア部の集会のようだ。
 
「アドバイザーって?」
 
「唐本さんって何の踊りでもさっと踊れるんだって?」と先生。
 
「そんなことないですけど」
「候補曲を踊ってみて欲しいのよね」と由乃さん。
「なるほど」
 
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「あ、待って、先輩。前提として冬に女の子の服を着せないと」
と協佳。
「あ、忘れるところだった。冬ちゃん、これ着て」
と知花さんも言って、何だか衣装を渡される。
 
「これ、チア部のユニフォームでは?」
「去年も着てたし」
 
私はポリポリと頭を掻いて、衣装に着替える。もう女子の前で着替えるのは今更なので恥ずかしがったりしない。
 
「あれ、唐本さん、女子の下着つけてるんだ?」
と道田先生が言ったが
 
「当然です」
と言われる。
 
「冬は学校の授業が終わった後、セーラー服に着替えてからお稽古事とかに通ってるんですよ〜」
「へー!! だったら、いっそ朝からセーラー服で通学してきて授業もそれで受ければいいのに。体育は女子の方に来ていいし」
と先生。
「ね!」
 
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私は笑って誤魔化しておく。
 

「冬、ケツメイシの『君にBUMP』踊れる?」
「音楽があれば」
「あ、じゃ流すね」
 
協佳が音楽を流すので私はそれに合わせて『君にBUMP』を踊る。
 
「ああ、これは覚えやすくてみんな乗れそうね」
と先生。
「やはりこれは候補だなあ」
 
私はその後、求めに応じて10曲くらいのダンスを踊ってみせた。
 
「でも冬ちゃん、何でも踊っちゃうね〜」
と道田先生は感心したように言う。呼び方がいつの間にか女子生徒を呼ぶのと同様、名前呼びになっている。
 
「冬ちゃんに踊ってもらったの見た感じでは、大塚愛の『さくらんぼ』、ケツメイシの『君にBUMP』をやってから、メインはドリームボーイズの『噂の目玉焼きガール』かなぁ」
と由乃。
 
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「しかし凄いタイトルね」
と先生。
 
「あの人たちのいつもこうなんです。そりゃないだろ?って感じのタイトルにするのが好きらしい」
と協佳。
 
「最初の頃はレコード会社や事務所から『あんたら売る気ある?』と随分言われたらしいですけど、もうこういうのがあの人たちのスタイルになっちゃいましたね」
と私も言う。
 
「でも冬ちゃんの踊りが『噂の目玉焼きガール』では凄く洗練されてたね」
と由乃さんが言ったが
 
「そりゃ本物ですから」
と協佳が答える。
 
「へ?」
「冬はドリームボーイズのダンスチームの一員ですよ」
「ええ、まあ」
「ドリームボーイズのファンサイトにも写真が貼られてるね」
「えーーー!?」
「ゴールデンウィークの幕張3日連続ライブにも出てたよね」
「うん」
「凄っ」
 
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「まあ、ドリームボーイズのダンスチームはリーダーの葛西樹梨菜(じゅりな)さん以外は毎回その都度調達してるんですけどね。だからリーダー以外はエキストラなんだけど、何人か比較的良く入っているメンツがいて、私や竹下さん・松野さんなどは結構よく出てるから、写真も随分貼られてますね。私、サイン求められたこともありますよ」
 
「おお、凄い!」
 
「だったら、先頭真ん中で踊ってもらおう」
と由乃。
「ああ、いいですね」
と知花。
 
「先頭真ん中は、1曲目1年生、2曲目2年生、3曲目3年生のつもりだったけど、本物がいるなら、3曲目を2年生に譲るね」
と由乃。
 
「わぁ。頑張ります!」
と協佳は答えた。
 
そういう訳で私は体育祭の女子全員によるダンスの3曲目に先頭中央で、協佳と組んで踊ることになってしまった。私としてもペアの相手が気心知れた相手なので、安心感はあった。
 
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「冬ちゃん、体育祭ではその衣装を着る?」
「体操服にさせてください」
「恥ずかしがることないのに」
「父に見られたら何と言われるか」
「ボディコンとかの衣装着た写真を全国に晒してるのに今更だと思うけど」
「ほおほお」
 

