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■夏の日の想い出・振袖の日(6)

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その後、干菓子を頂き、薄茶を頂いた所で基本的な茶会の手順は終了したようであった。
 
茶会が進行している間は、顧問の先生と部長さんがずっと会話をしていた。この日はお正月ということで、振袖の話題が出ていた。まずは普通の和服と振袖の違いを説明し、振袖の染めかたで手描き友禅、型押し、印刷と分類し、更に手描きでも糊糸目とゴム糸目といった話、加賀友禅と京友禅の特徴などと話が及ぶ。和服の知識の全く無い人は途中から付いていけなくなるような話だと思いながら私は聞いていた。
 
紀美香は茶道部だけあって、そのあたりの話もけっこう知っているようで頷いていたが、仁恵は感心したように何度も「へー」という感じの顔をしていた。他にも似たような感じの反応をしているのが部員以外の「集められた」メンツかなと思って見ていた。
 
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茶会が終わった後、脱ぐのは自分で脱げるよね?ということでさきほど着替えた和室に移動し、各自脱ぐ。振袖はそのままそこに置いといてと言われたが、一応私は自分の分と、仁恵の分をきちんと畳んで置いた。紀美香は自分でちゃんと畳めるようであった。
 
着替える時は当然下着になるので、私の下着姿を紀美香も仁恵もニヤニヤしながら見ていた。もう!
 
「なるほどねー。冬が振袖を着ることになった訳が分かった」
などと仁恵は言う。
「まあこの下着姿を見たら、普通に振袖を着せるよね」
と紀美香。
 
「体育の後だったから体操服を着たまま来たのが全てかな」
などと私は言っておいた。
 
仁恵は更に私の胸に手を当てる。
「これ本物?」
と訊く。
 
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「え、えっとぉ・・・」
と私は焦って、どう答えたらいいか悩む。
 
「そもそもこれだけの女の子が着替えている中に居て、何も恥ずかしがっている様子が無いのが、全てを語っている気がする」
と紀美香。
 
あれ〜。最近どこかでも誰かに似たようなこと言われた気がする。
 
「でも着せられる時に何も思わなかったの?」
「いや、ちょっと考え事をしていたもんだから」
「ふむふむ」
「どうも確信犯っぽいな」
 
3人とも結局制服には着替えず体操服の上にウィンドブレーカーを着て下校するが(女子制服は実はスポーツバッグの中に入れていたものの仁恵たちに女子制服姿を見せたくなかったのでちょうど良かった)、駅のホームで別れる時、私はふたりから
 
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「明日からはちゃんと女子制服を着て出てくること」
と言われた。
 
「そんなの持ってないよぉ」
と私は言っておいたのだが
「だってこないだ着て来てたじゃん」
と言われる。
 
あれ〜?私、仁恵たちにそんなの見せたことあったっけ?と私は首をひねった。
 

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翌日、1月8日。
 
昨日仁恵たちから「女子制服を着て出てくるように」と言われたのが朝から耳の中でこだまするかのようにリフレインしていた。
 
私はまた女子制服を着てみたものの、やはりその格好で母たちの居る居間まで行く勇気ができず、「はぁ・・・」とため息をついて男子制服に着替え、家を出た。
 
電車にボーっとしたまま乗っていたら、突然誰かに腕を掴まれる。
「きゃー!この人痴漢です!」
という女の子の声。
 
え!?嘘!? 私何もしてない!!
 
周囲の乗客が冷たい視線をそそぐ。
 
待ってくれ。無実だぁ〜〜〜!!!
 
と思ってよく見たら、悲鳴をあげたのは若葉である。
 
「若葉!?」
「なんだ冬か」
「私、何もしてないけど」
「言い訳見苦しい。でも冬なら許してあげるよ」
 
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40歳くらいの女性が声を掛けた。
「あんた、その男の子は友だち?」
「はい、ボーイフレンドなんです。済みません。ちょっと悪ふざけしただけのようで。お騒がせしました」
と若葉。
 
「あんたもこんな人のいる所でふざけたりしたらいけないよ。親しい仲でもマナーというものがあるんだからね」
とその女性は私に説教する。
 
私本当に何もしてないんだけど〜!
 
