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■夏の日の想い出・4年生の秋(2)

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「ところで、Rose Quarts Plays シリーズの次だけどさ。春に発売することを考えて、桜ってのはどう? で、もしケイがローズクォーツ辞める場合もこのシリーズだけは最後まで付き合わない?」
とタカは提案した。
 
「まぁ、辞める辞めないは置いておいて、それだと3月発売だよね」
「うん」
「つまり2月には録音しないといけないということか。政子次第だな」
「私は大丈夫だよ」
「じゃ、タカ、曲の選定を進めてくれない? 私は今そこまで考える余裕が無い」
「分かった」
 
「桜かあ。じゃ、これをぜひジャケ写に」
と言って政子が唐突にiPhoneに写真を1枚表示させる。
 
「ぶっ」
「おぉ! ケイが可愛い! 桜が満開だね。セーラー服着てるから、これって中学の入学式?」
 
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「そうそう。こんな写真が存在するのに、ケイって中学の入学式は学生服で出たなんて主張するんですよ〜」
「ちゃんとセーラー服着てるじゃん。それに学生服着てる男の子はみんな坊主頭なのに、ケイは女の子の髪型だし」
「でしょ? どう考えても、ケイはセーラー服で中学に行ってますよね」
「だから、その事情はこないだも説明したじゃん」
 
「あれ絶対嘘だと思う。そうそう。私の中学の入学式の写真もあるから、それと一緒に出すといいですよ。タカさんはセーラー服着た入学式の写真無いの?」
「俺はさすがに学生服着て出たよ!」
「なんだ。詰まらない」
 

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「しかし須藤さんが提案した naka さんにローズクォーツをプロデュースさせるという案には仰天したな」
 
「あっさり断られて須藤さん、沈んでたね」
「まあクリッパーズやワンティスの世界観と、ローズクォーツの世界観にはやや距離がある。無理だよ」
「結局プロデューサー探しも含めて花枝さんに丸投げということで決着が付いてしまった」
 
「そもそもローズクォーツのプロデュースを手がけてしまったら、ギター講師やワンティスの音源制作、とかをする時間が取れなくなってしまうと思う。片手間にはできないよ」
「吉野鉄心さんの次のアルバム制作の準備とかもしているみたいだしね」
 
「バレンシアを宝珠さんにプロデュースさせるというのも、あっさり断られていたね」
「そういう発想するのも須藤さんらしいといえば須藤さんらしい」
 
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「宝珠さんも色々なアーティストの伴奏に入ってるからなあ。近藤さんより忙しいみたいだし」
「良い管楽器奏者は得がたいから。七星さんは腕があるのに、そんなに高い演奏料取らないから需要があるんですよ。今作り直ししている最中のKARIONのアルバムにも参加したらしいですよ」
「へー!」
 
「それに七星さん、スターキッズの次のアルバム制作準備もしてますしね。ローズ+リリーが活動している間はそのバックバンドの仕事が入るから、休養中に何とか出したいみたい」
「ああ、それはちょうどいいタイミングだね」
 
「今回も私とマリで2曲提供してるけど、それ以外は大半を七星さんが書いたみたい」
「七星さん、最近かなり乗ってきてる感じだね」
 
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ところで私たちは春から《ローズ・クォーツ・グランド・オーケストラ》なるものを編成して、半年間限定で活動してきたのだが、それが9月一杯で終了することになっていた。元々楽団員を募集する時に、半年限定とうたって募集しているので、ここで終了せざるを得ないのである。
 
この問題について8月のお盆前に、指揮者の渡部さん、コンマスの桑村さん、ローズクォーツのタカ、スターキッズの鷹野さんと七星さん、それに私と政子、UTPの花枝、★★レコードの氷川さん・加藤課長・町添部長の総勢11人で話し合いを持った。
 
「一応、予定のスケジュールとしては9月28日のゆきみすずさんのライブにゲスト出演して、その翌日9月29日がローズ・クォーツ・グランド・オーケストラのラスト公演、それで解散ということになっていますね」
と氷川さんがスケジュールを確認する。
 