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篠田その歌の『ポーラー』は6月1日に発売され、初動で4万枚売れた。事前に流されていたPVも映像の美しさが話題になっていた。撮影地を尋ねる電話も随分掛かってきていたので、急遽「撮影地:珠洲市折戸町」というテロップも入れたためその年の夏休み、現地を訪れる「聖地巡礼」の人が随分行ったらしい。
 
その歌のデビュー作の『魔法の扉』が累計で3万枚だったのでファン層が次第に広がりつつあるのも分かる。その売れ行きを見て、○○プロと★★レコードではすぐに次のCD制作を決めた。それで私は前田係長に呼ばれて○○プロに赴いた。篠田その歌、谷津マネージャー、それにデビュー作と今回続けてギターを弾いた杉山さん、今回ベースを弾いた鯛尾さん、フルートを吹いた中山さん、サックスを吹いた神原さんも来ていた。
 
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「やはり『ポーラー』の出来が良かったんで、ぜひこの雰囲気で行こうよ、というので、同じ作曲家で行くことになってね。次の作品は一応9月に発売する予定。で、次は本名で書くと言ってる」
と前田さんは言った。
 
「もしかして誰かの覆面だったんですか?」
とその件について何も知らなかった風の鯛尾さんから質問が出る。
 
「このことは一切口外しないで欲しいのだけど、実は上島雷太だったんだよ」
「ワンティスの!?」
 
「うん」
「ワンティス活動再開するんですか?」
「そちらはやはりしないらしい。でも作曲活動はしようということで。どうもね。ドリームボーイズの蔵田さんの活動に刺激されたみたいで」
「ああ」
 
「元々ワンティスとドリームボーイズはライバルだったからね。ドリームボーイズの蔵田さんがヨーコージの名前で松原珠妃に書いた『鯛焼きガール』が凄く好評でしょ。それでどうも他のアイドル数人からも楽曲提供依頼が来ているみたいで」
と言って前田さんは私を見る。
 
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「へー、そうなんですか」
と私は曖昧な返事をした。
 
「洋子ちゃん、偉いね。守秘義務を守ってる」
と前田さん。
 
「はい。申し訳ありませんが、しゃべってもいいと言われたこと、公表されていること以外は何も話せません」
と私は言った。
 
前田さんは頷く。どうもここは私をダシにして、情報のコントロールに関して再度ここにいるメンバーに注意を促したのだろうと私は思った。
 
「だから『ポーラー』の作曲クレジット《ユーカヒ》というのはヨーコージを意識したペンネームだったんだよ。でも次からはちゃんと上島雷太の名前で書くらしい」
 
「そうか。カヒって、コーヒーのことか!」
「だから上島なんだ!」
「ユーカラ織りで騙されたね」
「ユーコーヒーじゃ、すぐ上島を想像されるし、ヨーコージと似すぎてるから少し変えたみたいだね」
「なるほど」
 
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「でも上島さん、作詞もなさるんですね?」
「そうそう。ワンティスでは高岡さんが凄くきれいな詩を書いていたから出番が無くて曲だけ書いていたけど、上島さん自身もけっこう良い詩を書くみたいだね」
「へー」
 
「それでこの際、篠田その歌のバックバンドにも名前を付けようということになって」
「ほほぉ」
 
「杉山君と話し合って、今回の曲『ポーラー』にちなんで『ポーラスター』にしようということになった。ちょうどメンバーが7人で、北極星の篠田その歌を守る北斗七星みたいということで」
と前田さん。
 
「北斗七星ならビッグ・ディッパーでは?」
「ポーラスターの方が北極星ですよね?」
「まあまあ、そのあたりは語感の問題で」
 
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どうも、何か格好いい名前はないか?というのでポーラスターという名前を決めて理由は後付けという感もある。
 
