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■夏の日の想い出・振袖の日(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2016-01-16  
2008年正月、浦和。
 
私の伯母で転勤族の和代清香(若山鶴声)は当時浦和に住んでおり、群馬県出身の民謡家と共同で民謡教室を開いていた。そこに、その日は近所の子供が集まって、おせちやお餅・みかんなどをごちそうになっていた。だいたい幼稚園から小学2年生くらいの子供が多い。
 
「お正月だし、女の子たち、振袖着せてあげようか?」
と清香が言うと
 
「わーい、着る着る」
と言って歓声があがる。それで清香や娘の鹿鳴・千鳥・歌衣などが手分けして集まってきていた女の子たちに着せてあげる。
 
全部で10人くらいに着せてあげていたのだが、千鳥がふと見るとなんだか羨ましそうな顔でこちらを見ている可愛い子がいる。
 
「君、初めて見たね。最近越してきた子?」
と声を掛ける。
 
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「りゅうこちゃん、ずっとびよういんにはいってて、こないだでてきたんだよ」
と一人の女の子が言う。
 
「びよういんじゃなくて、びょういんだよ」
と別の子が訂正する。
 
「りゅうこちゃんって言うの?君も振袖着る?」
と千鳥が言うと
「えっと・・・」
と言ってなんだかもじもじしている所が可愛い。
 
「あ、りゅうこちゃんならかわいいから、ふりそできてもいいかもね」
と別の女の子。
「うん。りゅうこちゃんもきせてもらいなよ」
と別の子。
 
それで千鳥が
「おいでおいで、着せてあげるから」
と言うと、その子は近寄って来て
「じゃおねがいします」
と礼儀正しく挨拶した。
 
着ている服をとりあえず脱がせると、その子はまるで男の子みたいなシャツと男の子のトランクスみたいなフレアパンティを穿いていた。まあショーツより暖かいかもね〜、と千鳥は思いつつもその上に子供用の和装スリップを着せ、振袖用の長襦袢を着せて、青い振袖を着せてあげた。
 
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「かわいい〜!」
という声が他の女の子たちからあがる。千鳥もこの子、すっごく振袖が似合うじゃんと思った。
 
「君、本当にこういうの似合うね。子供からはお代取らないから、うちに時々来ない? 歌も教えてあげるよ。それで3月の演奏会に振袖着て出ない?」
 
「あ、うたはすきです」
とその子は言う。
 
「へー。じゃ今度またおいでよ」
「じゃ来てみようかなあ」
 
それでその子はその後もちょくちょく清香の民謡教室を訪れ、木曽節や草津節、斎太郎節などを教わったが習得が早く、清香や千鳥たちを驚かせた。なにより音程が物凄く正確で、音感の良さを感じさせる。幼稚園生でここまで正確な音感を持っているのは間違いなく天才だ。
 
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りゅうこはきちんと正しい和音階(純正律に近い)で歌っていたが、試しにピアノを弾いて唱歌などを歌わせると正しく西洋音階(平均律)で歌う。つまりこの子は絶対音感ではなく精密な相対音感を持っているようだと千鳥は思った。楽器の音を聞いてそれにピタリと合わせているのである。
 
「あんた、即名前をあげたいくらいだわあ」
などと清香は言っていた。
 
その子は3月の演奏会にも可愛い振袖を着せてもらって出て、斎太郎節を歌ったが、大勢の観客を前にしても全く物怖じせず、ひじょうにしっかりした歌い方、声量も豊かで、審査員特別賞をもらった。
 
「この子、本気で歌の才能ありますよ」
と清香はその子の保護者として来ていた長野さんという女性に言った。彼女はりゅうこの叔母ということであった。りゅうこの両親は亡くなっているらしい。
 
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「実はこの子の両親はふたりとも音楽家だったんですよ。それでその才能を受け継いでいるんでしょうね」
と長野さんは語っていた。
 
「へー。それは凄い。この子もきっと音楽家になりますよ。でもりゅうこちゃん、いつもズボンですね。スカートは穿かないんですか?」
と清香が尋ねると、長野さんは何故だか、凄く可笑しそうな顔をした。
 
