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■夏の日の想い出・カミは大事(7)

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中学校の体育館で行われた入学式は、入学者の名前を全員読み上げるなどというのが無かったので、比較的短いものだった。
 
国歌の斉唱があった上で、新入生代表(▲小学の児童会長をしていた子)が壇上に登って、全員を代表して校長から「入学許可」を受けた。その上で校長の祝辞、PTA会長の祝辞、来賓の祝辞、新入生代表(■小学の児童会長)の「決意の言葉」があり、校歌の紹介と斉唱がある。最後に職員の紹介があって終了。各自の教室に入った。
 
担任の先生の自己紹介と新入生に向けての言葉があり、教科書が配られる。それから生徒手帳用の写真を撮影するということで理科室に行った。
 
男子はほとんどの子が丸刈りである。
 
「唐本〜、お前髪切らなかったんだ?」
と小学生の時にもクラスメイトだった子から言われる。
 
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「入学式の前日に切るつもりだったら、丸刈りが廃止になったと聞いてほっとした。丸刈りなんて死にたい気分だったもん」
 
「確かに唐本を丸刈りにするのは犯罪かもという気がするよ」
 
「あれ、唐本声変わりしたんだ?」
と他の男子の元クラスメイトからも言われる。
 
「えー?別にボクの声は変わってないと思うけど」
「いや、普通に男の子の声になってる」
「ああ、とうとう唐本も男の子になっちゃったのか」
 

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翌日の5時間目の授業が終わった後で新入生は体育館に集められ、部活動の紹介が行われる。私は若葉と一緒に陸上部に入ることを決めていたので、その説明会が終わった後、体操服に着替えて、若葉と一緒に陸上部の集合場所である、校庭の鉄棒前に集まった。この鉄棒前の所から100m走のコースを設定しているのである。校庭は校舎側にあるバックネット周辺を野球部が、校舎側の残りをサッカー部が使っており、陸上部は主として校舎と反対側のこの100mコースとそばにある砂場(走り幅跳び・走り高跳び用)付近を使用していた。
 
「新しく入る人はこれに名前と学年・組を書いて」
と言われたので、1年5組.唐本冬彦 と記名する。若葉も1年6組.山吹若葉と記名した。それであらためて円陣を作った上で、既に在籍している人も含めて自己紹介をした。
「●小学校出身の唐本です。私は足は遅いですけど頑張って少しでも速くなりたいと思っています」と私。
 
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「同じく●小学校出身の山吹です。元々はテニスやっていたのですが、足を鍛えるのに唐本さんと一緒に走っている内に走ること自体が気持ちいいなと思い、一緒に陸上部に入ることにしました」と若葉。
 
続いて自己紹介したのが貞子だった。
「▲小学校出身の前村貞子です。私は前の学校でも圧倒的に1番だったので、この学校でも圧倒的1番になるつもりです」
強気の自己紹介に「おおっ!」という感じで私も若葉も彼女を見つめた。実際彼女は本当に速くて、私も若葉も彼女を憧れの目で見ることになる。
 
まずは練習前のジョギングをする。
 
が私はこのジョギングでみんなに遅れてしまう。校庭をほんの5周しただけなのだが、たっぷり1周分遅れてしまった。こんなに遅れていたらクビにされるかなと思ったものの、顧問の加藤幾子先生は
 
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「頑張れ頑張れ〜」
と明るい声を掛けてくれた。
 
その後、100m走、800m走、2000m走をやってタイムを測られるが、貞子は2000m走で2年生で女子エースの絵里花さんに、ほんの3mほど遅れての2位で入り
 
「強気の発言するだけのことある。頑張ってね」
と言われていた。しかし本人は
「絵里花先輩、私すぐに先輩を抜きますから」
などと言う。絵里花さんの方も
「うん。貞子ちゃんのような子がいれば私もまた頑張れる。こちらも在校中は貞子ちゃんに抜かれないように頑張るよ」
と言って握手をしていた。
 
ちなみにボクは100mは28秒、800mは4分、2000mは10分ほど掛かった。他の部員に大きく遅れ、2000mは何周も遅れたが
 
「練習してれば速くなる。頑張れ」
と先生からも先輩からも励まされて、わあこの部は居心地がいいと思い、練習ほんとに頑張ろうと思った。
 
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練習の最後には整理運動をした上で2人組になって柔軟運動と太腿や腰などのマッサージをした。私はさて誰と組めばいいのかな?と思っていたら若葉が寄ってきて「冬、一緒にやろう」と言ってくれたので、組んで背中を押したり、足を揉んだりした。
 
