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■春練(4)

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「淳さん、いつ性別変更の申請するの?」
「いや、私は変更しない」
「なんで?」
「戸籍上男女でないと、和実との婚姻を維持できないから」
「あ、そうか!」
「でもそれだと色々揉めない?」
「我慢する」
「でもそもそも女同士で夫婦関係を維持できるんだっけ?」
「私たちレスビアンだし」
「それどちらが男役なの?」
「私たちは男役とか女役というのは無い。***使ってヴァギナに入れたりはしないよ」
「うん。私たちは基本的にトリバディズム」
「へー!」
 
「私たち初期の頃からレスビアンだったしね」
とふたりは言っていた。
 
和実は“タック”の達人で、いつも女性股間を偽装していたので、実際問題として淳は和実の男性器を見たことが無い。和実に教えられて淳もいつもタックしておくようになったので、ふたりはどちらも女性のような形の股間になっており、結果的にずっとレスビアンセックスしていたのである。
 
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「男女型のセックスって何度かしかしてないよね」
「でも淳の性転換手術の前日には男女型でやったんだよ」
「淳さん立ったの?」
「立った。びっくりした」
「4年ぶりとか言ってたね」
「うん。立たないようになってから久しかった」
「きっと明日は切られてしまうというので、立ったんだよ」
 
「ああ、それは分かる」
 
男性時代、自分の男性器が切られることを想像すると性的に興奮していたという経験のある子はわりと多い。ただそこで、性的に興奮するのが目的になる子と本当に切って欲しいと思う子で、人生の歩み方は全く異なることになる。
 

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ちょうどクロスロードのメンツがお見舞いに来て淳をからかっていた時に、淳の元同僚の女性・掛尾芹奈(旧姓光岡)さんがお見舞いに来た。そして実は淳が入社当時は“女性社員”だったことを暴露してしまう。
 
「ほら、当時の名刺」
と言って掛尾さんが見せた名刺には
 
《システム部第1システム課システムエンジニア・月山淳子》
 
と書かれている。
 
「おぉぉぉ!!」
 
「そうか。淳って2012年に女性社員扱いになったと言ってたけど、実は最初から女性社員だったのね」
 
「ちがーう。入社当時のは誤解されていただけで、その後はずっと男性社員だったんだよ」
 
「誤解ではなく正しく理解されているのではないかと」
「だいたい淳ちゃん、最初から女子更衣室使っていたし」
「え〜〜〜!?」
「もしそれで自分は男だというのなら、痴漢の重罪犯だ」
 
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そんなことを言って淳をからかっていたら、淳が和実に反撃する。
 
「和実もそろそろ正直に告白すべきだよね」
「告白って?」
「和実って、男の娘だったなんてのは嘘で、きっと最初から女の子だったに違い無い」
 
「そんなことないよー」
 
「だって私、和実のおちんちん一度も見たことないもん」
と淳は言う。
 
「ああ、それは怪しいと思っていた」
 
「きっと和実は妊娠可能だね」
「あり得るあり得る」
 
と、この時はみんなジョークで言っていたのであった。
 

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淳は結局、1週間入院して、9月19日(水)に退院した。そして仙台の和実の家でしばらく療養することにした。一応会社の方は、年内は休職させてもらえることになっている。
 
仙台に移動してからも、青葉がずっとリモートでヒーリングしてくれるので少しずつ楽になっていった。あらためて、おちんちんが無くなり、かわりに縦のスリットができている自分のお股を見ると、半分は「やっちまったな」という気分、半分は「これが自分のものだなんて信じられない」という気分である。そしてずっと身体に付いているのが嫌だったペニスが無くなったことで何だかホッとするような気持ちであった。和実は自分が性転換手術を受けたあと淳に
 
「ほら、ボクのお股こうなったんだよ。いいでしょ?淳も早く手術しちゃいなよ」
「要らないおちんちんはさっさと取っちゃって、すっきりとしたお股になろうよ」
「お股の形はこうあるべきなんだよ。淳のお股、変なのが付いてておかしいよ」
「おちんちんの付いたOLなんて変。OLなら、おちんちんがあってはいけないんだよ」
 
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などと、散々言葉責めしていたのである。
 
また和実はしばしば淳のお股を剃毛し、おちんちんの根本をアルコールで消毒して、手術用のメスを突きつけては「切り落としてあげようか?」と言って、淳の(切って欲しいという)懇願するような表情を楽しんでいたし、時々本当に少し切っちゃうこともあったので、実は傷跡が残っていて、松井先生から
 
「あんたこれ、自分で切り落とそうとした時のためらい傷?」
などと言われていた。
 

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2018年9月15日(土).
 
