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■夏の日の想い出・生りし所(2)

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「それがさ」
と言って雨宮先生は楽しそうに言う。
 
「友達が勝手に応募書類を書いて、その子の写真を貼り付けて応募して。それで書類審査に通っちゃって通知が来たから、まあ行くだけ行くかといってオーディションに出てきたらしい。ところが優勝しちゃったんだな」
 
「女装が好きな子?」
「いやいや。本人は普通の男の子だと主張している」
「でも女の子のオーディシヨンなら、スカートとか穿かせますよね?」
「スカート穿くことには抵抗感が無いらしい」
「じゃ、やはり女装が好きなのか、あるいは女の子になりたい男の子とか」
 
「本人は別に女の子になりたい気持ちはないと言っている。でも凄く可愛い子だから、小さい頃から、友だちとかに唆されてけっこうスカートは穿いていたらしい。それでスカート穿いてと言われたら、何の疑問もなく穿いちゃったと。本人はそもそもロックギャルコンテストというのが女の子のオーディションだとは知らなかったというんだな」
 
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「え〜〜〜!?」
 
千里も話を聞いて呆れているようである。
 
「その子の名前は?」
 
「高岡と夕香は正式に結婚してないから、長野の籍に入っているんだよ。それで戸籍名は長野龍虎というんだけど、里親の元で育てられていて、里親の苗字・田代を名乗っているから、通常は田代龍虎で通っている」
 
と雨宮先生が言うと
 
「え〜〜〜!?」
と千里が声をあげた。
 
「どうかした?」
「それって埼玉県**市に住んでる田代龍虎ですか?」
 
「ああ、住所は覚えてないけど、埼玉県だったよ。まさかあんた知ってるの?」
 
「その子が小学1年生の時に知り合ったんです。その後も何度も会ってますよ。あの子、物凄く歌がうまいです」
「へー」
 
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「奇遇だね。でもあんた、高岡の子供とは知らなかったんだ?」
と雨宮先生は言う。
 
「田代夫妻にも会ってますし、あの子が田代さんちに行く以前から知っていましたが、高岡さんと夕香さんの子供とは知りませんでした」
 
と千里は言っている。
 
「まああの子本人は自分は田代さんの子供だと思っていると、言っているようだからな」
「私も、私以上にあの子に関わっている友人(川南のこと)も、そういう気持ちでいた方がいいと言っているんですよ」
 
そして千里は悪戯っぽく付け加えた。
 
「まああの子を女装させたら、女の子にしか見えないでしょうね」
 
「女装させたらマジ可愛くなりそうだとは思ったけど、私もまだあの子の女装は見てないのよ」
と雨宮先生は言っている。
 
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私は雨宮先生と千里の会話を聞きながら考えていた。
 
「じゃ、その子、女装でロックギャルとして売り出すんですか?リュウコというのも芸名ですか?」
と私は尋ねた。
 
「まさか。普通に男の子アイドルとして売り出す。龍虎は本名。空を飛ぶ龍に吠える虎で龍虎だよ」
 
「ああ。そういう字ですか。コが付くから女名前かと思っちゃった。じゃ、§§プロさんが男の子を手がけるんですか」
 
「ずっと以前にも男の子を売り出したことはあったものの全然売れなかったんだよ。でも今回は絶対売れると紅川さんは意気込んでいる」
 
「高岡さんの子供というのを公開するんですか?」
「それは表に出さない。テレビ局とかにも言わない。あくまで期待の新人として売り出す。それを本人も支香も望んでいるから」
 
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「私もその方がいいと思います。七光りでデビューさせても潰れてしまいますよ」
「まあ公開するとしたら、あの子が少なくとも20歳すぎてからだな」
 
「今中学1年なら7年間情報をコントロールする訳ですね」
「そうそう。幸いにもあの子の実の両親については、あの子の友だちとかも全然知らない。みんな田代さんちの子供と思っている」
 
「それなら何とかなりそうですね。まあバレた時はバレた時だし」
「うん。そのくらいの気持ちでいるといいと思う」
 

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「その里親の田代さん夫妻に実子とか他の里子は居ないんですか?」
と私は尋ねた。
 
「その件に付いては、古くからの知り合いなら千里が知ってるだろ?」
と雨宮先生は千里に振る。
 
「田代夫妻は医学的に子供が作れないんだよ」
と千里は言った。
 
「へー!」
 
「だからこそ、龍虎を本当に我が子のように育てている。決して甘やかしていないし、といってスパルタでもない。愛情豊かに育てているから、本当に性格のいい子に育っている。でも一方で本人はやはり自分の実の両親が死んでしまっていることを意識して育ってきている。その孤独感にずっと耐えてきた。だから凄く芯の強い子。まあこの厳しい芸能界でも生き延びていけるタイプだと思う」
 
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と千里は言った。
 
「千里は田代夫妻が子供を作れない理由も知っているよね?」
と雨宮先生は言うが
 
「プライバシーをむやみに話すのはよくないです」
と千里は答えた。
 
「うん。私も特に聞かないことにするよ」
と私も言った。
 
「あんたたち硬いね」
と雨宮先生は言っているが、千里と私の反応に満足げな様子である。
 

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この時、防音室内でフルートの練習をしていた政子に電話が掛かってきたようである。
 