「冬、以前から女の子っぽい感触だと思ってたけど、ますます女の子っぽさが増してる」
などと言われる。
「なんか私の脂肪の付き方、女の子的な付き方みたい」
「うーん。というか冬って実は本当に女の子だということは?」
「それはないと思うけどなあ」
「何だか自信が無さそうな言い方!」
 
最後に簡単なミーティングをして初日の練習を終えた。
 
それで体操服から制服に着替えるのに、校舎の方に行きかけたら先生が
「ちょっと女子の新入部員、集まって」
と言う。
 
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女子だけ何か注意があるのかなと思いつつも私はそのまま校舎へ行こうとしていたのだが、加藤先生は
「冬ちゃーん、こっちこっち」
と私を呼ぶ。
 
「はい」
と言って何だろう?と思いつつ、女子だけ集まっているところに私も行った。若葉の隣に体育座りする。
 
先生からの女子部員への注意はいくつかあった。
 
「うちは基本的に男女であまり練習メニュー変えたりしないので、女子には体力的にきつい場合もあると思います。そういう所は自分の体力に合わせて適当に内容を勘案してください。よくロードで○○橋まで往復10kmのコースを走りますが、10kmはきついと思ったら途中の○○材木店折り返し6kmコースとかにしても誰も文句言いません。練習は頑張れば力が付くけど、やりすぎると身体を壊して一生の悔いになりますから、そこは自分で判断して下さい」
 
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「生理の時は無理しないでください。副部長に言って休むか見学すればいいです。副部長がつかまらなかったら、2年か3年の女子に言っておけばいいです」
 
「試合に生理がぶつかりそうな場合は婦人科のお医者さんでピルを処方してもらってずらす手があります。2年3年の女子部員には何人かピルを使っている人がいます」
 
「帰りが遅くなった場合、できるだけ何人かで一緒に帰って下さい。念のため防犯スプレーを各自用意しておいた方がいいです」
 
私はこういう話を自分も一緒に聞いてていいのだろうか?と思った。もしかして加藤先生、私のこと女子と思った?? でもこの手の話を聞くのも「いつものこと」
なので、まいっかと思って聞いていた。
 
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隣で聞いていた若葉が言う。
「冬は絶対痴漢に目を付けられるタイプだと思う。明日一緒に防犯スプレー買いに行こう」
「あ、うん」
 
するとその向こうに居た美枝が
「あ、私も一緒に行く」
と言う。
 
それで3人で待ち合わせて買いに行くことにした。
 

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若葉が「私服でおいで」と言ったので、私はオレンジのセーターに黒い七分丈のジーンズで待ち合わせ場所に行った。
 
「でも冬ちゃん、今は遅いけど、凄く頑張ってるというのが伝わってくるよ。練習してれば速くなるから、頑張ろう」
と美枝が言う。
 
「そうそう。私、冬とは小6の時ずっと毎日一緒に走ってたんだけどね。最初100mが48秒掛かっていたのが、23秒まで縮んだんだよ」
と若葉。
 
「48秒! そのタイムも凄いけど、そこから23秒まで縮めたのも凄い」
と美枝が感心する。
 
「昨日は28秒だったけど、いつものランパンじゃなかったからね。月曜日はあれ持ってきなよ」
「うん、そうする」
「ああ。体操服のジャージだと足が動かしにくいかもね。ウォーミングアップの時はいいけど、練習に入ったらランパンの方がいいよ」
と美枝も言う。
 
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「だけど、昨日も思ったけど、冬ちゃんって低音ボイスなんだね」
「ああ、冬は色々な声が出せるんだよ。私の前でいつも出してる声出しなよ」
と若葉。
「そうだなあ。じゃ、こちらにするか」
と私はアルトボイスで答える。
 
「あ、そちらの声の方が安心する。さっきまでの声だと男の子みたいな声だよね」
「ああ、冬は男の子だから」
と若葉。
「へ?」
「あ、ボク戸籍上は男だよ」
「なにーー!?」
「でも性転換済みだよね?」
「性転換してない、してない」
「へー、冬ってそういう子だったのか? 今日も女の子の服着てるし」
「えー? これは別に女の子の服じゃなくて普通の普段着だけど」
「なるほど、普段着が女物なのか」
 
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「冬は去年の年末に女の子の友だち何人かと一緒に温泉スキーに行ったらしいんだけどね」
「うんうん」
「その時、みんなと一緒に女湯に入ってたし、胸は小さいけど膨らみかけの感じで、お股にはおちんちんらしきものは認められなかったと」
「なーんだ、それなら女子と同じだね。女湯に入れるということはやはり手術済みなのでは?」
「そう思う」
 
「何か噂が一人歩きしてるなあ。女湯は無理矢理連れ込まれただけだし、ボク一応まだ手術はしてないけど」
と私は頭を掻きながら答えた。
「じゃ、女性ホルモン飲んでるとか?」
「飲んでない、飲んでない」
 

