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■夏の日の想い出・ひたすら泳いだ夏(5)

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(c)Eriko Kawaguchi 2012-08-07  
身体を冷やさないように上にジャージの上下を着てしばらく休みながら観戦している内にトイレに行きたくなった。石岡さんに言われたように女子トイレに入る。例によって列ができているので、順番を待っていたら、声を掛けられた。
 
「済みません」
「はい?」とボクは反射的に女声で答える。
 
「さっき男子の1500mで走っていた人ですよね?」
「はい」
ボクはあちゃー。男とバレたか?面倒だなと思ったが彼女は思いがけない言い方をする。
 
「あ、やっぱり女子ですよね。あれ〜?男子のレースに女子が走ってると思って見てたんです」
「あはは、ちょっと色々事情がありまして」
「それでトップ争いするって凄いなあと思って。3000mにも出ます?」
 
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「ええ。出ますよ」
「頑張ってくださいね」
「ありがとうございます。そちらは何かに出ます?」
「ええ。女子の800mに」
「頑張ってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
ボクは彼女と握手をした。
 

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1500mの1時間後に今度は3000mである。1500mを走った疲れはもう回復している。充分筋肉も揉みほぐしている。ボクは気持ちを集中してスタート地点に行った。1500mで優勝した彼も来ている。彼が手を上げて挨拶する。ボクも笑顔で会釈した。
 
スタート地点に並ぶ。静かに号砲を待つ。スタート。自然に手足が全力走の態勢で動き始める。最初最高速度で飛び出して先頭グループに入ると「ハ・ハ・ハー」
という三拍子で呼吸しながら、ペースを維持する。さすがに3000mは長い。戦略が必要だ。先頭集団はけっこうなハイペースで走っているので、途中1人、2人と脱落していく。次第に集団が縦に長くなってきたので、ボクは少しポジション争いをして前の方に出た。やがて集団はふたつに分裂してしまった。
 
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先頭4人でペースを維持して走って行く。既にトラックを4周半している。あと3周。お互いに「いつ仕掛ける?」という疑心暗鬼の状況。仕掛けるのはいいがそこからゴールまで自分の体力が持つかという問題がある。できるだけ遅く仕掛けたいが、あまり先になると競り負ける恐れも高くなる。
 
残り2周という表示を見て、ひとりの選手がスパートを掛ける。ボクと1500mで優勝した子がそれに付いていき・・・・そのままその子を抜いて前に出た! ボクと彼とでほとんど続いて走る。彼が前、ボクがその後。彼がボクを引き離そうとスピードを上げるが、ボクも負けるものかとそれに付いていく。そのままの状態でボクたちはトラックを1周半走った。
 
残り200m。彼が猛然とスピードを上げた。ここが勝負所だ!ボクはそう思うと、残る力を振り絞るようにしてスピードを上げ、彼を追い抜いて前に出た。そのまま前傾姿勢にして重力を使って加速する。絶対負けるものか。
 
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そう思ったものの、それを彼がまた抜き返す。ゴールはもう目前だ。
 
ここでボクはもうこれ以上は無理というほど手足を動かす。もう自分の限界はとっくに突破していた。そして必死で走り、彼とほとんど同時にゴールした。
 
正直、どちらが勝ったか分からなかった。少し走りながらペースを落としてゴール脇に戻ってくる。彼も大きく息をしているが、こちらも大きく息をしている。
 
ゴールの所にいた係員の人が話し合っている。ボクはそれを何も考えずに見つめていた。やがて係員の人が来て、ボクと彼に「同着、ふたりとも一位」と告げた。ボクと彼は微笑み合って、握手をした。
 
「でも凄いな。君、女子だよね。さっき1500の時に見た目女の子っぽいと思ってたけど、握手した時の感触で、やっぱり女子じゃんって思った」
「えっと、まあ」とボクはつい女声で答えてしまう。
「俺もう3年だから、卒業してしまうけど、また戦える機会があったら戦おう」
「はい」
 
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ボクたちはふたりとも1位の賞状をもらうと、また握手して別れた。戻る途中、賞状の名前が「唐本冬子」になっていることに気付く。うっそー! 1500m2位の賞状はちゃんと「唐本冬彦」になっていたのに。
 
そういう訳でボクの陸上部時代の唯一の「1位」の賞状は「唐本冬子」名義なのである。
 

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チームの所に戻ると、もう凄い騒ぎである。
「冬ちゃん、やったね!」
もう絵里花はボクにハグして頬にキスまでした。貞子・美枝・若葉とも抱き合う。
 
