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■夏の日の想い出・ふたりの成人式(7)

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雑誌の取材が終わってから、待っていてくれた両親・姉と落ち合い、お茶を飲みながら、1時間ほどおしゃべりをした。あらためて写真を撮る。政子は会場前で撮った写真とあわせて、自分の母にメールで送っていた。
 
夕方、駅で別れる。私は正望の所、政子も彼氏の所へ向かった。私は母から正望のお母さんへと和菓子をことづかった。
 
電車で横浜方面に向かう。途中の乗換駅で正望にメールを入れたら、駅に車で迎えに来てくれたので、一緒に彼の実家に入った。
 
「明けましておめでとうございます。お正月の挨拶がすっかり遅れちゃって」
と正望のお母さんに挨拶する。
「明けましておめでとうございます。わあ!素敵な振袖。成人式おめでとう」
 
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「ありがとうございます。モッチーも成人式おめでとう。さっきも言ったけど」
「ありがとう。さっきも聞いたけど」
「でも、ほんとに豪華な振袖!」
「こんな高い振袖着るのは気が進まなかったんですけどね。これだけ曲が売れてるんだから、安いの着るのは許されない、とか言われちゃって」
「たいへんね。お仕事もたいへんだったんでしょ?」
 
「そうなんです。あ、これ、うちの母からことづかりました」
と言って、和菓子の箱を渡す。
「わあ、ありがとう!」
 
「年末は東京で年越しライブ、1日は大阪で年明けライブ、2日の夕方東京に戻ってきて、3日から6日まで、あちこちに挨拶回りしたり、逆に自分のマンションで、挨拶回りの人たちが来るのを待ったり、その間にFM番組の生放送と収録もして、昨日は朝からずっと収録やって、その後ライブに出て。今、レコーディングも進行中ですし」
「恐ろしいわね」
 
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「12月は結局10日にマキさんの結婚式で会ったのと19日にお昼を一緒に食べただけだったもんね」
「うん。マキの結婚式の後、キャンペーンで全国飛び回って。戻って来てから関東近辺のライブハウスにたくさん出て。レコーディングもアルバムとシングルとやったし。あと、ラジオ番組の企画もしてたし」
「凄い」
「モッチー、私との関係見直すなら今の内だからね」
「見直さない、見直さない」
 
あらためて、お屠蘇をいただいて、お雑煮も食べた。
「おせちの準備とか、全然お手伝いできなくてごめんなさい」
「ううん、気にしないで。お仕事忙しいんだもん」
「でも、お雑煮美味しい。黒豆も美味しいし。私このくらいの甘さが好きです」
「良かった。お口に合ったみたいで」
 
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「明日はゆっくりできるのかしら?」
「ごめんなさい。お昼から仕事です。このあとも15日まではレコーディング・スタジオに籠もりっきりになります。下旬もとりあえず予定表が埋まってます」
と言って、私は自分のスケジュール帳をお母さんに見せた。
 
「きゃー。何か真っ黒! でも綺麗な字で書いてあるなあ」
「フーコ、書道5段だもんね」
「毛筆のだけどね。ペン習字の方はしてないんだよね」
「凄いなあ。私は字が下手だから。手紙とか、いつも正望に代筆させてるもん」
 
その日はもちろん正望と一緒に寝たが、正望とHするのはエンゲージリングを買ってもらった11月中旬以来1ヶ月半ぶりだったので、彼がかなり飢えていた感じで、その日はかなり遅い時間まで愛し合っていた。
 
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翌日、せめて少しだけでも正望の「彼女」としての存在を見せておかなきゃというので、私は朝早く起きて、朝御飯を作るのでお母さんの手伝いをした。
 
「ああ、なんかこんなことしてると、私幸せ」とお母さんから言われる。
「来れる時はできるだけ来るようにしますからね」
「うん。でもお仕事と大学の勉強とが優先だから、無理しないでね」
「ありがとうございます」
 
正望がなかなか起きて来ない(昨夜頑張ってたからダウンしてるなと思った)ので、結局お母さんと2人で朝御飯を食べたあと、昨日自分の母から渡されたお菓子を開封し、お茶を入れてお菓子を摘みながら、おしゃべりをしていた。正望は結局10時半頃起きてきて、朝昼兼用の御飯をみんなで食べた。
 
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正望に都心まで車で送ってもらい、事務所に入った。誰も来ていなかったが、たまっている書類を片付けてから、しなければならない編曲は取り敢えず放置して、ドアに鍵を掛け、少し仮眠室で寝た。起きたら4時で、政子が来ていた。
 
「おはよう。眠れた?」と政子に聞く。
「けっこう寝たよ。直哉がお餅どっさり用意してくれてたから、ふたりで1kg入りの袋4つ空けて、けっこう満足」
「よかったね。やっぱり政子の本音の食事量を分かってる男の子でないと付き合えないよね」
「うん。冬は眠れた?」
 
「実は2時間しか寝てなかったから、今少し仮眠してた」
「わあ。大丈夫?」
「うん。眠くなったらまた少し仮眠するから。溜まってる編曲をやっておかないといけないし。でもそしたら、マーサは大丈夫?」
 