全国3箇所で全日本バスケットボール選手権の一次ラウンドがおこなわれた。
 
東京代表の40 minutes, 千葉代表のRocutesはいづれも1回戦・2回戦を勝ってブロック優勝。2次ラウンドに進出した。40 minutesオーナー代行の姫路スピカ、Rocutesオーナー代行の品川ありさ、ともに大喜びであった。2次ラウンドは12月に行われる。
 
なお、東京都予選で敗れた江戸娘のメンバーたちもオーナー代行の高崎ひろかに率いられて?観戦に来て、声援を送っていた。
 
なお、§§プロの歌手たちは、実は春以降、歌うべき曲がなかなかもらえずに困っていたのだが、松本花子システムがアイドル歌謡の生産を始めると、優先的に(実は実地テストを兼ねている:不具合があった時、身内に近い彼女たちの制作でなら調整がしやすい)曲をもらうことができて、秋に一斉にCDを発売した。
 
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9月18日(火).
 
青葉は東京の◇◇テレビで面接に臨んだ。今週面接をするという話は聞いていたのだが、日時は直前に電話があって予定を確認され、それでこの日を指定された。何人か来ているのかなと思ったが、そうではないようである。恐らく全員別の日時が指定されているのだろう。テレビ局の重役さんたちがずらっと並ぶ中で1人椅子に座らされ、いろいろ質問された。顔見知りの響原取締役もいたが、彼は質問しなかった。
 
これどうかした子ならこんなお偉いさんが並んでいるだけでビビるかも知れないなあなどとも思ったが、面接は和気藹々と進んだ。
 
翌19日は大阪でЭЭテレビの上級セミナーに出席した。前回のセミナーの時から来ている人が半分くらいになっている。正直前回は他の人たちのユーモアセンスや機転などに驚嘆していたので、自分は落ちるだろうと思っていた。それで上級セミナーに入れられたこと自体に驚いた。
 
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今回はなんと大喜利をやらされたが、青葉は面白かろうと面白くなかろうと、とにかく即答!というので積極的に解答した。
 
更に翌9月20日(木)は名古屋のЧЧテレビのセミナーに参加した。ここにもやはり東京や大阪で見た人が来ている。おそらくは自分も含めてこの人たちは◇◇テレビ系列に的を絞った人たちだろうと思った。その中で東京局に落ちた人で大阪を争い、大阪に落ちた人で名古屋を争いという形になっていくのだろう。
 

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9月29日(土).
 
今年の大阪実業団バスケットボールリーグが開幕した。貴司たちのチームは昨年1部で最下位になり、2部に転落したのだが、この日は2部で昨年6位になったチームとの試合であった。
 
絶対に落としてはいけない試合だったのだが、選手たちにやる気が感じられず無気力なプレイが続出する。それでまさかのダブルスコアで負けてしまった。
 
選手兼監督の貴司はどうやったらこのチームを立て直せるのか、答えが見い出せなかった。
 

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2018年10月7日。
 
信次の百箇日法要が行われた。この日出席したのは、康子、太一夫妻と翔和、千里と桃香、青葉と彪志、小林成政(康子の実兄)夫妻の10人である。
 
そしてこの後、桃香は千里をしばらく自分のアパートに置きたいと言い、最近かなり千里が元気になっていることもあって、康子はそれを承認した。
 
実際問題として太一の所に孫が生まれたこともあり、康子の関心の大半が翔和に移っている面もあった。最近はすっかり“おばあちゃん”である。
 
それで千里は身の回りの荷物だけ持って桃香のアパートに転がり込んだ。そして千里がアパートに居てくれると、桃香は早月を託児所に預けずに千里に託して働きに出ることができるので助かった。
 
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しかし実際には千里は早月を連れて常総ラボに行き、ここに持ち込んだベビーバリアの中で早月を遊ばせておいて、自分はひたすらシュート練習や南野鈴子とのパス練習やマッチング練習をしていたのである。ベビーバリアはボール避けにもなるが、早月はけっこう千里の練習を楽しそうに見ていた。自分でも何かしたがっていたので、小さなオモチャのバスケットボールを渡し、オモチャのゴールを置いてあげたら、楽しそうにボールを放り込んで遊んでいた。また千里がシュート練習をしている間は、南野鈴子が早月と遊んだりしてくれていた。
 