「今の唐本の優勝で、たぶんうちのチーム逆転で1位になったよ」
「よし。ダメ押ししてくる」
と言って絵里花は女子1500mに出て行った。400m,800mでも優勝している(800mではボクがトイレで遭遇した子が3位に入った)。ここで絵里花が勝てば、そのまま逃げ切れそうである。
 
レースは絵里花がライバルと言っていた選手と最初からふたりの激しい争いになった。抜きつ抜かれつを何度も繰り返す。どちらも相当体力と精神力を消耗しているはずだ。
 
しかし最後の一周になって絵里花が猛然としたスパートを掛けると、ついにライバルの選手はそれに遅れてしまった。
 
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結局3mほどの差でゴール。この優勝でうちのチームの総合優勝が確定した。
 

「花崎先生に優勝をプレゼントできて良かった」
 
大会が終わった翌日の月曜日、ボクたちはグラウンドのいつもの集合場所に集まって話していた。
 
「まあ、これで私たち3年は辞めちゃうけど、2年生・1年生中心に頑張ってね」
と絵里花さん。
 
「そういうわけで、今日は新しい部長・副部長を決めたいのだけど」
と現部長の石岡さん。
 
「部長は野村君だよね」と貞子が発言する。
「異議無し!」
 
駅伝でも春・秋の大会でも大活躍した野村君を、みな次の部長と思っていたようで、賛成の声が多く出る。
 
「じゃ、野村でいいな?」
ということで、新部長は野村君に決まった。
 
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「それで副部長だけど」
「冬ちゃんでいいんじゃない?」と美枝。
「あ、私も冬子先輩がいいと思います。熱心に練習してるし、みんなの面倒見がいいし」と1年の女子。
その他にも賛成の意見が多数出る。
 
「あのぉ・・・済みません。ボクもこの大会終わった所で辞めるつもりでいたんですけど」
「えー!?」
「だいたい、副部長は女子から選ばなくていいんですか?」
「お前女子だろ?」
「うっ」
「冬、やりなよ」
 
「ごめんなさいです」
「しょうがないなあ。じゃ誰に頼むかなあ。俺も副部長は唐本のつもりでいたんだけど」
「ボクは貞子を推薦します」とボクは言う。
 
「ああ、前村もいいな」
「ちょっとちょっと」と貞子が焦っている。
「ああ、練習はサボりがちだけど、2年女子の中ではいちばん足が速いしね」
「陰の実力者だよね」
「えーっと」
「よし、じゃ副部長は前村ということで」
「異議無し!」
 
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陸上部を辞めてしばらくは、学校が終わってそのまま帰るのが何だか変な感じだった。一緒に辞めた美枝とふたりで何となく図書館で1〜2時間過ごしてから帰ったりしていた。
 
そして1ヶ月ほどたった時、ボクはあることに愕然とした。
 
「秘密の場所」に隠しているスカートを夜中にちょっと穿いてみようかなと思って出してきて穿いてみた時、ウェストが入らないのである。そしてその時最近、身体を動かすのがきつい気がしていたことに思い至る。
 
体重を確認したら52kgであった。陸上部を辞める直前は40kgだった。陸上をしていた頃は、いくら食べても太らなかったのに! 加藤先生からもせめて45kgにしようかと言われて、頑張って食べていたのだが、毎日の練習で消耗するカロリーが大きくて、体重増には至らなかった。
 
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ボクは少し体重を落とそうと思った。
 
走るのがいちばん良さそうな気もしたのだが、走ってたら「陸上部にちょっと来い」
と言われそうである。
 
さこでボクは泳ぎに行くことにした。
 

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夏に練習に行っていた隣町の○○市民プールで、毎日放課後2時間泳ぎ始めた。筋力をしっかり鍛えているので、少し体重は増えたものの快速に泳ぐことができる。毎日行くので定期券を買うことにしたが、ボクは女子の水着で泳ぐので、定期券は「唐本冬子」名義で作ってしまった。考えてみると、この手のもので「唐本冬子」名義のものを作ったのはこれが最初かも知れない。定期券を申し込む時の用紙で、性別の所を女に丸付けするのが、ちょっとドキドキした。
 
しかしこの定期券は速攻で姉に見つかってしまう。
 
「おお、冬子ちゃんの定期券だ」
「返してよ〜」
「もっと見せてよ。お、性別・女だって」
「だって、女子更衣室のロッカーの鍵もらわないといけないから」
「ふーん、冬子ちゃんは女の子だったんだね」
「いいじゃん」
「私、妹が欲しかったんだよね〜。冬子ちゃん、私の妹になりなさいよ」
 
