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■夏の日の想い出・秋の日のヴィオロン(3)

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上島先生・雨宮先生が所属しておられるワンティスというバンドは2001年6月に結成され、多数のヒット曲を生み出した後、2003年の12月にリーダーで作詞者の高岡さんの事故死により活動停止した。
 
しかし2013年4月、ワンティスの作品の大半は実は高岡さんではなく、高岡さんの婚約者で2003年12月に高岡さんと一緒に事故死した長野夕香さんが書いていたことを上島先生と雨宮先生が公表。それとともに大きな騒動が起きたあげく、ワンティスは10年ぶりにアルバムの制作をすることになった。
 
アルバムは初期の高岡さんの作品を集めた『Wang-Tiss from T』と、夕香さんの未発表作品を集めた『Wang-Tiss to Y』という仮称で計画されたのだが、最終的に高岡さんの作品の方は『レッドアルバム』、夕香さんの作品の方は『グリーンアルバム』というタイトルで発売された。
 
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「まあビートルズの『ホワイトアルバム』のパクリね」
 
などと雨宮先生は言っていた。実際のアルバムジャケットも、薄い赤の地に黒字で『Wang-Tiss』と入っているものと、緑の森の背景に白字で『ワンティス』
と入っているものであった。グリーンの方も無地にしたかったらしいが、それでは、色覚障碍者の人が買い間違えるという意見で無地と森の絵で分け、文字も英字とカタカナで分けたのだそうである。
 
音源制作は5月から10月まで6ヶ月掛けて行われたが、実際に全員が集まって収録したのは数回しか無かったらしい。みんな忙しい人ばかりなので集まれる範囲の人が集まり、その場にいなかった人の分は別録りして重ねたという。
 
この音源制作では亡くなった高岡さんの代わりのギターは元クリッパーズのnakaさんが弾き、コーラスは元々のワンティスのメンバー支香さんと上島ファミリーの歌手・百瀬みゆきさんが入れた。声質が亡くなった夕香さんに比較的近いことから上島先生が推挙したものであった。なお歌のメインボーカルは上島先生と雨宮先生がふたりで務めた。
 
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「ワンティスが活動していた頃ってさぁ、私たちは小学4年生から6年生だよね」
と政子はソファーに裸で寝転がったまま言った。なぜ裸だったかは置いといて。
 
「高岡さんと夕香さんの事故のニュースは覚えてるよ。年末ほんとに押し迫っていたし。ワンティスがRC大賞とか紅白歌合戦とかに出てくるのを楽しみにしていた時だったしね」
と私はワーキングデスクで(一応着衣で)オーケストラのアレンジ譜を書きながら答えた。
 
卒論はもう完成して印刷に回している所である。
 
「紅白歌合戦史上、ただ一度、出演者が出てこなくて録画された映像が流された事件だったね」
「あの年は視聴者票も会場票も白組の圧勝だったね」
 
「不祥事を起こしたアーティストということで出場停止扱いにすべきだという意見と、追悼をすべきだという意見で、NHKの幹部も意見が割れて凄い激論だったらしいね」
「最後は会長のトップ決断だったらしいけどね」
 
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「瞬間視聴率も無茶苦茶凄かったらしいね。音と映像が流れるだけなのに」
「あの視聴率記録は破られることは無いだろうとも言われてるね」
 
「それで、その頃って、冬はどんな女の子だったのかなあ」
 
「え?その頃は男の子として過ごしてたけど」
「そういう嘘を言うのは、そろそろ止めようよ。ほら、こういう写真を入手したんだから」
 
と言って政子がiPhoneに表示させてこちらに見せているのは、可愛い女の子水着を着た、私の写真だ。
 
「ぶっ。どこからそんな写真を入手したの?」
「情報源は秘密」
「もう・・・流出させないでよね」
 
「大丈夫、大丈夫。私は間違って消してしまうことはあっても流出させることは無い」
「そうかも知れないけど」
 
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「他にも、こんな写真があってね」
と言って政子はiPhoneを操作していたが・・・・
 
「あれ?」
「どうしたの?」
「画面が落ちた。あれ?スイッチ入らない」
「バッテリー切れ? 電源につないでみたら?」
「・・・つないだけど音が鳴らない」
 
「・・・壊れたのかもね」
「えーん。これ4月に交換したばかりなのに〜」
「大学に入ってから6回目の故障かな」
「さっきの写真バックアップ取ってないのに」
「まあ消えたものは仕方ない」
 
