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■夏の日の想い出・ふたりの成人式(3)

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東京での年越しライブ、大阪での年明けライブを終えて帰宅したのは1月2日の夕方であった。マンションの方に2人で行き、「Happy New Year!」と言って、キスをし、たっぷりと『姫始め』をした。
 
3日は朝から着付け士さんに来ていただいて、私も政子も例の豪華な振袖を着た。今年は結局このあと4日間、連続で振袖を着ることになる。午前中、ふたりで一緒に初詣に行った。現地で女性ファッション雑誌の記者さんに会って写真を撮られた。人混みが凄いので、ここでインタビューとかはせず、コメントは朝いちばんにメールで送ってある。
 
その後、美智子、マキ・タカ・サトと合流して上島先生の家に行った。上島先生の家の前で待ち構えていた雑誌記者さんに写真を撮られてから中に入り、先生夫妻に挨拶した。下川先生・雨宮さんなど、何人かの上島先生の親友や奥さんの方の友人数人も来ていたので、一緒に挨拶する。特に奥さんが現役時代に一番仲良しだった歌手の丸井ほのかさんはハイテンションで私たちをその少し豊かな肉体でぎゅっとハグというよりプレスされた。
 
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今日の上島先生宅は「内輪の集まり」という感じで、私たちが行った時も身近なお友達だけという感じだったし、少し遅れてAYAが(ほのかさんから強烈にプレスされてHELP!と叫んだ)、更に少し遅れて○○プロの浦中さんが来た他は特に来訪者は無く、のんびりとした雰囲気で、おせちっぽいオードブルを摘みながら話をした。
 
本来は上島ファミリーや他の楽曲提供アーティストが挨拶回りに来るのは6日の金曜日から8日の日曜日に掛けてらしいのだが、私もAYAもスケジュールが詰まっているので、内輪で集まるこの日にお邪魔させてもらうことになったのである。それで先生はごく普通のトレーナーにジーンズだったし、奥さんもグッチのワンピースを着ていた。6日から8日までの「公式」の挨拶まわりの期間は毎日色留袖を着なきゃといって、茉莉花さんは私と政子・AYAの3人に特にその色留袖を見せてくれた。
 
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「わあ、さすがに凄い色留袖ですね」と政子。
「去年見たのと違います」と私。
「そうそう。毎年同じの着ちゃダメって、響原さんから言われて」と茉莉花さん。「去年着たのはこっちね」と言って、箪笥から別の色留袖を出して見せてくれた。
 
「私も同じのじゃダメと言われてこの振袖なんだけど、ゆみちゃんもだよね」
「そうそう。毎年たまらないわ」とAYA。
「私はこんなの着るの今年が初めてだけど、当然来年はまた別の作らないといけないのね」と政子。
「なんか女って大変よね」と茉莉花さん。
「全く。こういう服は着る機会が少ないからコスパ悪いよね」と私が言うと
「まあ、冬はわざわざ女の子になった訳だけどね」
「別に振袖を着たいから女の子になった訳じゃないけど、こういうきれいな服を着れるのは女の子をする楽しみではあるんだよね。でもお金が掛かる」
「ほんと、ほんと」
 
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「今日のおせちは奥さんの手作りですか?」
「うん。料理作るのは好きだからね。年末にすこし頑張って作ったのに、伊達巻きとか、生っぽいものは昨夜から今朝に掛けて追加した」
「すごーい」とAYA。
「おせち買ったりはしないんですね」と政子。
「**ホテル製のおせちも頼んでるんだけどね。6日,7日,8日の朝に持ってきてもらうことになってる」
「なるほど。公式の年始期間用なんだ」
「内輪の集まりは手料理よ」
「いいですね」
 
「私は作るの面倒だし、京都の友だちの小料理屋さんしてる人に頼んだ」とAYA。
「うちは黒豆とかきんとんとか、冬が年内に作って、栗きんとんとか海老の煮物とかは昨夜にまた作ってたね」
「私はあまり、おせちを買ってくるの好きじゃないから。自分で作りたいのよね」
「偉いなあ、奥さんも冬も」とAYAは言ってから
「あれ?冬と政って同棲してるんだっけ?」と訊く。
 
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「うん。事実上ね。日によって、私の家にいる時と冬のマンションにいる時とあるけど」
「ふーん。。。。でもその手の話、最近はあまり否定しなくなったね」とAYAは楽しそうな顔で言った。
「冬が性別を変更して戸籍上結婚できない関係になったから、そのあたりも気楽になったよ」と政子は言う。
 

