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■夏の日の想い出・ビキニの夏(8)

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「いや、助かった。なんか立派な芸だったね」
と言って、前橋さんが私に握手を求めた。
 
「蔵田さんに助けてもらいましたから。あ、すみません。着替えあります?」
「ああ、濡れちゃったからね」
 
「その衣装、予備があったはず。おいで」
と葛西さんが言って、楽屋に連れて行ってくれた。時間がないので私も彼女も走る。それで予備の衣装を出してもらい、さっと着替える。そしてまた走って舞台袖まで戻った。
 
まゆりが最後の歌を歌っている所だった。これが終わったらまた私たちの出番だ。
 
「でも2度上を歌うなんて凄いね。よほどの音感持ってないとできない」
とベースの大守さんが言った。
 
「だって麻生まゆりちゃんより上手に歌う訳にはいかないじゃないですか」
と私が言うと
「とっさにその問題を考えられるのは凄い」
と感心された。
 
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「なるほど。君はまゆりちゃんより上手いという自負があるんだね?」
と前橋さん。
「当然です」
と私が答えると、前橋さんは笑って
「うん、君はきっと大物になる」
と言った。修辞ではなく、本気で言ってくれているのを感じた。
 
「しかし俺、自分のセクシャリティをカムアウトしちまった」
と蔵田さんが言うが
「心配しなくても、お前がホモだってのはファンは皆知ってるから」
などとキーボードの原埜さんに言われていた。
 
「蔵田さん、私の性別知ってますよね?」
と念のため訊いておく。
「知ってるけど、洋子は女だから俺の恋愛対象外」
と蔵田さんは言う。
 
他の人はこの会話の意味は分かっていないようであった。実はイメージビデオの撮影で、私を抱きしめるシーンの時、女を抱くのは嫌だと蔵田さんが言ったので、私の性別を明かしたらしいのだが「抱いてみたが女の感触だった」と後から文句を言っていたらしい。
 
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ドリームボーイズの公演が終わったのはもう21時近くだったので、小学生の私は打ち上げはパスさせてもらってそのままホテルに帰った。さすがに今日は疲れたなと思ってベッドの上に寝転がり少し放心状態になっていたら部屋の電話が鳴る。取ってみた。
 
「やっほー。そろそろ帰ってる頃かと思って電話してみた。こっちに来ない?ひとりじゃ寂しいし」
と静花である。
 
「うん、行く」
静花の部屋はとっても広いスイートルームだった。
 
「すっごーい、広ーい」
 
「冬もそのうちデビューして売れたら、こういう部屋に泊まれるようになるよ」
「うん、頑張る」
 

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「でも全国ツアーも半分まで来たね」
「いや、最初は体力持つかなと心配だったけど、今の所何とかなってる」
「頑張ってね。私は土日だけだけど」
 
「冬もデビューしたら超ハードスケジュールになるぞ。きっと。体力付けておけよ」
 
「・・・・昔、静花さん、歌手として売れる人の条件として体力があることって言ってたね」
 
「そんなこと言ったかな? でも体力は必要だよ。冬、中学に入ったら何か運動部に入って、身体を鍛えなよ。そもそも冬って体力が全然無いからさ。今のままだと、それで絶対潰れる」
 
「そうだなあ。マラソンでもするかなあ」
「ああ。歌手って、マラソンを走りきるくらいの体力を求められるよ」
 

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「ところで、冬、ヴァイオリンが凄く進化してた。先週に比べて格段の進歩。何かあったの?」
 
「うん。ちょっとヴァイオリン得意の友達に偶然会って。ちょっと悪い所を直してもらった」
「それでか。何か別人だと思ったからさ」
 
「まあ、私は本業は歌だけど、楽器も頑張るよ」
「そうだね。特にピアノとかヴァイオリンとかは、上達すれば歌にもプラスになると思う」
 
「私がデビューできるの何歳頃か分からないけど、それまでたっぷり基礎的な力も鍛えるから、静花さんも頑張って」
「それは冬に心配されなくても頑張るから大丈夫」
 
その日、私たちは夜が更けるまで、色々なことを話した。静花は明日もまた公演があるから23時までには寝なくちゃと言っていたが、その時刻を過ぎて私が自分の部屋に帰ろうとしてもそれを引き留め、結局私はその日その部屋に一緒に寝ることになって、24時で明かりを消した後も、あれこれ話した。
 
