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■夏の日の想い出・多忙な女子高生(6)

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「こんにちは!ローズ+リリーです!」
と叫ぶ。
 
すると観客から大きな歓声が上がった。
 
そのまま、ふたりで『その時』を歌う。
手拍子が来る。
ボクたちはその手拍子に笑顔で応えながら、16ビートの明るいリズムに乗せてこの曲を歌う。『その時』という曲はリズムや伴奏が明るいのに詩の内容は結構内向きである。
 
歌が終わると拍手が来る。
 
次の曲の伴奏が始まる。スローロックの少しメランコリックなリズムと伴奏。『遙かな夢』を歌う。この曲はメランコリックな音なのに、詩の内容は積極的。
 
このふたつの曲はほんとにまるでセットで作ったかのように好対照なのだ。
 
下川先生からはアレンジ譜面を返される時「これ、上島君の作品見て書いたアンサーソング?」などとも言われた。実際にはとてもとてもそんなことまで考えている余裕など無かったのだが。
 
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歌い終わって、ボクたちは下がり、メインゲストのELFILIESを紹介しようと思ったら・・・・拍手が凄まじいので、もう1曲歌ってくれ、という話になってしまう。そこでボクたちは急遽『ふたりの愛ランド』を歌うことになった。
 
数百人の観客が熱狂する中、ボクたちは初期のボクたちの代表曲ともなったこの歌を、楽しく歌わせてもらった。
 
そして割れるような歓声の中、ボクたちは ELFILIES を紹介し、そのままプールに飛び込んで退場した。
 

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ずっとずっと後に、ボクはメジャーデビューさせるアーティストの条件というのを町添部長に聞いてみたことがある。
 
「まあ、大手プロダクションが色々キャンペーン計画とかも立てて持ってきた案件は、本人が歌っているのを見せてもらって、雰囲気がよければそのまま追認するんだけどね。まあ、外れる確率も高いけど」
「そうでしょうね」
 
「インディーズでの活動を見て判断する場合、やはりCDの売り上げよりライブの様子だよね」
「へー」
「だから、だいたい話が来たアーティストについては偵察チームで見に行っているよ」
「そうなんですか!」
 
「ローズ+リリーについては、CDを作って最初に持ち込んだライブ会場ですぐ売り切れたというので、浦中さんが『こいつは化ける』と感じたみたいでね」
「へー」
「その直後にこちらに打診があったんだよ、実は」
「そうだったんですか!」
 
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「そこで秋月君がそのすぐ後にあった浦和でのイベントを偵察に行って、この子たち良いですよと報告してくれて」
「えー!?」
「浦和でもCDが売り切れて秋月君は買って帰るつもりが買えなかった。そのあと月末の富士急ハイランドのイベントを加藤君と秋月君・北川君で見に行って、観客が凄い熱狂してましたよと加藤君も報告してくれて」
「わあ」
 
「それじゃ、メジャーデビューの計画してもいいかもね、などと言っていた所に上島君が『ローズ+リリーという新人女子高生デュオに曲を渡したので、そちらですぐにCD出してあげてください』と電話してきたんで、急遽発売が決まったんだよ」
「やはり、最後は上島フォンですか!」
 
「そうそう。でも上島フォンって、毎回僕らは振り回されるけど、当たるからね。AYAなんかも本来3人で出す予定が2人脱落したと聞いて、補充メンバーをオーディションでもやって入れようかと言っていたら、上島君がこの子1人でも充分売れるから、このまま売ってあげて、と言ってきたから、そのまま出して売れたから正解だったね」
「ああ」
 
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ボクが8月に和泉と作った作品『水色のラブレター』は9月前半に録音したもののリリースされたのは10月22日である。(これが普通に売る時の日程)
 
一方政子と作った作品『遙かな夢』はKARIONの音源制作が終わった直後の9月21日に録音したものの、発売されたのはこの日9月27日。(こんな短時間で発売するのは異常)
 
ということで、ボクの作曲に関するプロ処女作ともいうべきふたつの作品は実際には作った順序と逆の順序で発売されることになった。
 
そして『遙かな夢』はCD自体としては20万枚/DL。単独DLは9万件。
一方の『水色のラブレター』はCD自体は5万枚/DLだが、単独DLは12万件。
 
と、どちらもとても順調な売れ行きを見せたのである。
 
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内心ボクは、どちらかが売れてどちらかが売れなかった、ということにならなかったことに安堵したのであった。
 

