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■夏の日の想い出・点と線(4)

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2019年のローズ+リリーの活動だが、夏頃まで私が昨年の猛烈な作曲活動の余波でダウンしていたので、宮古島から戻った7月になってやっと始動した。そして2017年にキャンセルされてしまったアルバム『Four Seasons』のリブートとなったアルバム『十二月(じゅうにつき)』を12月まで掛けて制作した。
 
その中で私は番外編のアルバム『戯謔(ぎぎゃく)』やそれに先行するシングル『天使の歌声』などで適用した "Max10"(使用する楽器を最大10に制限する)の流れを汲む "Max12" というポリシーをほとんどの曲に適用した。
 
それでこのアルバムでは『青女の慟哭』を除いては、シンプルで分かりやすい和音構成になっている。ファンの間でも賛否両論があったのだが、概ね好感する意見が多かったようである。
 
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このアルバム『十二月』の発売は2020年2月くらいの予定である。2月にツアーをする予定なので、それに合わせての発売になりそうだ。
 

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アルバム制作の終わりが見えてきた頃、11月下旬に私はカウントダウンライブをする小浜ミューズパークの下見に行って来た。若葉が唐突に思いついて改造することになったミューズシアターの工事進捗具合を見たいというのもあった。
 
実際には既に工事はほぼ完了していた。後は各種の検査を受けるだけという話で、播磨工務店の主力は既に金沢に移動しているということだった。
 
若葉が言っていた通り、シアターとアリーナの間にステージが設営され、その両脇にステージサイド控室があって、そこからエレベータあるいは階段で地下の本控室と行き来できる。ステージは30m×30mの正方形だが、以前のステージのように傾斜は付いておらず水平なステージである。これは前後両側から見るという事情から来たものである。
 
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地下は3室に別れており、中央のスペースがいわば裏ステージで、セリ(上下する機構)などもある。用途によってはここに楽団とか影の演奏者!を置いてもよい。
 
上手・下手各々の本控室は個別更衣室やシャワー・トイレ・小キッチンなどもあり、プロジェクターでステージや観客の様子が映し出されるようになっている。ミューズセンターとの間はセンターと藍小浜の間に元々作られている地下通路(自動車がすれ違える広さ)で連絡できる。100mなので、走ってもいい!
 
シアター側はステージの所が最も低く、ミューズセンター側に向かって高くなっていっている。音響のために壁自体はまっすぐになっていて奥行き80m 幅200mの長方形に改造されている。前後左右に10mずつのスペースを取り、60m×180mの領域に座席を設定し、元の末広がり型のシアターと同様に約2万席を設置できる。私が見た時点では21500席が設置されているということだった。座席はスタッガードで、前列の客の頭と頭の間に座れるようになっている。実は青葉が金沢に作っているスポーツセンターでこのスタッガード方式を採用したので、早速それと同じ方式をこちらにも取り入れたのである。
 
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また、アクアのライブの時は車椅子席のそばに、介助者が座る椅子が無かったことに当日気付き、急遽パイプ椅子を置いて対応した。今回は車椅子席の隣に床から立ち上がる椅子が作り込まれているのも見せてもらった。これは車椅子を固定した後で起こす仕様になっている。車椅子を移動してきて固定するまでは椅子があるのは邪魔なので、その後で出現するようにしたのである。なおこの仕組みはシアター側のみにあるので、原則として車椅子の客はシアターに入れる。(障害者手帳や養育手帳などを持っている人は付き添い1名と共に入場料半額)
 

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今回は京都駅から、アクアのマネージャー山村さんの知人の車で小浜まで往復したのだが、京都駅で帰ろうとしていたら和実と偶然遭遇し、新幹線で並びの座席に座って2時間近くお話しした。夏頃に会った時、喫茶店のすぐ隣にイオンができるかもという話でかなり焦燥していたのだが、今回はかなり元気になっていたので少しはホッとした。
 
「それでさ、和実に謝らなければいけないことがある」
と私は言った。
「なんだっけ?」
「実は元々長方形だったカフェを、この方が音響がいいよと言って、末広がりに改造させちゃったでしょ?」
「あ、うん」
 
「それが間違いだった。実は長方形の部屋の方が音響はいいらしい」
「うっそー!?」
 
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それで私は和実にあの後、白金さんから説明してもらった内容を説明した。
 
「だったら元のアールヌーボーの壁板が使える」
「へ!?」
 
和実が説明したのでは、最初カフェの壁にはフランス直輸入のアールヌーボーの絵が描かれた壁板を使う予定だった。ところがそれを入れると音響が悪いと言われ、結局壁板は吸音板にして、その吸音板の上に画学生にアールヌーボー風の絵を描いてもらったのだという。しかしそもそも部屋を直方体に改造すれば元々のアールヌーボーの壁板(購入代金2400万円)が使えるのではというのである。
 
「じゃ今の吸音板を取り払って、元々の壁板を填め込む?」
「それだとせっかく画学生さんに描いてもらった壁画が無駄になるじゃん」
 
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実はその描画代に1000万円掛かっている。これは吸音板の吸音力を落とさないようにする特殊な着色方法が必要だったためである。
 