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午前中で先生の家を退いた。AYAも一緒に先生の家を出た。AYAは午後からはラジオ番組の収録があると言っていた。私たちはローズクォーツのメンバーと一緒に私のマンションに移動した。
 
「ここは普段は俺たち入れてもらえないからなあ」とサト。
「ごめんねー。男子禁制だから。ここにいつでも入れる男子は私の父だけなんだけど、実際には来たことない」
「戸籍上男性でも入れる子が何人かいるけどね」と政子。
「ニューハーフさん仲間だっけ?」とサト。
 
「うんうん。スリファーズの春奈、同じ大学の友人の和実、私にヒーリングをしてくれている青葉、このあたりはけっこう頻繁に来てるかな。そうだ和実は昨夜電話で話したら、今年性転換手術を受けるって言ってたよ」
「ああ、いよいよか」
「卒業前に性別をきちんとしておこうと思ったら大学3年までには遅くともやっちゃわないと。就職活動する時に性別が曖昧だと大変だし」
「ああ、それはあるよね」
 
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「春奈は高校生になったら手術してもいいって親から認められてるらしいからやっぱり今年手術しちゃうんだろうね」
「凄い。そうか16歳以上なんだね、性転換手術受けられるの」
「本来は18歳以上。16歳は特例だけどそれでも青葉は来年の5月までダメ」
「あの子、完璧に女の子なのにまだ1年半待てって可哀想だけどね」
 
「そんなに完璧に女の子なんだ?」とサト。
「物心付いた頃から女の子の服しか着てない。物心付く前でも女の子の服しか着てない」
「それは凄い。ああ、あの親から放置されてたって子?」
「そうそう。育児放棄されちゃってたのよね。だから自由にやってたと」
「よく生きて来たよね。それ」
「ほんとほんと。あの子、生理もあるから」
 
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「そんな生理なんて、どっから出るの?」
「なるようになるって言ってた」
「冬の生理はふつうに出血するね」と政子。
「え?ケイも生理あるの?」
「そうなのよ。体内のシステムが女性型に書き換えられてるから。病院の先生によれば、人工的に作った膣のいちばん奥の付近が子宮の代理をしていると言っていた」
「へー」
「冬はそのうちきっと妊娠するね」と政子。
「えー?」
「ん?・・・冬がもし妊娠したら出産の前後半年ずつは休みにしてあげるね」と美智子。「あ、そうしてあげて」と政子。
「うーん。。。」
 

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作っておいたおせちとお雑煮も出したが、政子が何かモリモリ食べたいと言い、タカもお腹の膨れるものが欲しいというので、冷凍ストックしているお肉を使って、シチューを作ることにした。私も政子も振袖なので、サトが調理してくれた。サトは自衛隊時代に調理担当だったこともあり、手際が良い。政子がたくさん食べるのでうちには大きな鍋がある。鶏肉を1kg投入してクリームシチューにしたのだが、男性が3人いる上に政子もいるので、あっという間に無くなった。
 
新婚のマキの、おのろけ話などを聞き出していたら、ぽつぽつと訪問客がやってきた。
 
最初に来たのが甲斐さんに連れられてきたスリファーズの3人だった。3人とも小振袖を着ている。彼女たちは中学3年であるが、高校は推薦で入れるところに一緒に進学することにしたので、試験は受ける必要が無い。芸能人の多く行く高校への進学も考えたようであるが、ふつうに高校生生活をしたいと3人が言うので、ふつうの高校にして、高校在学中までは基本的に学業優先で、あくまで放課後と土日中心に活動していくと言っていた。
 
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「放課後が凄まじいんだけどね」と春奈。
「12月には学校終わってから、放送局2つ、CDショップ3つなんてやったね」と千秋。「あ、それ私たちもやってた」と政子。
甲斐さんが笑っているが、美智子は頭を掻いていた。
 
春奈はやはり今年性転換手術を受けるということで、一応7月に予定しているということであった。彼女は戸籍上の名前は昨年のうちに既に男性的な出生名から、日常的に友人たちからも呼んでもらっているこの『春奈』という名前に改名済みである。
 
「性別が20歳になるまで変更できないのが悲しいですけどね」と春奈。「それ変更できると、女子高とか女子大にも進学できるのにね」と政子。
「そうなんです!女子高って行ってみたかったなあ」
「でも、進学する高校では学籍簿上、女子として処理してくれるらしいです」と彩夏。
「良かったね」
「あなたを男子と一緒に柔道とかラグビーとかさせる訳にはいきませんよ、って面接してくれた高校の先生から言われました」と春奈。
「ああ。私もそれで女子と一緒に体育したから」と私。
 