「1度スカート穿かせてみたんですけどね。あまりにも似合ってて」
と言って、また笑っている。
 
スカートが似合うのなら、なぜ穿かせないのだろう?と清香は不思議に思った。
 
清香はりゅうこにかなり期待していたのだが、4月に清香の夫が突然富山に転勤となり、民謡教室も共同経営者の民謡家さんにお任せして、バタバタと引っ越すことになった。
 
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その後も気になったので、民謡教室を引き継いでくれた人に連絡してみると、りゅうこはその後姿を見せなくなったので、他の子たちに尋ねたら、また入院してしまったらしいということであった。清香はお見舞いも兼ねてりゅうこが3月の演奏会で着た振袖を、富山のお菓子と一緒にプレゼントとして送り、「はやくげんきになってね」という手紙も添えておいた。お見舞いの品は、りゅうこの友だちを通して病院に届けられたということであった。
 

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2008年1月7日。
 
その日私は紀美香から茶道部の初釜に顔を出してと言われた。
 
6時間目は体育であった。私は1年生の頃は男子と一緒に体育をしていたので、校庭で雪のちらつく中、サッカーをした。女子は体育館でバレーをしていたらしい。
 
終わってから校舎に戻ってくる時、男子のクラスメイトたちが
「こんなに寒いと縮こまるな」
「あれはお湯掛けて溶かすんだよ」
「お湯掛けたら熱くないか?」
 
などと会話していたが、私は訳が分からず何のことだろう?と首をひねる。私が彼らを見ていたら
 
「あ、唐本には多分関係無い話だから」
「うん。唐本は持ってないもののことだよ」
と彼らは言っていた。
 
どうも私はよく分からなかったが、馬鹿にされている訳では無さそうだなと私は思った。
 
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体育の着替えは、この時期暖房の入っている教室でしたいということで、奇数組が男子、偶数組が女子の着替え場所になっている。それで私は5組にいったん戻るが、着替えずに荷物だけ持って外に出る。
 
「唐本着替えないの?」
「うん。このまま茶道部に行く」
「へー」
 

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教室を出て隣の6組の前を通過するが、もう教室のドアが解放されている。女子の方は早く終わって全員着替えてしまったようだ。
 
私は1年生校舎の階段を降りて、生徒玄関の方に向かう。茶道部の部室は別棟の研修施設の1階にあるので、一度校舎を出る必要がある。
 
それで歩いていたら、本校舎との渡り廊下の所で、政子が何か花見さんと話していた。なんか深刻そうな顔をしているので何の話をしているのだろう?と思う。
 
そして私がその傍を、ふたりに軽く会釈だけして通り過ぎようとした時、花見さんが政子の肩をつかんだ。ところが政子はそれを嫌がって振り解こうとする。花見さんが「だからちゃんと説明しろよ」と政子に言っている。私はつい足を停めてしまった。政子と目が合う。
 
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すると政子は花見さんを平手打ちした。
 
花見さんがびっくりしたように手を離す。すると政子はいきなり私に飛び付いてきた。勢いよく抱きしめられたので、私はバランスを崩して倒れそうになるものの、何とか持ちこたえた。
 
「わっどうしたの?」
と私。
「冬、一緒に行こう」
と政子。
 
「え?でも」
と私は花見さんを見る。
 
「いいから」
と政子が言うので、さすがに身体は離した上で、政子が私の手を握るので、手だけつないで、廊下の向こうの方に歩いて行った。花見さんの視線が背中に突き刺さるのを感じたが、花見さんも追いかけては来なかった。
 
「何があったの?」
「うん。その内説明するよ」
 
そう言って政子は無言であったが、私は政子に抱きつかれて、心臓がドキドキしていた。しかも手は握ったままだし・・・・
 
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「冬、どこに行くの?」
とかなり歩いてから言った。
「茶道部に初釜。政子も来る?」
「うーん。お茶は足がしびれるからパス」
「なるほど〜」
 

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結局生徒玄関のところで政子と別れる。政子はそのまま帰宅するようであった。手を振って別れる。しかし私は政子に抱きつかれた余韻で心臓がドキドキしたまま茶道部部室のある別棟に行った。
 
私、やはり政子のこと好きになっちゃったのかなあ・・・・
 
そんなことも考えるが、結局いつもの問題点に到達する。自分自身が女の子になりたいんだから、女の子と恋愛できる訳が無い。
 
その矛盾は、私の心臓にキュンという感じの苦しみを与えた。
 

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結局政子のことを考えたまま、ややボーっとした状態で別棟の中に入り、部室の方に行こうとしたら
 