とは思ったものの、取り敢えず私は
「済みませんでした。お騒がせしました」
と謝った。
 

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やがて次の駅に到着する。若葉の学校の最寄り駅である。
 
「冬、一緒に降りよう」
「でも私は次の駅まで行かなくちゃ」
「この電車にひとりで残る勇気ある?」
 
う・・・・
 
まだ周囲からは冷たい視線がけっこう残っている。
 
やだ。この場に居たくない。
 
それで私は若葉と一緒に降りてしまった。何となくそのまま出札口を出る。
 
「ね、本当に誰かに痴漢されたの?」
と私は若葉に訊いた。
 
「さあどうかしら」
「一瞬自分の人生終わったかと思った」
「本当に冬、私のお尻に触らなかったんだっけ?」
「やはり誰かが触ったの?」
 
「うーん。。。そうあらたまって訊かれると自信が無くなってくる」
「本当に誰か触ったんなら、そいつはまんまと逃げおおせたことになる」
 
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「まあいいや、冬、今日ちょっと私と付き合ってくれない?」
「学校があるよぉ」
「たまにはサボってもいいじゃん」
「うーん・・・・」
 
若葉自身もどうも今日は学校に行く気が無かったようで、駅の外に出るとタクシーを停める。それで「○○町○丁目に」と行き先を告げた。
 

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私はタクシーの車内から学校に電話して今日休むことを連絡した。また母にも電話して急用で学校を休むことを言った。私は蔵田さんや静花さんなどに突然呼び出されて学校を休むというのも以前から何度もしているので母はその類いのことなのだろうと思ってくれたようだ。若葉も電話で学校とお母さんに連絡しているようだった。
 
タクシーは20分ほど走り、やがて小綺麗な洋館の前に停まった。
 
「ここどこ?」
「私の別荘」
「へー!」
 
「ひとりになりたい時に時々来てぼーっとしてるのよね。一応冷凍の食材とか常にストックしてるから、買物とか出なくても御飯には困らないし」
 
「ああ、若葉って料理はわりとうまいよね」
 
それで若葉は鍵を開けて中に入る。私は「おじゃましまーす」と言って一緒にその家にあがった。
 
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若葉は電気ケトルにミネラルウォーターを入れてお湯を沸かし、冷凍室からクッキー生地を出してオーブンに掛けた。お湯が沸いたのでブルックボンドのレッドラベルの茶葉で紅茶を入れる。
 
「冬は砂糖はいらなかったよね?」
「うん」
 
若葉も砂糖を入れずにティーカップに紅茶だけそそぐ。ティーカップはマイセンっぽい。
 
「でも冬、男子制服着てると、すごーく違和感ある。なんで女子制服で通学しないのさ?」
「実は勇気が無い」
「だってふだんはふつうに女の子の格好で出歩いていて、冬ってドリームボーイズのダンサーとして映像とかにも結構露出してるよね。今更だと思うけど」
 
「そうだなあ・・・」
 
「だいたい男子制服とか着てるから痴漢に間違われるのよ。女子制服着てたら誰も痴漢とは思わなかったろうに」
「観点が違う気がするけど」
 
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「取り敢えず女の子の服に着替えない? 持ってないなら貸してあげるよ」
「それでもいいか」
「私も着替えちゃおう」
 

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それで若葉が持って来た服を見ると、振袖である。
 
「きれいな振袖。友禅風の良く出来た品だね」
「うん。友禅ではないと一目で分かる所がさすが冬。これは安物の普段着だよ」
「安物って若葉の感覚でだよね?これでも庶民には買うのに清水の舞台から飛び降りるくらいの勇気が必要なランクの品っぽい」
 
と私が言うと若葉も笑っている。
 
「冬、どっちが好き?」
「じゃ水色の方」
 
「冬っていつもそういう選び方だよね」
「え?」
「今、私にピンクのが行くように、水色を選んだでしょ?」
 
私は苦笑した。
 
「冬って、最初に自分を犠牲にしようとする。KARIONに関する問題もそういう冬の心理状態が影響してると思う」
 
「うーん・・・・」
「和泉ちゃんがしっかりしてるから、冬は和泉ちゃんを立てたいんでしょ?自分が居ると、人気が2分されて良くないと思っている」
 
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「そんなことは考えてないよ。和泉にはスター性が充分あるよ」
 
