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■夏の日の想い出・ふたりの成人式(6)

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「でも本当に今年手術するのかなあ・・」と若葉は言う。
「え?まだ直前で迷ったりするとか?」
「じゃなくてさ、あの子、一緒にお風呂に行ったこともあるけど、完璧に女の子の身体に見えるのよね。実は高校生時代に既に手術済みなんじゃないか、あるいは男の子だって話が大嘘で、本当は元々女の子なんじゃないかって気がして」と若葉。
 
「私たちも秋に和実とは温泉に行ったけど、確かに完璧に女の子ボディだった」
と政子。
「あ、そんなことしたんだ?」と若葉。
「でも冬だって、手術前から女湯に入ってたよね」と政子は言う。
「へー。そういう子、けっこういるのね」
 
「いや、基本的にそんなことしちゃいけないと思うんだけどね。秋に行った時は小さな温泉宿だったから、1時間私たちのグループで女湯を貸し切りにしてもらって入ったんだけど。10人だったから団体さん扱いしてもらった」
 
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「まあ、ふつうはバレたら警察行きだよね。新聞にも書かれてワイドショーでも名前と顔をさらされて」
「でも、和実の場合、あの身体で男湯には入れないよ。どう考えても。胸はDカップあるし、下はどう見ても付いてないように見えるし」
と若葉。
 

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若葉と別れて、会場まで電車で移動した。この日は町にも電車の中にも振袖を着た女性が目立つ。
 
電車を降りたら出口の所に私の両親と姉が来ていたので一緒に会場の方へ歩いていった。会場前で記念撮影をする。
 
「でも凄く豪華な振袖だなあ」と父が言う。
「去年はふたりとも良く稼いだからね」と姉。
「冬が女の子になってくれたお陰で、私は《娘の成人式》を2度体験できて嬉しいわあ」などと母が笑顔で言っているが、父はちょっと複雑な表情。
 
そこで少し立ち話していたら「お邪魔していいですか〜?」と遠慮がちな口調で、予め取材を申し込んでいた雑誌の記者さんが寄ってきた。以前にも何度かインタビューなどに応じたことのある人である。
 
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「こんにちは、ケイちゃん、マリちゃん」
「こんにちは」
「今日は成人式、おめでとう」
「ありがとうございます」
「成人式終わってから30分くらいインタビューいいですよね?」
「ええ、そういう話でしたから」
 
まずはふたり並んだ写真を撮られた。角度を変えて何枚か撮る。そんなことをしていたら、近くにいたテレビ局のスタッフが近寄って来た。見覚えのあるアナウンサーさんだ。お昼のワイド番組でレポーターをしている人である。
 
「ローズ+リリーのおふたりですよね?」
「はい」
「ここの会場で成人式ですか?撮影させてもらっていいですか?」
「いいですよ」と政子が笑顔で言ったので、私は内心『へー』と思いながら撮影に応じた。
 
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ひとことでいいのでコメントを、と求められたので
「16歳と17歳でローズ+リリーを始めた私たちもとうとう成人式を迎えました。なかなか、ファンの皆様のご期待に応えることができていませんが、少しずつ活動を広げていきたいと思いますので、よろしくお願いします」
と私がコメントした。
 
「でも豪華な振袖ですね!」とアナウンサーさん。カメラは停まっている。「私もそれ言おうとしてたところです」と雑誌記者さん。
「ねー、おいくらだったの?教えて。オフレコ」と小さい声で聞かれる。
「300万です。本当はもう少ししたみたいだけど、現金で払ったので、ふたりともその金額に負けてもらった感じでした」
 
「やっぱりあれだけ稼いでたらね。ミリオン3連発でしたもんね、昨年は」
「ええ、おかげさまで。CD買ったり、ダウンロードしてくれた方たちのお陰でこういうのを買えましたから、これはファン皆さんの代表で、着させてもらっているものと思っています」と私はコメントする。アナウンサーさんも雑誌記者さんも、私のコメントをメモしている。
 