「じゃどうするの?」
 
「もうひとつカフェ作っちゃえばいいんじゃない?」
「建設費は?」
「そこが問題だよねー」
と和実は言った。
 
しかしそんなことを言い出せるほど和実も精神力を回復させたんだな、と私は思った。
 

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その日、大林亮平は、私と鱒渕マネージャーに話したいことがあると言って、わざわざアポイントまで取って恵比寿のマンションに来訪した。
 
「政子さんと結婚したいと思っています」
と彼は言った。
 
「そんな話になってたんだ?」
と私は政子を振り返って訊いた。
 
「2年前に指輪を返そうとして亮平が受け取ってくれないから預かるだけ預かっていた指輪を再度受け取ることにした」
と政子は言った。
 
政子は以前1度亮平から婚約指輪を受け取っていたのだが、ふたりは2017年秋に、いったん破局してしまった。それで政子は指輪を返そうとしたものの、亮平は「俺に返すつもりなら捨ててくれ」と言って受け取らなかった。それで政子が預かっていたのである。
 
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「結婚に伴って引退なさいますか?それとも音楽活動は続けますか?」
と鱒渕が尋ねる。
 
「もちろん活動継続。ローズ+リリーは私とケイが死ぬまで続けるよ」
と政子。
 
「分かりました。結婚することはいつ発表しますか?」
「ドラマが3月までなので、それが終了してからにしたいと思っています」
と亮平が言う。
 
「ちなみに妊娠していますか?」
「今はしてないけど、するかもね」
「避妊してないんですか?」
「御免なさい。ちゃんとすべきですよね。春まではちゃんと避妊することにします」
と亮平が言った。
 
「お願いします。先に妊娠が発覚すると面倒なことになりますので」
と鱒渕は釘を刺した。
 

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「でもどこに住むの?亮平さんのマンション?」
と私は訊いた。
 
これで2010年以来続けてきた政子との同居も終わりかなと私は思った。
 
「私はここにずっと住んでるよ」
「同居しないの!?」
 
「僕がそれでいいと言いました」
と亮平が言った。
 
「ローズ+リリーの音楽は、ケイさんとマリの共同生活の中から生まれているんです。だからそれは邪魔しません」
 
「結婚しても別居なの?」
「デート用の家を建てようかなと思っている」
と政子。
 
「へー!」
 
「うちの実家の敷地の中に離れを建てようと思っているんだよね。そこが私と亮平のデート用。お母ちゃんの許可は取った」
 
「マーサの実家に作るんだ!?」
「だって亮平の実家は遠いし」
「まあ遠いかもね」
「でもお金はあるんだから、どっか適当な土地を買って家を建てればいいのに」
「それだと御飯に困るもん」
「お母さんに依存するつもりなのか!?」
 
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亮平がポリポリと頭を掻いていた。
 
離れの建設の件は、実際には政子はかなり簡単に考えているようだったので、私が付いて工務店に一緒に行き(亮平が一緒にいけば情報が漏れかねない)、それで見積りや設計書などを作ってもらうことにした。法的に必要な手続きなども頼むことにした。ガレージを潰して(車は近くの月極駐車場に駐める)、そこに離れを建てるのだが、現地も調査してもらった上で、離れの建面積を20m2(12畳程度)以内にすれば建蔽率はクリアできることが確認できた。ほんとにこじんまりとした離れになりそうである。
 
(この離れは2023年に政子の実家そのものを改築するまで3年ほど使うことになる)
 

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今年も各種音楽賞のトップを切って、11月14日(木)にBH音楽賞がいつものように大阪ビッグキューブホールで発表された。今回ゴールド賞になったのは下記である。
 
アクア『1人のアクア』
ゴールデン・シックス『拝啓生徒会長様』
山森水絵『あなたの人生変えます』
ハイライトセブンスターズ『小鹿に乗った少女』
リダンダンシー・リダンジョッシー『シティ・ジャングル』
レインボウ・フルート・バンズ『Unus, Duo, Tres, Quattuor, Quinque, ...』
白鳥リズム『ボクといいことしようよ』
ステラジオ『愛のサバト』
金属女給『ボーナスくれよ』
蓬莱男爵『Supersonic Call』
北里ナナ『白雪姫』
ウィンドベル『花が咲いたら』
高崎ひろか『神出鬼没な君』
トマムネ32『ニャンデミック』
FireFly20『砂山に突撃』
ColdFly20『グリーンラバーズ』
三毛猫トリオ『鰹節ロック』
津島瑤子『北の桟橋』
小野寺イルザ『ロイヤル・チョコレート・フラッシュ』
トライン・バブル『ダイヤモンド千里浜』
三つ葉『30分』
AYA『アイドルだよ〜ん』
ローズ+リリー『Atoll-愛の調べ』
松浦紗雪『サウス・スコール』
松原珠妃『赤い雪の狂詩曲』
 
