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■夏の日の想い出・点と線(12)

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新年会では最初に1月1日付けで会長に就任した私(紅川さんは相談役に退く)と、社長の秋風コスモス、副社長の川崎ゆりこが挨拶した上で日野ソナタ(=作詩家の霧島鮎子)の音頭で乾杯。その後は自由におしゃべりして、自由に飲み食い(アルコールは無し。個人的なオーダーも禁止)して下さいということにしたが、現役タレントの面々が一言ずつメッセージを述べる。順序はこのようであった。
 
品川ありさ、高崎ひろか、アクア、今井葉月、西宮ネオン、花崎ロンド、姫路スピカ、白鳥リズム、石川ポルカ、桜木ワルツ、原町カペラ、桜野レイア、山下ルンバ、東雲はるこ、町田朱美
 
この順序は川崎ゆりこが決めたもので、“ほぼデビュー順”なのだが、微妙な部分もある。だいたい一番の古株(**)である山下ルンバがこんな後ろの方に登場するのはおかしいという声が結構あった。
 
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(**)2014年夏、§§ミュージックの寮にはヒバリの入院で米本愛心だけが住んでいた。そこに最初山下ルンバが入寮し、続いて品川ありさ、高崎ひろか、アクアの順に入寮した(ルンバの記憶によれば)。アクアはこの4人の女子にたくさん“セクハラ”されているが、本人は性欲も無いしそもそもペニスも無い?のでそれをセクハラと感じてない。何も無いように見える股間と治療薬の副作用で微かに膨らんだ胸を見られて「やはり女の子だったんだね。大丈夫だよ。秘密にしておくから」などと言われて恥ずかしがっただけである。葉月は入寮しなかったおかげで、彼女たちの“魔の手”から逃れられた。月嶋優羽は川崎市の自宅から通っており入寮していないが、お風呂を借りて入ってアクアの裸を目撃している。
 
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パーティーだし、お正月だしということで和服を着ている子も結構居た。
 
リセエンヌ・ドオは一緒にレンタルしたというお揃いの黄色の振袖を着ていた。佐藤ゆかは鳳凰のような赤い鳥の模様、南田容子はピンクの桜模様、高島瑞絵は青い月と笹の模様、山口暢香は黒い御所車と手鞠の模様だった。花鳥風月だと言っていたが、それだと暢香の御所車が“風”なのだろう。
 
大崎志乃舞は赤い振袖を着ていた。
「可愛いね」
と私が声を掛けると、本人よりお母さんのほうが照れていた。
「この子、こんなんでいいんですかね」
「立派なお嬢さんですよ」
「やはり“お嬢さん”なのか」
「私はそのつもりだけど」
と本人も言っている。
 
昨日の前座で今井葉月の歌に東雲はること大崎志乃舞が伴奏すると聞いた時、川崎ゆりこは
「男の娘トリオだ」
と言ったが、私は
「ちょっと違うよ」
と訂正した。
「東雲はるこは半陰陽(という建前)で、今井葉月は女形みたいなもので、大崎志乃舞は男の娘というより女装男子。全員男の娘ではない」
 
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「まあでも似たようなものでは?要するにスカート穿きたいんでしょ?」
とゆりこは言っていた
「同じ黒いお菓子でも、チョコレートとヨウカンと黒棒並みに違うんだけど」
「どれも甘ければOKです」
 
まあ世間的な認識はそんなものかも知れない。ちなみに大崎志乃舞は山下ルンバの紹介で!?フェイたちのCBF(女湯に入る会)に加入したらしい(アクア・葉月に続く§§ミュージック3人目の加入者)。彼は姫路スピカや白鳥リズムなどと一緒に温泉に入ったことがあるなどと言っていた。姫路スピカとはロックギャルコンテストの同期で仲が良いこともあり、度々一緒に旅行しているようで(三田雪代やスピカの従姉・竹中花絵の4人一緒らしい)、長野県の鹿教湯温泉とか、愛媛県の道後温泉とかでも、一緒にお風呂に入ったなどと言っていた。ちなみにスピカによれば彼は§§ミュージックの研修生の中で最も“女らしい”子だという。料理も裁縫もひじょうにうまいし、性格も優しい。彼は成人式は絶対振袖を着ると言っている。今は高校1年生だが、制服の無い学校なので女子の標準服を着て通学している。
 