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プールでのイベントの翌日。ボクと政子は横浜のデパートでミニライブを2回することになっていた。
 
ところが1回目の公演をはじめようとボクらがステージに立ち
「こんにちは、ローズ+リリーです」
と言った途端、観客がドドドっと押し寄せて来た。
 
やば!と思ったボクはとっさに政子の手を引き、近くの従業員出入口に飛び込んで逃げた。
 
幸いにも観客にはけが人は無かったものの、スタッフの数人が軽い打撲を負い機材もかなり破壊されて、デパートの施設も壊されて、損害額は100万円を越えたらしい。
 
そしてそれを境に、ボクらはそれまでのようなオープンスペースで会場整理や警備スタッフを置かない形での「のんびりライブ」をすることはできなくなってしまったのである。
 
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週が明けて9月29日・月曜日。
 
朝出かけようとしていたら、父が新聞を見ていて
「へー。デパートのライブで怪我人だって」
などと言う。
「あらあ、危ないわねえ。子供とかいたら大変ね」と母。
 
「ローズじゅうリリーって、女の子2人組のアイドルらしいよ。アイドルの名前は聞いても分からんなあ」
などと父は言っている。「+」を「じゅう」と読まれるとは思わなかった。「たす」と読む人は時々いるのだが!
 
「警備が甘かったのかねえ」などと母。
「ああ。土曜日にデビューしたばかりって書いてある」と父。
「想定以上に人気が出てるのかもね」と姉は言った。
 
「ところで、あんた先週半ばから学生服着てるね」と母。
「あ、うん。ちょっとまだ身体の調子がいまいちだから」
「バイトのしすぎじゃ無いの?」
「うん、無理はしないよ」
 
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そんな会話をして出かける。
 

そして朝の補習が終わってすぐに6組に行き、ドアの近くにいた子に頼んで詩津紅を呼び出してもらい、廊下で赤い花柄の袋に入れたサイン色紙とCDを渡した。(政子はいつものようにボーっとしている雰囲気だった)
 
「すっげー。とうとう女の子歌手としてデビューしちゃったのか!おめ!」
と言って詩津紅はボクをハグする。
 
廊下を通っていた他の生徒たちがギョッとしている。ボクって女たらしと誤解されていることあるんじゃなかろうか、と時々思う。
 
「じゃ、早急に性転換しないと、男とバレた時にやばいよ。水着とかになることもあるだろうし」
などと言われる。
 
「いや、水着はデビューイベントで既に着た」
「何〜!?」
と大きな声を出してから
「実はもう性転換済み?」
「まさかあ。誤魔化してるだけだよ。ボクの胸触ってもいいよ」
 
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詩津紅が学生服の上からボクの胸を触る。
「おお!」
と詩津紅は嬉しそうな声をあげた。
 

その日の昼休みにはボクはこっそり女子制服(まだ9月なので夏服)に着替え定期券を持って学校を出る(出がけに奈緒にだけ見られた)。隣の駅まで移動し、◎◎女子高に行った。
 
玄関脇の事務室で、和泉と若葉を呼び出してもらう。ここにはこれまでも何度か来ているので、事務の人もこちらを覚えてくれている感じだ。
 
「おお、今日もちゃんと女子制服で来ているな。殊勝、殊勝」
「あれ〜、なんか今日は胸が大きくないか?」
「あはは、上げ底、上げ底」
 
若葉がボクの胸に触って「うーん」と言って意味ありげな視線で見る。
「豊胸手術しちゃったりしてない?」
「手術する根性無いよぉ」
「そうかもね。冬って意気地無しだもん」
「うん。自覚してる」
 
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「で、和泉、これ例のもの」
と言って先に和泉に青い花柄の袋に入れたCDとサイン色紙を渡す。
「うんうん。デビューおめでとう」
「ありがとう。それと先輩、よろしくお願いします」
「うむうむ。頑張りたまえ」
と和泉も笑顔で言う。
 