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「でも楽団員の中には、手弁当ででもいいから、この演奏活動を続けたいという声が結構多いんですよ」
と桑村さんは言う。
 
「現在オーケストラの維持費って、どのくらい掛かっているんですか?」
と加藤課長が訊く。
 
「アマチュア・オーケストラという建前なので、報酬は払っていません。練習場所の場所代、食事代などをこちらで出して、あとはお車代を渡しているだけです。9月末までの予算として3000万円組んでいたのですが、実際その予算内で収まる雰囲気ですね」
と私は答える。
 
「半年で3000万、年間6000万か。収益は?」
 
「『Rose Quartz Plays Easy Listening』がこれまでに26万枚売れていて、うちの取分は7000万円くらいなので、まあトントンですね。ライブはどう?」
と私はライブ関係を管理している花枝に投げる。
 
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「ライブは5月から毎月1回行っていますが、粗利は1回150万円程度です」
と花枝。
 
「するともし今後活動を継続した場合、年間10回くらいの公演をして1500万円程度。残り4500万程度をCD売上で稼がないといけないということですね」
と加藤課長が引き取る。
 
「逆算するとCDを年間15万枚程度は売らないと赤字になるということですね。アマチュアオーケストラだから、多分年間10回とか以上の公演は無理でしょうし」
 
「でもまあ26万枚もCDが売れたという事実は大きいからね。取り敢えず1年活動延長するということでどうだろう?」
と町添さんが言う。
 
「いいと思います。半年間ということで募集しているから、お仕事などの都合で続けられない人は辞めてもらって、新たに補充楽団員を募集するということで」
と私。
 
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「9月末でいったん終了。楽団員には退団か活動継続か希望を出してもらって、それで不足する楽団員を10月に募集・オーディションして、11月くらいから活動再開かな」
と桑村さん。
 
「募集するのは、主としてローズ・クォーツとスターキッズにケイさんのお友だちが抜けた後のリズムセクション・木管セクションになるかも」
と氷川さん。
 
「今業界では実力のあるスタジオミュージシャンが多数余っているので、負荷の小さな仕事だから、結構応募はあるかも」
と七星さん。
 
「楽団名はどうしましょ?」と花枝。
「渡部賢一グランド・オーケストラで」と政子。
「ああ、それでいいよね」と加藤さん。
 
渡部さんは頭を掻いていたが、《ローズ・クォーツ》の名前を外すのであればこの名前が最も自然である。
 
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「じゃ、取り敢えず来年末までの活動費用はこちらから出します」
と私は言った。
 
「春くらいに新しいアルバムを作る感じかな」
「そうですね」
と言いながら私はちょっと焦っている。また編曲しなきゃ!
 
やはりタカが先日言ったように、卒論を仕上げた後、年明けからはかなり多忙になりそうな雰囲気である。
 

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ローズ+リリーの仕事も9月8日の大阪ライブを終えると、本当にお休みになる。私と政子は就職のことを考えなくて済むのだけは助かるが、ここまで音楽活動に時間が取られていた分、ここからかなり頑張らないと11月中に卒論を書き上げることができない。
 
10日の日は午前中はふたりともバテて寝ていたのだが、午後から気分転換に車を出して、南房総市の道の駅・ローズマリー公園を訪れた。ここにシェイクスピア・カントリー・パークというのがあり、シェイクスピアの生家が再現されている他、若干のシェイクスピアの資料も集められている。シェイクスピアの資料だけなら、大学の英文科内にも、学内の演劇資料館という所にも大量にあるのだが、こういう所に来るのもまた刺激になる。
 
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「ここ実際問題としてどの程度、生家を復元しているのかなあ」
「まあ、だいたいこんなものなんじゃない? 家なんてそうとんでもなく違うようなものでもないと思うけど」
 
「ね? 本物見てみたくない?」
「は?」
「仕事を完全にオフにしてもらったから、イギリスまで行く時間あるよね?」
「あるけどね(政子は)」
「イギリスってビザ要るんだっけ?」
「たしか短期間の観光なら、要らなかったはず」
「よし。じゃ航空券取ってよ」
「いや。むしろ旅行会社のフリープラン取った方がいいかも」
「ああ!」
 

