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■夏の日の想い出・ひたすら泳いだ夏(3)

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翌日、ボクは家で女子用水着を身につけてから、その上にふつうのポロシャツとチノパンを穿いて、○○市の市民プールまで行った。玄関のところで待っていると、ほどなく絵里花さんが来る。
 
「お待たせ。チケット一緒に買ってあげるね」
「あ、お願いします。あ、教えてもらうんだから絵里花さんの分も出せと言われたので」と言ってボクは2人分400円を渡した。
「了解。じゃ入場料は冬ちゃん持ちということで」
 
絵里花さんが券売機でチケットを2枚買い、1枚ボクに渡す。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。え?中高生女子??」
 
「ふふふ。そういうこと。このチケットを持った以上、女子の方に来てもらうよ」
「えー!?」
 
受付を通る。赤いベルトの付いた鍵をもらう。絵里花と一緒にチケットを出したので続きの番号の鍵をもらった。
 
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「この鍵が合うロッカーは女子更衣室にしか無いからね」
「うーん」
 
なんかこのパターンって前にも無かったっけ?とボクは思った。
 
「さ、冬ちゃん、こっちにいらっしゃい」
と絵里花はボクを女子更衣室に連れ込んだ。
 
「ちょっと・・・まずいですよぉ、ここは」
「冬ちゃん、雰囲気が女の子だからバレないって。それに女子トイレにはいつも入ってるじゃん」
「トイレと更衣室じゃ違いますよ〜」
 
「ああ、確認するの忘れてたけど、女の子の裸見て、興奮する口?」
「あ、それは無いと思います。女の子のヌード写真とか見ると、むしろ、わあ、このくらいバストがあるといいなあと思う」
「なーんだ。やっぱり女の子の身体になりたいのね?」
「あ・・・・・」
 
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ボクは素直にロッカーを開けて上に着て来たポロシャツとチノパンを脱いだ。
 
「ふーん。やっぱり女の子の身体じゃん」
「誤魔化してるだけですよぉ」
「胸あるじゃん」
「パッドを入れてるだけです」
「ふーん。昨日の今日なのに、そんなの入れてるってことは元々パッドを持ってたのね」
 
「5年生の時に同級生に着せられた時、これも入れられたんです」
「なるほど。そういうことにしておこうか。お股も何も付いてないみたいに見えるけど」
「アンダーショーツで押さえ込んでるんですよ〜。これも5年生の時ので」
 
「ウェストのくびれは?」
「元々ボクはこんなもんです」
「つまり、元々女の子体型なのね」
「うーん。それは認めます」
「まあいいや。じゃ、本番。泳ぐよ!」
「はい」
 
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絵里花さんの教え方は本当にうまかった。
 
全然泳げないボクに最初の30分はビート板を使ってひたすらバタ足の練習をさせた。そのあとクロールのフォームを地上で教える。息継ぎのタイミングまできちんと実地練習させられた。
 
そのあと水に入って、クロールで泳ぐ練習を始めるが、最も大きかったのは「顔をちゃんと水につけなさい」という指示だった。
 
ボクは最初息が出来ないのを怖がって顔をけっこう水から出していた。ところがそうすると身体が不自然に曲がってしまうので浮力がつかない。顔をきちんと水につけることで身体がまっすぐになってきちんと浮くようになるのである。怖がらずにきちんと形を守ると結果的にうまく行くというのは、ボク自身の哲学にとっても新鮮な発見であった。おそるおそるやるから失敗するのだ。やる時は思い切ってやるしかない。
 
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ひたすらバタ足の練習と水を掻く練習をたくさんした。ビート板を使い、バタ足だけで25mプールを向こうまで行くとか、足はビート板を挟み、腕の水かきだけでどこまで泳げるかとかもたくさん練習して基本的な力を鍛えた。
 
息継ぎは6回に1度くらいにしてごらんと言われた。
 
ボクは肺活量が6000ccあるので、確かにそのくらい息継ぎしなくても全然きつくないのである。どうしても息継ぎする時にフォームが乱れがちなので息継ぎの回数を減らすことで、泳法が安定した。最初は10mも泳げなかったのに、息継ぎを変えただけで、その日の内にちゃんと25mクロールで泳ぐことができるようになったのである。
 

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この後、絵里花さんは毎週土日(夏休み突入後は月水)に水泳を教えてくれた。2日目にはターンを教えてもらった。
 