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先生たちも
「まあ君が着たいならそれでもいいよ」
と言ってくれたという。頭髪検査も女子基準でやってくれているし身体検査は1人別途で対応してくれているらしい(彼をさすがに男子と一緒には検査できない)から、半ば女子生徒扱いのようだ。女子トイレや女子更衣室を使っても何も言われないということだった。むしろ女子制服で男子トイレを使われるほうがよほど問題がある。女子更衣室では同級生女子たちによる“検査”の結果容認されたと聞いた。彼は声変わりしないように女性ホルモンを飲んでいるので、副作用?で胸も結構ある。
 

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新年会は16時から始めて18時すぎに終了した。政子は19時頃戻って来たが
「お腹空いた。晩御飯何食べようか?」
と言った。
 
「うなぎ食べてきたのでは?」
「あれはお昼だもん」
 
竜木さんによれば、政子はうなぎの“せいろ蒸し”を3人前食べたらしい。
「じゃ空港で何か食べようか」
と言って、福岡空港に移動してから“海幸”で夕食を取った。政子のお気に入りの店のひとつだが、ここの天神・福ビル店は現在、ビルの建て替えのため休業中である。
 
私たちは1月1日の最終便で東京に戻った。
 
福岡空港21:25-23:00羽田空港
 

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1月3日、私は★★レコードの鷲尾さんに呼び出されて、渋谷のKスタジオに行った。案内で尋ねると4FのK室に行ってくださいというので、そちらに入る。小風と美空が来ていた。私が着いて10分ほどして和泉も到着する。
 
「それでは話を始めようか」
と鷲尾さんは言った。
 
「このKスタジオのK室を、∴∴ミュージックの畠山社長と話し合い上で取り敢えず2020年1月1日から12月31日まで1年間貸り切った」
 
私や和泉は顔を見合わせる。どうも小風だけがこの話を聞いていたようである。
 
「それでKARIONの諸君、次のアルバムを作ろうではないか」
 
「しかしまだ構想も何も無いのですが」
 
「その件に付いて、私と畠山社長は綿貫小風君をKARIONのキャプテンに任命したので、彼女を中心にまとめてもらう。2月までが方向性を固める時間」
 
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「すみません。リーダー交替ということですか?」
 
「KARIONのリーダーはあくまで絹川和泉君だ。KARIONの音楽も演奏も彼女中心にやってもらいたい。しかし、和泉君も、サブリーダーの天野蘭子君も忙しいので、サードリーダーの小風君にキャプテンをしてもらい、全員のスケジュール管理をしてもらう」
 
「小風ってサードリーダーだったんだ?」
と私が訊くと
 
「フォースリーダーは美空ね」
と小風は言っている。
 
「KARIONおよびトラベリングベルズのメンバーのスケジュールをTimeTreeで管理することにして、小風君にその主催者になってもらう。追って各々に招待状を送る。でも和泉君や蘭子君は忙しくてスケジュールの更新が漏れがちだし、美空君は忘れがちだ」
と鷲尾さんが言うと、美空は頭を掻いている。
 
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「それで和泉君に関しては、畠山社長と話し合って、三杉純子さんを専任のマネージャーとして付けることにした。ドライバー兼任にするし、アクア関連や個人的なことでも使っていいから」
 
「分かりました。三杉さんにはこれまでも色々手伝ってもらっているので気心が知れていて安心です」
と和泉。
 
「蘭子君については蘭子君のマネージャーの竜木梨沙さんにお願いすることにして、彼女の上司の鱒渕さんには話をしている」
 
「竜木さんなら安心です」
 
「美空君については畠山社長と話し合って、小風君のサポートと兼任で朝風紗織さんにスケジュール管理をお願いすることにした」
 
「げ?紗織か」
 
紗織は美空の妹である。適当すぎる長姉・月夜、天然の次姉・美空を見て育ったせいか、三姉妹の中で最もしっかり者である。
 
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「朝風紗織さんは美空君のマンションに住み込んでスケジュール管理をしてくれるらしい」
 
「要するに朝起こす係だな」
 
「紗織は過激なんだよ。実家で暮らしてた頃はしばしば水とか氷とか掛けられていた」
「遅刻が減りそうだ」
「ゴールデンシックスに関わるスケジュールも含めて管理してもらうことで、ゴールデンシックスの南国さん及び∞∞プロの了解を取っている」
 
「それでスケジュール管理にはTimeTreeを使うことにして、それ以外の伝達事項や、相談事、また単純なメモができる場所、共有のホワイトボードのようなものがあったほうがいいと小風君から意見が出ていたので、これはGoogle Documentを使うことにする。KARIONやトラベリングベルズのメンバー、マネージメントチームの人は自由に書き込めるようにするから、アイデア帳とか自由帳としても使って欲しい。ワープロもスプレッドシートも使えるから。機能はOfficeほどは無いけど、まあメモ代わりにはいいでしょう」
 