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翌日。朝から若葉とアスカを呼び出した。若葉はアスカのことを知っていた。
 
「***コンクールとか、***コンテストとかで優勝なさいましたよね?」
「うん」
「頑張ってください。多分蘭若さん、世界でもトップクラスのヴァイオリニストになると思うから」
 
「私もさ、歌の道で頑張るか、ヴァイオリンで頑張るか、かなり悩んだんだけどね。やはりヴァイオリンの方かな、と最近思い始めている」
 
「まあ、そういう訳で一緒に海に行きましょう」
「よし、そして冬のビキニ姿の鑑賞だな」
「ええ、私も楽しみです」
 
などとふたりで話している。
 

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有名ホテルのプライベートビーチに入る。
 
ロッカールームの前まで来て、とりあえずお約束で私が男子用の方に入ろうとしたら「こら、痴漢行為はいかん」と言われて、ふたりに手を取られて女子用ロッカールームに連れ込まれる。
 
「だいたいこのキーはこちらの部屋のロッカーにしか合わん」
とアスカ。
「学校のプールでは女子更衣室を使っているのに、なにを今更」
と若葉。
 
「そんな悪い子は罰として去勢だな」
とアスカは言ってから
「まだ付いているとしたら」
と付け加える。
 
「もう付いてないと私は思うんですけどね」
と若葉。
「ふむふむ」
 
ビキニの水着はホテルを出る時に着込んできていたので、そのまま服を脱いでしまう。
「うーん・・・・」
とアスカは手を組んで笑っている。
 
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「ふつうに女の子の水着姿にしか見えん」とアスカ。
「胸もAカップくらいありますね」と若葉。
「ちょっと上げ底するね」
と言って、私はバナナ型の水着用パッドをカップの中に入れた。
 
「ああ、下から押し上げるのか」とアスカ。
「うん。これならビキニのブラでも外に響かないから」
「凄い。Cカップ近い胸があるように見える」と若葉。
 
「ってか、押し上げられる程度の胸はあるということだな?」とアスカ。
「ふだん学校のプールに来てる時はワンピース水着だから、胸もほとんど無いみたいに見えるんですけどね」
「全然胸無いとビキニは着られないから」と私。
 
「つまりビキニ着られる程度の胸はある、と」とアスカ。
「下も付いてないようにしか見えませんね」と若葉。
 
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「私は去年の秋に一緒にお風呂に入っているのだが、付いていたらいくら何でも気づいたと思うんだよなあ」
「じゃ、やはりもう無いんですよ」
 
「まあ、そのあたりは曖昧なところで勘弁して」
と私は言っておく。
 

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3人ともビキニでビーチに出るが、沖縄の夏の日差しは超絶強力である。3人とも最強の日焼け止めをしっかり塗った。いつでも着られるようにラッシュガードも持っていく。
 
「とりあえず海に入らなければ、ここまで来たのがもったいない」
と言って、3人で海に入り、水の掛け合い、そしてビーチボールなどもした。ふだん超然としているアスカも、この場では無邪気な女の子に戻っている。
 
「しかし、この海の色が魅力的だ」
と一休みしてアスカが言う。3人ともラッシュガードにバスタオルで日差しを防御している。
 
「凄くきれいなビーチ」
「それを維持するために、物凄い努力をしているんだろうな」
 
「冬がそのソプラノボイスを維持するために物凄い努力しているみたいにかな。たぶん、自分の身体の一部を犠牲にしてまで」
 
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「アスカさんがそのヴァイオリン技術を維持し、向上させるために人生の他の全てを犠牲にしてまで日々努力しているのにはかなわない」
 
「・・・ふたりとも凄いなあ」
 
「さて私はもう一泳ぎしてこよう」
と言ってアスカはラッシュガードを付けたまま海に行く。この日差しではもう脱ぎたくない。午前中だから良いが、午後はとてもビキニにはなれない、と私たちは話し合っていた。
 

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アスカが泳いでいるのを見ながら若葉が言った。
 
「松原珠妃のライブもドリームボーイズのライブも見たけど、冬うまいね」
「私は裏方だけどね」
 
「今はね。でも多分4−5年後はステージの前に立って歌うか演奏してる。きっと。今日聴いてた冬のヴァイオリン、技術的には初級者レベルだけど、センスが凄くいいと思った」
 