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3人で一緒に防犯スプレー(コンパクトで噴射力は強い優れもの)を買った後、スポーツ用品店に行き、スパイクの下見をした。
 
お店の人が寄ってきたが「今日はまだ買わないけど下見」ということを伝える。それでもお店の人は親切に説明してくれた。
 
「まだ中学1年でしたら、これから成長するからといって大きめのを選びたくなるかも知れませんが、大きすぎるスパイクは足を痛めます。ここで1万,2万をケチって後悔するより、ちゃんと足にぴったり合ったのを買って、成長したら買い直した方がいいです。これたくさん売りたいために言うんじゃないですから」
とお店の人は本当に私たちを心配しているように言う。
 
「最初はオールウェザー・アンツーカ兼用スパイクでいいですよね?」
「それでいいと思います。記録を狙うとか、都大会でトップ争いするとかいったレベルになったら、各々専用のになさるといいです。専用スパイクにするだけで0.1〜0.2秒はタイムが上がりますから」
「わあ」
 
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お店の人は更にメーカーごとの特性なども丁寧に説明してくれた。たくさん説明を聞いている内に、美枝が
「ああ、私今日買っちゃおうかな」
と言い出した。
 
「ああ、お金持って来てるなら、それでもいいんじゃない? 冬は?」
「そうだなあ、ボクも買っちゃおうかな」
 
ということで全員足のサイズを測ってもらい、オールウェザー・アンツーカ兼用の短距離・中距離用のスパイクを出してもらった。いくつかのメーカーを履き比べてみて、結局3人ともミズノを選んだ。
 

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それで月曜日にはそのスパイクを持って練習に出ていく。
 
「お、そこの3人、スパイク買ったのね。それで再度100m測ってみようか」
 
ということで測ってみると、美枝が16.2秒、若葉が17.3秒、私が20.8秒であった。
 
「冬ちゃん、金曜日とは見違えた。金曜日は体調悪かったの?」
と加藤先生から訊かれる。
 
「あ、今日はこのランパン穿いてるからですよ」
と若葉が言う。
 
「そのランパン穿くと変わるの?」
「小学校の時も、普通の服だと、100mを33秒掛かってたのにこのランパン穿くと23秒で走れてました」
「うっそー、それ魔法のランパン?」
「いや、女子用だからです」
と若葉。
 
「へ?」
「冬って女の子の服を着ると能力が上がるんです。ピアノとかも男の子の服を着てるとそんなでもないのに、女の子の服を着るとすごく上手になります」
 
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「ちょっと待って、女の子の服って。。。」
「あ、冬は男の子ですよ」
「えーーーー!? 女の子と思ってた。髪も女の子っぽいし」
 
「この子、雰囲気が女の子だから、男の子の服を着ても女の子にしか見えないですよね。学生服を着ていても、ほとんど男装女子中生にしか見えないし。実際、金曜日に校内で生活指導の先生に注意されたんですよ。君、ふざけて学生服なんか着ないで、ちゃんとセーラー服着なさいって。それで本人もセーラー服を買うことにして今度採寸に行くって」
「ちょっと待って。その話、最後の方は創作が入ってる」
 
「もしかして女の子になりたい男の子?」
「本人は否定してますけど、友人は冬のこと実質女の子と同じと思ってます」
「へー!」
 
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「冬、今日は下着は男物?」
「うん」
「明日、女物の下着を着けておいでよ。それで100mをもう一度測ってみよう」
と若葉が言う。
 
それで言われたしと思って、ブラに女の子パンティを穿いて翌日練習に出て、100mを再度測ってもらうと19秒8だった。
 
「冬ちゃん、100mのタイムで1秒違うって凄い!」
と加藤先生はほんとうに驚いていた。
「練習の時はいつも女の子下着を着けておくようにしようよ」
と言われて、私はポリポリと頭を掻いた。
 
なお、柔軟体操やマッサージを、私が男子なら女子の若葉や美枝と組むのはまずいのではと先生は心配し、男子の野村君にちょっと組んであげて、と言ったのだが・・・・
 
「先生、俺は構わんけど、唐本はむしろ女子と組ませるべきだと思います」
と私の背中を押してみた野村君が言う。
「へ?」
「先生、唐本の背中押してみてください」
 
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というので先生は私の背中を押して。。。
 
「分かった!じゃ、若葉ちゃんか美枝ちゃんかお願い」
と先生。
「ああ、私でもいいですよ」
と貞子も言うので、だいたいこの3人の誰かと組んで柔軟体操をした。
 

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■夏の日の想い出・カミは大事(7)

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