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■夏の日の想い出・女子制服の想い出(7)

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結局ボクの写真が女子制服を着た状態で撮られているので、図書館で本を借りる時、男子の格好では「この生徒手帳違います」と言われてしまう。それで本を借りるためには、女子制服で行くしかないのである。
 
幸いにもうちの高校の図書館は土日にも開いていた。司書の先生や図書委員の生徒などは出てきていないものの、事務員の人が交替で、カウンターに座っていてくれるので、帯出手続きをすることは可能であった。
 
これは、うちの高校は、卒業後大学受験のために浪人している生徒を「補習科」
という名目で受け入れていて、補習授業を受けられるようにしているので、その子たちの便を考えての制度であった。
 
しかし土日には生徒が少ないので、ボクは本を借りる時はだいたい土日の午前中に女子制服で出て行くようにしていたのである。
 
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そのようなことをしていたある日。ボクは図書館でバッタリと奈緒に会ってしまった。
 
「ああ!冬服もちゃんと作ったのね?」
「えへへ。だって10月になったら衣替えだよ」
「でもその服着てるのは初めて見た」
「そういえば、あまり着てないかも知れないなあ。最近は下校時も学生服だし」
「6月の頃みたいに女子制服で帰ればいいのに」
「そうだなあ・・・・女子高生の気分になったら、そうするかも」
 
奈緒はじっとボクの顔を見つめた。
 
そしてまじめな顔で言った。
 
「そろそろ、自分に嘘つくのはやめなよ。ちゃんと自分が既に女子高生であることを心に受け入れよう」
 

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10月21日・日曜日。
 
いつものようにテレビ局のスタジオに出て行くと、プロデューサーさんがスタッフ一同に「集まる」ように言い、唐突に
 
「実はこの番組の収録は今日で最終回になります」
と告げられた。
 
「打ち切りですか?」
「まあ、そういうことです」
「珍しいですね。今の時期の改編というのは」
 
「局の決算状況が芳しくなくて、この番組は生の楽団を使ったり、丸一日掛けてリハーサルしてて、費用を食っているもので、もっと安上がりの番組に置換することになるようです」
「ああ・・・・」
 
電話1本、メール1通で予告なく切られるのがこの世界の常である。ボクは和泉と顔を見合わせて「仕方無いね」という表情をした。
 
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その日はみんな最後の収録になるということで、物凄く力が入っていた。ボクと和泉もパワー全開で歌った。後でこの最終回の放送を見た人たちからも、番組史上最高の出来でした、などというお便りが来たようである。
 

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翌週の水曜日、ボクは麻布さんのスタジオに出て行くと、日曜日のテレビ局の方の仕事が終了したことを言った。
 
「じゃ、日曜の午後もうちに来てくれない?」と麻布さん。
「ええ、いいですよ」
 
ということで、ボクの日曜の午後の行き先はテレビ局からスタジオに変わることになった。スタジオには結局、水曜・土曜・日曜に行くことになる。
 
「これまで曖昧にポチ袋で御礼をあげてたんだけど、ふつうのバイトにならない?」
「ええ。それでもいいです」
 
ということで、ボクは自分の口座を届け出て、給料は1ヶ月まとめて振り込んでもらうことにした。ただ、ボクはこことは正式な労働契約書などは交わしていない。ボクは結局∴∴ミュージックとも契約書を交わさないまま、リハーサル歌手の仕事をしていたのだが、この世界と言わず、世の中には、そのような曖昧な形でバイトをしている人たちが意外に多いのである。
 
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11月に入ってすぐ、和泉がボクを呼び出したので、金曜日の午後、ボクは待ち合わせ場所のハンバーガーショップに行った。8月までバイトをしていたお店である。
 
「あのね、冬さ、デビューする気無い?」
「へ?」
「実はね、新しい歌唱ユニットを作って、いきなりメジャーデビューという話が来てるのよ」
「凄っ! インディーズじゃないんだ?」
「そうそう。メジャーなのよ。びっくりした」
「良かったね」
 
「メンバーが私の他に女の子2人までは決まっているんだけど、冬も一緒にやらない? 社長にも話したんだけど、冬だったら絶対欲しいと言われた」
 
「つまり4人組の歌唱ユニットか・・・・」
「うん。私がソプラノで他の2人はアルトだからさ、冬が加わってくれれば、ソプラノ2人、アルト2人で、声に厚みが出ると思うんだよね」
「ああ」
 