「ドリームボーイズで長年やってきたのは蔵田さんが強引で、冬が控えようとしても、無理矢理引っ張り出してくれるからだと思う」
 
私は組んでいた手に顔を付けるようにして苦笑した。
 
「冬が前面に出てくる時って、誰か冬よりもっと引っ込み思案の子の手を引いて表に出してあげる時かも知れないね」
と若葉は言った。
 
私はその瞬間、政子のことを考えた。そういえば夏に2度、政子と2人で人前で歌ったよなと思う。でもあの子、歌が悲惨だし・・・。
 

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「冬、これ自分で着れるよね?」
「うん。若葉も確かひとりで着られたね?」
「うん」
 
それで私は男子制服を脱ぎ、下着隠し用のTシャツも脱いで、その上にタオルの補正をした上で肌襦袢を着る。
 
若葉と同じ部屋で着替えているのだが、若葉も手際よく着ている。多分この子、接待とかで、私より和服を着る機会が多いのかもと、それを眺めながら思った。商事会社を経営している伯母には子供がいないこともあり、若葉はよく海外などから来た取引先の人の接待の場に呼び出されているようである。逆に海外まで出かけることも多いようだ。「フランスで振袖着てるともてるよ」などと中学の頃、言っていたこともある。
 
私は長襦袢の後、振袖を着る。若葉ももう振袖に入っている。
 
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「ね、帯はお互いに締めっこしない?」
「ああ、その方がいいよね」
 
ということで、私が若葉の帯を締めてあげて、若葉が私の帯を締めてくれた。
 

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「私、これで7日間連続の振袖だ」
 
と私はまたテーブルの所に座り、焼き上がったクッキーを頂きながら言った。
 
「それは凄い。私は三ヶ日は毎日振袖着たけど、今日はそれ以来。でもなんでそんなに着てたの?」
 
「2日はデパートのそば歩いてたら、豪華友禅の振袖の試着やってて、それに呼び止められた」
「ふむふむ」
「3日は民謡の演奏会に出て、4日はKARIONのデビュー記念ライブで振袖を着た」
「なるほど」
「6日はドリームボーイズのライブでそのバックで振袖着て踊って、5日はそのリハーサル」
「ああ」
「昨日は放課後に茶道部の初釜に呼ばれて振袖着せられた」
 
「冬、昨日は女子制服で学校に行ったんだっけ?」
「ううん。男子制服だよ」
「それでなぜ部活で振袖を着ることになる?」
「いや、6時間目が体育だったから、そのまま体側服で行ったもので」
「冬は明確な男性用の服を着てない限りは女の子に見えるからなあ。でも着せられる時に、最初に気づくでしょ?」
 
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「それがちょっと考え事しててボーっとしてたし、そもそも私、振袖を着るのに慣れてるから」
 
「ふだん男性用の和服しか着てなければ、すぐ気づくよね」
「男性用の和服なんて、着たことないよ」
 
本当は一度盆踊りの時に男物の浴衣を着せられたことがある。しかしあの時は静花さん(松原珠妃)が「どうして男物着てる?」と言って女物の浴衣を貸してくれたのである。あれは取り敢えず黒歴史だ。
 

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「やはり冬は女子制服で通学すべき。多分誰も何とも言わないよ」
「そうかなあ」
 
その時、若葉はなんだか可笑しくてたまらないという表情をしたが、私は若葉の表情の意味を推し量りかねた。
 
「そうだ。私が冬の男子制服を捨てちゃったら、冬は女子制服で通学せざるを得ないよね」
 
「それは勘弁して」
「本当は女子制服で通学したいと思っている癖に」
「う・・・」
 

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「でも取り敢えず今日は1日私に付き合ってよ」
「いいよ。そのつもりでここまで付いてきたし」
「セックスしてもいいよ。ここは誰も来ないから」
と若葉は大胆なことを言う。
 
「私が若葉に本当にしようとしたら逃げる癖に」
と私は指摘する。
 
「うん。逃げちゃうかも」
 
と若葉もその問題は認める。若葉は小さい頃に男性にレイプされた後遺症で極端な男性恐怖症である。子供は産みたいけど男の人と付き合う自信が無いなどと親しい友人には言っている。
 
「でも中学の時、一度冬と一緒にホテルに行って凄くHなことしたよね」
「あれはお互い忘れる約束で」
「あの程度までなら多分逃げずにできると思う」
「やめとこーよー」
 
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「それとも冬は例の書道部の子とセックスしたいのかな?」
と若葉が言うと私は沈黙してしまった。
 
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■夏の日の想い出・振袖の日(6)

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