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それで私は知り合いの旅行代理店の人に電話した。
 
「5日間とか7日間とかのフリープランがありますよ。最低2名様から運行しますから、いつでもお好きな日程で。飛行機の座席はファーストクラスにしますか?」
「いえ。ビジネスでいいです」
「ホテルはスイートで?」
「いや、エグゼクティブかスーペリアル付近でいいです。今回は仕事じゃないので、あまり豪華じゃないほうが勉強に身が入ります」
「では料金が変わらない範囲で限りなく上質なエグゼクティブを」
 
「ありがとうございます。イギリスはビザ不要でしたよね?」
「はい」
「パスポートの残存期間はどれだけ必要でしたっけ?」
「帰りの航空券の日付が有効期限内ならOKです」
「あ、じゃ政子もパスポート取り直す必要ないな。いつなら空いてます?」
 
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政子のパスポートは2009年の2月に「次の試験の成績が悪かったら即タイに召喚」
と言われて作ったものなので、来年の2月に有効期限が切れる。つまり5ヶ月しか残っていないので国によってはパスポートを更新する必要があるのだが、イギリスは大丈夫のようである。
 
「明日でも明後日でも。夏休みが終わったので、今月・来月は全部大丈夫です」
「うーん。じゃ切りの良い所で来週月曜16日出発の5日間で」
 
と私は手帳のスケジュール表を確認して言った。
 
「16日は敬老の日で祝日ですが、大丈夫ですか?」
「あ、そうか! 曜日関係無く仕事してるもんだから、祝日にも無頓着になっちゃって。混んでます?」
「大丈夫です。みんなその日に帰国しますから。出発する方は混んでません」
「あ、じゃ、そのままで」
 
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「かしこまりました。それで押さえます。お支払いは?」
「現金で」
 
ということで夕方、うちのマンションに行程表を持って来てもらい、料金を確認して振り込みすることにした。
 
「向こうには楽器とかノートパソコンとか一眼カメラとかお持ちになりますか?」
「楽器は持っていきませんが、ノートパソコンと(政子の)iPhone,(私の)iPadを持って行きます。カメラはコンデジを使います」
 
「ATAカルネを取っておいた方がいいですね」
「確かに!」
「じゃ、その申請書も持って行きますので」
「お願いします」
 
それで電話を切ったのだが、政子から言われる。
 
「ね、冬、そのスケジュール表、見せて」
「うーん。ま、いっか」
 
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「ね。休養中のはずなのに、なぜこんなにたくさん予定がプリントされてるの?」
「あはははは」
 

私たちは18時頃帰宅したが、旅行代理店の人は19時すぎにやってきた。音楽関係の人間の時刻感覚はだいたい一般の勤め人さんと6時間くらいずれているので、普通の人だと午後一番くらいの感覚である。向こうもそういう感覚に合わせてくれている。
 
彼女はマンションに入るなり
「えっと・・・・」
と言って戸惑っている。
 
誰かさんのせいで、居間が花だらけになっているのである。
 
「あ、適当に進入してきてください。花は踏んでも構いませんから」
 
というか、花を踏まずに応接セットまで来るのは至難の業だ!
 
旅行代理店の人はそれでも出来るだけ花を踏まないようにして、テーブルのところまで来てくれた。行程表を見せて、いろいろ説明する。
 
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今回の行程は往復で1日ずつでイギリスに実質3日間滞在し、ストラトフォード・アポン・エイヴォンに1日、ロンドンに2日ということにしてホテルのチケットも押さえてもらうことにした。主たる目的地はストラトフォードのシェイクスピア生家や娘さんの家など、ロンドンのグローブ座、ヴィクトリア&アルバート博物館(旧劇場博物館の所蔵品がこちらに移されている)、ウェストミンスター寺院といったところである。グローブ座は、グローブ座見学・観劇のオプショナル・ツアーがあるということだったので、それも申し込むことにした。
 
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夏の日の想い出・4年生の秋(2)

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