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「私はHの途中で眠くなったから、『好きにしていいから私眠るね』と言って眠っちゃうからね」
「相変わらず、男の子に対してドライだなあ」
「冬もきつかったら眠ればいいのに。彼氏なんだから、そういうところで遠慮しなくていいじゃん」
 
「でも一緒に寝たの1ヶ月半ぶりだったからね、少しサービスしてあげなくちゃいけないかなと思って」
「自分の身が大事だよ」
「そうだけどね」
「まあ、何にでも頑張るのが冬のいいところだろうけどね。冬が倒れたら、青くなる人が、たくさんいることも忘れないでね」
「うん、ありがとう。そういうの言ってくれるのマーサだけ」
と言って私は政子の唇にキスした。
 
ドアが開いたが、私たちは別にキスをやめなかった。
 
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「コホン」という声がする。私たちはようやく唇を離した。
「あ、えっと、おふたりさん。お熱いのはいいけど、人が来たら中断しようか?」
「美智子だから大丈夫かなと思って」
「私も」
 
美智子が来たので、今年のローズクォーツ・ローズ+リリーの活動方針について3人でいろいろ話し合っていた。1時間ほど話していた時「失礼します」という声がして、花見が入ってきた。
 
「いらっしゃい」と私は笑顔で迎えた。花見は日曜日に出した新聞広告に反応して実家に連絡し、昨日無事東京に帰還したのであった。昨日、正望の家にいたところにお母さんから電話があって、仕事も先月まで勤めていた会社に再雇用してもらえることになったことまで聞いたので、今日にでもうちの事務所に出てきてくれるよう、お母さんに伝言しておいたのである。
 
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政子は花見の顔を見るとぷいと給湯室の方に行ってしまった。私と美智子は顔を見合わせたが、美智子が「政子ちゃん。応接室にお茶持ってきてくれる?」と声を掛ける。
 
そして私と美智子は花見を促して、応接室に入った。
 
花見は土下座して「軽率なことして申し訳ありませんでした」と謝った。私は花見に椅子に座るように促し、あの事件以降の花見の足取りについて、自分が先月聞いていた範囲のことを話ながら、花見にもいろいろ話すように促していく。美智子は黙ってその話を聞いていた。
 
「まあ、黒服の男って、君が『追われているかも知れない』って、思っていたから見てしまった幻影なんじゃないの?」
「そうでしょうか・・・・でも、本当に申し訳ありませんでした」
「まあ、あなたが謝罪に来たという事実だけは受け止めてあげる。許すわけじゃないけどね」
 
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そこに政子が入ってきた。お茶を3つお盆に並べている。ああ、お茶を置いたら自分は出て行くつもりかとこの時、私は思った。
 
まず美智子の前にお茶を出す。それから私の前に置き、最後のお茶を手に取った。そして、それを花見の頭の上で静かに傾けると、花見に熱いお茶を掛けた。「あちち!」とさすがに花見が熱がる。「政子ちゃん!」とさすがに美智子が叱る。
 
しかし政子はポーカーフェイスで「失礼しました」と言って部屋から出て行った。「ごめんなさいね」と美智子が花見に謝る。
 
「いや、いいです。政子のああいうのには慣れてますから」と花見は言った。この2人、こんな感じで3年間付き合い続けたんだろうなと私は思った。花見さんって、けっこう我慢強くて、寛容なのではなかろうかという気もした。
 
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私が応接室を出て政子の所に行くと政子は
「まあ、謝りにきたことだけは評価してあげる」
などと言っていた。この言葉は後で電話して、花見のお母さんに伝えてあげた。
 
花見さんが深くお辞儀をして帰って行く。それを見送ってから美智子が言った。「冬、あんた花見君の賠償金、肩代わりしてあげるんだって?」と美智子。
「うん。先方が今結婚を考えているらしいんだよ。古い事件のこと、もう忘れたいからって、言ってきたらしくて」
「冬、人が良すぎるよ、それ」と政子。
「ちゃんと公正証書で借用証書作ってもらうよ。もし滞納したら即強制執行できる」
「それにしても・・・・」と美智子。
 
「だいたい、啓介のことでは、冬がいちばん怒るべきなのに」と政子。「私もそう思う。そのお陰で、冬はとんでもないことになったのに」と美智子。
「いちばん大変だったのは美智子でしょ? 連日テレビでたたかれて、会社も首になって」と私。
 
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「テレビで叩かれるのは私は気にしないし、おかげで半年くらいゆっくり休めたからね。退職金はたくさんもらったし、あなたたちのCDが売れ続けてたから、印税で日々の生活には困らなかったし」と美智子。
 
『その時』および『甘い蜜』の印税は、作詞者・作曲者・編曲者が著作者印税を3等分する契約になっていたのである。ふつう編曲者は音源制作の時に編曲料をもらい、印税は作詞家と作曲家で等分する方式が多いのだが、△△社で作るCDは編曲者も含めて3等分する方式が多かったので、なんとなくこの2つのCDもそういう契約にしていたのが謹慎中の美智子の生活を支えたし、事務所設立の原資にもなった。
 
「冬の方こそ、自分の性別のこと、いきなり全国に報道されたんだもん。もっと怒っていいよ」と美智子。
 
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「うーん。私って、あまり人に怒ったりしないたちだから」
と私は笑って答えた。
 

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夏の日の想い出・ふたりの成人式(7)

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