「もういっそギャラクシーかアクオスに乗り換えちゃおうかな」
「同じことのような気がするけど」
 

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ワンティスの2枚のアルバムは11月20日に発売された。発売記者会見には上島先生、雨宮先生、三宅先生の3人が出てきていた。
 
「レッドアルバムは本当にワンティス初期の頃のロック色の強い作品、グリーンアルバムの方は多くの人がワンティスサウンドだぁと思うようなポップな作品が多い感じですね」
 
「今回作曲は全員で分担してやっていて、事前に特に何か申し合わせたことはないのですが、結果的にそういう雰囲気になりました」
 
「一部外部の作曲家の方が書いたものもあるようですね」
「ええ。一挙に24曲で、しかも10年ぶりのワンティスのCDということで質の高い作品を求めたので、他の作曲家の方のお力も借りました」
 
「桜島法子さん、田中鈴厨子さん、マリ&ケイさん、水沢歌月さん、樟南さん、など錚錚たる顔ぶれですね」
「ありがたいです」
 
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「中でもグリーンアルバムの中の長野夕香作詞・上島雷太作曲『トンボロ』とレッドアルバムの中のTT作詞・FK作曲『恋をしている』が初動ダウンロードが凄かったようですが」
 
「どちらもとても美しい作品ですね」
と三宅先生がにこやかに答える。
 
「トンボロというのはどういう意味ですか?」
「満潮の時は水没しているけど、干潮になると島とつながる道が現れるという地形のことです。恋人と心がつながるような、つながらないような微妙な状況を歌ったものです。これは夕香が大学生の頃、高岡と恋人になりたての頃の作品のようです」
 
「これのPVで出てる景色はどこですか?」
「小豆島のエンジェルロードという所です。ほんとに美しいトンボロなんですよ」
 
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「『恋をしている』の方ですが、TT作詞・FK作曲というクレジットになっていますが、TTは高岡さんですか?」
 
「はい。高岡猛獅のイニシャルだと思います。残されていた筆跡が確かに高岡のものですし。記入されていた日付2002年8月4日という日付を鑑みて、おそらく、これが高岡の最後の作品だと思います」
と上島先生が言うと、記者たちはざわめいた。
 
「当時は発表する予定は無かったのでしょうか?」
「高岡が机の中の秘密の引き出しに隠していたんです。その引き出しの存在自体お父さんがこの夏に気づいたんです」
と雨宮先生が補足すると、記者たちは更にざわめく。
 
「これは私の推測なのですが、当時はもうワンティスの曲の詩は夕香さんが書く流れが出来てしまっていたので、自分の作品が存在すると無用の混乱を招くと思い、夕香さんにも見つからないように隠して封印していたのではないかと思います」
と上島先生は言った。
 
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「ほかの高岡さんの作品とは雰囲気が少し違う気がするのですが」
「高岡は2001年の秋頃から全く詩が書けなくなってしまって、恐らくは1年間悩み続けた末に辿り着いたのがこの詩ではないかと思います。壁を越えるべく新しい世界を模索した試作品なのかも知れません」
 
「この作曲者のFKというのは?」
 
「実はそれが誰か分からないのです。一緒に残されていたメモには『今日面白い女の子に会った。その子と一緒にこの素敵な作品を作った』と書かれていました。ですから、本当はその作曲者の女の子というのに許可を取って出すべきなのでしょうが、これだけの情報では本人を特定することが不可能なので、この作品を発表し、心当たりのある方は連絡してほしいとすることにしました。この曲の作曲印税に関しては銀行に『FK』名義の口座を作ってそこにプールさせてもらうことにします」
 
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と上島先生は語った。
 
「つまり譜面も一緒にあったのですか?」
「そうです」
「その譜面の筆跡を見たら本人かどうかの識別がつかないでしょうか?」
「そう思っています。ですから、照合の必要性が出てきた時のために、この手書き譜面は公開しないことにします」
 

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「謎の女の子かあ、ちょっとロマンだね」
と政子はテレビの記者会見を見ながら言った。
 
「そうだね。でもその女の子に会ったというの自体が夢か幻だったりして」
と私が言うと、政子はハッとしたような顔をした。
 
私が近くのレターパッドを取って渡すと、政子は左手の指を3本立て(サンキューのサイン)、集中して愛用の青いボールペンを走らせた。のぞき込むと『幻の少女』
というタイトルが付いていた。私は政子の身体にガウンを掛けてやった。
 
