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■夏の日の想い出・生りし所(4)

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それで千里はフルートを構えて吹き始める。
 
滝廉太郎の『花』である。
 
私は「え?」と思った。
 
その音色があまりに美しかったからである。これはフルートがいいのか、千里の腕がいいのか、とにかく物凄く美しい音色である。
 
一昨日までのKARIONのライブでは、千里はもっと普通の音を出していた。もしかしたら合奏の時とソロの時では吹き方が違うのだろうか?
 
ワンフレーズ吹いた所で、千里が誘うように私を見る。それで私は歌い出す。
 
「春のうららの隅田川・・・・」
 
私が歌い出したのと同時に、龍虎も歌い始めていた。
 
物凄く伸びのある歌声である。
 
私は驚いた。この子、こんなに歌が上手いのか。
 
「櫂のしずくも花と散る」
 
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の所で、龍虎は私の三度下を歌う。ハーモニーが美しく響く。彼は正確に私の声のピッチと共鳴するピッチで歌っている。私もノンビブラートで歌っているが、彼もノンビブラートだ。それで響き合うということは、彼は極めて精密な相対音感を持っているということになる。
 
千里のフルートに合わせて私と龍虎の歌は続く。やがて歌は三番まで行く。
 
「錦おりなす長堤に、暮るればのぼるおぼろ月」
 
そして「げに一刻も千金の」と歌っていた時のことである。
 
突然周囲に満開の桜のビジュアルが出現したような気がした。
 
え?え?
 
龍虎も驚いたような顔をしている。千里は何も表情を変えない。
 
私と龍虎は歌い続ける。
 
「ながめを何にたとうべき」
 
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歌い終わった後、千里のフルートはコーダを吹いて終了した。
 
その演奏が終わるとともに桜のビジョンは消えた。
 

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沙耶、上島先生、雨宮先生がパチパチと拍手をしてくれる。
 
私は今の桜のビジョンは何だったんだろう?と思った。どうも気づいたのは私と龍虎だけのようなのである。千里も見たのかも知れないが、あの子はそういうのを表情に出したりはしない。
 
「お粗末様でした」
と千里が言う。
「いや、粗末じゃない。素敵な演奏だった」
と上島先生。
 
「きれいだったね。ケイさんもそちらの美少女中学生も歌声が素敵」
と沙耶は言っている。
 
龍虎は『美少女中学生』と言われて「えーっと」という感じで手を額に当てている。
 
「そちらも歌手さんですか?」
と沙耶が尋ねる。
 
「まだデビュー前なんだよ。来年の春くらいにデビュー予定」
と千里が答える。
 
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「名前は?」
「まだ芸名は決まってないけど、本名は田代龍虎ちゃんという子」
と千里は答えた。
 
「へー。リュウコか。そのまま芸名でもいい気がする。でもこれだけ可愛いくて歌も上手ければ売れるだろうね。国民的美少女って感じだよ」
と沙耶が言う。
 

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「あ、いや、この子、女の子に見えるけど、男の子だから」
と千里が言うと
 
「うっそー!?」
と沙耶は驚いている。
 
龍虎はまた真っ赤になって、俯いている。
 
「女の子になりたい男の子?」
「いや、普通の男の子。別に女の子になりたくはないらしい」
「それ恥ずかしがってそう言っているだけでしょ?実は女の子だったら良かったのにと思ってるでしょ?」
「ちんちん取って女の子になったら、って小さい頃から言われているけど、絶対にちんちんは無くしたくないらしい」
 
「ふーん。女の子になりたいのなら、私がその子、女の子に変えてあげてもいいけどと思ったのに」
 
「よけいな親切はしないように」
 
「あれ?あんた小さい頃に大きな病気したでしょ?」
と沙耶は言った。
 
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「はい。幼稚園から小学1年生に掛けて2年くらい入院していたんです。その入院中に千里さんと知り合ったんですよ」
と龍虎は答える。
 