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「妹か・・・・」
「・・・あ、自己陶酔してる」
「ね、性転換手術受けて本当の妹になってよ」
「え・・・・」
「あ、その気になってる、なってる」
 

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「えーっと。あ、それでお願いがあるんだけど」とボクは我に返って言う。
「ん?」
「毎日泳ぎに行くのに、今持ってる水着1枚だと洗濯して乾く間が無いんだよね。もう1着買いたいんだけど、水着って高いからお小遣いじゃ足りなくて。出世払いで水着を買ってくれない?」
「いいよ」
「ありがとう」
 
「よし。かぁわいーの買ってあげるね」
「えっと純粋に泳ぎたいから、機能優先で」
「同じ機能なら可愛い方がいいじゃん」
 
ふたりで一緒に町に出て、スポーツ用品店で選ぶ。
「ねえ。ビキニなんて着てみない?」
「無理。胸が無いもん」
「豊胸手術しちゃう?」
「お金無いから」
「ふーん。お金があったらしたいんだ」
「えーっと、普通に競泳用のでお願いします」
 
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「これなんか可愛いよ。ブラとパンティとワンピース3点セット」
「いや、それ結局ワンピを脱げないから」
「これは?セクシーだよ。ブラとパンティが細い布でつながって一応ワンピース」
「その胸が無いから」
「しょうがないなあ」
 
結局おとなしめのドレスタイプの水着を買ってくれた。水玉模様が可愛い。
 

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水着を買ってくれた後、姉がちょっと付き合いなさいというので付いていったらエステサロンだった。女性専科・男性の方は立ち入りをご遠慮ください、などと書かれているので、ボクはちょっとビビる。
 
「この脱毛どこでも1000円の優待券使いたいんですが」と姉。
「はい。ありがとうございます。こちらにお名前と生年月日、連絡先をお願いします」
姉が「唐本冬子・1991年10月8日生」と記入するので仰天する。
 
「あ?中学生さんですか?」
「ええ、この子、顔の毛が濃いので脱毛させてあげようと思って」
 
えーー!?何それ?
 
「18歳未満の方の場合、親御さんの同意書を頂くようにしているのですが」
「はい。持って来ました」と言って姉は提出する。
 
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いつの間にそんなものを準備してたんだ?でも親の同意って。。。と少し考えて姉の偽造だと気付く。
 
「それから、生理がまだ不安定な方はお断りしているのですが」
「冬子、生理はいつ来た?」と姉が突然こちらに訊く。
「えっと、先週だけど」
「その前は?」
「先月の10日くらいだったかな」
「定期的に来ているようですね」
と受付の女性は微笑む。
 
待合室でしばらく待つ。姉が小声で言う。
「やはり冬子の部屋のカレンダーについてる赤いマーク、生理の日だよね」
ボクはちょっと顔を赤らめてうなずく。それはこの時期ボクがしていた「お遊び」
で、自分で生理の日を決めて、カレンダーに赤いマークをつけ、その日は密かに女物のショーツをつけ、こっそりトイレから持ち出したナプキンもつけていた。しかし姉にはバレていたようである。
 
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ボクたちはしばらく待ってからまずカウンセリングルームに通される。エステティッシャンの人がボクの顔の肌をチェックして「ああ、確かに濃いですね」
と言う。いくつか質問されたが、中学生の女子として無難な感じの答え方をした。
 
やがて施術を受けることになる。
「痛いですけど我慢してください」
と宣言されたので覚悟を決める。そりゃ痛いんだろうな。。。
 
ベッドに寝て、心を安らかにする。最初にカミソリで剃られた。朝剃っていたはずが少し伸びていたようだ。そのあと顔にジェルを塗られる。それから大きなサングラスを掛けさせられた。全然見えない!目は瞑っていてくださいと言われる。身体をリラックスさせて気を集中する。
 
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エステティッシャンの人が
「行きます」
と言われて、すぐに顔にチクッという尖ったもので突かれたような痛み。確かに痛いなあと思ったが、想像していたほどではなかった。その痛みがしばらく連続する。きゃーっと思うが、こちらは俎板の上の鯉だ。
 
そんな感じの痛みが5分くらい続いたろうか。
「はい、終了です」
と言われ、ジェルを拭き取り、冷却剤を当てられた。冷たーい。10分くらいそのまま冷やした後で開放される。そしてこれはあくまで今生えていた毛に対してだけの効果なので、毎月1回、10回程度来てもらった方がいいという説明を受けた。
 

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■夏の日の想い出・ひたすら泳いだ夏(5)

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