「そういう訳で、今日は5人しか来てないけど、取り敢えず『ポーラー』を演奏した7人が、ポーラスターのメンバーということで」
 
「でも済みません。どのくらい参加できるかは分かりません」
と私は言った。
「済みません、同じくです」
とベースの鯛尾さんも言う。
 
「まあ、そのあたりは各自出て来れる時だけ出てきてもらって、都合の付かない時は適当に代替メンバーを入れるから」
と前田さんは言った。
 
「それで星にちなんで、七夕の日、7月7日にライブをやろうという計画をしているですが、みなさん出られますか?」
 
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「平日なので、学校が終わってからでよければ」
と私は言った。
 
「夕方19時開演予定。場所は横浜ナショナルホール」
「いきなり大会場ですね!」
 
そこは4000人ほど入る大きな会場である。篠田その歌はこれまで数百人から1000人規模の会場しか経験していない。
 

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6月12日。中学の体育祭が行われる。今回出るのは徒競走(100m)、3000m走、そして女子の!ダンスである。
 
100mは全員参加だが、男子6人で走って4位だった。去年までは確実に最下位だったので、少しは進歩したということか? ダッシュではトップに立ったのだが、その後抜かれてしまった。
 
3000mは「唐本、陸上部だろ?3月の駅伝で区間新記録だって?」と言われて出ることになった。で例によって、集合場所に行くと、今年転任してきた先生が居て
「君、これは男子の3000mだけど。女子の2000mは次の次だよ」
などと言われた。
 
全くお約束の事態であるが
「すみませーん。私、男子みたいですー」
と答えたものの信用してもらえない!
 
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陸上部で同学年の野村君が
「いや、唐本は戸籍上は男子なので」
と言ってくれたので、追い返されることなく参加できた。でも彼も
 
「もっとも身体は女ではないかという噂もありますが」
などと付け加える。あははは・・・
 

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レースは1〜3年の各クラスから男子1名出てきていて18名で走る。スタンディングスタートの体勢から号砲を合図にダッシュする。
 
野村君、石岡さんと私の3人で、陸上部同士で先頭争いをしている内に、スタートは出遅れたものの俊足のサッカー部の子と野球部の子が追いついてきて、5人で先頭集団を作った。そのまま8周ほど多少の順序変動しながら5人で走り周回遅れの子をどんどん追い抜いていく。
 
しかし3000mは長丁場である。走り慣れていないとペース配分が難しい。10周目あたりでサッカー部の子が遅れて、4人の争いになった。そのまま12周目くらいまで行く。このあたりから「誰が仕掛けるか?」とお互い疑心暗鬼になってくる所だ。飛び出して逃げ切られるといいのだが、早すぎるとその後最後までもつかという問題がある。
 
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そこに第2集団に居たバスケ部の子が猛然とスパートを掛けてきた。その子に陸上部の3人が付いて行く。野球部の子が遅れて結果的にまた4人の集団になる。それで落ち着くかと思った時、野村君がスパートを掛けた。石岡さんが付いていく。私も付いて行こうとしたが・・・ダメだった。
 
でもこちらも体力の残っている範囲のスパートを掛けてバスケ部の子を引き離す。目標は4〜5m先を走る野村君と石岡さん。でも自分の足では追いつけない。それでも必死に走り、最後の2周を回る。
 
結局3位でゴールした。
 
1位になった野村君と2位になった石岡さんが抱き合っていたが、野村君は、私とも抱き合おうとして・・・結局握手した!
 
「すまん。唐本と抱き合うと変な気分になりそうだから」
「あはは」
 
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ちなみに、私の3位入賞の賞状は「唐本冬子」名になってた(お約束)!しかも「女子3000m」と書かれていた。そんな競技無いのに! また例によって「女子がひとり混じってたね。しかも3位って凄いね」と保護者たちから言われていたらしい。
 
「でも唐本頑張ったな。秋の大会でも、お前また1500と3000に出すから夏の間しっかり鍛えて今度は入賞目指せ」
と石岡さんから言われた。
 
「はい、頑張ります」
 
先月の大会では私は1500も3000も前の走者から大きく離されて最下位だった。しかしそれは陸上部員の長距離のスペシャリストの中での成績なので昨年秋の大会で400mで大きく離されて最下位だったのとは違うと私自身思っていた。
 

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■夏の日の想い出・星の伝説(6)

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