詩を書き終わると政子は「作曲よろしく〜」と言って詩とボールペンをこちらに寄こす。私が五線紙にメロディーラインを書いていたら、政子は後ろから抱きついて来て、首筋にキスしながら言った。
 
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「でも今の記者会見でも言ってたけど、その高岡さんの最後の作品、他の作品とは随分毛色が違うよね」
「うん、かなり違うね」
 
「それまでの作品って凄いけど難解だった。でも『恋をしている』は凄いのに分かりやすい。ある意味、高岡さんが辿り着いたひとつの境地だと思う。他にもそういう作品無いのかなあ」
「どうだろうね。高岡さん、どこかに隠してたのかもね」
 

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「今回のアルバム発売記念のワンティスのライブの予定は無いのでしょうか?」
という記者の質問に対して、加藤課長が答えた。
 
「ワンティスのメンバーが全員とても多忙で、一緒に集まってライブをするというのは困難な情勢です。それで、代わりに代替メンバーでのライブというのを計画しています」
 
「代替メンバーですか?」
「春にローズ+リリーのCDにワンティスが伴奏をした『疾走』を入れたのと、今回の音源製作でローズ+リリーの事務所であるUTP所属のnakaさんにギターを弾いてもらった縁で、ローズ+リリーに監修をお願いしました」
 
「ローズ+リリーが歌うのですか?」
「歌は上島先生と雨宮先生のデュオで歌って頂きます。ローズ+リリーのマリさん、ケイさんはあくまで監修、プロデューサー役です。上島先生や雨宮先生あるいは三宅先生のお時間が取れればいいのですが困難なので」
 
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「すると楽器は誰が演奏するのですか?」
 
「現在調整中です。後日発表させて頂きます」
 
と加藤さんは言う。
 
「代替バンドのライブ日程は?」
「12月27日金曜日。高岡さんと夕香さんの命日ですね。場所は東京武芸館です。チケットは今度の日曜日24日から発売します。料金は全席指定税込9870円です」
 

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「あれ?私と冬が監修するの?」
と政子は私に訊いた。
 
「そうだよ。先週町添さんとお茶しながらそういう話をしたじゃん」
「あ、私詩の着想が得られて、それを頭の中でまとめてたから話聞いてなかった。面倒なことは冬がやってくれるだろしう」
「はいはい」
 
と私は笑って答えた。
 
「でも武芸館なんて、そんな大きな箱でやって、人集まる? 9870円なんて随分高いしワンティスが出るわけでもないのに」
 
「むしろ代替バンドだからその値段に押さえたんでしょ。本物のワンティスが出るならもっと高いよ。でも上島先生と雨宮先生が出るのは大きい。この手の復活ライブって、しばしば忙しい人が出ないのが通例だけど今回は、一番忙しい2人を引っ張り出せたのが凄い。2度と無理かも知れないけどね。それに、こういう形のライブをやれば他のメンバーも演奏はしないにしても、顔出しくらいはするんじゃないかって、みんなが期待するでしょ?」
 
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「へー。出るの?」
「内緒。だいたい本来のワンティスは高岡さんが居ないから演奏不能。nakaさんの代理演奏ではファンは納得しない。いっそのこと全部代替の方がいいんだよ、こういう場合」
「あぁ、それはそうかもね。冬〜、私、詩を書いたらお腹空いた。フライドポテト揚げて」
「はいはい」
 
私は微笑んで編曲の手を休め、アイランドキッチンの方に行った。
 

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大学に出て行ったら同級生の男子数人から声を掛けられた。
 
「ね、ね、ワンティスの代替バンドってどこがするの?」
「まだ決まってないよ」
 
「昨日**たちと飲みながら議論してたんだけどさ、ワイルズ・オブ・ラブ説、ドリームボーイズ説、若手バンド説に集約された」
 
「ドリームボーイズは去年解散したじゃん」
「いや、かつてのライバルのためには一時再結成するんじゃないかと。別に喧嘩別れした訳じゃ無いしね」
「まあリーダーの蔵田さんの燃え尽きって感じだったからね。本人的には1年休養して少しは体力気力回復してきているみたいだし」
「あ、蔵田さんと会った?」
「先月$$アーツの設立30周年パーティーにAYAの縁で招待されて行ったから会ったよ」
 
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ドリームボーイズは当時ワンティスと人気を2分していたバンドで、AYAと同じ事務所に所属していたのである。年代的にはワンティスより少しだけ年上になる。
 
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■夏の日の想い出・秋の日のヴィオロン(3)

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