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「去年はどんどんお金が入ってきて、どんどん使っちゃった感じでした」と政子。
「やはり、少しでもお金に余裕のある人がお金を使わないと、経済活性化にならないもん。お金持ってる人がそれを抱え込んだら経済は沈みます」
「貯金を美徳とする日本人の習慣が、今は悪い方に作用してるよね」
 

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やがて時間になり、会場に入る。
 
最初にチアリーダーの衣装を着けた女の子たちが15人ステージに登り、マイケルジャクソンの『スリラー』の曲に合わせて、アクションを繰り広げた。美しいフォーメーションに歓声があがる。式次を見ると地元の高校のチアリーダー部のようである。
「格好いいね」と政子が言う。「うんうん。凄い」
 
彼女たちが下がってから国歌斉唱した後、開会の辞があり、偉い人の祝辞がいくつか続く。そして、新成人の代表の人が挨拶した。
「あれ、中学の時のうちの生徒会長」と政子が言った。
「へー。そういうのやると、こういう場でもあれこれやらされるんだね」
「ほんと。大変ね」
 
閉会の辞があり、アトラクションに入る。23〜24歳くらいかなという4人の女の子で構成されたバンドがステージに上がった。
「この町で育って、この町でアマチュアでバンド活動している《素敵な物いっぱい》です。私たちも4年前に成人式をしました。新成人に贈る歌を演奏します」
とギターを持った子が言い、演奏を始めた。
 
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最初の曲は私たちの曲『神様お願い』だった。政子が天を仰いでる。
「この曲、震災の後、かなりテレビでも流されたもんねー」
「町添さんから『隠れたミリオンセラー』だって言われたよね」
「有線とカラオケのリクエスト数が凄まじかったからね」
「その分、たくさん寄付もできたね」
 
この曲は震災前に発表した曲だが、歌詞の内容が被災者を励ましているかのようと言われて、3月4月頃、かなりテレビやラジオで流された。CD出さないのならせめてPVをと言われて、急遽作ってyoutubeに上げたら(仙台で被災した時に私やマキが携帯で撮っていた写真やビデオを編集して映像は作った)、200万viewを越えた。私たちはこの曲に関する印税全てを、福島県・宮城県・岩手県に3等分して寄付した。4月に何人かの歌手相乗りで緊急発売された『被災者応援CD』にも収録された。
 
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続いて演奏された曲は『翔び上がれ』。これは私たちが書いてSPSに提供した曲だ。政子が笑いをこらえている感じで、私の肩に顔を伏せ私の振袖の襟を掴んでいる。
 
3曲目はスイート・ヴァニラズの『祭り』だ。彼女たちのロングヒットだがこの曲は、先週発売した「交換アルバム」で、私たちもカバーしている。政子は「勘弁してー」などと言って、私の襟を引っ張ってる。「ちょっとやめて。着崩れる」と言うが、政子は顔を起こすと笑いが我慢できなくなるようで掌でパンパンと私の肩を叩いている。
 
そして最後の曲は、いきものがかりの『歩いていこう』だった。政子はやっと落ち着いたようであった。
 

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成人式が終わり、席を立ってホールを出る。ロビーは人がいっぱいなので、流れに任せて、ゆっくりと出口の方へ歩いて行った。
 
出口を通ろうとした時、実行委員の腕章を付けた振袖の女性が寄ってきて「済みません。ちょっといいですか?」と言う。
「はい?」
「凄く素敵な振袖ですね。もしよかったら、こちらで市長さんとの記念写真に入りませんか?」
「あ、いいですよ」
 
私たちは彼女に連れられて入口近くで何人か固まっている所に行った。聞くところでは、成人式の結果報告を市のホームページに挙げるのに「適当に」
出席者に声を掛けているのだと言っていた。「適当」とは言われたが、多少基準の見当は付いた。私たち同様、凄く豪華な振袖を着ている子、和装の男子、面白いコスプレをしている子などがその場に並んでいた。私たちはその集団に向かって軽く会釈をする。何人か会釈を返してくれた子がいた。
 
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雑誌記者さんの携帯に、記念行事に引っかかったので少し出て行くのが遅れる旨のメールをした。
 