1日目の時はターンなんてさっぱり分からないのでプールの両端では立ち泳ぎみたいな感じになってまた泳いでいたのだが、2日目の練習の時、くるっと回ってターンする練習をさせられる。これも最初はうまく身体をねじることができずに溺れそうになったり、手前過ぎてキックが空振りしたりしていたが、何度もやっているうちにちょうどいい距離と回転速度が分かり、いったん要領をつかむと、面白いようにクルリとターンできるようになった。それで50mでも100mでも停まらずに長い距離を泳げるようになったのだが、その長い距離を泳いでも全然きつくなかった。
 
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「冬ちゃんって足自体はモデルさんみたいに細いけど、ほとんど筋肉だもんね」
「ええ。100mを14秒で走れるから。ボクたぷん体脂肪率凄く低いと思う」
「その足の筋力でバタ足すれば、体重が軽い分、凄い推進力が出るよ」
 
最初は覚え立てのクロールで25mを泳ぐのに2分くらい掛かっていたが、細かい点を注意され、それを直していくことで2日目の練習の最後には1分で泳げるようになり、3日目で50秒、4日目には40秒、5日目35秒、6日目30秒と、どんどん速くなっていった。
 

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「プールだけじゃなくて海も経験しておこうか」と言われ、夏休みに入ってから8月の頭に『秋の大会に向けてのトレーニング』という名目で絵里花さんのお母さんの車で泊まりがけで海に行き、5日間泳ぎ尽くすことにした。参加したのは絵里花さんの他、3年の裕子さん、2年の貞子・美枝・若葉、そしてボクの6人。
 
集合場所に行ったら、いきなり荷物を取り上げられ、「冬ちゃんの着替えは用意しておいたから」と言われて、別のスポーツバッグを渡される。「帰りにこれは返してあげるね」
 
ボクは渡されたスポーツバッグの中身を確認した。ブラジャー、ショーツ、女物のポロシャツにスカート。あははは。
「このあたりは無いとまずいよね」といって、ボクの荷物の方からはジャージ、ランパン、ランニングシューズ、それにハンカチや財布などをこちらに渡してくれる。
 
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「これ2-3年女子の合宿だからね」
「そうだったんだ!」
「男子も何人か集まって今日から合宿らしいしね」
「え?聞いてなかった」
「石岡君が冬ちゃんも誘おうかと思ってると言ってたけど、冬ちゃんはこちらに誘いたいからと言ったんで、向こうからは声掛けなかったんだよ」
「わっ」
「冬は女子部員だからね」と貞子が言う。
 

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海岸の近くの安旅館に泊まり込み、午前中は準備体操をしてからひたすら泳ぎ、午後は日差しの強い12時から15時を休憩タイムにして、それから18時くらいまで今度は、ひたすら走った。
 
絵里花さんと若葉以外には、女子水着姿の初披露となったが
「おお、似合ってる」
「ちゃんと女の子に見える」
などと褒め(?)られる。
 
「おっぱいあるんですけどー」
「ああ、パッドです」
「お股に何も付いてないみたいに見えるんですけどー」
「嘘つきの人には見えません」
「そういう冬ちゃんがいちばんの嘘つきだと思いまーす」
「だからボクにも見えませーん」
 
海では、急に深くなる所とか離岸流とかの話をよくよく教えられる。みんなで一緒にけっこうな距離を泳いだ。念のため各自浮き輪に紐を付けて引っ張りながら、1kmほど沖合の島まで6人で一緒に泳いで行き、少し休憩してからまた戻ってくるなどということもした。実際には浮き輪は1度も使わなかった。
 
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午後のランニングタイムもなかなかハードだった。ウォーミングアップのあと、公園の周回コース(1周2km)に50m単位のマークが入っているので、それを使ってスタートダッシュで1周(40回)、快調走50m+ストレッチしながらの歩行50mというのを2周(40本)。それから500m全力で走っては500mゆっくり走るというインターバル走で休憩を入れて2周×2〜3回した。インターバル走ではボクはどうしても全力走の部分で他の5人に遅れるので、ゆっくり走る部分で追いつく必要があり、かなり鍛えられた。そして練習の最後は少し涼しくなってきた所でロードを10kmである。
 
熱い中での練習なのでたくさん水分補給する。旅館でペットボトルに水を入れてきておいて、それを午後の練習の間にみんな4Lとか5Lとか飲んでいた。それだけ水分を取ると塩分も足りないというので、塩を舐めていた。
 
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「走る時まで肌を出してたら日焼けで火傷するからね」
と言われて、長袖・長ズボン、それにしっかり帽子をかぶって走っていたので、無茶苦茶汗を掻いた。(毎日ホテルのコインランドリーで洗濯した)
 