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「それで製作だが」
と鷲尾さんは言った。
 
「3月までに方向性を固める。これは忙しい所申し訳無いが、和泉君にお願いする。君が企画を立てないとKARIONではないから」
 
「分かりました。何とかします」
 
「その後、夏くらいまで掛けて楽曲を揃えるとともに、出来上がった曲はどんどん録音していく」
 
「そこでこの4人が揃う日がなかなか取れないのですが」
と私が言うと、鷲尾さんはこういった。
 
「楽曲を和泉君と蘭子君のメールでのやりとりで充分練ってもらう。共有スペースとしてGoogle DriveあるいはOne Driveを使ってみて。好みもあるので君たちが使いやすいほうで。そして曲が完成したらトラベリングベルズに渡して練習してもらう。和泉君の時間が取れた時に、和泉君にこのKスタジオに来てもらって、トラベリングベルズと一緒に和泉君のパートを収録する。この時他のパートがいないとイメージを掴みにくいだろうから、同じ事務所の後輩、“と金”のメンバーに代行してもらう。小風君のスケジュールが取れる場合は小風君のパートは本人が歌う」
 
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“と金”は女性3人のグループだが3人とも結構な歌唱力がある。売れてないのが玉に瑕!?だが。
 
「多分スケジュール取れます」
と小風が言う。
 
「それで多少の調整をして譜面が確定したところで伴奏および和泉君のパートを収録。小風君も参加していた場合は小風君のパートも同時収録」
 
「それで私や美空は後日収録ですか?」
 
「そういうこと。少年隊方式」
 
「少年隊ってそういう制作をしていたんですか?」
 
「あの3人は初期の頃を除いては個々の活動が大きくなって3人揃って制作することが困難になった。それで各々のメンバーの時間が取れる時にスタジオに入って自分のパート録音して帰るというパターンになった。だからCDを聴けば3人で歌っているように聞こえるけど、CDが出来上がるまでの間3人が実際に顔を揃えることはなかったらしい。最近ではガーネット・クロウも個人主義方式。協同しない。中村さんが曲を書いて七さんが歌詞を書き、古井さんが編曲して、岡本さんがギターを弾き、最後に中村さんが歌を乗せる。全員単独作業」
 
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「現状ではやむを得ないかも。このままではKARIONは活動停止したと思われちゃう」
と私は言った。
 
「蘭子がそれでいいなら、私も異存は無いよ。何とかしなきゃとは思っていたけど現実にあまり時間が取れない。特に蘭子と私の両方が時間が取れるタイミングがほとんど無い」
と和泉も言う。
 
「じゃそういうことで、何かあったらキャプテンの小風君に連絡して調整すること」
 
「分かりました」
 
「それでアルバムのタイトルだけど『ラブソングス・フォー・ユー』とかはどう?」
と私は提案した。
 
「ストレートだね」
「明確なコンセプトだよ」
 
「私は2×4(ツーバイフォー)とかどうかなと思った」
と美空。
 
「どういうコンセプト?」
「いや建築中の家を見て思いついた」
 
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「却下」
と和泉。
 
(過去にガダルカナル・ダイアリーなど複数のアーティストが"2×4"というアルバムを出したことがある)
 
「私は『花言葉』とか考えていたんだけど」
と小風。
 
「ひたすら花を愛でる訳か」
「そうそう」
 
「だったら各自、恋歌なり花を愛でる歌を考えて歌詞を書いたり、写真を撮ったりしておいてよ。3月の震災復興支援イベントには4人集まるからその時、お互いの成果を突き合わせて、それでテーマ決定」
と和泉は言った。
 
「ではそれで」
 
「よし。方向性は固まりそうだね。それで今年は頑張ろう。それでこのスタジオのルームKはいつでも使えるから、ここに来て楽器を弾きながら、あるいは逆に無音空間で構想を練ったりしてもいいから」
と鷲尾さん。
 
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「それは使わせてもらうかも」
と私も和泉も言った。
 
「だいたい三川さんが対応してくれると思うけど、手がふさがっている時は誰か代わりの人を付けてくれるはず」
「分かりました」
 
それでともかくもKARIONの活動は約半年ぶりに再開されたのであった。
 

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和実は宝くじ売場のおばちゃんにくじの袋を差し出し、
「これ当たってますかね?」
と尋ねた。
 
「はいはい。確認しましょうね」
と言って、おばちゃんはくじを袋から取り出し機械に掛けた。
 
そして和実はおばちゃんがギョッとするのを見た。
 
 
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夏の日の想い出・点と線(12)

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