だいたい15分ほどで新成人の人たちは外に出てしまい、実行委員の人が集めた人たちが残った。市長さんを真ん中にして、実行委員の人たちも入って写真が撮られる。私たちは左手前列の端に2人で並んだ。写真を数枚撮られる。
 
撮影後「ありがとうございました」と言われ、記念のボールペンをもらって、解散となる。私たちが何となく出口の方へ行きかけていたら、後ろの方からさきほどアトラクションで演奏したバンドの人たちが出て来た。私がチラっとそちらを見たら、バンドの中のひとりが驚いたような顔をして走ってきた。
 
「すみません、ローズ+リリーのマリさんとケイさん?」
「はい、そうですよ。先程の演奏、素敵でしたね」
「ありがとうございます!ここの会場で成人式を迎えられたとは思わなかった」
「私たちが書いた曲が2曲、私たちがカバーしてる曲が1曲入ったから、マリは嬉しくて涙が止まらなかったみたい」と私は笑顔で言う。
「わあ、ありがとうございます」
 
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他の3人も駆け寄って来ている。
 
「あの、もし良かったら、記念写真とサインいただけませんか?」
「いいですよ」
 
ということで、私たちはまだそのあたりにいた実行委員の人にお願いして、一緒に並んだところの写真を撮ってもらい、それからバンドのメンバーのひとりが持っていたスケッチブックに4枚、ローズ+リリーのサインをした。
 
「ありがとうございました。私たちマリさんの復帰待ってますから、頑張ってください」
「ありがとう。その内きっと復活するからね」
と政子が言うので私は心の中で『へー』と思った。
 
「《素敵なものいっぱい》さんたちも頑張ってね」
「はい」
「でもケミカル・エックスは入れない方がいいよ」
「はい!」
 
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会場の外で雑誌記者さんと落ち合う。
 
「すみませーん。お待たせしました」
「いえ、大丈夫です。どこか入りましょう」
「寒い中、お待たせして御免なさい」
 
ここは大学の講堂なので、学内のカフェに移動してインタビューを受けた。
 
女性ファッション雑誌なので、ふだんのファッションのポイントとか好きなスタイル、またふたりの恋愛観などについても訊かれた。
 
「あの、この部分は絶対に記事にはしないこと約束するので教えてください。これを聞いておかないと、編集の時に見当外れのこと書いてしまいそうなので。おふたりは、やはりレスビアン関係なのでしょうか?」
「はい、そうですよ」と私たちは明快に答えた。
 
「安心しました。おふたりは愛しあっているけど、お互いに相手が男性と恋愛するのには寛容なんですね」
「そうです。むしろいつも相手の恋を応援しています」
「それを念頭に、書きますね」
「はい」
 
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私たちはしばらく記者さんと恋愛談義をした。話が盛り上がり、記者さんも取材していることを忘れているかのように、けっこう際どいことまで言っている。
 
「でもよく幸せな恋とか言うけど、幸せって何なのかなあ」
と政子が自問するかのように言う。
 
「私は日々の充実感だと思うな。片思いであっても、相手のことを考えたら何か頑張ろうという気になるような恋は、やはり幸せな恋だよ」
「だよねー。相思相愛のはずでも、常に飢餓感があるような恋はあまり幸せではないよね」
 
「遠距離恋愛とかでも、今はスカイプとかあるし。実質無料で毎日相手の顔見て話ができるじゃん。昔と比べると遙かに遠距離恋愛しやすくなってるよね」
「ただ、相手の肌が恋しくて、それがちょっと辛いだろうけどね」
 
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「おふたりは、昔からレスビアンだったんですか? その、ケイさんがまだ男の子だった頃から」
「出会った頃から、女同士の感覚でした。でもイチャイチャするようになったのは、ローズ+リリーを始めてからですね」
「たぶん、凄くきついスケジュールとかで動いていたから、いわゆる吊り橋効果みたいな感じで、恋愛感情が芽生えたんじゃないかなって気がします」
「なるほどですね。あ、この辺も記事にはしませんね」
「はい、お願いします」
 