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たくさん筋肉を使うので、練習後は2人組になって柔軟体操とマッサージをする。マッサージの時はカンフル剤を付け、柔らかくマッサージする。マッサージの時は絶対に強く揉むなと言われた。強く揉むと毛細血管を切ってしまい、血行を悪化させると言われ、柔らかく揉むようにした。
 
柔軟体操やマッサージの組合せは、何となく雰囲気で絵里花さんと裕子さん、貞子と美枝、若葉とボクという組合せになる。若葉とは小6の時からの付き合いで「おっぱいの触りっこ」もたくさんしてるし、あまり性別を意識せずに済んだ。
 
夕食はタンパク質をたくさん取ろうということでこの5日間は毎日焼肉であった。食べ放題の焼肉屋さんが付属しているというのが、この旅館を選んだ理由だったらしい。ボクたちは付き添い役の絵里花のお母さんも入れて7人で「女性7人」の料金で、毎日たくさんお肉を食べた。
 
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「ボクも女性で良かったんでしょうか?」と絵里花さんに小声で訊いたが「冬子ちゃんは女の子でしょ?」と言われる。
「そもそも冬って私より少食だよね」と若葉にも言われた。
「もっと食べなきゃだめだよ。身体をしっかり作らないと走れないからね」
と貞子からも言われて
「このくらいは食べなさい」と言われてお皿にどさっとお肉を盛られた。それでも若葉はボクの倍、貞子はその倍くらい食べていた。
 
ホテルは一応個室にバスが付いていたので、交替でバスルームに入って冷たいシャワーで肌のほてりを冷ましてから、ぬるめのお湯で身体を休ませた。正直、大浴場ではなく個室バスなのはホッとした。
 
部屋は、絵里花さんとお母さんに裕子さんで一部屋、貞子・美枝・若葉・ボクで一部屋である。
 
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初日、お風呂は若葉・美枝・貞子・ボクの順で入った。「どういう順序?」と訊いたら「50音順」と言われたが、苗字でも名前でも50音順にならないのが不思議である。ただどうも、この日はボクを最後に入れるというので3人で話が付いていたようであった。ボクがお風呂からあがって、他の3人の会話に加わり、しばらくおしゃべりが続いていた時、美枝が「じゃ行こうか」と声を掛けると3人が一斉にボクに飛びかかり、押さえつけられる。
 
「何?何?」
「解剖するに決まってるじゃん」
「冬ちゃんが男の子なのか女の子なのかを確認する」
「そんなの確認しなくても男の子だよー」
「それがどうも信じられないというのが、みんなの意見でさあ」
「おとなしく解剖されて」
「やだ。やめてよー」
 
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ボクは抵抗するものの、ポロシャツとスカートをあっという間に脱がされ、ブラジャーも外されてしまう。
 
「胸、少しあるよね、これ」
「うん。男の子の胸じゃないと思うな」
「えー?○○君とかこれよりもっと胸があるよ」
「○○君は肥満体型だもん。冬ちゃん、こんなに痩せててこの胸があるのは変」
 
「こら、自白しろ。女性ホルモン飲んでるだろ?」
「飲んでないよー」
「よし拷問だ」
「えー!?」
 
脇をくすぐられる。
「やめて、やめて」
ボクはくすぐったさを我慢できずに笑いながら抵抗していた。
「正直に言えば許してやるから」
「ほんとに何も飲んでないって」
 
「でもパンティの上からはあれが確認できないね」
「ほんとに付いてないみたいだよね」
 
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どうも3人はパンティの上から見えるボクのお股のシルエットがどう見ても女の子の形なので、パンティを脱がせるのを少しためらっている雰囲気だ。
 
その内若葉がパンティの上からボクのお股を触る。
「触った感じ、これ何も付いてない」
「えー?どれどれ」と他のふたりも触るが同様に
「ほんとだ。何もないお股だよ」と言う。
 
3人がボクのお股を触っている間、ボクを押さえつけている力が弱くなった。一瞬の隙を狙ってボクは逃げ出す。
 
が、その瞬間反射神経の良い貞子がボクのショーツに指を掛けていた。ボクは前転しながら、自分でショーツを押し出して、身体だけ前に逃げた。
 
結果的にボクはショーツを置き去りにして逃げ出した格好になった。ボクは自分のバッグを取って部屋の隅まで逃げて、そこでお股を隠しながら別の下着を着けた。
 
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「惜しい〜!」
「でも完全に裸になった瞬間をちょっとだけ見た」
「お股には何も付いてないように見えた」
「うん、少なくともぶらぶらするようなものは無かったよね」
 
「もう解剖は終了ね」とボクは服を着つつ笑いながら言う。
 
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夏の日の想い出・ひたすら泳いだ夏(3)

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