「ありがとう」
「ダンスも凄くうまい。中学になったら体育って男女別になるみたいだけど冬、女子の方に参加しなよ。ダンスたくさん踊れるよ」
 
「参加したいけど、男の方に放り込まれるだろうな」
「性転換済みだってことカムアウトすればいいよ」
「性転換・・・したいけど、まだしてない。これ本当」
 
私たちはしばらく無言で海を見ていた。
 
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「冬ってさ。なんか色々な生活を持ってるよね。学校では私と毎日ジョギングしてて、あと合唱サークルやってて。でも学校ではみんな冬のこと、女の子みたいな男の子と思ってる。実際は女の子そのものと言った方がいいくらいなのに、そこまで冬が女の子だってことを多くの子は知らない。有咲ちゃんは薄々感じてる気もするけど。あと、冬がピアノ弾くのはみんな知ってるけど、ヴァイオリンとか三味線を弾くのは知らないよね」
 
「そうだね」
 
「松原珠妃さんのバックバンドでヴァイオリン弾いたり、ドリームボーイズのバックダンサーしたり。こんなのもみんな知らない」
「うん」
「多分、私も知らない部分があるんだろうな」
 
若葉は海を見たままだ。私も無言でエメラルドグリーンの海を見ていた。
 
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「だから多分、冬の全てを知っている子って誰もいない」
「そうかもね」
「みんな冬の一部しか知らないから、冬について持っているイメージって、きっとみんな違う」
「うん」
 
「でもそういう生活していたら、どこかで辻褄が合わなくなるよ」
「それは時々思う」
「そんな時さ、辻褄合わせに私を使っていいよ。私コネ多いし」
 

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「・・・若葉って、色々裏工作するのが好きみたい」
「私ねぇ、スパイになりたいって思ってた。小さい頃」
「ああ、そういう才能あるかも」
 
「ただ、私、男の人とセックスするのダメだから」
 
若葉が「セックス」なんて言葉を簡単に発するので私はドキッとした。
 
「女がスパイやるなら、どんな男とでもセックスする覚悟必要だからね」
「私、セックスってよく分からない」
「だいたいは分かるでしょ?」
「うん」
 
「私ね。幼稚園の時に、男の人に無理矢理セックスされちゃったことあるの」
「え!?」
 
「それが凄く怖かったし痛かったから、私、それ以来、男の子とまともに話ができないし、男の子との恋愛とかも想像しただけで怖くなっちゃうんだよね」
「そう・・・」
 
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私たちは、しばらく無言だった。その内、私の「空気の変化」を感じたようで若葉が訊いた。
「ん?どうしたの?」
 
「いやごめん。私は自分がセックスするのって、男の人とするんだろうか?女の人とするんだろうか?と思って」
と私は自問するかのように言った。
 
「冬は男の人とするんだと思うよ」
と言って若葉は微笑んだ。
 
「私が男の人とセックスできるんなら、若葉もきっとその内、とっても優しい男の人とセックスできる気がするよ」
 
「そうだね・・・・そういう日も来るかもね・・・」
若葉はまた海を見ていた。
 
「私、冬とならセックスできるかも知れない。冬って女の子だから」
と言って若葉は私をのぞき込むようにした。
 
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「・・・・私、たぶん女の子と裸で抱き合っても、おちんちん大きくならない気がする」
 
「冬にもしまだおちんちんがあっても、私には多分大きなクリちゃんにしか見えない気がする。だから私も多分冬とセックスできる。女の子同士として」
 
「・・・・女の子同士でもセックスってできるの?」
「女の子同士はまたやり方があるんだよ」
「へー!」
 
「何なら今から試してみる? ホテルに帰って。もう1泊してもいいし」
「・・・・小学生がセックスしちゃいけないと思う」
 
若葉は吹き出した。
 
「そういう反応が冬らしいなあ。だから私、冬のこと好き。じゃ、高校生くらいになったら、一度セックスしない? もちろん女の子同士のセックス」
 
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「・・・そうだね。でもそういうことは高校生になってから考えようよ」
と私は答えた。
 
「ほんとに冬って優しいなあ。じゃ取り敢えず仮予約」
と言って、若葉は私の頬にキスした。
 
「あ・・・・」
 
日差しは益々熱くなりつつあった。そろそろ引き上げた方が良さそうだ。あるいはこのリゾートホテルのプールに移るか。アスカがこちらに戻ってくる。今キスしたのを見られたかな? 何て言い訳しようか、などと私は考えていた。
 
 
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