「でも、当時ケイさんは男の子の身体だったわけですよね。セックスしたくなったりしなかったんですか? あ、これも記事にしませんから」
「私はしてもいいよーって言ってたけど、ケイはふたりの関係を壊したくないから、セックスは我慢するって言ってました」
「ああ」
「それに、私自身、女の子の意識だったから、男の子の機能を使いたくなかったんですよね」
「なるほど、何か納得できます」
 
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「だから私たちが恋人になったのは、やはり高校卒業してからですね」
記者さんは頷いていた。
「それでもセックスしなかったね。ケイが去勢しちゃう前に1度でいいからケイをレイプしてもやっておけば良かったかなという気もするんですけどね」
などと政子は過激なことをさらりと言う。
「男女としてのセックスってしなかったんですか?」
 
「結局してないね」と私と政子は同時に言った。
「高校卒業してからは頻繁にHしてたけど、女の子同士としてのHだったもんね」
「へー」
「だからマリの物理的なバージンは今の彼氏にあげたんだよね」と私。「うん。精神的なバージンはケイにあげたけどね」と政子。
「ううう。そんな話、書きたくなっちゃう」と記者さん。
「じゃ、10年後の暴露本で」
 
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その後、インタビューの内容は音楽論の方に進んでいき、影響を受けたアーティストや今尊敬しているアーティストなどを聞かれる。
 
「私は割と外国のアーティストの影響を受けています。ビートルズ、ビージーズ、クィーン、ベンチャーズ、カーペンターズ、バーブラ・ストライサンド、ダイアナ・ロス、ユーリズミックス、チック・コリア、ポール・モーリア・・・・」
「すみません。特に3人くらい挙げるなら?」
「うーん。ビートルズ、チック・コリア、ユーリズミックス」
「ケイのCDライブラリって凄まじいもんね。たぶん5000枚くらいはあるよね?」
「きゃー」
 
「一度目録作ろうとしたんだけどね。2000枚くらい登録したところで諦めた」
「それをちゃんと全部聴いてるのがケイの凄い所で」
「それは本当に凄いですね」
「うーん。無節操に買って聴いてるだけかも」
「FMで掛かった曲で、曲名を聞き漏らしたのをケイに訊くと、誰誰の何何って即答するんですよね。だからケイの頭の中には多分数万曲のデータベースが入ってます」
「それも凄い。でもそれだけ頭の中にあって、よくまた新しい曲を作れますよね?」
 
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「音の組み合わせは膨大ですから。例えばひとつの音をドからシまでの12音で2分音符、4分音符、8分音符、16分音符の4種類で考えたとしても48種類ありますよね。これを8個並べただけで、48の8乗で・・・・、はい、マリ?」
「え?48の8乗? 28兆1792億8042万9056」
「ほら、こんなにある。事実上無限ですよ。人が一生掛けても作れない」
「ちょっと待って。今、どうやって計算したの?」
 
「マリって、こういうの得意なんです。考えなくてもパッと分かっちゃうらしい。マリ、1971年の7月1日は何曜日?」
「え? 木曜日だよ」
「ほら、こういう子なんです。私はマリのことを『歩く電卓』と呼んでます」
「どういう計算したら、そんなの答えが出せるの?」
 
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「うーん。何も計算してないですよ。この辺から答えが出てくるんです」
と政子は頭の斜め上前方を指さす。
「すごい」
「でもマリは算数・数学の成績悪かったんです。答えが出せても、式が書けないから」
「あぁ・・・・」と記者さんは、初めて納得したように頷いた。
 
「これ、記事に書いていい?」
「いいですよ」
「ごめん、さっきの48の8乗と、曜日計算の、もう一度数字教えて」
と言って記者さんは数字をメモに書いていた。
 
「最近の歌手で気になっている人は?」
「テイラー・スイフト、アデル、ルーマーあたりかな」
「なるほど。基本的にポップス系なんですね!」
「はい。そうです」
 
「国内のアーティストで尊敬している人とかいますか?」
「やはり椎名林檎さんかなあ」
「ユーミンも好きって言ってるじゃん」と政子。
「松任谷由実さんは、もう別格。神様みたいな人です」
と私は言い切った。
 
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■夏の日の想い出・ふたりの成人式(6)

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