「あ、初釜に出る子?」
と言って茶道部の顧問・村上先生に呼び止められる。
 
「はい、そうです」
「こっち来て。和服着せてあげるね」
「あ、はい」
 
それで私は結局政子のことと自分の性別問題で悩んだままの状態で先生に導かれて和室に入った。荷物を畳の上に置く。
 
「体操服は脱いで下着になって」
「はい」
 
それで私は体操服の上下を脱ぎ、和装になるならこれも邪魔かなと思い、下に着ている濃紺のTシャツも脱いで、畳んでスポーツバッグの上に乗せる。この濃紺のTシャツは実は「下着隠し」のために着ているものだが、色の濃い下着は上に着る服によっては色が透けて見えることもある。
 
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「脱いだら畳むって躾けがよくできてるね」
「え?そうですか?でも脱いだら畳みますよね?」
「それできてない子が多いから」
 
と言われて部屋の隅のあちこちに置かれている荷物を見ると確かに体操服や制服が適当にまるめて放置されているのがある。
 
なるほどー。
 
それで村上先生は私のウェストにまずタオルを使ってウェストの補正をした上で和装スリップを渡して着るように言う。私がそれを身につけると長襦袢を着せてくれる。
 
「このタオルとスリップと長襦袢は洗濯機で洗えるから自宅で洗って今週中くらいに部員の誰かに渡して」
「はい、分かりました」
 
そして長襦袢を着せ終わると振袖である。
 
「あなた結構和服を着てるでしょ?」
「はい。民謡をしているので」
「なるほどー。凄く着せやすい」
 
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なんかこないだも言われたなあと思いながら私は振袖を着せてもらい、更に帯を締めてもらった。
 
「はい、できあがり。じゃこれ持って行って待ってて」
と言って懐紙をもらう。
 
「あと多分1人男の子が来ると思うから」
「分かりました」
 

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それで私は振袖姿で奥の部屋に行く。
 
私はこの時、ずっと政子のことを考えていたおかげで、自分が「振袖を着せられた」という問題について何も考えていなかった。
 
それで奥の部屋のふすまを、きちんと廊下で正座してから開けて
「遅くなりました」
と言い、一礼してから入る。また室内で正座して、ふすまを締める。
 
そして中に居る人を見た時、紀美香の驚いているような顔を見る。そしてその隣には吹き出して口に手を当て、声だけは出さずに笑っている仁恵の姿があった。
 
へ?何?何?
 
と私が戸惑っていると、仁恵が
「冬、やはり着慣れているだけあって、振袖が似合ってるね」
 
と言った。
 
その時、私は初めて「しまったぁ!!!!」と思った。
 
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20分ほどしてから、村上先生が振袖姿の2年生の女子を連れて部屋にやってくる。
 
「女子は1人増えたのね。あと1人男子が来ると言ってたけど、まだ来ないみたい」
と先生が言う。
 
「あ、すみません。その男子は急用が出来てこられなくなったそうです」
と紀美香が言った。
 
「あらそう?じゃ、このメンツで始めましょうか」
「結局全員女子か」
「まあ、それが気楽で良いけど」
 
という声が上がっているのを聞いて仁恵が腕を組んで悩んでいた。
 

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炭火で既に釜の中ではお湯が沸騰している。まずは主菓子の載った縁高が回され、ひとりひとつずつ懐紙に取って頂く。部長さんが濃茶を入れる。それを副部長さんが持ってひとりずつの前に運んできてくれる。
 
先に私の右側に居る紀美香がお茶を頂いていたので、私はそれをよく観察していた。
 
すぐに自分の前にも茶碗が置かれるので、私は左に座っている仁恵に「お先に」と挨拶して茶碗を取り、茶碗を少し回してからまず一口飲む。どろっとした外見に反してそう渋くもないもんだと私は思った。最初の一口と合わせて3口半で飲み干し、飲み口を懐紙で拭いてから茶碗を回転させ、正面が向こうを向くようにして置いた。
 
「お、手順ちゃんとできてるね」
と紀美香が言う。
 
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「紀美香のを見てたから」
「私が間違うと、冬も仁恵も間違うな」
「それはどこを間違ったかもボクたちは分からない」
 

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■夏の日の想い出・振袖の日(5)

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