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■夏の日の想い出・ひたすら泳いだ夏(7)

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その日、クリスマスコンサートの中学の部が15時に終わり解散した後、倫代から「せっかくだから少し付き合いなよ」と言われて女子制服のまま町に出た。他に同じクラスで小学校の同級生でもあるアルトの日奈(ひな)、別のクラスだがやはりアルトで一緒に歌っている亜美(つぐみ)と4人である。
 
「やっぱり普段は女の子の格好している方が多いの?」と日奈。
「えー、ふつうに男の子の格好だけど」
「別に恥ずかしがらなくてもいいのに」
「そういうの正直に言っといた方が他の女子との壁が無くなるよ」
 
「うーん」
「少なくとも今日初めて女子制服着ましたって顔をしてないよね」
「そうそう」
「もう何年も女学生している感じ」
 
「冬は小学校の頃はけっこう女子トイレにいたからなあ」と倫代。
「あ、そうそう。有咲がよく連れ込んでたんだよ。私たちも冬が女子トイレにいることには違和感無かったね」と日奈。
「へー、冬ちゃんって、やはりそういう子だったのか」と亜美。
 
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「まあ学生服じゃ女子トイレに入れないから」
「明日からでも女子制服で学校に出てくればいいのに」
「うん。。。。」
 
4人は何となく町を歩いている内、CDショップに来ていた。
「みんなどんなCD聴いてるの?」
「私はクラシックばかり。だからポピュラーに弱いんだよね」と倫代。「私はジャニーズばかりだあ」と日奈。
「日奈ちゃん、小学校の時もジャニーズの話よくしてたね。まだ山Pの担?」とボク。
「うん。山P命だよ」
「私はむしろ女の子の歌手やユニットよく聴いてるなあ。モー娘。もかなり聴いたし、大塚愛とか宇多田ヒカルとかaikoとか木村カエラとかよく聴いてる」
と亜美。
「ボクは何でも聴いてるよ。クラシック、ジャズ、ロック、ポップス」
 
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「冬ちゃんこの歌分かる?」
と言って日奈が何かの曲の一節を歌う。
「嵐の『Hero』だね」
「ほんとによく聴いてるなあ」
「その手の曲はラジオでよく聴いてるよ。ジャニーズのCDはほとんど持ってないけどね」
「へー。なんで?」
「たぶん、それ私と同じ症状じゃないかな」と倫代。
「何?」
 
「冬もたぶん、リズムや音程が不正確な歌が嫌いなんでしょ?」
「嫌いというより、頭が痛くなるから」
「えー?***とかうまいよ」
「ごめん。《うまい》のレベルの問題。本来の音程から1セントでもずれてたら気持ち悪くて」とボク。
 
「むむむ」
「ただ、冬ちゃんは民謡は聴いても平気なんだよね」
「うん。倫代は絶対音感が邪魔して民謡も気分悪いって言ってたね」
 
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「そうなんだよね。私の耳は西洋音楽専用なんだよ」
「たぶん、お祖母ちゃんや伯母ちゃんの唄う民謡と、お母ちゃんが歌う洋楽とを両方聴いて育ったから、ボクみたいな耳ができたんだと思う」
 
「冬は自分ではその耳を相対音感だと言ってるけど、私はスケールの自由度が高い疑似絶対音感だと思うな。アーってこの音の高さ分かる?」
「C#6」
「ほらちゃんと絶対音程が分かってる」
 
「なんかハイレベルな会話だ」と亜美。
「私たちはへたくそアイドルの歌を聴いてよう」と日奈。
 

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そんなことを言いながらCDを物色していたが、なかなかいいのが見つからない。ぶらぶらと歩いていたら、奥のステージの所に「16時半よりエピメタリズム生ライブ」
と書かれている。
 
「エピメタリズムって知ってる?」
「ああ、女子中学生4人組のアイドルユニットだよ」と亜美。
「へー」
「私の耳のレベルでは歌がうまいと思うけどね」
「じゃ聴いていこうか」
 
などと言って、席に座り、おしゃべりしながら待っていたのだが、16時半になってもそのエピメタリズムが登場しない。
「あれ?まだかな?」
などと言っていたら、お店のスタッフの人が出てきて言う。
 