「ふーん。。。。」
と言って沙耶は龍虎を見ていたが
 
「ちょっと貸して」
と言うと、龍虎のお腹の所に手を当てている。
 
龍虎は突然女の人に触られて少しドキドキしているようだ。
 
「これでいいと思う」
と沙耶は言って手を放した。
 
「ありがとう」
と千里。
 
「まあ特別サービス」
と沙耶。
 
「少し余計な親切までしなかった?」
と千里が言った。
 
「してない、してない」
と沙耶。
「まあ素敵な歌を聴かせてもらったお礼程度は」
 
「ふーん。まあいいか。じゃ、初穂料このくらい納めておくよ」
と言って千里はバッグの中から封筒を出して渡した。
 
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何だか封筒が分厚い!
 
「こんなにもらっていいの?」
「奥宮の改修工事の奉賛金の足しにでも」
「了解〜」
「奉賛の名義はこの子の名前、埼玉県・田代龍虎で」
「あ、いいかもね」
 
と言ってから沙耶は紙に《埼玉県・田代》まで書いてから、少し考えるようにして言った。
 
「リュウコって降りるに似た字の隆に子供の子だっけ?」
「龍神の龍に白虎の虎で」
「まるで男みたいな名前だね。もっと女の子らしい名前にしておけばいいのに」
「僕、男です〜!」
 

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車に戻ってから、私は千里に訊いた。
 
「巫女さんかと思ったけど、女性神職だったのかな?」
「違うよ。神様そのものだよ」
 
「どういうこと?」
「今は人間体で修行中なんだけどね」
「うーん・・・・」
 
「まあ、あまり深く考えない方がいいよ」
 
「千里、奉賛金いくら出したの?」
と雨宮先生が訊く。
 
「100万円ですけど」
と千里は軽く言う。龍虎がびっくりしている。
 
「じゃ、それあとでこちらから渡すよ」
「分かりました」
「凄い金額だね」
と上島先生。
 
「いえ、沙耶さんは400-500万円払ってもいいことをしてくれました」
と千里。
「もしかしてさっきの心霊治療か何か?」
「あまり深く考えない方がいいですよ」
 
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「でも3人の演奏も素敵だったけど、その前の昇殿しての祝詞も物凄く気持ち良かったね」
と上島先生は言う。
 
「まあ神様は声自体美しい声を持っているからね」
と千里は言っていた。
 
上島先生はその感動が消えない内にと五線紙を取り出して音符を書き込んでいた。
 

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霧島神宮を7:50頃出て、30分ほど国道を走った所で、車は唐突に物凄い山道に突入する。
 
「なんか急に凄い道に入ったね」
「これ道を知らない人はカーナビに表示されていても、この道に入るのをためらうと思うよ」
と千里は言っている。
 
私がカーナビの画面を見ていると、車は道路から外れた場所を走っている!?
 
「なんか道無き道を走っている気が」
「これは新しい道なんだよ。カーナビの情報が更新されていないみたいね」
「なるほどー」
 
やがて霧島東神社(きりしまひがしじんじゃ)に到達する。
 
車を降りて歩いて行くと、ずっと下の方に美しい湖が見えた。
 
「きれいな湖だね」
「御池(みいけ)というんだよ。この神社の象徴だね。直径1kmくらいあるよ」
「へー」
「じゃかなり距離あるんだ?」
「さっきの国道は実はこの池のそばを走っていたんだよ」
「え〜!気づかなかった」
「カルデラ湖だよね」
「だと思います」
 
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「でも神秘的だね」
「龍でも住んでいるみたい」
「龍さん、いますよ」
「おっ」
 
「待って。これ曲書きたい」
と上島先生が言ったが
 
「先生、申し訳ありませんが、お参りするまではご遠慮ください」
と千里が注意する。
 
「分かった!」
 
それでお参りした後で、上島先生は大急ぎで曲を書き留めていた。
 

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「あんたは書かなくていいの?」
と雨宮先生が千里に言っている。
 
「取り敢えず2曲書きましたが」
と言って千里は五線紙を2枚見せている。
 
「いつの間に!」
 

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神社を出てさっきの山道を降りて行く。3-4分で国道に戻るだろうと思っていたのだが
 