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ColdFly20は2017年にデビューしたグループアイドルで、FireFly20, WaterFly20などの姉妹グループなのだが、この手の賞の受賞は初めてで、賞状を受け取ったリーダーの米本愛心は泣いていた。楽曲を書いた紅型明美というのは、実は彼女の古巣である§§ミュージックの山下ルンバ(本名?竹本和恵−実は彼女は多数の名前を使い分けていて私もよく分からない)のペンネームのひとつらしい。
 
彼女は歌手として§§ミュージックから、同プロダクションの女子寮の副寮母としてサマーガールズ出版からお給料をもらっているが、実は作曲家としての収入がいちばん大きいらしい。§§ミュージックの中では、アクア、コスモス、葉月、ゆりこ、に次ぐ高収入者だというのを私も最近知った。
 
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秋口から進めていた§§ミュージックのタレント・研修生・練習生大量出演の4時間ドラマ『The源平記』の撮影は、11月に主として壇ノ浦の合戦の模様を熊谷市の郷愁リゾート50mプールに多数の模擬船を浮かべて撮影し、ほぼ完了した。
 
主題歌の『あの雲の下に』は岡崎天音作詞・大宮万葉作曲で、和泉の指揮下で制作され、『少年探偵団III』の主題歌『白い翼で』(加糖珈琲+琴沢幸穂)と両A面扱いで12月25日に発売される予定である(ジャケットも静御前バージションと小林芳雄バージョンを出す。牛若丸あるいは義経バージョンも出そうという案があったが、アクアの男装写真なんて需要が無い!と言われて没になった)。
 
青葉は夏季に色々な大会が続き、日本代表候補の合宿もある中で何とか時間を取って曲を書いてくれた。琴沢幸穂は実際には2番が書いてくれたようである。
 
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最初は『The源平記』の主題歌のCDと『少年探偵団III』の主題歌のCDを別にして2枚制作しようという意見もあったのだが、それではアクアの負荷が大きすぎるとして山村マネージャーが反対した。
 
『The源平記』の主題歌を他の子に歌わせる案もあったのだが、それでは製作費の回収が厳しいかも、ということでアクアが歌うことになった。高崎ひろか・品川ありさ・白鳥リズムも各々挿入歌を歌っており、それらも発売されるが、やはりアクアのセールスは大きい。
 
今回はリズム(木曽義仲役)の『牛の歩みの恋』が12/18, ひろか(北条政子役)の『糾える縄の如し』は1/1, ありさ(弁慶役)『赤と白』は1/8の発売と発売日を1週ずつずらしている。また、リズムの歌う『牛の歩みの恋』には、アクアのピアノソロ伴奏でリズムが歌った"Aquarhythm version"という微妙な音源をボーナストラックとして収録している。コスモスは渋ったのだが、埋没を恐れたTKR三田原さんの要求で入れたものである。
 
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12月11日(水)には、アクアのミニアルバム『夏から秋へ』が発売され、記者会見を行ったTKRの小ホールには200人ほどの報道陣が詰めかけた。テレビで一部を生中継もしている。いつものようにアクアが生バンドの伴奏で生歌を披露するのだが、今回『Hei Tiare』はHavai'i99の伴奏、それ以外の曲はElement Guardが伴奏した。
 
↓収録曲
『Hei Tiare』Havai'i99
『Bandai』醍醐春海作詞作曲
『Sky Mountains』大宮万葉作詞作曲
『Beforte the Kettle boils』マリ&ケイ
『Motorbike built for two』琴沢幸穂
『Winter's tale』森之和泉+水沢歌月
 
千里は醍醐春海名義と琴沢幸穂名義で2曲に関わっており、私もケイ名義と水沢歌月名義で2曲に関わっている。今回は葵照子さんが関わっていない。記者会見自体は、アクア・コスモス・私・和泉・三田原の5人で行っている。
 
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『Hei Tiare』の演奏時にはバックでリセエンヌ・ドーの4名によるタヒチアン・ダンスも披露された。本格的なタヒチ音楽というのは珍しいので、結構Havai'i99への質問もあり、許可を得て11月に出した彼ら自身のアルバムも紹介していた。
 
『Sky Mountains』の背景には裏磐梯や浄土平の風景が、『Motorbike built for two』の背景にはアクア(たち)が2人乗りバイクに乗っている所が映し出され、どちらも大きなどよめきが起きていた。
 
『Motorbike built for two』のPV撮影で使用した“ソーシャブル・バイク”(座席が左右に2つ並んでいるバイク)は実物を持って来て、リセエンヌ・ドーの佐藤ゆか・南田容子に左右の座席に座らせてみたが、その前にアクアを立たせて、記者たちがたくさん写真を撮っていた。誰もこんなバイクは見たことも聞いたことも無かった。このバイクの映像は一部のテレビ局を通して全国に流れ、Twitterでも物凄い話題になっていた。本放送で流せなかったテレビ局は翌日の情報番組であらためてビデオを流し、また話題になっていた。
 
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記者会見はアクアの学校が終わった後、6時から始めたのだが、7時すぎても質疑応答が終わらず、結局7時半まで掛かった。
 
 
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夏の日の想い出・点と線(4)

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