「たいへん申し訳ありません。エピメタリズムは車の渋滞で遅れておりまして、あと30分くらい掛かるようです。もしそれまで誰か代わりに歌っておこう、などという人がおられましたら、ここで歌ってもいいですが」
などと言う。最後の方は半分ジョークで付け加えたような感もあったが、その時日奈が「はい!歌います!」と手を上げた。
 
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お店のスタッフさんも驚いたようだったが、ボクたちも驚いた。
「日奈ちゃん、歌うの?」
「4人で歌おうよ」
「やはりそうなるのか」
 
ボクがアルトもソプラノも出るので、ボクと倫代がソプラノを歌い、日奈と亜美がアルトを歌うことにする。4人の好きな曲の傾向が違いすぎるので、音楽の教科書に載っているような歌を歌おうということだけその場で決めた。
 
「それではまず『夏の思い出』」とMCを買って出た日奈が言う。ボクはその場に置いてあるピアノを借りて、弾きながら歌うことにした。前奏に続いて歌の始まる所を首を縦に振って合図する。「夏が来ーれば思い出す」と4人のハーモニーが響く。お客さんの数は少ないけど、やはり人前で歌うのって気持ちいい!と思う。
 
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歌い終わった後、たくさん拍手が来た。お店の人も笑顔で拍手している。
 
「拍手ありがとうございます。今日はこれの前、市民会館でクリスマスのコンサートをしてきたのですが、やはり歌うのは気持ちいいですね。でも町もクリスマス一色。恋人がいる人は楽しいクリスマスイブを過ごすのでしょうか。私たち恋人のいない子はチキンとかケーキとか、食い気だけで頑張るつもりです」
などと日奈は気持ち良さそうにトークをしている。日奈ってこんなに心臓が強いのか、とボクは見習いたい気分になった。
 
お客さんの中には「市民会館でコンサートしてきた」という言葉から、ボクたちをプロと思い込んだ人もあったような気もした。またそもそもエピメタリズムが遅れていることを知らず、ボクたちをエピメタリズムと思い込んでいる人たちもあるような気もした。
 
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「それでは次は『花の季節』行きます。この曲『悲しき天使』の名前で記憶している方もあるかと思いますが」
 
ボクはサビ部分を前奏代わりにその曲を弾き始めた。後にローズ+リリーで『長い道』のタイトルでアルバムに入れてリリースして単独ダウンロードが20万件にも達した人気曲であるが、この時は数年後にこの曲でそんなヒットになるとは思ってもいなかった。音楽教科書では『花の季節』というタイトルが定着している。
 
その後、ボクたちは『サンタルチア』『翼をください』『エーデルワイス』
『浜辺の歌』『花の街』『いい日旅立ち』そして本家・エピメタリズムが到着したっぽいのを見て最後『ホワイトクリスマス』を歌って締めた。
 
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夕方になるのでお客さんがたくさん集まってきていて最初は15〜16人だったのが最後は席があふれて100人近い人数になっていた。その100人ほどの観衆から割れるような拍手が来る。
 
「フーズザットガールズの、アイコ、エイコ、ケイコ、そして私セイコでした」
と挨拶する。ボクたちは突然聴いたこともないニックネームで呼ばれてびっくりする。
 
「それではお待たせ、エピメタリズムです!」と日奈が言い、ボクたちはステージを降りる。そして代わりに微妙に安っぽい衣装を着たボクたちと同年代くらいの女の子4人がステージにあがり
「たいへんお待たせしました。エピメタリズムです」
と言い、マイナスワン音源を流しながら、歌を歌い始めた。
 
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ボクたちが歌っている間に席は埋まってしまっていたが、お店の人が椅子を4つ出してきてくれて「お疲れ様でした。物凄く盛り上がりました」と言ってボクたちにファンタのペットボトルを1本ずつ渡してくれた。
「ありがとうございます」と言って受け取り、4人ともファンタを一気飲みする。「お代わり持って来ましょうか?」というので4人とも「じゃお茶を」
と言った。カロリーが気になるお年頃である。
 
「でも私がアイコで」と亜美。
「私がエイコ?」と倫代。
「でボクがケイコなのね?」とボク。
「うん。そして私がセイコ。その場で思いついた」と日奈は楽しそうだ。
「○イコという名前を五十音順に考えて、名前として成り立ちそうなのを順に言っただけだけどね」
「なーんだ」
 