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「ね、やろうよ。冬って舞台度胸があるから、絶対行けると思うのよね」
 
ボクは和泉と、それとまだ知らない2人の女の子と4人でステージに立って歌う姿を想像した。いいなあ。。。。やりたい。。。。この頃、ボクは結構自分がプロの歌手になるのを、空想とか夢ではなく、現実にあり得る道として考え始めていた。でも、ボクは大きな問題を抱えていた。
 
「ごめん。パスさせて」
「どうして!?」
 
「だって、ボク、絶対性別問題で和泉たちに迷惑を掛けるよ」
「あぁ・・・・」
 
「だって、メジャーデビューとかしたらさ、ボクの個人的な情報って誰かがいろいろ調べるじゃん。それで男だって分かったら、大騒動になるよ」
「いっそ、最初から戸籍上は男の子なんです、というのをカムアウトしてからデビューする手もあると思うよ」
「それやると、ユニット自体が色物と思われちゃうよ。女の子の歌唱ユニットとして売り出すんなら、そういうの無しで、清純的なイメージで売ったほうが絶対良いもん」
「うーん・・・・」
 
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「御免ね。ボクが本当の女の子だったら、良かったんだけど」
「私は冬は本当の女の子だと思ってるよ」
「うん。でも日本の法律がそうとは認めてくれないから」
 
「そっか・・・・仕方無いかな」
「でもボクも、高校卒業したら、きっとCDを自主制作して売り出したりとかして、歌手への道を歩き出すかも。売れないかも知れないけど」
「高校卒業ね・・・・そんなに遅くじゃない気もするな」
「そう?」
 
「自主制作CDなら、今すぐ作って持って来てよ。きっとうちの社長、冬が男の子であっても、売り出してくれると思うよ」
 
「ボクね・・・まだ自分が書く曲が、プロのレベルに達してないのを感じてるの。実はこの夏から、何度か物凄く良い作品が出来たんだけど、まだそのレベルの作品をコンスタントに書けないんだよね」
「じゃ、来年中にはCD作ろうよ。遅くても」
「そうだね。来年中くらいには良い作品が貯まるかな。そちらはデビューはいつ頃になりそう?」
 
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「多分年明け。今月中に音源制作を始めると思う」
「じゃ、ボクも早くCDとか作れるように頑張る」
「うん」
 
ボクたちは硬い握手を交わした。
 

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そして、和泉たちの新しいユニット KARION は、翌週からうちのスタジオに来て音源制作を始めた!
 
畠山さんがボクを見て「君、もしかして、一緒にやってくれる気になった?」
などと言う。
 
「いえ、私このスタジオのスタッフです」
と言うと、「えー!?」とびっくりしていた。
 
あらためて KARION に参加しないかと誘われたが、どうしても個人的な事情で今、あまり音楽活動ができないので、といってお断りした。しかし、それでもかなり口説かれて、結局ボクはこの KARION のデビューシングルに、コーラス隊として参加することになった!
 
スタジオエンジニア助手兼コーラスである! コーラス要員としては∴∴社のまだデビューしてない10代の女性歌手2人がアサインされていたのだが、ボクも加わって3人でコーラスを入れることになる。 KARION 3人とコーラス隊 3人でけっこうな厚みのあるサウンドになる。
 
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ところが初日、手違いでバンドの人たちが来ていなかった。
 
「すまん。インペグ屋(ミュージシャンの手配をする会社)さんとの行き違いがあったみたいで、明日からしか来れないみたい」
 
「今日は休みにしますか?」と麻布さん。
 
すると
「ね、冬って、キーボードもギターもベースもドラムスも弾けるよね?」
と和泉が言い出す。
 
「え? まあ・・・でもキーボード以外は素人レベルだよ」
「大丈夫。あとでプロの人たちのに差し替えればいいんだから」
「はは、まさか・・・」
 
そこで結局、最初にボクが譜面を見ながらキーボードでオートリズム付きで吹き込む予定の3曲を演奏して録音し、それを聴きながら KARION の3人には歌の練習をしてもらうことにした。コーラス隊の2人には今日は帰ってもらうことにした(こういう場合は彼女たちに1日分のギャラは支払われる。これを通称「お笑い」と称する)。もっともふたりは勉強したいので見学させて下さいと言って居残った。
 