「あ、道間違った」
と運転していた千里が言い出す。
 
「どこか分かれ道あったっけ?」
 
「うっかりカーナビに騙された。これは旧道の方だよ」
「旧道なら、いづれ元の道に戻れるのでは?」
「うん。少し遠回りになるけどね」
 
しかし確かにさっき通った道より細い気がする。
 
「ああ、ダメだ!倒木がある」
と言って千里は車を停めた。
 
降りてその倒木を見ている。私も降りる。他の3人も一緒に降りてきた。
 
「これは動かせないね」
と上島先生。
 
「あんたが道に迷うって珍しいね」
と雨宮先生が言っている。
 
「すみませーん。今来た道をバックで戻りますね」
「確かにここは転回は無理だなあ」
「細い道だけどバック大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「ああ。この子は後ろにも眼があるから問題無い」
 
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それで車に戻ろうとしたのだが、
「待って」
と上島先生が言う。
 

「あそこ見て」
と上島先生が言って指さした先に、1本赤く染まった木があるのである。
 
「もう紅葉?」
「さすがに早すぎる気がするけど」
 
「千里、あれ何の木か分かる?」
と雨宮先生が訊く。
 
「葉とか枝の形が錦木(にしきぎ)っぽいですね。それとも小真弓(こまゆみ)かな。小真弓って早いものは8月下旬から色づくんですよ」
 
などと言って、千里は目を細くしてその木を見ていたが
 
「あ、やはり小真弓だそうです。今教えてもらいました」
と言う。
 
「教えてもらったって誰に?」
「え、えーっと、御本人は名乗るほどの者ではないとおっしゃってます」
 
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「うーん・・・・」
 
上島先生と雨宮先生が大きなカメラを出して来て写真を撮っている。私と龍虎もスマホで写真を撮ったが、千里はただ眺めている。
 
「千里は写真撮らなくていいの?」
と私は訊く。
「私が写真を撮ると、まともに写らないから」
と千里。
「ああ、千里は機械音痴なんだよ」
と雨宮先生が言っている。
「私が撮ろうか?」
「じゃお願い」
と言って千里が携帯を私に渡すので、私がその携帯を操作して最大解像度で写真を撮っておいた。
 
「でも桜に紅葉にって今日は凄いですね」
と龍虎が言う。
 
「桜?どこかに桜咲いてた?」
と上島先生が言うのを聞いて、私はやはりあのヴィジョンは上島先生たちには見えてなかったんだなと思った。
 
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「さっき瀧廉太郎の『花』を演奏した時に、演奏した3人にだけ満開の桜のヴィジョンが見えたんですよ」
と私は言った。
 
「へー、そんな不思議なことが」
と上島先生は言っているが
 
「まあ醍醐の周囲には不思議なことが多いから」
などと雨宮先生は言った。
 

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車に戻って、バックで今来た道を戻る。千里はバックだというのにまるで前に向かって走っているかのような速度を出すのでこちらが不安になったが、一度もミスることなく、1分ほどで元の道に戻れたようである。そこから2分くらい走って国道に出ることができた。
 
「しかし季節外れの紅葉を見られたのは醍醐君の迷子のおかげだね。怪我の功名かな」
と上島先生は言うが
 
「そういえば思い出した。葵照子が、醍醐が道に迷う時は迷う理由がある時なんですよと言ってた」
と雨宮先生は言った。
 
千里はただ微笑んでいた。
 

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そこを出て15分ほどで挟野神社(さのじんじゃ)に行く。凄い神社が2つ続いたので、ここは私はちょっとホッとした。
 
すると唐突にメロディーが浮かぶ。
 
「ちょっと待って。これ書き留める」
と言って私は頭の中に流れて来た曲を書き留めた。
 
「冬、それって霧島神社の祝詞を聞いた感動って感じ」
と千里が譜面を見ながら言う。
 
「うん。それが今出てきた」
 
「面白いね。時間差で感動が落ちてくるんだ?」
と雨宮先生が言っていた。
 
 
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