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そういう訳でボクのステージネーム「ケイ」は実は元を糺せば日奈の思いつきに由来するのである。
 
「フーズザットガールズってのはマドンナの曲から?」と倫代。
「あれ?ユーリズミックスの曲じゃなくて?」とボク。
「私、DOUBLEの曲かと思った」と亜美。
「何それ?どれも知らない。単にだれよあの子たちって意味だけど」と日奈。
「うむむ」
 
あとで調べると、マドンナ、ユーリズミックス、DOUBLEにそれぞれ同名曲があったことが分かった。全部違う曲なので、「次『フーズザットガール』行きます、なんて言ったらみんな違う歌を歌い始めていたかもね」とあとでみんなで笑った。
 
「でもよくアドリブであんなにしゃべれるね」
「MCなんて瞬発力だよ」と日奈は言っている。
 
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エピメタリズムのマネージャーさん?らしき女性が近づいてきて握手を求めた。
「ありがとうございます。ステージを持たせてくれてて助かりました。でもあなたたち、凄く上手いね」
「ああ、私たち合唱部ですから」
「それでか!音程が物凄く正確っと思った。あ、もし興味あったらデモ演奏をUSBメモリーか何かに入れてうちに送ってみません? 取り敢えずインディーズでCDとか出してもいいですよ」
と彼女は言い、ボクたちに1枚ずつ名刺を配った。
 
《○○プロダクション・ミュージックプロデューサー はらちえみ》
と書かれていた。実はボクと美智子の初めての出会いなのだが、このことを美智子は覚えていないようであった。ボクも言っていない。女子中学生の制服姿だったから無理もないという気はする。そしてその時の名刺は密かにボクの秘宝ファイルの中に保存されている。名刺の裏にはその日の日付2005.12.18と美智子の似顔絵が描かれている。
 
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クリスマスコンサートの翌週はサンタガールの衣装を着てケーキの配達をした。23日の金曜日はボクひとりで20軒ほどに配り、24日は貞子と手分けして100軒ほど。そして25日はまたひとりで40軒ほどに配った。配るエリアが狭い地域に集中しているのでだいたい1軒5分から10分くらいで行けるのだが、それでもなかなかハードだった。
 
昨年ボクがケーキ配達に来たのを覚えている人もあり
「ああ。今年もあなたが来たのね。ほんと君可愛いね」
などと言ってくれる人もある。
 
サンタガールの衣装に着替えるのは絵里花の家を使うが、この時着ていく服は微妙である。姉には絵里花の家で女装していることは内緒にしていたし、絵里花にもボクが女物の服を持っていることは内緒にしていた。そういう意味ではふつうに男の子の服を着ていけば良さそうだが、絵里花のお母さんにはボクは女の子ということになっていた。
 
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ということで、ボクは男性用の前閉じビキニブリーフ(ちょっと見た目には女性用のビキニショーツにも見える)と女性用タンクトップ(そう思い込んでいる人には男性用のランニングにも見えるし、ランニングとタンクトップの相互流用はやる人も多い:と思うことにしていた)を着ていた。そして上には中性的なセーターとジーンズを着ていた。
 
はなからボクを男の子と思っている人には特に女装しているようには見えないが、ボクを女の子と思い込んでいる人にはふつうに女の子に見えるはずである。泰世のいうところの「視線に対して透明な服」である。
 
すっかり顔なじみになっている絵里花のお母さんに挨拶して、絵里花の部屋を借りてサンタガールの衣装に着替えるのだが
「あれ、それ女の子パンティかと思ったら、男の子用のビキニか」
「ええ、おちんちんの収まるスペースがあるんですよね」
「じゃ、女の子パンティに着換えよう。おちんちんの収まるスペースの無い奴」
と言って、絵里花はボク専用に用意している下着を出す。
 
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「やはりそうなるのか」
「男物の下着でサンタガールを着ることは許さん」
「去年はそれで着ましたけど」
「あれは緊急事態だったからね。はい、ブラジャーも付けようね」
「了解です」
 
「夏の合宿の時にはあったブラ跡が無くなってるけど、女の子水着が食い込んだ跡がある。男湯には入れない身体だね」
「男湯は別にいいかと。10月から毎日プールで泳いでますから。陸上部で運動するのが習慣になっちゃってたから、やはり身体を動かしていないと調子悪いんですよね」
 
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