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その後で、ボクはあらためてクリック音を聴きながらオートリズム無しでのキーボード演奏をして録音してもらい、更にギター、ベース、ドラムスも順に演奏して録音した。そしてそれらをミクシングすると、一応バンドで演奏しているかのような音源ができあがる。
 
「すごーい。ひとりでこんなに演奏しちゃうなんて」とKARIONの美空。「ひとりでバンドが組めますね」とKARIONの小風。
「影分身でもしなきゃ、リアルタイム演奏できないよ〜」
 
「私ギター練習しようとしたことあるけど、左でうまく弦を全部押さえきれないのよね〜。どれかが押さえ方緩くなっちゃうから、うまく和音にならない」
などと和泉が言うと、
「私、そもそもギターとベースの区別が付かない」
などとコーラス隊の千代子さん。
 
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「糸巻きの数を見ればいいよ。6本あるのがギターで、4本のがベース」
と美空が言うと
「へー!」
などと千代子さんは感心している様子。
 
「糸巻きが片側に6つ付いてるのと両側に3本ずつあるのがありますよね?」
とこちらは少し分かっている風のコーラス隊のもうひとり久留美さん。
 
「うんうん。フェンダーのギターは片側に6本、ギブソンのは両側に3本ずつ」
と美空は解説する。
 
「美空ちゃん、何だか詳しいね」と和泉。
「知識だけですよー。私、ギターは全然弾けない。CとFとG7の押さえ方教えてもらって覚えたけど、それで私の頭の容量は満杯になってしまった」
 
「その3つが弾けたら、結構何でも弾けたりして」
「さすがに無理がある」
 
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「美空ちゃん、まさかギターは弾けないけどベースは達人なんてことは?」
と小風が言う。
 
「えへ、えへへ」
「本当に達人なんだ!?」
と一同は驚いた。
 

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ともかくもその後はそのボクが作った伴奏音源を聴きながら KARION の3人には歌う練習をしてもらった。
 
「うーん。。。唐本ちゃんは、うちのスタジオの専属歌手かと思っていたが、専属バンドだったのか」
などと麻布さんは楽しそうに言っている。
 
「ベースはまだしも、ギターとかドラムスとか完璧に素人の演奏で申し訳ないです」
 
キーボード・プレイヤーは、感覚で和音の根音が分かるので、実はあまり練習していなくても単純なベースなら弾けるのである。ベースという楽器は簡単に弾けるようになるものの、弾きこなせるようになるには時間の掛かる楽器である。
 
「いや、それを全部プロ級に演奏できたら、凄すぎるよ」
 

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そして2日目。やっとバンドの人たちが来て、本来の作業が始まる。
 
と、思ったのだが・・・
 
「あれ?キーボードの人がいない??」
 
慌ててインペグ屋さんに照会するが、そもそもキーボード・プレイヤーはアサインされていなかったことが判明する。
 
「なんでこういうことになってるんだ!」
とさすがの畠山さんも怒っている。手配をした事務所の若い男の子が叱られてうつむいている。
 
「冬って、キーボードはプロ級だよね?」
と唐突に和泉が言い出す。
 
「ああ、確かに昨日の暫定演奏も、キーボードだけは素晴らしかったですね」
と三島さん。
 
「ははは」
「やはり、冬は天性のピンチヒッターだよ」
 
「そういうことになるのね?」
 
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ということで、結局この KARION のファーストシングルの音源制作では、ボクはコーラス兼・キーボード奏者兼・エンジニア助手として参加することになってしまったのである!
 
女子高生がキーボードを弾くというので、他のミュージシャンさんたちが少し不安がっていたが、1曲目を軽く合わせてみると、ボクがしっかり弾くので「おお、凄い」「君、上手いね〜」などと言われた。
 
そうしてこの2日目の日曜日に、ボクがキーボードとして参加した暫定的な伴奏音源が完成した。
 
3日目からは平日になるが、KARIONの3人が高校生なので平日は夕方から作業をすることになる。それでボクもこの音源制作中は、毎日学校が終わってからスタジオに行き、演奏に参加することになった。
 
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「ここまでどっぷりと参加したら、いっそこのまま KARION 自体に参加しない?」
と畠山さんは笑顔でしつこく勧誘する。
 
「ごめんなさい」
とボクは恐縮して返事をする。
 
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