「何、何?デビューって?」
という若葉にも、黄色い花柄の袋に入れたCDとサイン色紙を渡す。ジャケット写真を見て驚いた様子。
 
「げっ、これ冬じゃん。随分可愛く写ってるなあ。え?★★レコード!?これ自分で焼いて作ったCDじゃないんだ!」
「うん。それで土日イベントやってたんだけど、昨日は観客が殺到してイベント自体が中止になっちゃって。びっくりしたよ」
「今朝の新聞で見た。警備とか会場整理とか無しではできないよ。ちょっと甘かったね」
と和泉も言う。
 
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「うん。今後はもっと警備のしっかりできる場所でやることになりそう。場所とかも最低でもロープで囲って。警備員も増やして。お金掛かるけど」
「まあ仕方無いね。でも初動凄いね」
「へ?」
「数字見てないの?」
「見てない」
 
「CD1万枚、DL2万件売れてるよ。これ、CDは多分初期プレス全部はけて品切中。慌てて追加プレスしている最中だと思うよ」
と和泉。
「ひぇー!」
 
実際、和泉の言った通り『その時』のCDは29日,30日の2日間は店頭に無く、10月1日(水)に再入荷したらしい。その後も何度か在庫切れが起きたらしい。
 
「でも女の子歌手になったんなら、もうちゃんと身体も女の子になろうよ。ひとりで不安なら付いてってあげるから、例の病院で手術しちゃわない?」
と若葉が言う。
 
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若葉の場合、これが冗談では無いのが怖い所である。
 
「えっと。その内ね」
とボクは焦りながら答えるが
「簡易性転換ならすぐ回復するから歌手活動に影響出ないよ」
とまで言われる。
 
実はそこの病院には一度若葉に連れられて行って、術式の説明とか、そこの先生が過去にした手術の「Before/After」の写真とかも見せられ、かなりボクも心が揺らいだことがあったのである。その時、そこの先生には
 
・完全な性転換(膣も作る) 
・取り敢えず睾丸だけ除去 
・男性器は除去するが女性器は作らない(いわゆるスムース:宦官化) 
・男性器を全部除去して股間整形するが膣は作らない(簡易性転換) 
・睾丸を除去し陰唇は形成するが陰茎は温存(実際にボクが1年半後に受けた手術) 
・陰茎を除去し陰唇・膣も形成するが、睾丸を体内に温存 
 
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などの選択肢があるとも言われた。ボクは当時睾丸温存方式に興味があった。女性型の股間になっているのに睾丸を温存している人がクリトリス刺激により射精する映像なども見せてもらった。(実際にそれをしなかったのは政子を妊娠させる訳にはいかないと思ったからである。陰茎が無いと避妊の手段が無いのである)
 
しかしボクはここでは逃げておく。
 
「取り敢えずまた今度考えるね」
と笑って誤魔化して、昼休み終わるからと言って退散した。
 

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その水曜日にボクと政子は、『その時』のキャンペーンの打ち合わせと、挨拶を兼ねて、放課後★★レコードに行った。
 
その時、ボクがうっかり間違って男子トイレに入ってしまい、そこで町添部長と鉢合わせてしまったことから、ボクはしっかり部長に顔を覚えられることとなった。
 
そして部長は加藤課長の「この子たち化けますかね?」という問いに
「うん。大物になる」などと笑顔で答えたのである。
 
その部長の言葉は、★★レコードのボクたちを売り出す姿勢にも影響した気がする。
 
そしてボクは部長とその月の下旬、再度会うことになる。
 

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10月はローズ+リリーの『その時』のキャンペーンで全国を駆け巡った。横浜での事故があったので、キャンペーンの場所は、CDショップなどでホールを持っている所はそういう場所、無い場合は商品の売場とは別の催事場などを使用し、ロープやブロックなどで囲って、外から人が殺到しないようにし、またステージにも容易に近づけないようにするとともに、警備のスタッフもそろえていた。
 
実際、このキャンペーンの費用だけで1000万掛かったらしい。恐ろしい!
 
ローズ+リリーのキャンペーンは10月4日から19日まで行われたのだが、そのキャンペーンが終わった直後、10月22日(水)に KARION の4枚目のシングルが発売された。
 
KARION はこれまでほとんどの曲を、ゆきみすず作詞・木ノ下大吉作曲というペアで書いてもらっていたのだが、いまひとつセールスが伸びていなかった。おかげで、ローズ+リリーは実は上島曲での反応を見るための KARION の仮面ユニットではなどという説まで出ていたのだが、今回の新しい KARION のCDでは、実際にソングライト陣を一新した。
 
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