何か楽しそうに話していたが、やがて防音室から出てくる。
 
「あ、雨宮先生、千里、いらっしゃーい。冬、私出かけてくる」
 
「今から出かけるの?」
 
今はもう19時近い。あまり夕方以降はひとり歩きさせたくない。付いていくべきか?などと私は考える。
 
「美空がさ、明日までKARIONお休みになったから、一緒にジンギスカン食べに行かないかって」
「ああ。美空と一緒か」
 
若干の不安がある組み合わせではあるが、まあ2人連れなら大丈夫であろう。
 
「いいんじゃない?行っておいでよ。新宿かどこか?」
「札幌だって」
 
「北海道の?」
「東京には札幌って無いと思う」
 
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「飛行機あったっけ?」
「21時が最終らしい。美空のお姉ちゃんが車で迎えに来てくれるって」
 
「ああ、月夜さんならしっかりしているから大丈夫だよ」
と千里が言っている。
 
「じゃ泊まりになるね?」
「うん。今夜はもうお店しまっちゃうから、美空のお父ちゃんちに泊めてもらって、明日が本戦。明日の最終便で帰ってくる」
「了解〜」
 
それで政子はまもなく迎えに来た美空たちと一緒に出かけて行った。
 

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「あ、忘れる所だった。フルート返しておくね」
と言って、私は千里に三響のフルートを返した。
 
「サンキュ、サンキュ。こちら政子のフルート」
と言って、彼女はヤマハのフルートを返してくれる。
 
「サンキョウのケースに入っていたから気づかなかった」
「どこかで入れ替わっちゃったんだろうね」
 
その時、何か考えていたふうの雨宮先生が言った。
 
「ケイ、醍醐、私たちも何か食べに出かけない?」
「それもいいですね。何食べますか?」
「復活した宮崎牛のステーキを食べに」
 
私は頭を抱えた。
 
「それって、まさか宮崎に行くんですか?」
「もちろん」
「でも飛行機ありましたっけ?」
 
「宮崎行きは19:05が最終です」
と千里が携帯を見ながら言う。千里はスマホにはしないんだろうか?などと思いながら私は彼女が左手で携帯を持ちながらその左手の指で高速にボタンを押しているのを見ていた。
 
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「福岡行きは?」
「20:00です。今からでは間に合いません」
「新幹線は?」
「博多行きは18:50が最終です」
 
「明日にしますか?」
と私は訊いたのだが、雨宮先生は言った。
 
「よし。車で行こう」
「え〜〜〜!?」
 
「先生、音源制作でお疲れになっていたのでは?」
「私は疲れてるから寝ていく。だから千里運転して」
 
千里は悟りきったような顔で答えた。
「分かりました」
 

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雨宮先生は
「あいつらも連れて行こう」
と言って、どこかに電話していた。
 
それで20:00に東京駅で待ち合わせようということになる。
 
広い車が欲しいという話になり、私はレンタカー屋さんに電話して予約を入れ、電車で東京駅に出て八重洲口のトヨレンでエスティマを借りた。そこで少し待つ内に、上島先生がまだ小学5〜6年生にも見える美少女を連れてやってきた。
 
「取り敢えず出発しよう」
ということになり、最初は千里が運転席、私が助手席、雨宮先生が3列目、上島先生と美少女が2列目に乗って、車は出発する。ナビの目的地は雨宮先生の指示に従って、霧島市(旧隼人町)の鹿児島神宮(別名:正八幡)にセットした。到着予定時刻は明日の朝10:30と表示されている。
 
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「龍ちゃん、ご無沙汰」
と運転しながら千里が2列目に座っている美少女に言う。
 
「こんばんは、千里さん。上島のおじさんから何か作曲家関係の集まりと聞いたのですが、千里さんは誰かの関係者ですか?」
と美少女は返事している。
 
「うん。私は醍醐春海とか鴨乃清見の名前で作曲しているんだよ」
と千里が言うと
「え〜〜〜!? 鴨乃清見って千里さんだったんですか!?」
と彼女は驚いている。
 
「正確には鴨乃清見の一部だけどね。鴨乃清見は私を含めて数人の作曲家作詞家の集団なんだよ」
と千里が言うと
 
「もっとも千里は鴨乃清見の8割くらいだね」
と雨宮先生が言っている。
 
そして雨宮先生は3列目から助手席の私に向かって言った
 
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「まあそういう訳で、ケイ、この子が高岡と夕香の遺児、長野龍虎だよ」
 

私は一瞬、額に掌を当てて考えた。
 
「高岡さんと夕香さんの子供って、今度デビューする息子さんだけじゃなくて、娘さんもいたんですか?」
 
「違う違う。この子がその息子だよ」
「ちょっと待ってください。女の子ですよね?」
「男の子だよ」
「え〜〜〜!?」
 
そんなやりとりをしていたら、美少女(?)は顔を真っ赤にして俯いている。
 
「まあ、この子がトイレの場所を訊いたら、普通女子トイレの場所を教えるよね」
などと運転席の千里は言っている。
 
「ごめーん。てっきり女の子だと思っちゃった」
 
「まあそういう訳で、龍虎、これがローズ+リリーのケイだよ」
 
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「ケイさん、初めまして。長野龍虎と申します。よろしくお願いします」
と龍虎はきちんと挨拶してぺこりとこちらに頭を下げた。
 
「あ、はい。ローズ+リリーのケイです。龍虎ちゃん、こちらこそよろしくお願いします」
 

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「芸名とかは考えておられるんですか?」
と私は尋ねた。
 
「それはまだ。名前は僕が付けてあげてと紅川さんからはこちらに投げられているんだけどね」
と上島先生が言う。
 
「この子が小さい内に高岡も夕香も死んじゃったから、雷ちゃんが父親代わりみたいにしてたんだよ」
と雨宮先生が言う。
 
「そうだったんですか」
「茉莉花(春風アルト)から僕の隠し子じゃないかと疑われて、最初なかなか信じてもらえなかったけどね」
と上島先生は笑っている。
 

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■夏の日の想い出・生りし所(2)

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