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スリファーズは明日、新曲が発売になるので、その発売イベントに私たちも顔を出すことになっており、その件も時刻や進行などを簡単に確認しておいた。
 
スリファーズと話し込んでいるうちに ELFILIES が担当の野口さんと一緒にやってきた。ELFILIESのメンバー4人も振袖を着ている。
 
私と政子が4人とハグしてたら「私たちも」と言ってスリファーズの3人もELFILIESの4人とハグして、ハグ大会のようになった。サトが羨ましそうに見ている。
 
「年末に発売した『青い妖精たち』好調みたいですね」と春奈。
「初動で12万枚だもんね。びっくりした」とELFILIESのカナエ。
「私たちもELFILIESに関しては少し試行錯誤してしまった面もあるのだけどこういうファンタジーっぽいの、やはり似合うのかもね」と私は言う。
 
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「考えてみたら、私たちのデビューの時にELFILIESが歌ってた曲もこういう傾向だもんね。あれ3万枚売れてるしね」と政子。
「しばらく、この傾向で行きます?」と野口さん。
「うん。あまり続いても飽きられるけど、とりあえず次は似た傾向で行っていいかもね」
 
スリファーズが帰って行ってからそれと入れ替わるようにSPSのメンバーが長谷川さんに連れられてやってきた。SPSのメンバーはセーターにジーンズのスカートという軽装である。
 
私たちやELFILIESが振袖を着ているのを見て
「ああ!みんな振袖だ」
「やっぱり私たちも振袖にしないといけなかったかなあ」
などと言っているが
「ロッカーだもん。服装にこだわらなくていいんじゃない?」
とELFILIESのハルカは言う。
 
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「でも、ケイちゃんは去年、振袖着てビートルズ歌ってたね」と長谷川さん。
「ああ、そういうのも面白いかも」
 
「でも、さすが、ケイちゃんとマリちゃんの振袖、豪華」とSPSの美優。
「金額指定されて、○百万以上のを買いなさいって言われたのよね」
「すごい。事務所の費用で出るんですか?」
「自腹だよ」
「ぎゃー。でもそれ払えるだけ稼いでいるのね?」
「売れると売れるでたいへんですよね」
「そうそう」
 
「私たちも普段着でも穴のあいた服とかは着るなって言われてるもんね」
「私、室内着で外出するなって言われた。コンビニとか行くのにも着換えないといけない」
「私たちも高校時代、よくそれ言われてたね」と政子。
「休養中もいったん一般人に戻ったはずなのに、★★レコード側から、普段もきちんとした身なりしててね、って言われてたね」と私。
「実際、何度か盗撮されて写真週刊誌とかに載ったね」
 
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翌1月4日はクォーツのメンバーは朝から美智子と一緒にレコーディング・スタジオに入っていたので、私と政子の2人だけで挨拶まわりをしてきた。
 
また朝から振袖を着付けしてもらってから、まずは★★レコードに行き、町添部長と加藤課長、南さんに挨拶した。すぐに引き上げるつもりが、町添さんにつかまって2時間ほど話すことになった。
 
「そういえば、12月にローズクォーツのキャンペーンで全国まわっていて、あちこちで結構ローズ+リリーのことも聞かれまして」と私。
「そりゃ、君たちふたりで回れば当然その話題は出る」と町添さん。
 
「ある所で言われたのが、アルバムは毎年出すべきだ。その年にしか歌えない歌があるからって」
「うんうん。同感だね」
「一昨年の音源で『After 2 years』出して、去年の音源で『After 3 years』
を出したんだけど、19歳の歌、20歳の歌でしょ?『長い道』は17歳の歌。18歳の歌が無いのが惜しいねって言われて、実はあることはあるんですよね、と言ったら、ぜひそれをプレスしてなんて言われて」
「それがあるの?」と町添さんは驚いたように言った。
 
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「受検勉強の最中に、活動休止期間に書いた歌をふたりで歌ってスタジオを借りて収録したものがあるんですよね。ただ売物にはならない気がするからインディーズで配信限定で出しちゃおうかな、なんてふたりで言っていたのですが」と私が言うと
「いや、インディーズなんて言わないで、うちで扱わせてよ。配信限定でもいいよ」と町添さんは言う。
 
「その前のもあるんですよね」と政子。
「前?」
「ローズ+リリーを始める直前に、やはりふたりでスタジオ借りて吹き込んだ歌があるんです。こちらは正真正銘、売物にはならないレベルですけど」
「それ、物凄く、聞きたい!」
 
私はさすがに今日はいつものパソコンを持ってきていなかったので、あとでCDに焼いて町添さんに送ることを約束した。
 
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■夏の日の想い出・ふたりの成人式(3)

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