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10月中旬、千里が常総ラボで練習をしていたら電話が掛かってくる。Jソフトの山口龍晴社長であった。
 
「川島君、東京に戻ってきたんだって?」
「あ、はい。今、友人の家に居候しているのですが」
「こちらに戻ってきているのなら、ちょっとうちの仕事してくれない?設計をする人の頭数が足りなくて」
 
あの会社は人の入れ替わりが激しいからなあと思う。
 
「すみませーん。ちょっと時間が取れないです。それに私、たくさん退職金頂いたのに、今更出戻りなんてできません」
「もちろん退職金返せなんて言わないよ。パートでもいいからさあ」
 
こういう話に千里2や千里3ならきれいに断るのだが、千里1は受け身で押しに弱い。それで曖昧な返事をしてしまう。そして
 
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「私、どうしよう?」
と悩むように呟いた。
 
「うーん・・・」
と《すーちゃん》は悩んだ。
 

「どうも千里1はそのあたりが気弱すぎる」
と話を聞いた《せいちゃん》は言う。
 
「青龍が千里に変装して断りに行ってくる?」
と《きーちゃん》が言う。
 
「あ、いや。ひとり俺の知り合いで、プログラムは組めるけど、システムの設計はあまり経験が無い奴がいて、少し勉強したいと言っていたんだよ。そいつに行かせたらどうだろう?」
 
「そういう子がいるのなら、させるのも手だね」
「少々設計が下手でも、まだ精神的に回復していないせいだろうと思ってもらえる」
「確かに確かに。じゃ、その子に千里の振りをして行かせようよ」
 
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「ただひとつ問題があるんだけどね」
「なに?」
「そいつ男なんだよね」
 
「そのくらい女装させればいい」
と《きーちゃん》と《すーちゃん》は同時に言った。
 
「性転換させてもいいが」
「さすがにあいつはまだ男辞めたくないと思う」
 

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それでその日《せいちゃん》と《きーちゃん》にうまくノセられた《じゃくちゃん》は女性用ビジネススーツ(でもズボンにしてもらった)を身につけ、お化粧をしてJソフトに出社した。
 
「すみません。送別会までして頂いたのに、戻ってきました。お世話になります」
と言って、彼はぺこりと頭を下げる。
 
彼は昨夜足や脇の毛を剃られ、今朝は女物の下着を着けさせられたが、パンティを穿いた所で立ってしまいどうにもならない。「ちょっと抜いてこい」と言われて処理してきた所でやっとパンティを穿かされガードルで押さえさせたが、「痛いよぉ」と言っていた。
 
「性転換手術を受ければ痛くなくなると思うが」
「それは勘弁してください」
「女性ホルモンを摂ると立たなくなるが」
「まだ男を廃業したくないです」
 
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それでこれから年末まで彼が千里に代わってJソフトに務めたのである。
 
しかし彼は女装も初体験だし、ましてやそれで人前に出るなど全く未経験のことで、日に3回くらい自分の興奮を鎮める作業が必要だったらしい。
 
「やはり睾丸を抜いた方がいいな」
「助けて〜〜!」
 

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2018年10月13日、フランスでLFBが始まり、キュー(千里2)は元気にフランスのコートの上を走り回った。
 
10月19日、日本ではWリーグが始まり、千里3はレッドインパルスの一員として今年も活発なプレイをした。
 
そして千里1(川島十里)は《すーちゃん》に励まされて、久しぶりにレッドインパルス2軍の練習場に姿を見せた。
 
「すみません。こちらで午前中練習させてください」
「OKOK。ここに出てくるまで気力が回復したんだね?」
と2軍の山笠コーチは言った。
 
この日の練習で“川島十里”は2軍の選手たちを圧倒した。
 
「今すぐ1軍に行ってもいい感じだ」
とみんなから言われていた。
 
この後、千里1は午前中は横浜の2軍練習場に行き、午後から常総ラボで練習するようになる。そして夜間は編曲作業に従事したが、実はこれは松本花子が生み出した曲の編曲の仕事であった。それで千里1は3ヶ月ぶりに音楽活動に復帰したのである。
 
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なお、千里が横浜の2軍練習場に行っている間、早月は《すーちゃん》が見ていてくれた。
 
 
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